おとぎ姫の異種間恋愛物語

たとい

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シンデレラ

ネズミだって灰だらけ 1ページ

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昔々あるところに、美しい貴族の娘がおりました。

彼女はとても優しかったので動物にも優しく、嫌われ者のネズミにもご飯をわけてやっていました。

トカゲだけでなく小汚いネズミに餌付けするだなんて、父親もあまり理解できませんでした

恐れ多くも一匹の灰だらけネズミは、その優しい娘に恋をしていました。

恋が実るだなんてことは思っていないネズミはひたすらに娘の幸せを願っていました。




「あの子にいつの日か素敵な王子様が現れて、幸せになってくれたらいいのに。」




ところが継母を迎えてから優雅な貴族の娘の日常は変化します。

父親が死んでからというものの、娘は汚い服を着せられて継母とその娘たちに召使のようにこき使われるようになったのです。

ネズミのように汚い灰だらけになった娘はシンデレラ(灰だらけ)と呼ばれるようになりました。

あんまりな扱いに恋するネズミは怒っていましたが、シンデレラは不満を抱いてはいませんでした。




「どうして君は怒らないんだい?」




ネズミの問いかけに、シンデレラは偽りのない笑顔で言いました。




「掃除も洗濯も嫌いじゃないもの!追い出されないだけマシだしね。だってあなたと居られるもの。」

「だけど汚い服を着せられてるうえにご飯も満足にもらえれないじゃないか。」

「掃除にドレスは邪魔なだけ。ご飯は少ないけれど死にはしないわ。」




シンデレラはあまりに働き者で有能でした。

なので邪魔者扱いしていた継母たちもいつしかシンデレラを重要視するようになっていたのです。

召使として手元に置いておくために、逃げ出したりすることのないように最低限の暮らしはさせていました。




「名前を呼ばれなくなったのは哀しいけれど、灰だらけと言われるのは気にしてないわ。」

「どうして?」

「だってあなた、昔から自分のことを灰だらけだと言ってたから。なんだかお揃いみたいで嬉しくて。」

「そんなことが嬉しいの?」

「そうよ、だからあなたもシンデレラと呼んで。そしたらきっともっとこの名前が好きになれるわ。」




その話を聞いた動物たちはネズミも含めて娘のことをシンデレラと呼ぶようになりました。

継母たちから呼ばれても、彼女がめげることがないように。




シンデレラと呼ばれるようになった娘は本当に欲のない娘でした。

昔のように豪華な生活に戻りたいと願うことはありません。




「あ、でも以前のようにわけてあげられるご飯が少なくなってしまったわね。ごめんなさい。」

「今の暮らしでそんなこと気にしなくていいんだよ!?」




心配するのは他の人や動物のことばかり。

珍しく泣いてるのので話を聞けば、両親の形見を無くしてしまったとのこと。

探しものが得意なネズミはさらに体を灰だらけにして形見を見つけ出してやりました。

シンデレラはそれを見て泣き止み、灰だらけのネズミにひたすら感謝を述べて優しく抱き寄せました。

彼女が悲しそうな顔を見せたのは、その時ぐらいでした。
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