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第56話 ここはどこ?
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【モリーヌ視点】
騒いで疲れていたのだろう……
私は眠ってしまったようだ。
ドンドン、ドンドン
「ラザーニア公爵家の迎えです」
そういって知らない男性が入ってきた。
ドアを叩く音が乱暴すぎない?
「さぁ、お嬢様帰りましょう」
知らない顔に、一瞬不安になったが、我が家は公爵家だもの、知らない使用人などいっぱいいるはずよね……
王宮に関係者以外が入ってくるわけないわ。
そう納得して、後をついていく。
暗闇の中、紋章のない乗り心地はまずましがの馬車に乗せられる。
本当に大丈夫なのかしら?
「ねぇ、本当に、本当に大丈夫なんでしょうね?」
「はい、もちろん。私は旦那様の命令で動いております。ご心配いりませんので、ゆっくりお休みください」
「そう?」
この馬車はほのかに甘い香りがする。
飾り気のない馬車だけど、室内に香をたいてくれていたのね。
とてもいい香り、なんだかふわふわする。
リラックス効果がありそうだわ。
暗闇を進む馬車。
さすがは公爵家の馬車だ。
心地よい揺れに揺られているうちに、私はまたまた眠ってしまった。
***
「奥様、奥様、おはようございます」
優しげな女性の声で目が覚めた。
奥様って誰よ?
私の他にも誰かいるの?
辺りをキョロキョロと見てみたが、私と声を発した女性しかいない。
知らない女性だ。
「ねぇ、あなた、奥様って誰のこと?」
わからないので、素直に聞いてみた。
「奥様は奥様です。モリーヌ様のことですよ?」
キョトンと首を傾げた彼女は、使用人のようだ。
「私は奥様につくことになりました。べネッタと申します。慣れない土地でご不安でしょうが、何でも聞いてくださいね」
「慣れない土地って……ここはどこなの?」
そういえば見慣れない部屋。
窓は小さく、カーテンがついていない。
壁は赤茶色の土壁のよう。
床には毛足の長い赤ベースの色鮮やかな絨毯がひかれている。
ベッドは低い位置にあり、ベッドマットが薄く、布団の代わりにキルティングのような布がかかっている。
この布は青ベースで、ゴチャゴチャとした幾何学模様。
いろいろな色、いろいろな柄のものがあり、部屋全体に統一感がない。
アマリア王国で過ごしてきた部屋とはかなり異なる。
色がガチャガチャ喧嘩して、なんとも落ち着かない部屋だ。
「奥様はぐっすりお休みでしたものね。ここはアランドです。奥様はここへ嫁いでいらっしゃったのですよ」
「えっ……」
まさか私が眠っている間に、アランド帝国に運ばれていた?
そんなことあるわけないじゃない……
アランドまではかなり馬車を走らせないと着かないはずだわ。
ああ……やられた。
あの甘い香りは……
おそらく馬車に眠り薬がまかれていたんだわ。
私はどのくらい眠っていたのだろう。
そういえば、少し体がだるい。
ずっと眠っていたから?
しばらく食べていないから?
なんだかふらふらするわ。
「奥様、奥様、大丈夫ですか?遠い道のりを馬車を飛ばしていらっしゃったんですもの。疲れが出て当然ですわ。
それもかなり急でしたもの。
私は退室いたしますので、ゆっくり休んでください」
私は急に嫁ぐことが決まったのね。
それでこんなチグハグな部屋に通されることになったのね……
「あなた、ちょっと待って。飲み物と食べ物を持ってきてくださらない?」
寝起きで喉が乾いて仕方がない。
お腹も空いている。
「はい、かしこまりました。後でお持ちします」
後でってどういうことかしら?
主人の言葉には、すぐに動くものではないの?
この国では違うの?
はっきり言わなきゃ伝わらないのかもしれないわね。
「後じゃなく、急いで持ってきて欲しいわ。喉が乾いていて、お腹もすいているの」
「まぁ、そうなんですね。ではすぐお持ちします」
退室した彼女はなかなか戻ってこない。
かなり時間が経った頃に、小さめのパンと小さな野菜の切れはしが入った質素なスープが届けられた。
「えっ、たったこれだけ?」
「奥様はしばらく眠っていたので、胃に優しいメニューにいたしました。量もこのくらいがいいだろうと……」
まるで私のためにみたいに言われた。
不満がいっぱいだが、これからを思うと強く出られない。
まずは自分の立ち位置を把握しないと。
おとなしく、言われるままに部屋で過ごす。
ずっと質素な食事ばかり。
しかも『奥様はしばらく寝たきりで足腰が弱っていますから』と部屋から出してもらえない。
弱っているから、鍛えないといけないんじゃないの!
はー、もう、イライラする。
「私は皇帝の妻なのよっ!夫に会わせてよっ!」
「皇帝は外出中です」
「いつになったら、夫に会えるのよ」
「私にはわかりかねます」
私の言葉は、いつもべネッタに軽くいなされる。
私が会話するのはべネッタだけ。
あまりに退屈で、部屋に置かれた本に目を通す。
どの本も分厚いわね。
アランド帝国の歴史? マナー?
皇帝に会わせてもらえない、部屋から出してもらえない私には必要ない知識ね。
すぐにつまらなくなり、パタンと本を閉じた。
ああっ、きっとこのまま時が過ぎていくのだろう……
イコアス伯爵令息リアン様との婚約を解消しなければよかった……
デリーノ伯爵令息ケント様に乗りかえようとしなければよかった……
リナさんに関わったから?
いったい何がダメだったの?
王妃様の逆鱗に触れたことで、お父様に見放されてしまったのね……
それにしても、私を眠らせて、アランド帝国へ運んでしまうなんて。
お父様、ひどいっ、ひどいわー。
騒いで疲れていたのだろう……
私は眠ってしまったようだ。
ドンドン、ドンドン
「ラザーニア公爵家の迎えです」
そういって知らない男性が入ってきた。
ドアを叩く音が乱暴すぎない?
「さぁ、お嬢様帰りましょう」
知らない顔に、一瞬不安になったが、我が家は公爵家だもの、知らない使用人などいっぱいいるはずよね……
王宮に関係者以外が入ってくるわけないわ。
そう納得して、後をついていく。
暗闇の中、紋章のない乗り心地はまずましがの馬車に乗せられる。
本当に大丈夫なのかしら?
「ねぇ、本当に、本当に大丈夫なんでしょうね?」
「はい、もちろん。私は旦那様の命令で動いております。ご心配いりませんので、ゆっくりお休みください」
「そう?」
この馬車はほのかに甘い香りがする。
飾り気のない馬車だけど、室内に香をたいてくれていたのね。
とてもいい香り、なんだかふわふわする。
リラックス効果がありそうだわ。
暗闇を進む馬車。
さすがは公爵家の馬車だ。
心地よい揺れに揺られているうちに、私はまたまた眠ってしまった。
***
「奥様、奥様、おはようございます」
優しげな女性の声で目が覚めた。
奥様って誰よ?
私の他にも誰かいるの?
辺りをキョロキョロと見てみたが、私と声を発した女性しかいない。
知らない女性だ。
「ねぇ、あなた、奥様って誰のこと?」
わからないので、素直に聞いてみた。
「奥様は奥様です。モリーヌ様のことですよ?」
キョトンと首を傾げた彼女は、使用人のようだ。
「私は奥様につくことになりました。べネッタと申します。慣れない土地でご不安でしょうが、何でも聞いてくださいね」
「慣れない土地って……ここはどこなの?」
そういえば見慣れない部屋。
窓は小さく、カーテンがついていない。
壁は赤茶色の土壁のよう。
床には毛足の長い赤ベースの色鮮やかな絨毯がひかれている。
ベッドは低い位置にあり、ベッドマットが薄く、布団の代わりにキルティングのような布がかかっている。
この布は青ベースで、ゴチャゴチャとした幾何学模様。
いろいろな色、いろいろな柄のものがあり、部屋全体に統一感がない。
アマリア王国で過ごしてきた部屋とはかなり異なる。
色がガチャガチャ喧嘩して、なんとも落ち着かない部屋だ。
「奥様はぐっすりお休みでしたものね。ここはアランドです。奥様はここへ嫁いでいらっしゃったのですよ」
「えっ……」
まさか私が眠っている間に、アランド帝国に運ばれていた?
そんなことあるわけないじゃない……
アランドまではかなり馬車を走らせないと着かないはずだわ。
ああ……やられた。
あの甘い香りは……
おそらく馬車に眠り薬がまかれていたんだわ。
私はどのくらい眠っていたのだろう。
そういえば、少し体がだるい。
ずっと眠っていたから?
しばらく食べていないから?
なんだかふらふらするわ。
「奥様、奥様、大丈夫ですか?遠い道のりを馬車を飛ばしていらっしゃったんですもの。疲れが出て当然ですわ。
それもかなり急でしたもの。
私は退室いたしますので、ゆっくり休んでください」
私は急に嫁ぐことが決まったのね。
それでこんなチグハグな部屋に通されることになったのね……
「あなた、ちょっと待って。飲み物と食べ物を持ってきてくださらない?」
寝起きで喉が乾いて仕方がない。
お腹も空いている。
「はい、かしこまりました。後でお持ちします」
後でってどういうことかしら?
主人の言葉には、すぐに動くものではないの?
この国では違うの?
はっきり言わなきゃ伝わらないのかもしれないわね。
「後じゃなく、急いで持ってきて欲しいわ。喉が乾いていて、お腹もすいているの」
「まぁ、そうなんですね。ではすぐお持ちします」
退室した彼女はなかなか戻ってこない。
かなり時間が経った頃に、小さめのパンと小さな野菜の切れはしが入った質素なスープが届けられた。
「えっ、たったこれだけ?」
「奥様はしばらく眠っていたので、胃に優しいメニューにいたしました。量もこのくらいがいいだろうと……」
まるで私のためにみたいに言われた。
不満がいっぱいだが、これからを思うと強く出られない。
まずは自分の立ち位置を把握しないと。
おとなしく、言われるままに部屋で過ごす。
ずっと質素な食事ばかり。
しかも『奥様はしばらく寝たきりで足腰が弱っていますから』と部屋から出してもらえない。
弱っているから、鍛えないといけないんじゃないの!
はー、もう、イライラする。
「私は皇帝の妻なのよっ!夫に会わせてよっ!」
「皇帝は外出中です」
「いつになったら、夫に会えるのよ」
「私にはわかりかねます」
私の言葉は、いつもべネッタに軽くいなされる。
私が会話するのはべネッタだけ。
あまりに退屈で、部屋に置かれた本に目を通す。
どの本も分厚いわね。
アランド帝国の歴史? マナー?
皇帝に会わせてもらえない、部屋から出してもらえない私には必要ない知識ね。
すぐにつまらなくなり、パタンと本を閉じた。
ああっ、きっとこのまま時が過ぎていくのだろう……
イコアス伯爵令息リアン様との婚約を解消しなければよかった……
デリーノ伯爵令息ケント様に乗りかえようとしなければよかった……
リナさんに関わったから?
いったい何がダメだったの?
王妃様の逆鱗に触れたことで、お父様に見放されてしまったのね……
それにしても、私を眠らせて、アランド帝国へ運んでしまうなんて。
お父様、ひどいっ、ひどいわー。
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