【完結】落ちぶれてやるものか!伯爵令嬢、銭湯始めます。

青井 海

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第12話 はっきりさせたい

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お年頃のリーゼ。
あっという間に三人の敵を倒した彼。
抱えて運んでくれた力強い彼。
容姿も自分好みの彼。
彼に危ないところを助けてもらい、ひかれずにいられるだろうか。
無理だった。

レオン。
クリード辺境騎士団の一騎士。
名しか名乗らなかった。
おそらく平民なのだろう。
彼はもうすぐクリードへ帰る。

好きになっては、辛いだけ。

私がベッドに下ろされると、すぐに両親と弟が部屋へ入ってきた。
両親が彼にお礼を告げると、彼は部屋から出ていった。

翌日から私は、レオンをみかけると、挨拶だけじゃなく、話しかけるようになった。
シャロン様は、護衛に話しかける私を見逃してくれ、優しい笑みを浮かべている。
あっ、これは私の気持ちがバレているかもしれない。

彼は言葉少なながらも、返答をくれる。
顔はあいかわらずの無表情。

そういったやりとりが、何日か続いたある日。
「クリードはどんなところですか?」と質問した私。
レオンは、今までになくイキイキとクリードについて語ってくれた。
彼がどれだけその土地を愛しているか、伝わってくる。
しかも少し口元が緩んでいるのである。
これは微笑んでいるのでは?
すこく嬉しい。

もっともっと彼のいろんな顔が見たい。

シャロン様は見違えるように顔色がよくなり、細かった体がほんの少しだけだがふっくらしたようだ。
もう心配ないだろう。

レオンと少し仲良くなれた頃、シャロン様たち一行は、クリードへ帰っていった。

シャロン様は、私に言ってくれた。
「リーゼさん、是非クリードへ遊びにいらしてね。困ったらいつでも頼ってね。」
もう一人お母様ができたようで、嬉しかった。

しばらくはまた、銭湯の改善や新しいお菓子の試作など、忙しい日々を送る。
彼のことを考えないように。

それでも夜 ベッドに入ると思い出してしまう。
彼に抱き抱えられた時のことを。
ぎこちないながらも微笑んでくれたことを。

あ~、ダメだ。
ムズムズする。
はっきりさせたい。

銭湯は軌道に乗り、すっかり私の手を離れた。
問題が起きた時に相談にのるだけ、あとは領民にお任せである。

屋敷で働く使用人も増えた。
戻ってきた人もいれば、新しく入った人もいる。
元の状態に戻っただけなのに、ずいぶん賑やかに感じる。
エッセン伯爵家が持ち直し、領地も潤った。
街の雰囲気も明るい。

もう私がいなくても大丈夫。
そう思った私は、
翌朝 お母様に相談した上で、シャロン様へ手紙を書く。

『お久しぶりです。
来月、クリードへお伺いしてもいいですか?』











    
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