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複雑な料理は美味しいもの
「なぁ、あれは何の店?おっ、見ろクラウド!」
「うるせぇ。分かったからはしゃぐな。」
何故だか一緒に来てくれたクラウドに、俺は街の色んな店を見てははしゃいで、その度に怒られていた。
「え、ここ?何かめっちゃオシャレじゃね?」
連れて来られた店は外観が煉瓦のようなブロックで積み重ねられた城のようなところで、たはーっと見上げて口を開けていると、呆れたように、
「さっさと来い。」
と顎で示してきた。俺は「はーい」と大人しくついて行く。店員らしき人が出て来て何を言わずとも案内される。中は静かで、物音一つしない。物々しい雰囲気に、思わずクラウドに寄る。決して怖い訳ではないが、得体の知れないものと対峙している気分だ。
「…何だ。」
「いや、なんかすごいところだなぁって…。」
寄って来た俺に対しては特に何も思わなかったらしいから、気にせずテリトリーに入れてもらう。だってここ、いかにも高級店だし。俺、庶民なんだよクラウドさんよ。
そして、そのまま個室へと案内された。もう住めるんじゃね?ってぐらい広くて、置かれている物も絶対高いやつだ。店員は、椅子を引くと俺らを座らせて、静かに去って行った。
「何ここ!?めっちゃ高そうだし、あの店員さん、めっちゃ静か!」
「うるせぇ。」
二人になった瞬間、俺は感じたままにクラウドにぶつける。
「ここってレストラン?高いの?俺あんまり金持って来てねーよ…。」
「お前に出させるほど困ってねーよ。…お前、一体何なんだ?」
…はぁ?
「何って、何?俺の種族のこと?公爵様から聞いてねぇの?」
首を傾げながらも、俺に聞きたいことがあったから付き合ってくれたのかと腑に落ちる。
「種族?聞いたのは、お前が魔法を無効化するということだけだ。」
「え、それだけ?本当に?…それだけの情報だけでよく俺のことあの家に住まわせてるな。」
そんなよく分からんやつと、一緒の屋根の下でよく暮らせてるなこいつ。思わず引いてしまった俺を見て、ため息をついたクラウド。
「仕方ねぇだろ。言われた時は魔力を抑えることでずっと気を張ってる状態だったからな。細かいことまで聞いてられなかった。」
「へぇ。やっぱり魔力を抑えるのってしんどいもんなのか?」
「出したい熱をずっと身体に押し込めてるようなもんだからな。」
会話が出来ていることに少し驚く。だっていっつも不機嫌そうだったし。
「クラウドっていつも不機嫌そうだったけど、ただ単にしんどかったのか。」
「…まぁ、頭痛に倦怠感に、ひどい時は吐き気も常にあったからな。最近は魔力が放出できているからか、前より頭がスッキリしている。」
「そうなのか~。全く分かんねぇ感覚。」
ケラケラと俺が笑うと、クラウドもふっと口元を緩めた。
「で、種族って何だ。」
「あぁ、俺、鬼族の血が入ってんだよ。その血が濃いみたいで、魔力は全くない。その代わり、魔力に関することは一切効かない。だから、魔力を原動力にする魔法は俺には一切効かないんだよ。」
そう簡単に説明する。
「鬼族…。聞いたことはあるが、そんな特性があるのか。お前は…。」
「なぁ、俺の名前、お前じゃないんだけど。」
「…リラだろ、知ってる。」
「お~良かった。知らねぇって言われると思った。」
「言わねぇよ。…最近は、本当に調子が良くなってきてんだ。定期的に魔法をぶっ放せてたからな。」
そう目を細めて言われ、分かりにくい感謝の伝え方だなぁと笑ってしまう。
「良かったじゃねーか。俺も来た甲斐あるぜ。」
「何ともないんだな?」
「だっから、毎回聞いてくるけど本当に何もないんだって。ただ風が吹いてくる感じ?それだけ。」
「…ならいいが。」
不機嫌そうではあったけど、俺に対して怒ってるって感じでもなかった。だから俺もそんなに気にしなかったんだけど。頭痛に倦怠感に吐き気、それらは何となく分かるが、何を隠そう、俺はそういう状態にもなった覚えがない。
「だから、バンバン魔法ぶつけてくれていいぜ。」
笑ってそう言うと、
「…そうか。正直、助かっている。いつ暴走するか気が気じゃなかったからな。」
クラウドはそう言って、ふっと笑った。
「魔力があるっていうのも大変なんだな~。」
魔力が多すぎるクラウドと、魔力が全くない俺。こうしてみると正反対だな。
「…とりあえず、飯にするか。」
そう言うと、いつ、どこから来たのか店員がいて、クラウドが何か言うとまたしても静かに下がり、次々に料理が運ばれてきた。
「すっげぇ。何これ、美味しそう!」
店員が去った後、目の前の美味しそうな料理に目が輝く。一体、何という料理なのか全く分からないが、すごく美味しそうだ。ナイフとフォークが置かれているが、正直ナイフを使うのは苦手だ。
「いいから、好きに食え。」
ナイフを見る俺の微妙な表情を見て、呆れたように笑ってそう言われる。
…なら、遠慮なく!
俺はフォークでよく分からない綺麗に盛り付けられている料理を片っ端から平らげていく。そんな俺のことを、クラウドは頬杖をつきながら見てくる。何?と食べながら首を傾げると、
「どこにそんなに入っていってんだ?チビなのに。」
「誰がチビだ!まだ成長期!」
とんでもなく失礼なことを言われる。確かにクラウドと比べたら頭一つ分は違うが、俺はまだ成長期なんだ!せっかく仲良くなれそうだと思ったのに!
「ほまえはほれよりほひふえははら…。」
「食ってから話せ。…っく、そんな頬張って食う奴があるか。」
何故かめっちゃ笑われる。まぁ、楽しそうだから許してやろう。俺は寛大だからな。ここはクラウドが払ってくれるらしいし…あ、つまりお礼に飯おごってやるぜみたいな感じか。本当に分かりにくいやつだな~。俺が察するタイプであることに感謝して欲しいくらいだぜ。
「全く、素直じゃねーな。有難くおごられてやるよ!」
「何いきなり上からきてんだ。」
「なぁ、これ何?美味しいけど何の味か分かんねぇ。」
「味分からねぇのに美味いのか?」
「これってアクセントってやつ?」
「…ただの飾りを食うな。」
何だかんだとそれからも色々言い合いながら食事を楽しんだ。なんてったって、すっごい美味しかった!俺はやっと行けた王都の美味しい飯屋に大変満足なのだった。
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