ソラ・ルデ・ビアスの書架

梢瓏

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第一章 ライカンスロープとの決戦

第8話 ライカンスロープとの対戦2

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 セレスが、コレットを追いかけてきた追手を近所のお兄さんを呼ぶ様な口ぶりで名前を呼んでいるのを、コレットは非常に驚いた。

コレット自身は、追いかけられて執拗に狙われて必死になって逃げて来て、見知らぬ書架の人に助けられて更にその相手を倒そう?としているのに何故か、その相手が実は書架の主人の知り合い?と言う世界の狭さを目の当たりにした感じだ。

 男は、結界を物ともせずに礼拝堂の近くまでやって来て、ようやくその全貌を露わにした。

背は190メルト(cmの事)はあろうかと言う大男で、でもガッチリとした筋肉質の巨漢と言う程でもない感じの体格で。

しかし、その身体からはコレットに対する憎悪に似た黒い感情が溢れているのは、その場にいる全員に感じ取れた。

一体何がこの、グレアラシルと言う男を突き動かしているのか分からないが、非常に非情な怒りを讃えている事だけは分かった。

 セレスとの距離が徐々に縮まる中、礼拝堂の上に居たミカゲがグングニルで串刺しにしてやろうか?と言う勢いでグレラシルに切りかかった。

すると、まるで上空の動きはお見通しだ!と言わんばかりの早さでミカゲの攻撃を避ける。

そして、両手に携えていた剣をミカゲに向かって繰り出した。

「へぇ~!二刀流なんだな!」

ミカゲは久しぶりの遊び相手に目をキラキラさせて対応する。

戦闘は、ミカゲにとっては遊びの一環で、最近はずっと日陰の寂れた書架で本の整理ばかりやっていたので身体が鈍っていたのだった。

準備運動をしているよ!と言う様な感じで身体を動かして、グレアラシルの攻撃を身軽にかわして行く。

戦闘と言う行為を心の底から楽しんでいる様だった。

 この様子をハラハラしながら見ているコレットは、

「セレスさん!ミカゲを助けに行かなくてイイんですか!」

と、気が気ではない事をセレスにぶつける。

しかしセレスの方はと言うと、空中で発動する様に仕掛けた救援魔法の仕込みが終わってからは、魔道具錬成用の魔法陣の中心にドッカリと座って、2人の戦闘している光景を眺めているだけだった。

「まぁまぁまぁ。落ち着きたまえよコレット。ミカゲはそんなにヤワな生き物じゃないんでね、この程度、巨木にまとわりつくハエとたわむれている位の戦闘なんだよね。」

と、コレットには一体何を言っているのか分からない様な返答をした。

とにかく、今のコレットには何もする術が無いので、仕方なくミカゲとグレアラシルの戦闘を傍観するしか無かったが、一つだけふと思い出したのでセレスに聞いてみる事にした。

「そう言えば、ライカンスロープって一体どんなタイプの獣人なんですか?」

その質問にセレスは、よくぞ聞いてくれた!と言わんばかりの笑みをこぼしながら、コレットの問いに答えた。

「ライカンスロープはね、満月を見ると本来の獣の姿に戻る性質を持っている獣人でね、普段は人間の姿をしているんだけど、今日みたいな満月の日は獣の姿が露呈してしまうんだよね。」

そう言ってニヤニヤした。

ニヤニヤ?
そんなに面白い話だっただろうか?とコレットは更に疑問を募らす。

「ああ、何でそんなに楽しそうなんだ?って?実は、あのライカンスロープの男の獣の本体がさ、ちょっと面白い姿をしているんだけど・・・・あはは!思い出すだけで大笑いだよ!!」

と言って、実は今まで堪えていた?のを我慢しきれなくなって大笑いをし始めた。

よっぽど面白い事を思い出してしまったのか、その大笑いの笑い声は当のライカンスロープのグレアラシルの耳にも届いていた。

「くぉるぁああ!!セレスぅぅう!!昔の古傷で大笑いし腐って!!」

グレアラシルが何かにキレて、セレスに怒鳴りつけた。

そして、ミカゲとのやり合いに飽きたのか、ミカゲとの戦闘位置からは離れた魔法陣方面に、グレアラシルが方向転換して向かって来た。
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