上 下
7 / 14

第7話 友人を招いて

しおりを挟む
翌日、登校すると、早速 ライアとサマンサに声をかける。
「ライア、サマンサ、おはよう。
今週末、予定がなければ我が家へ遊びに来れないかな?」

「えっ、いいの? 行く行く!」
「私も予定ないはずだから、行きたい!」
二人とも満面の笑顔。

ロンは登校途中で誘って、オッケーをもらってる。
男の子があと一人は欲しいところね。
でも男友達って他にはいないのよねぇ。
ロンに誰か友人を連れてきてもらう?

教室のイスに座り、『キャーキャー』はしゃぐライアとサマンサをぼんやりと見つめながら過ごしていると、爽やかな声が耳に届いた。
「おはよう。」

顔をあげると、ハイドくんが目の前に。
あっ、彼、彼がいるじゃない。
商会の息子ってところがひっかかるけれど、ジルニア商会は幅広い商品を仕入れて販売するものの、自社で作ったりはしていないとパバが話していた。

パジャマをうちから買い取り、本店や他の支店で販売する話もあるみたい。
それで隣町のパジャマの話を知っていたのだろう。

ハイドくんに参加してもらって、上手くいけば、新たな商品も買い取ってもらえるかも?

「ハイドくん、おはよう。昨日はありがとね。今週末、我が家へ遊びに来ない?
ロン、ライア、サマンサも来るよ。
新しい商品を考えたくて、話を聞きたいんだよね。
美味しいお菓子も用意するから。どう?」

「えっ、何それ、面白そう。そんなの行くに決まってる!」
彼の口角がグイッと持ち上がり、瞳がキラキラ輝いている。
好奇心が刺激されて、抑えきれなくて、堪らないって顔。
なんかいい。
いつものすました顔よりもずっといい。

みんなに我が家の場所と時間を知らせて解散。
すぐに授業開始前を伝える予鈴が鳴り、バタバタと慌てて席へと戻っていく。

昼休みになると、ライアから服装の確認を受けた。
「どんな装いで行ったらいい?」
ライアとサマンサは貴族だから、貴族のお茶会を想像したみたい。

「普通に楽な格好で。私は楽なワンピース姿の予定だよ。天気がよければ、中庭で過ごすのもいいかなぁと思ってる。
あっ、貴族はコルセットつけるのかな?
友人だけの気楽な集まりだし、当日はお菓子もいっぱい用意するから、あまり体を締め付けない格好がオススメよ。」

もう私の頭はお菓子のことでいっぱい。
せっかく友人が遊びに来てくれるのだから、美味しいお菓子を用意したい。
初めて食べるお菓子なんかすごく喜んでくれそうだ。

自分が食べたいお菓子のレシピをわかる範囲で書き出して、料理長に渡さなきゃ。
お菓子は料理人にお任せする。
残念ながら、佳純はお菓子作りにははまらなかった。
カスミンの部屋には、料理やお菓子作りの本はない。

佳純の記憶になるが、分量などもざっくりとしか覚えていない。
きっと新しいレシピに興奮した我が家の優秀な料理人たちが、試行錯誤して素晴らしいお菓子を作り上げてくれるだろう。

あー、楽しみだなぁ。
またあの慣れ親しんだお菓子に会える。
期待に胸が膨らむ。

***

友人たちが我が家へ来る日が訪れた。
ドキドキ、ワクワク、朝から落ち着かない。

学校が休みの日は商会は忙しい。
平日は学校へ通う兄も、休日は仕事を手伝うことが多くなってきた。
パパと兄は仕事へ。

姉はデートへ出かけていった。
もちろん彼が馬車で迎えに来ていた。
仲がよろしいことで、羨ましい。

ハイドくんは、姉が遊ばれてるんじゃないかと心配していたけれど、どんどん艶やかになっていく姉を溺愛する彼からは、姉が卒業したら、彼の遠戚の養女とした後、嫁に迎えいれたいとの打診はあったようなのだ。

姉はあと一年足らずで卒業するわけで……早く外堀を埋めてしまいたいのだろう。
というか既に埋められている?

もうすぐ時間だ。
私は玄関近くの応接室に待機すると、すぐにロンがやってきた。

ロンは肩からかけられるバッグを私の為に作ってきてくれた。
「バッグにメモとペンを入れとけば、いつでもアイデアを書き込めるだろ?
俺もバッグを作れるようになったからな。」
と得意そうだ。

彼と話していると、ライア、サマンサが連れだってやってきた。
ライアはスカイブルーのワンビース、サマンサはサーモンピンクのワンピース。
明るく華やかな色合いで、その場が一気に華やかになる。
二人でかわいらしい花束を用意して、私に持ってきてくれていた。

花束をサリに渡し、私の部屋へ飾るようにお願いしていると、ハイドくんがやってきた。
パリッとした白シャツにダークグレーの細身のパンツ。
シンプルながらもスタイルのよさが際立つ。

ハイドくんは、キレイな透明の瓶に入ったキャンディをお土産にくれた。
カラフルなキャンディは、食べるだけでなく部屋に飾れば、見ているだけで楽しい気分になりそう。

みんな揃ったので、早速 中庭へ移動する。
中庭には、大きめのテーブルと人数分のイスを用意してある。

ケーキスタンドがなかったので、金属加工店に注文して、大皿を三枚のせられる三段のものを作ってもらった。

ケーキスタンドを使用するだけで、一気に華やかになる。
キレイに並んだお菓子にみなワクワクしている。

メレンゲクッキー、プリン、ポテトチップ、ケークサレ

どうだ!!
どれもなかなか珍しいんじゃないだろうか。
私はカスミンとして食べた覚えがない。
我が家の料理人も初めて見ると言っていた。

食べ慣れないものばかりもどうかと思い、定番のチョコレートケーキとスコーン、シンプルなクッキーも用意。

種類が多い分、一つ一つを小さめに作ってもらった。
ケークサクレやスコーンもあるから、食べ盛りの男の子たちにも満足してもらえるはず。

みんなプリンやメレンゲクッキーの食感に感動し、ポテトチップやケークサレの野菜を使ったお菓子にびっくり。
しょっぱいお菓子にはかなりの衝撃を受けたようだった。

ポテトチップ、懐かしい~。
ずっと食べたかったんだよね。

ライアとサマンサ、ハイドくんはケーキスタンドにも興味津々だ。
しおりを挟む

処理中です...