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第2章
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ムカついた。
自分は宮村が襲われた日以来、宮村とまともに会話出来ていない。
学校生活に必要な会話くらいはしていたりしたが、由伊自身生徒会が忙しくなったのと、何故か仲野が居なくなったせいか、取り巻きの女達が増えたため、中々1人になる時間が無かったのは事実だった。
別に敢えて宮村を避けていたわけじゃない。話しかけすらしなかったけど、もしかしたら宮村から話しかけてくれるかも、とか体調は平気なのかとか、それなりに彼の事を考えていた。
……なのに。
滅多に来ないくせに、呆気なく宮村を盗られた。
橘 宇己に。
ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく─……なんで俺に話しかけに来ないし目も合わせて来ないくせに、橘とはあんなに笑い合うんだ。
スキンシップも多いし、何より宮村の笑顔の回数が多い。
自分と居た時は、バラエティやコメディを観て2人で笑うことはあったけど、日常的な会話では滅多に笑いあうことは無かった。
加えて宮村は、橘の姿が見えるとパァッと顔を明るくして駆け寄るようになっていた。
もしくは、橘が抱きついていた。
腹立たしくて仕方ない。
俺は、こんなにも宮村と話せなくてイライラして心配していたというのに。
わかっている。
この感情が自分の独りよがりでただのわがままであるということ。
わかっている。
宮村は自分を好きではないという事。
けどだからと言ってあきらめるわけにはいかないのだ。
何としてでも由伊は律を手に入れたい。嫌なのだ、もう目を離したくない、掴める位置にいるのに手を離すのは御免被る。
それなのに、宮村は、俺が居なくても良いのだと、思い知ってしまった。
俺は宮村が居なければ生きられないのに。
……だから、あんな意地悪を言ってしまった。本当は、いじめたかったわけじゃない。あんなに悲しい顔をして欲しかったわけじゃない。
下唇をギュッと噛み締めて、僅かに身体を震わせて見上げた宮村。
その表情は、あの時空き教室でカツラギに襲われていた時の表情と全く同じだった。そして、また気づいてしまう。
自分もカツラギと同類なんだと。
……俺はただ、宮村の事が好きなだけなのに。
宮村からしたら、感情のままぶつけてくる俺を見てカツラギと同じだ、だなんて思ってるんだろうな。
それでも、宮村の心の中に入れるのなら良いのかもしれない。
憎悪でも、怨恨でも、なんでも。形は違くても、宮村の中に居ることが変わらないのであれば、もう……。
今はただ、怯えさせて無理矢理視界に入れてもらうしか、方法が分からなかった。
好きだと、思うのに、シアワセになれない。
宮村との楽しかった日々を思い出す。
あのまま、あの会話をせずに宮村は罰ゲームだと思ったまま、俺は幸せな勘違いをしたままズルズル付き合っていたら、今も隣に宮村は居たのかな。
……でもそれでいいのか。あの時気づかないままでも良かったんだろうか。
もういっそ、自分を好きになってくれた子と付き合う方が幸せになれるのかもしれない。
俺の事を、一番に想ってくれる子なら、俺を『普通』にしてくれるかな。
俺は宮村を、好きになったのが間違いだったのかな。
別の誰かを……それも、女の子を好きになっていたら、こんなにならなくて済んだのかな。
宮村以外の、他の誰かを─……
……でも今の俺には、その選択はあまりにも、苦し過ぎた。
狂う、そんな気がした。
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