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第21話 まだまだ続く
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無言電話は、着信拒否で落ち着いた。
だが、気持ち悪くて…
康生も私も、携帯があるので、固定電話がなくても困らない。
固定電話は解約することにした。
すると、今度は手紙が届くようになる。
会社で使用するような茶封筒に黒いボールペンで書かれた丸っこいクセ字。
宛先は私の名前になっていて、差出人は書かれていない。
筆圧は強く書かれていて、強い想いを感じさせる。
封筒にはA4サイズの白い紙が一枚入っていた。
『三浦さんは浮気をしています。何も知らない奥様はかわいそう(笑)』
と書かれていた。
康生は、手紙に気づいていない。
彼にはポストを開ける習慣がない。
いつも仕事帰りに私がポストを開けて、部屋へ持ち帰っていた。
だから、彼は何も知らない。
私はどうすればいいんだろう。
こんな手紙を送るのなら、証拠写真でも同封してくれればいいのに。
いつ、どこで、何をしていたのか、知っている情報を書いてくれればいいのに。
これが真実なのか、ただの嫌がらせなのか、私には知るすべがない。
ただ考えてみると、康生は飲みに行くことが多かった。
新婚で週1ペースで外食は多すぎだろう。
共働きで、それぞれの稼ぎは、各自で管理しており、お金も自由に使えた。
私は、康生に手紙のことを伝えないまま、彼が飲みに行った日を手帳に、記すことにした。
すると彼が飲みに行くのは、水曜日と金曜日が多いことがわかった。
金曜日に飲み会が多いのは、私も同じだ。
水曜日が怪しい。
匿名で届く私宛の手紙は、不定期に届いた。
『また飲みに行っていましたよ。』
『仕事休んでましたよ。』
毎回書かれた内容は違ったが、確固たる証拠となるような詳細の書かれたものは一切なかった。
ある日曜日の朝、キッチンを掃除しているとゴミ箱と壁の隙間に小さな紙が一枚落ちていた。
グシャグシャと丸まった紙。
康生が捨てようと投げたものがゴミ箱に入らず、落ちてしまったのだろう。
紙を広げてみると、レシートだった。
土曜日に、コンビニでコーヒーを二缶購入したようだ。
土曜日、私は仕事で一日家を空けていた。
レシートに書かれたコンビニは、海近くの店舗で、我が家から歩いて行ける場所ではない。
誰かと二人でドライブした光景が想像できた。
確証は持てないが、私はカマをかけることに決めた。
「康生、土曜日は誰とドライブしてたの?レシートが落ちてたよ。」
彼は、明らかに焦っていた。
突然の問いかけに驚いたのがわかる。
どう誤魔化そうと思案してるのまで丸分かりだ。
私と目線を合わせようとしないし、一生懸命言い訳でも考えているのだろう。
突然のことで、上手く対応できないのだ。
「女性と二人で遊びに行ってたよね?」
私が問うと、彼は渋々 女性とドライブへ出かけたことを認めた。
認めるくらいなら、浮気などしないでよ。
どんなに責められてもシラを切り通しなさいよ。
ドライブの相手は富永さんではなく、別の女性らしい。
私に内緒で、休日に女性と二人でドライブへ出かける?おかしいよね?
康生は、ドライブしたことは認めたが、それ以上のことはないと言い切った。
やはり証拠はないわけで、言い切られるとそれまでだ。
私宛に届いた匿名の手紙を見せると、驚いていたが、僕は知らないと言い張った。
そうだろうね。
手紙は誰が出したんだろうね。
ドライブした女性?
小島さん? 富永さん?
それとも私が全く知らない誰か?
匿名の主が誰だとしても、その人は、康生と私を別れさせたいのだろう。
それからも月に一、二回のペースで手紙は届いた。
特に証拠にならない、私の気持ちを逆撫でるだけの手紙。
手紙の存在を知った康生は、ポストを気にするようになったし、「封をしたまま捨てて、読まなければいい。」と言う。
私の目に触れる前に捨てられた手紙もあるんだろうな。
私は、どんなことが書かれているのか知りたい。
自分でも変だと思うが、私は匿名の手紙を待つようになっていた。
今度こそは、ちゃんと詳細を書いててよと願う。
その願いが叶ったのか、『三浦さんは荒木さん(あらき)と一緒に会社を休んでますよ。』と荒木さんという名前が書かれた手紙が届いた。
これ、私はこれを待ち続けてた。
その夜、康生に「荒木さんとは?」と問いただしたが、彼はまた誤魔化そうとした。
手紙を見せたことで、ようやく彼は浮気を認めた。
「私と別れたい?」と確認すると、彼は「別れたくない。」と涙を流した。
男性に泣かれたのは初めてだ。
彼の涙を見ても私の心はヒヤリと冷めていた。
荒木さんの気持ちを知りたい。
康生に、「荒木さんに会わせて。」と頼む。もちろん、かなり渋られた。
私が引かなかったので、後日 荒木さん、康生、私で会うことになった。
荒木さんに会った感想。
えっ、私より年上?
私に似た感じで、目立たないごくごく普通の人。
気が強そうだ。
別に彼女を責めるつもりはなく、事実を確認したかった。
どちらが誘ったにしろ、悪いのは康生だ。
私にも原因はあるのだろう。
彼女はすんなりと浮気を認めた。
康生と一緒になりたいとは思ってないそうだ。
水曜日に何度か会っていたのは、彼女だった。
彼女の口調だと、彼女には他にも相手がいるようだ。
それに、本当に好きな人もいるようで、康生とのことは秘密にしたいらしい。
特に康生への執着を感じなかった。
彼女は面倒そうに「もう三浦くんとは二人で会いませんから。」と言った。
康生は私の隣に座り、話すこともなく、シュンと項垂れている。
荒木さんと康生が一緒になりたくて、私が邪魔になっているわけではない。
康生は、私と別れるつもりはない。
その確認が取れて、スッキリした。
ようやく手紙が役にたったよ。
匿名の差出人は荒木さんではないな。
それにしても、康生は年上にかわいがられるタイプみたいだ。
小島さんが、忠告したかったのは、荒木さんのこと?
だが、気持ち悪くて…
康生も私も、携帯があるので、固定電話がなくても困らない。
固定電話は解約することにした。
すると、今度は手紙が届くようになる。
会社で使用するような茶封筒に黒いボールペンで書かれた丸っこいクセ字。
宛先は私の名前になっていて、差出人は書かれていない。
筆圧は強く書かれていて、強い想いを感じさせる。
封筒にはA4サイズの白い紙が一枚入っていた。
『三浦さんは浮気をしています。何も知らない奥様はかわいそう(笑)』
と書かれていた。
康生は、手紙に気づいていない。
彼にはポストを開ける習慣がない。
いつも仕事帰りに私がポストを開けて、部屋へ持ち帰っていた。
だから、彼は何も知らない。
私はどうすればいいんだろう。
こんな手紙を送るのなら、証拠写真でも同封してくれればいいのに。
いつ、どこで、何をしていたのか、知っている情報を書いてくれればいいのに。
これが真実なのか、ただの嫌がらせなのか、私には知るすべがない。
ただ考えてみると、康生は飲みに行くことが多かった。
新婚で週1ペースで外食は多すぎだろう。
共働きで、それぞれの稼ぎは、各自で管理しており、お金も自由に使えた。
私は、康生に手紙のことを伝えないまま、彼が飲みに行った日を手帳に、記すことにした。
すると彼が飲みに行くのは、水曜日と金曜日が多いことがわかった。
金曜日に飲み会が多いのは、私も同じだ。
水曜日が怪しい。
匿名で届く私宛の手紙は、不定期に届いた。
『また飲みに行っていましたよ。』
『仕事休んでましたよ。』
毎回書かれた内容は違ったが、確固たる証拠となるような詳細の書かれたものは一切なかった。
ある日曜日の朝、キッチンを掃除しているとゴミ箱と壁の隙間に小さな紙が一枚落ちていた。
グシャグシャと丸まった紙。
康生が捨てようと投げたものがゴミ箱に入らず、落ちてしまったのだろう。
紙を広げてみると、レシートだった。
土曜日に、コンビニでコーヒーを二缶購入したようだ。
土曜日、私は仕事で一日家を空けていた。
レシートに書かれたコンビニは、海近くの店舗で、我が家から歩いて行ける場所ではない。
誰かと二人でドライブした光景が想像できた。
確証は持てないが、私はカマをかけることに決めた。
「康生、土曜日は誰とドライブしてたの?レシートが落ちてたよ。」
彼は、明らかに焦っていた。
突然の問いかけに驚いたのがわかる。
どう誤魔化そうと思案してるのまで丸分かりだ。
私と目線を合わせようとしないし、一生懸命言い訳でも考えているのだろう。
突然のことで、上手く対応できないのだ。
「女性と二人で遊びに行ってたよね?」
私が問うと、彼は渋々 女性とドライブへ出かけたことを認めた。
認めるくらいなら、浮気などしないでよ。
どんなに責められてもシラを切り通しなさいよ。
ドライブの相手は富永さんではなく、別の女性らしい。
私に内緒で、休日に女性と二人でドライブへ出かける?おかしいよね?
康生は、ドライブしたことは認めたが、それ以上のことはないと言い切った。
やはり証拠はないわけで、言い切られるとそれまでだ。
私宛に届いた匿名の手紙を見せると、驚いていたが、僕は知らないと言い張った。
そうだろうね。
手紙は誰が出したんだろうね。
ドライブした女性?
小島さん? 富永さん?
それとも私が全く知らない誰か?
匿名の主が誰だとしても、その人は、康生と私を別れさせたいのだろう。
それからも月に一、二回のペースで手紙は届いた。
特に証拠にならない、私の気持ちを逆撫でるだけの手紙。
手紙の存在を知った康生は、ポストを気にするようになったし、「封をしたまま捨てて、読まなければいい。」と言う。
私の目に触れる前に捨てられた手紙もあるんだろうな。
私は、どんなことが書かれているのか知りたい。
自分でも変だと思うが、私は匿名の手紙を待つようになっていた。
今度こそは、ちゃんと詳細を書いててよと願う。
その願いが叶ったのか、『三浦さんは荒木さん(あらき)と一緒に会社を休んでますよ。』と荒木さんという名前が書かれた手紙が届いた。
これ、私はこれを待ち続けてた。
その夜、康生に「荒木さんとは?」と問いただしたが、彼はまた誤魔化そうとした。
手紙を見せたことで、ようやく彼は浮気を認めた。
「私と別れたい?」と確認すると、彼は「別れたくない。」と涙を流した。
男性に泣かれたのは初めてだ。
彼の涙を見ても私の心はヒヤリと冷めていた。
荒木さんの気持ちを知りたい。
康生に、「荒木さんに会わせて。」と頼む。もちろん、かなり渋られた。
私が引かなかったので、後日 荒木さん、康生、私で会うことになった。
荒木さんに会った感想。
えっ、私より年上?
私に似た感じで、目立たないごくごく普通の人。
気が強そうだ。
別に彼女を責めるつもりはなく、事実を確認したかった。
どちらが誘ったにしろ、悪いのは康生だ。
私にも原因はあるのだろう。
彼女はすんなりと浮気を認めた。
康生と一緒になりたいとは思ってないそうだ。
水曜日に何度か会っていたのは、彼女だった。
彼女の口調だと、彼女には他にも相手がいるようだ。
それに、本当に好きな人もいるようで、康生とのことは秘密にしたいらしい。
特に康生への執着を感じなかった。
彼女は面倒そうに「もう三浦くんとは二人で会いませんから。」と言った。
康生は私の隣に座り、話すこともなく、シュンと項垂れている。
荒木さんと康生が一緒になりたくて、私が邪魔になっているわけではない。
康生は、私と別れるつもりはない。
その確認が取れて、スッキリした。
ようやく手紙が役にたったよ。
匿名の差出人は荒木さんではないな。
それにしても、康生は年上にかわいがられるタイプみたいだ。
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