のんきな兎は今日も外に出る【完】

おはぎ

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のんきな兎と初めまして



「楽しかったか?」

家に帰るために歩いているとロイがそう聞いてきた。

「楽しかったよ!子どもたちは可愛かったし、薬屋にも行けたし、あとね、美味しそうなお店あったの。」

「美味そうな店?」

「うん。えっとね、魔物の料理を出してるんだって。店員さんがね、すごく丁寧で優しかったよ。」

「魔物……。お前、そこ入ったのか?」

少し驚いたように見られ、僕はふるふると首を振る。

「ううん。あのね、お高いんだって。それと、お友達の紹介がいるんだって。だから、お友達たくさん作って、いつかロイを連れて行ってあげるね。」

「行きたいのか?」

「いつか行ってみたいの。」

「……行きたくねぇのか?」

「うん?いつか行くの!」

何を言っているんだこいつと言わんばかりの目で見下ろされたが、ロイの質問にちゃんと答えているはずの僕は首を傾げる。

「まぁいい。行きたかったら連れて行ってやるから言え。」

ロイがため息交じりにそう言って、

「分かった!」

と元気よく返事したら、

「分かってねぇだろお前。」

と呆れた口調で言われてしまった。どうしてだろう。行く時は、ちゃんとロイも連れて行ってあげるのに。そのために、お友達たくさん作って、紹介してもらわないと。あと、お金も貯めないといけない。僕は一人考えながらロイの横を歩いていたら、何故かまたしてもロイはため息をついたのだった。



―――



次の日、ロイはどうやらまた魔物討伐に行くことになったらしい。慌ただしく準備や荷物を纏める騎士たちのお手伝いをしながら、しばらくロイに会えないのかと兎耳を垂らしながらシュンとしていた僕。

「討伐したら戻ってくる。知らないやつに付いて行くなよ?」

ロイは、そんな僕に苦笑して頭を撫でてくれる。もっともっととグリグリ頭を擦り付け、ロイの胸に飛び込んでギューッとしがみ付く。そんな僕を抱き締めてくれたあと、ロイも僕の首や頭に顔を擦り付け、他の騎士たちと共に行ってしまった。

「うぅ、寂しい……。コリン、お留守番頑張ろうね……。」

同じお留守番の係になったコリンにそう言うと、

「いや、僕は寂しくはないけれど……。ウルル、大丈夫?すぐ帰ってくるよ。」

寂しくないらしいコリンに慰められてしまった。先輩の僕がめそめそしていられない……!と何とか気持ちを奮い立たせるも、一人で仕事しているとどうしても、ロイはいないんだと思い出してしまい兎耳が垂れていく。

「おーい、ウルル、そろそろ休憩……。おいおい、どれだけ寂しいんだよ。すぐ帰って来るって。」

一人でめそめそ仕事している僕を見て、騎士たちが苦笑しながら慰めてくれる。

「その状態で仕事はちゃんとするんだもんな、お前。」

「お仕事だからね……。ロイ、いつ帰って来るかなぁ?」

「いや、数時間前に行ったばっかりだろ……。」

そんなやりとりを何度も行っていると、騎士たちは僕が何か言うより先にまだ帰ってないと言うようになってしまった。コリンを見掛けて、声を掛けると、

「まだ帰ってないよ。ウルル、ずっと耳垂れ下がってるけど大丈夫?前も同じことあったんでしょ?」

不思議そうに聞かれ、垂れ下がる僕の兎耳を持ち上げて立たせようとしてくる。

「うぅ、前の時はまだ僕が好きなだけだったの……。今は家ではずっと引っ付いていられるのに、家に帰ってもロイいない……。」

結局めそめそする僕を、コリンは困ったように笑って慰めてくれる。

「何してんだお前ら。」

「ウルル、耳に力入ってねぇなぁ。」

他の騎士たちも集まってきて、僕たちを見ては苦笑してわしゃわしゃ撫でられる。

「うぅ~優しくしてよぉ~……。」

力の強い皆に撫でられると、頭がぐわんぐわんと回ってしまう。目が回っちゃう…と頭を手で守りながら後退する僕に、コリンが慌てたように支えようとしてくれる。

「コリンは良い子だね……。」

僕は感動して、背伸びしてコリンを撫でる。コリンも撫でやすいようにちょっと屈んでくれるから、ふふんと皆にドヤッとすると、

「何でドヤ顔してんだ?」

「さぁ。俺らからしたら可愛いのが戯れてるようにしか見えねぇのにな。」

「可愛いでしょ?僕の後輩だよ。」

「……始まった、ウルルの謎の後輩自慢。」

「はいはい、解散。ウルル、あっちで副隊長が呼んでたぞ。」

そう言ったかと思うと、僕の手をコリンから外して最後に僕の頭を一撫でしていく騎士たち。

「もう行っちゃうの?……ばいばい……うぅ……。」

皆行っちゃう……と寂しくなってそう言うと、皆が進めようとした足を止めて、振り返ってくる。そして、何とも言い難い顔をした後、

「……俺らをどうしたいんだ。」

「これ、本当に隊長いなくて大丈夫か?攫われるぞ、しまっとかないと……。」

そう言って、上着を脱いで被せられる。

「わっぷ、んん~。」

「……何をしているんですか、あなたたちは。」

しまいしまいされていると、呆れた声が聞こえてきた。僕が顔を出すと、副隊長のトレイル様が僕たちを見て溜め息をついた。

「副隊長、ウルルをしまうところです。」

「馬鹿なことを言ってないで、さっさと訓練に戻りなさい。ウルル君、こちらへ。」

トレイル様が騎士たちを軽々と引き離し、僕に被されていた上着をぺいっとその辺に払い退けた。コリンが焦って拾い、騎士に渡すと頭を撫でられている。

僕は、トレイル様と一緒だ~と騎士たちに手を振ると、とことこついて行く。次の仕事はトレイル様のお手伝いらしい。あのまま一人でお仕事していたらまた寂しくなるところだったから、嬉しい。トレイル様にそう言うと、そうですか、と淡々と返されたけど表情は柔らかい。その日は、そのままトレイル様と一緒に仕事をして終わった。

一人で帰宅する時、街の人たちに声を掛けられる。お買い物していると、もう暗くなるから帰れ、帰り道は分かるか?、そっちは暗いからこっちを通って帰れ、などなど、あれよあれよという間に家に着いた僕。

音のしない家は胸がキュっとなって、もそもそとパンとスープを食べるとすぐにロイのベッドに潜り込んだ。そして、ロイの匂いに包まれながら、眠りについたのだった。

それから数日。同じようにちゃんと仕事して、皆に慰められてはロイはまだ帰って来ないとシュンとして。ただ、その日。いつもと違ったのは、家に着いた時に、ドアの前に知らない人が立っていたこと。

「やぁ、君がウルル君?初めまして。まぁまずは、食事でもどうだい?」

僕がぽかんと見上げたその人は、見覚えのある虎耳を生やし、既視感がある顔立ちをしていたのだった。





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