【完結】引きこもり伯爵令息を幸せにしたい

青井 海

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第4話 美味しい食事を

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お風呂からあがると、ロナが着替えを用意してくれていた。

「リナ様、これをどうぞ。サイズが合えばいいのですが……シンプルなほうが動きやすいかと思い、こちらをお持ちしました」
差し出されたのは、淡いピンクの装飾の少ないドレス。
うん、うん、ゴテゴテした重いドレスでなくて助かる。
でも足首まで隠れる長さは動きにくいな。

「ロナ、このドレスは長すぎない?」

「いえ、ちょうどお似合いですよ。貴族女性は足を見せない長さのドレスを着るようですよ」

「そうなの?私は貴族ぜゃないし、ロナが今着ている長さがいいのだけど……」

「わかります、わかります。でもダメですよ。リナ様はケント様のお客様なのですから。もっと短いものをご希望でしたら、ケント様にお聞きしてからにしてください」

ロナに無理を言っても仕方がないわね。
せっかく私の為に持ってきてくれたのだもの。

「わかったわ。用意してくれてありがとう」

「眠るときにはもっと軽くて短いものをお持ちしますので」

「そうなの?よかった~、このドレスで眠ることになったらどうしようかと思ったの。その時は下着だけで眠るかなって」

「あっ、下着ですが、慣れたもののほうがいいかと思い、洗浄魔法を施しております」

「えっ、魔法?魔法が使える世界なの?ロナは魔法が使えるの?洗浄魔法?だったら下着だけでなく、Tシャツと短パンにもかけて欲しいな」

「はい、既にかけております」

「じゃあ、それを身に付けたいのだけれど……」

「いえ、下着は外から見えないのでいいのですが、洋服はこちらの用意したものでお願いします」

「えーっ、でも仕方がないか……わかった」
Tシャツ短パン姿は、ケント様には娼婦と間違えられたしね。
こちらではあまり肌を出さない洋服が好ましいのだろうから。
おとなしく用意してもらったドレスを身に纏う。

「リナ様、よくお似合いです。色が白くてほっそりされているから、このピンクが絶対似合うと思ったんですよ」
ロナが嬉しそうにニコリと微笑んだ。

「そう?そうかな~、ありがとう」
ドレスなんて着たことなかったけれど、私にもドレスへの憧れはあった。
やっぱりキレイな服を着ると気分もあがる。

このまま部屋へ戻るかと思いきや、
「今から食堂へご案内します。ケント様もご一緒にとのことです」
ロナにキラキラした瞳でみつめられ、ドキリッとした。

なに、なに?
私とケント様が一緒に昼食をとることになっているの?

「でも、ケント様は体調が思わしくないのでは?お仕事も休んでいらっしゃると……」

「まぁ確かに休んでいらっしゃいますが、大丈夫です。ケント様からの申し出ですので。リナ様、ケント様をよろしくお願いします」

ロナは胸の前で手を組んで祈りのポーズで、私をみつめる。
何をお願いされているのかわからないんだけれども……
ケント様の看病? 
でも食堂で一緒に食事するのよね?
ケント様って使用人のみなさんの手に負えないような感じなの?

うーん、まだ情報がなさすぎてわからない。

案内された食堂はお客様を招く場所というより、家族で食事をする場所のようで、6人かけのテーブルとイスが置かれていた。
ウォールナットのような深みのある茶色で、落ち着きがある。
私の好きな感じだ。

一番奥の席には、ケント様が座っていた。
初対面はひどい有り様だった彼。
きちんと身なりを整えられて、まるでどこぞの貴族のようだ。
あっ、貴族なのか……
シンプルな白シャツにダークグレーの細身のパンツは体のラインにそったもので、もしかしたらオーダーメイドなのかもしれない。

「ケント様、お風呂気持ちよかったです。お部屋も広くて、素敵で、ありがとうございます」
感謝の気持ちを伝えると、彼の顔がうっすらと紅く染まる。
照れた?照れ屋なのかな?

じーっと彼を見ていると、緩んでいた口元をキュッと引き締め、すました顔に。
「ああ、気に入ってくれたのならよかった。食事をしながら話をしよう」

「はい」

食事が始まったわけだが、目の前に並ぶメニューがあまりにも美味しそうで、実際に食べてみると美味しくて美味しくて、つい食べるのに夢中になってしまった。

だってお昼なのに、ローストビーフらしき肉と野菜がたっぷりはさまれたサンドに、かぼちゃのスープかな?
マッシュポテトだったり、カットされた色鮮やかな果物だったり、とにかく盛りだくさんで。

見たことのないような食材ではなくて、ほっとした。
食事は大切だもの。

しかも、しかもね、デザートに小さめながらもキレイに飾られたケーキが……ケーキが出たの。

つい食べるのに夢中で、話すことなど忘れてしまっていた。
一気に食べ終わり、ふぅ~っと口元をナプキンで拭ったところで、
「落ち着いたかな?」と男性の声がした。

あっ、あっ……
ケント様の存在を忘れてた。

「申し訳ございません。食べるのに夢中になってしまって」

「いや、いいんだ。リナさんはお腹がすいていたんだな。こちらの食事を気に入ってくれたようでよかった」

「それは、もう。美味しくて、大満足です」

「君はナイフとフォークもきちんと使えるんだな。少々ぎこちないし、あまり優雅とか言えないが……貴族階級なのか?」

「へぇ?貴族?いえいえ、一般人です」

それからケント様に、なぜここに来たのか質問されたが、
「ごめんなさい。わかりません。気づいた時にはこの世界に、あなたの部屋にいたんです」
私はそう答えることしかできなかった。

「そうか……混乱しているところすまなかったね」
ケント様は眉を寄せ、困った顔でぎこちなく微笑んだ。
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