14 / 25
知らぬ間に自分で外堀を埋めている
ダークレイクが出現して間もないため、大型の魔物も恐らくまだ生まれていないだろうし、比較的危険ではないと判断した上での決定だった。強引に連れて行った自覚があるが、さっさと切り替えてあれは何だこれは何だと楽しそうにしているこいつに毒気を抜かれたもんだ。
ただ、じっとしてろと言っても全く言うことを聞かねぇわテントに押し込んでても抜け出すわで本当に手が掛かる。今回、リラを連れて行くことに関しては簡単には説明したが、騎士たちは俺とそういう関係のやつだと認識したらしく。まぁその方が色々と都合が良いためそのままにしておいたが、リラと話す度に視線がチラチラと向かってくるため鬱陶しい。リラは危機感というものがないため、極力傍にいるようにはしていたが、少し目を離すだけですぐにうろちょろとあちこち行ってしまう。だが、リラは分をわきまえているため出しゃばることはなく、できることはするができないことは任せるというように引くべきところも分かっている。そのため、邪魔になることもなくその中に溶け込んでいた。
すやすやと気持ち良さそうに眠っているリラの頬を伸ばすと、唸って顔を横に向けられる。そのリラの横に寝転がって、肘をついて見下ろしながら魔力を放出すると、さわさわとリラの髪が揺れ、表情が穏やかになった。それどころか、俺の方にコロンと体の向きを変えて魔力を全身で受けようとしてきたため思わず口角が上がる。
リラに魔力放出のために協力してもらうようになってから、無効化してもらう魔法をだんだん大きくしていったが、特に何も変わらないらしくいつもケロッとしていた。リラは恐らく、どれだけ大きい魔力や魔法をぶつけられても全て無効化するのだろう。それは俺で実験済みだったため、ダークレイクの魔石を取ることも心配はしていなかった。俺がぶつけた魔法より、魔石が纏う魔力は弱いことは知っていたため、難なく無効化できるだろうとは思っていた。
だが、リラが実際にダークレイクの魔石を取ってきてその実物を見た時は、分かってはいても驚いた。未だかつてダークレイクの魔石を手にしたことはなく、至近距離で見るのは初めてだった。
魔石の中は常に魔力が渦巻いており、まるで生きているようで目を見張った。纏う魔力は消失したが、いつまた魔力を放出し出すか分からないため、急いで戻ったのだ。いつもは魔法をぶつけて魔石が粉々になり消滅するため、そこで終わるのだが、消滅しなかった場合どうなるのか分からない。そのため、至急調べる必要があった。
親父たちが集まる部屋に行った時、何も説明していなかったことに気付いたが、後ですればいいだろうとそのまま入った。先に魔石を預けなければならなかったからな。でもそれで少し怯えさせたのは悪かったとは思っている。だが、あの時、俺だけを頼って縋って来るこいつの姿に優越感を抱いたのも事実。
「…どうするかな。」
眠るこいつを見降ろしながら、同じように眠気に誘われて目を閉じた。
――――
「…あれ、クラウド?」
明け方ぐらいに目を覚まして、いつもの俺のベッドじゃないことに気付いて飛び起きたが、横にクラウドがいたためきょとんとする。
…あ、そういえば昨日はそのままクラウドの部屋で説明受けてたんだった。
思い出して、あのまま寝てしまったのだと気付いた。ならば問題ないなと、まだ夜も完全に明けていないしと二度寝を決め込もうと布団に潜りこむ。クラウドからは無意識なのか僅かに温かい風が漂ってくるため、暖を求めて擦り寄った。
…あったか~。
ほくほくとまた眠りにつこうとした時。
「あだっ!」
「…何また寝ようとしてんだ。」
眠たそうな顔で、目を開けたクラウドに額を弾かれた。
「う~…。おはよぉ…。」
顔を上げて、とりあえず朝の挨拶。
「…この状況でのんきだな、お前。」
呆れたようにため息をついて、クラウドは起き上がった。
「何て?おはようは?おーい。」
「…あぁ、おはよう。」
ウザ絡みするもすぐに終わらせられる。起き上がる気のない俺を訝し気に見下ろしてくると、
「…おい、起きたんなら自分の部屋に戻れ。」
と言い放ってきた。
「えー…俺まだ眠い…。」
そう返すも、クラウドはもぞもぞと布団の中へと潜っていく俺の腕を掴んだかと思うと、ずるずるとまた外へと出されてしまった。
「お前、今日は仕事だって言ってただろ。おら、戻って寝ろ。」
担がれたまま部屋を出ると、
「あら。」
「あら。」
いつものメイドたちと廊下でばったり会ってしまった。そして、俺達を見ると、手を口に当ててそう言って目を見開いた。
「…何もねぇぞ。」
「えぇ、えぇ、分かっておりますとも。何もかも分かっておりますとも。」
「えぇ、えぇ、ただ朝帰りしただけだと、分かっておりますとも。」
何かを含んだような言い方の二人に、クラウドが溜め息をついたのが分かった。俺はそんな3人の様子に首を傾げるが、クラウドは足を進めて俺の部屋へと入り、俺を下ろすと「余計なことは言うなよ。」と言って出て行った。
…何だ?
俺はそう思いながらも、まだ朝早いためベッドへと潜って二度寝を決め込んだのだった。
―――
「おっ、リラ、ここで働いてたのか。」
「おっす、久しぶり。」
いつものように食堂で働いていると、知っている顔が店に来た。
「お~!久しぶり!今日は休みなのか?」
ダークレイク討伐の時に共にした騎士が2人、飯を食いに来た。
「何だ何だ、知り合いか?お、お前らも騎士様じゃねぇの。」
以前、クラウドが来た時もいた常連のおっちゃんがそう言ってきたため、
「おう!寝食を共にした仲だ!」
そう答えたが、
「ちょ、やめろ!違うだろ!」
「隊長に聞かれたらどうすんだ!」
騎士二人から猛反発をくらった。
「何だよ、クラウドだって知ってるじゃねぇか。」
何をそんなに慌てて否定しているのか。
「おぉ?何だ何だ、お前らリラ坊のこと狙ってんのか?隊長さんが黙ってねぇぞ~?」
ニヤニヤしながら言うおっちゃんに、騎士二人は顔を青くした。
「止めてくれ!ただ同じ場で飯食って寝たってだけだろ!」
「そうだ!リラは隊長と寝たろ!」
「そうだけど…。どうしたんだお前ら。」
勢いよく否定してくる二人に若干引き気味の俺。
「え、寝た…?」
「今、寝たって言ったか?」
何故かざわざわと店の中がうるさくなり、俺は顔を顰めた。
「何だよ、別におかしくねぇだろ。昨日もクラウドと寝たし。起きたら夜明けでさぁ、二度寝したんだよな。そのせいで遅刻しそうになったぜ。」
あははと笑うと、店内がシーンと静寂に包まれた。
「…ど、どこで寝たんだ?」
その中で、恐る恐る聞かれたため、
「え、クラウドの部屋だけど。」
と答えると、またしても沈黙が下りた。
「何だよ、変なこと言ったか?」
「おーい、リラ。飯できたから運んでくれ。」
キッチンから親父さんの声がして、はーいと返事して取りに行く。
「はいよ、お待ち。」
「あ、あぁ、ありがとう…。」
「…?どうしたんだよ、元気ねぇじゃねーか。何かあったのか?」
いつも楽しそうに話し掛けてくれるのに、今日は沈んだ様子の客に心配になる。
「い、いや、何でもないんだ、うん…。はは、大丈夫…。」
俺には言う気にはならないのか、視線が合わず、大丈夫だと言われる。踏み込み過ぎるのもよくねぇかと、何かあったら言えよ、とだけ伝えて戻った。
「…リラ、お前なかなか残酷なことするなぁ。」
「おう、リラ坊はいつもだぞ。はっは、あいつも沈んでるぞ。いやぁ、隊長さんなら俺らも安心だぜ。」
口々に色々言っているが、どれもはっきり言われないため何の話をしているのか分からない。でも、教えてもくれないため、まぁいいかと俺は俺の仕事をするのだった。
あなたにおすすめの小説
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
ひとりぼっちの嫌われ獣人のもとに現れたのは運命の番でした
angel
BL
目に留めていただき有難うございます!
姿を見るだけで失禁するほどに恐ろしい真っ黒な獣人。
人々に嫌われ恐れられ山奥にただ一人住んでいた獣人のもとに突然現れた真っ白な小さな獣人の子供。
最初は警戒しながらも、次第に寄り添いあい幸せに暮らはじめた。
後悔しかなかった人生に次々と幸せをもたらしてくれる小さな獣人との平和な暮らしが、様々な事件に巻き込まれていき……。
最後はハッピーエンドです!
転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています
柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。
酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。
性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。
そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。
離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。
姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。
冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟
今度こそ、本当の恋をしよう。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
病み墜ちした騎士を救う方法
無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。
死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。
死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。
どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……?
※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です
僕に双子の義兄が出来まして
サク
BL
この度、この僕に双子の義兄が出来ました。もう、嬉し過ぎて自慢しちゃうよ。でも、自慢しちゃうと、僕の日常が壊れてしまう気がするほど、その二人は人気者なんだよ。だから黙って置くのが、吉と見た。
そんなある日、僕は二人の秘密を知ってしまった。ん?知っているのを知られてしまった?が正しいかも。
ごめんよ。あの時、僕は焦っていたんだ。でもね。僕の秘密もね、共有して、だんだん仲良くなったんだよ。
…仲良くなったと、そう信じている。それから、僕の日常は楽しく、幸せな日々へと変わったんだ。そんな僕の話だよ。
え?内容紹介が内容紹介になってないって?気にしない、気にしない。
α様に囲われて独立が出来ません!
翠 月華
BL
男女という性別に加え第二の性別アルファ、ベータ、オメガというモノがある世界。
そんな世界には愚かな過去がある。一昔前、オメガは疎まれ蔑まられていた。そんなオメガ達だがある日を境に数が減少した。その哀しき理由に気づかず、オメガを酷似した結果オメガは宇宙の人口の一割以下まで減った。そして、人々は焦りオメガを保護という名で囲っていった。
そんな世の中に一人の平凡で平穏な暮らしを望むベータ、那央がいた。
しかし、那央はベータではなく、オメガだった。
那央の運命はいかに…
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。