【完結】賢者ではありませんが、私でいいのでしょうか?

青井 海

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第39話 帰宅

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舞踏会も無事終わり、ジルに馬車で送ってもらい、ゴードン夫妻の食堂に戻ってきた。

帰りは結構遅くなってしまったが、営業を終えたおじさん、おばさんは後片付けと明日の仕込みをしていた。

「おじさん、おばさん、ただいま帰りました。今日はお休みをありがとうございます。無事に社交界デビューを果たしました。」

「そうかい、良かったね。婚約の話もジルベール様から聞いたよ。素敵な方だね。
庶民の私たちにのところまで挨拶に来てくれたんだよ。
ツムギちゃんの決めた日まで、ここに居てくれていいからね。ツムギちゃんが居てくれて、私たちは助かってるんだから。でも…寂しくなるね。ジルベール様と幸せになるんだよ。」

「そうだ。ツムギちゃんはうちの娘のようなもんなんだから、絶対に幸せにしてもらわんと。」

「おばさん、おじさん… ありがとう。」

おばさんは私をギュッと抱きしめてくれた。
「お嫁に行っても、いつでも遊びにおいで。」

「はい。一週間後にラウンド辺境伯家へ引っ越そうと思います。それまでよろしくお願いします。」



部屋に戻り、寝る準備を済ませる。
ベッドにゴロリと寝転がると、舞踏会でのことが甦ってくる。

ジルと私が婚約。
まるで夢のよう。
こういう時、物語なら頬を引っ張って、夢か現実か確かめるんだよね。

自分の頬を親指と人差し指で軽くつまみ、横に引っ張ってみる。
うん、ちゃんと痛みを感じる。
現実で間違いない。


ジルとのダンス、楽しかった。
もっと踊れるよう体力つけなきゃ。

強引なウィリアム王子に困っている私を、颯爽と迎えに現れたジル。
かっこよかったな~。

周りから見たら、かっこいい対決は、見た目も王子様らしいウィリアム王子に軍配があがるんだろうけど、私にとっては、ジルが一番。

ジルからプロポーズされ、初めての…
その後、何度も…
思い出すと、恥ずかしくなってくる。

顔がカーっと熱くなった。
私は今、きっと真っ赤になってると思う。

両親もラウンド家から婚約話があったこと、了承したことをなぜ知らせてくれなかったのよ。

舞踏会で挨拶した時、ニヤニヤしてたのはそういうこと?
ドッキリをしかけたような?
ジルの背中を叩いたのは、プロポーズ頑張れみたいなやつ?

私だけ何も知らされてなかったんだ。
まぁ、幸せなドッキリだったから…いいのかな。


明日から一週間、しっかり頑張ろう。
ゴードン夫妻との時間を大切に楽しもう。
そう思い、目を閉じる。

あー、ジルの顔が近づいてくる。
ジルの姿が浮かんできて…
眠れない。





    
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