1 / 6
将来の夢
しおりを挟む
「みなさーん、将来の夢は書けましたかー?」
「「はーい!」」
幼稚園の先生の声に答えて、子供たちが元気よく返事をする。
「おれは世界を平和にする英雄になること!」
一人の男の子が声高く宣言する。
これは子供ならでは持ってもおかしくない夢だろう。
「世界征服・・・。」
対して、静かにそう呟いた子もいた。
まぁこれも、子供が思い描いてもおかしくない夢だ。
だけど互いの目標とする夢は正反対。
二人が敵対心を持って向かい合うのを見かねて近寄った。
「二人とも、おっきな夢だねー。すごいねー。」
「だって、おれ勇者だもん!」
「魔王になるからには勇者には負けられない。」
睨みっこしていた二人を誉めてあげれば、どちらも嬉しそうに笑う。
まだ幼い、かわいいかわいい子供。
普通の子供と大差ない。
だが、他と違うのは。
彼らの前世がたしかに勇者と魔王であることだった。
ある時、日本は異常なほど少子化に悩まされていた。
ところが日本の人々全員に何者かからテレパシーのようなメッセージが送られてから状況が変化する。
なんでも、子を欲する人の元へと異世界から子供を転生させて授けるという。
最初は半信半疑だったのだが、その日から少子化問題が解決するほど子供が現れるし前世の記憶があるしで信じるほかない事態になったわけだ。
それでその現象、通称【異世界のコウノトリ】から預けられた子を監視もかねて集めたの施設の一つがこの幼稚園で、私も保母さんとして働いている。
というか、勇者くんも魔王くんもうちの子なんだけどね…。
「僕も将来の夢は前世と同じ執事です。」
「大半の子がそうみたいだねぇ。」
前世が執事の子はまた大人顔負けながらの仕草で優雅に紅茶を注いでいる。
彼の一番の趣味で、隙あらばやっている。だが他の子が火傷しないように基本的にぬるめだ。
茶葉も上等という訳ではないのに、それでも美味しく思えるのは彼の技量ならではだろう。
前世ある子は本当にすごい。
「先生!ワタクシへの質問がまだですわ!」
「ごめんねー。今行くから。」
自分の番を待ちくたびれた女の子から声をかけられてしまった。
彼女の前世はプリンセスだ。だが幼いからか性格はどちらかというと、お転婆お嬢様に近い。
プリンセスが前世というのもあって両親から溺愛されており、着ている服は一段と豪華である。
「お姫様の夢何なのかな?」
機嫌を伺うように尋ねてみれば、彼女はフフンと得意げに夢を書いた紙を広げて見せた。
「庶民ですわ!」
・・・
「庶民?」
「もうお城で息の詰まるような日々を過ごすのはこりごりですの!礼儀作法にはうるさいし、お勉強は多いし、婚約者は勝手に決められてしまうし。生まれ変わったからにはワタクシ、今度こそ自由で平凡な庶民として生活するのですわ。」
はてさて、彼女の望む庶民というのが今の時代でいうとどんな人のことを言っているのかはわからないが、何にせよ。
それぞれ目指す夢は自由だ。
前世にしばられる必要なんてないのだから。
「とても楽しそうですね。」
「そうでしょう!?」
私は、この子たちの幸せを願うばかりである。
「じゃあ言葉遣いから頑張ってみようか!」
「えっそうですの!?」
だが飴に鞭は忘れずに。
「「はーい!」」
幼稚園の先生の声に答えて、子供たちが元気よく返事をする。
「おれは世界を平和にする英雄になること!」
一人の男の子が声高く宣言する。
これは子供ならでは持ってもおかしくない夢だろう。
「世界征服・・・。」
対して、静かにそう呟いた子もいた。
まぁこれも、子供が思い描いてもおかしくない夢だ。
だけど互いの目標とする夢は正反対。
二人が敵対心を持って向かい合うのを見かねて近寄った。
「二人とも、おっきな夢だねー。すごいねー。」
「だって、おれ勇者だもん!」
「魔王になるからには勇者には負けられない。」
睨みっこしていた二人を誉めてあげれば、どちらも嬉しそうに笑う。
まだ幼い、かわいいかわいい子供。
普通の子供と大差ない。
だが、他と違うのは。
彼らの前世がたしかに勇者と魔王であることだった。
ある時、日本は異常なほど少子化に悩まされていた。
ところが日本の人々全員に何者かからテレパシーのようなメッセージが送られてから状況が変化する。
なんでも、子を欲する人の元へと異世界から子供を転生させて授けるという。
最初は半信半疑だったのだが、その日から少子化問題が解決するほど子供が現れるし前世の記憶があるしで信じるほかない事態になったわけだ。
それでその現象、通称【異世界のコウノトリ】から預けられた子を監視もかねて集めたの施設の一つがこの幼稚園で、私も保母さんとして働いている。
というか、勇者くんも魔王くんもうちの子なんだけどね…。
「僕も将来の夢は前世と同じ執事です。」
「大半の子がそうみたいだねぇ。」
前世が執事の子はまた大人顔負けながらの仕草で優雅に紅茶を注いでいる。
彼の一番の趣味で、隙あらばやっている。だが他の子が火傷しないように基本的にぬるめだ。
茶葉も上等という訳ではないのに、それでも美味しく思えるのは彼の技量ならではだろう。
前世ある子は本当にすごい。
「先生!ワタクシへの質問がまだですわ!」
「ごめんねー。今行くから。」
自分の番を待ちくたびれた女の子から声をかけられてしまった。
彼女の前世はプリンセスだ。だが幼いからか性格はどちらかというと、お転婆お嬢様に近い。
プリンセスが前世というのもあって両親から溺愛されており、着ている服は一段と豪華である。
「お姫様の夢何なのかな?」
機嫌を伺うように尋ねてみれば、彼女はフフンと得意げに夢を書いた紙を広げて見せた。
「庶民ですわ!」
・・・
「庶民?」
「もうお城で息の詰まるような日々を過ごすのはこりごりですの!礼儀作法にはうるさいし、お勉強は多いし、婚約者は勝手に決められてしまうし。生まれ変わったからにはワタクシ、今度こそ自由で平凡な庶民として生活するのですわ。」
はてさて、彼女の望む庶民というのが今の時代でいうとどんな人のことを言っているのかはわからないが、何にせよ。
それぞれ目指す夢は自由だ。
前世にしばられる必要なんてないのだから。
「とても楽しそうですね。」
「そうでしょう!?」
私は、この子たちの幸せを願うばかりである。
「じゃあ言葉遣いから頑張ってみようか!」
「えっそうですの!?」
だが飴に鞭は忘れずに。
0
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する
タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。
社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。
孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。
そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。
追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる