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みやの

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第4章

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 夕方になり、律を家に帰さなくちゃいけない時間になる。由伊は律を家まで送り届けるのに家を出て、一緒に歩いてアパートまで見送った。道中、律とは少しだけど話をした。

大半が由伊自身の話だけれど、律もぽつりぽつり、自分の話をした。本当にほんの少しだけど、甘い物が好きな事と、大人が苦手な事。

辛いものが苦手な事を教えてくれた。大人の人が苦手な理由は教えてはくれなかったし、由伊も敢えて聞かなかった。
聞くのは今じゃない、と何となく直感が言っていたから。

律のアパートから帰る途中、京子に『律くん送り届けたよ』とメールをすると、直ぐに返信が帰ってきた。

「......."駅前のカフェに来い"?」

京子から届いたメールを読み、由伊は駅前の京子行きつけのカフェに向かう。
店内に入ると、静かなBGMが流れコーヒーの匂いがする。
読書をしていたり、仕事をしていたり、静かに談笑している人たちがいた。

その人たちをスルーして、京子の座る奥の席へと向かう。

「どうしたの? 急にカフェなんて」

もうじき夕飯なのに外に連れ出すなんて珍しい。由伊は上着を椅子の背に掛け、京子の対面に座った。

「まぁ取り敢えず頼みなさいよ。すみません、ブラックコーヒー1つ、ホットで」
「.......俺、メニューすら見てませんが」
「まぁまぁ」

自分で頼むように進めといて勝手に頼まれた。まぁ別に元々コーヒー頼もうと思っていたから良いんだけど。頼んですぐに淹れたてのコーヒーが届いたのでそれを一口、口に含み飲み込んで落ち着く。

「で、どしたの?」

京子は真剣な表情で、口を開いた。

「ねぇ、律くんどうだった? あたしが出掛けたあと」
「出かけたあと? 別に普通に話して普通に帰ったよ」

そう言うと京子は呆れた顔をする。

「違うわよ。律くんの心の話。あの子、過剰に私とパパに怯えてたじゃない? 虐待とか、されてるわけじゃないのよね? 本当に、出張? ネグレクトって訳じゃないのよね?」

由伊の不安と、京子の不安はどうやら同じものみたいだった。

「.......うーん。俺もそんな気がしないでも無いんだけど、別に律くん父親の話して来ないし俺も、わざわざ聞けないからさ。ただ母親が居ないってことは分かるんだけど.......」
「.......そうよね。律くんがうちに居ると気を使っちゃうのは分かるんだけど、やっぱりどうしても心配だわ。土日だけでも泊まりに来てくれないかしら」

京子の心配性っぷりが炸裂している。確かに土日に泊まりに来てくれるのは由伊としては大変嬉しい。だってそしたら、月曜から金曜までは必然的に学校で会えるし、土日になれば家に泊まりに来てくれるから会えるわけだし。

そしたら、毎日律くんに会えるわけじゃん? それは最高に俺からしたら嬉しいものだけど.......。

「.......確かに良いと思うけど、律くんが疲れちゃうと思う」
「あら意外だわ」

由伊の言葉に京子はニヤッと嫌な顔をする。
「なにが」とむす、とした顔で返すと、ニヤニヤしながら京子は言った。

「アナタ、律くんにゾッコンのくせに」

ズバリと言い当てられ、由伊はギク、とする。まあでも隠すことでも無いし、いずれ言うつもりで居たので由伊はそのままぶっちゃけることにした。

「.......そうだよ、俺は律くんを世界で一番愛してる」
「きゃあ~! 息子から、誰かを"愛してる"って言ってるのを生できけるなんて! 生きてて良かったわ~!」

京子は大袈裟にきゃあきゃあする。由伊は呆れながらコーヒーを啜った。

「まあでも、何にせよ。愛するって言うぐらいなんだから覚悟はあるんでしょうね」

京子の目が乙女から一気に鋭い瞳に変わった。

「男同士の覚悟?」
「それもそう。同性愛は広まってきたとはいえまだまだ受け入れられない部分もあるから、想像以上にとても生きにくいと思うわ」

「まあね。けど、律くんの居ない世界と比べたら何億倍も息がしやすいよ」

「惚気やがって~!! あと、律くんのように不安定な子は中々難しいのよ。だからと言って見捨てろとか、そう言うんじゃない。中途半端にしないでってこと」

京子の言葉に、由伊は満面の笑みで言った。

「こっちはもう8年もずっと前から、律くんに恋してんだ。
 今更、中途半端にしたくてもしてあげらんねぇわ」

穏やかなクラシックと京子の呆れた溜め息を聴き流しながら、由伊は白いマグカップを手に取り、苦味を口に拡げた。 

覚悟じゃなくて俺の場合、そうなる運命、なんだよね。

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