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第8章
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「律~、おみくじ大凶だったぁ」
メソメソと泣きついてくる文崇に、律は苦笑しつつ俺のと交換しようか?と返した。
「えっ!?律、大吉!?すごいね!?さすが僕の息子だ!!」
ぱあっと抱き着いてくる文崇を宥めながら、甘酒を飲みに行こうと誘導する。
あれから、律は泣いて何も言えなくなってしまった由伊を宥めて、2人、無言で家に帰ってきた。
家族は既に起きていたけれど、由伊はろくに挨拶もせず自室へ篭ってしまった。
京子たちに訳を聞かれたけれど、「喧嘩しました」と誤魔化した。
「わあ!律くん大吉引いたの!?縁起がいいわねぇ~!」
由伊の、ご両親も一緒に来ていたので律のおみくじを見て喜んでくれる。
寛貴や真も一緒に来たけれど、早々にお参りをして先に2人で帰ってしまった。
4人で色々回っていると、いつの間にか居なくなっていた父さんが嬉しそうに駆け寄ってくる。
甘酒を飲みつつ目をやると、目の前にチロリン、と鈴の音が聞こえるお守りを差し出してきた。
「どうしたの?買ったの?」
「うん!律にだよ!何処へいっても、このお守りが守ってくれる!はず!」
ふふ、はず、って。
「……ありがとう、大事にするね」
素直に律を言うと、文崇は満足そうに「うん!」と頷いていた。
「さあそろそろ帰る?お家でお汁粉でも食べましょうか」
京子の声に、そろそろか、と律は息を吐いた。
「あ、皆さん先に帰っていてください。俺、少し寄っていきたい所あるので……」
そう言うと、皆は「着いていくよ」と言ってくれた。
そういう人達なのを分かっていたから、律は首を横に振ってわらう。
「良いんです、俺、1人で行きたいので。……なので皆さん、ここまでで大丈夫です。色々、ありがとうございました」
ぺこりと、頭を下げると文崇も含め、京子たちも不思議そうな顔をする。
「あらなあに?どうしたの?お家に帰ってきてね?お汁粉あるんだから」
京子は、困ったように笑う。
律も、しっかりと、本物の笑顔を作る。
ここでもう、一生、皆とお別れだ。
「……はい、楽しみです」
最後の、嘘。
「……律?」
怪訝な顔をする文崇に焦り、律は慌てて言う。
「ちゃんと帰るよ!お汁粉食べたいから!だから、ごめんね」
「……そう。なるべく、早く帰ってくるんだぞ?何かあったら連絡しなさい」
文崇は、厳しめの声でそう言った。
律は、それに「うん」と笑って返した。
「じゃあ、またね」
京子と孝は優しい顔で手を振った。
文崇も、「待ってるぞー!」と大きく手を振っていた。
皆に嘘をついた罪悪感もあるし、みんなの元へ帰れない寂しさもあるし、なんだろうな……。
整理したつもりなんだ、自分の中で。
死ぬ事への葛藤は、必要ないはずだった。
だってそれ以外の選択肢は俺に残されていないのに、足掻いたって無駄じゃないか。
悲劇のヒロインを気取りたいわけじゃない。
被害妄想をしたいわけでもない。
単なる事実なんだ。
3人の後ろ姿を見て、律はぽたりぽたり、と滴を落とした。
「さようなら、みんな」
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