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捜索日和
「これが俺の代わり?」
「らしいぞ。実際、魔法をぶつけてみたら無効化したらしい。」
…へぇ~。すごい。
しげしげと見ているのは、小さい水晶玉。ケール様が、俺の身体の一部を使って作ったものらしい。
「これあったら俺用済みじゃん。」
俺の切れ端だけで、よくこんなすごいものを作ったなぁと感心していると、
「ツノウサギの吐く火を無効化する程度だけどな。全然実用的じゃねぇし、弱い魔力しか無効化できねぇらしい。」
いわく、子どもでも防げるような魔力量しか無効化できないとのこと。慎重にそれ以上の魔法を当ててみるとヒビが入ってしまったらしく。
「ダークレイクの纏う魔力量は分からねぇが、まぁ一時的には対応できるだろうってさ。」
「…なぁ、そもそもさ、ダークレイクって発現の理由も謎なんだよな?」
「あぁ、いつも不定期で現れる。大体、数か月か数年毎かだな。」
「魔石って一体何なんだ?」
「…分からねぇな。そもそも、魔物の発生自体よく分かっていないことは多い。」
聞いてみると、魔物がどうやって生まれるのかは未だ分かっていないのだとか。卵から生まれるのか、はたまた胎内で生まれるのか、分裂するのか。一切分かっていないという。いつの間にか存在し、魔力を持つものを魔物、その魔物が死ねば魔力を含んだ魔石が出て来る、という認識らしい。
「それを調べる人っていなかったのか?」
「今も調べてるやつはいる。狩った魔物を調べても、魔力を失えば動物と同じでどういう原理で魔法を発動しているのかも分かってない。実地での調査ってなると、大掛かりな実験道具だって持って行けねぇし研究自体が進まねぇんだと。」
…魔物って結構謎の存在だったんだな。
魔物の謎はさておいて、植物や湖も魔力を含んでいることがあるという。ただ、とても微量のため、魔石が取れたことはないとのこと。
「そのダークレイクってさ、魔物の魔石だっていう可能性はねぇの?」
「どういうことだ?」
「だから、あの魔石は他の魔物のもので、その魔物自体がまだ生きてるから魔石も生きている状態にあるっていうか…。」
うまく説明できないが、あれの所有者がいるからまだ魔石が動いているのだとしたら、辻褄が合うんじゃないだろうか。今まで、魔石が復活したのは、その主が生きていたから。一時的に魔石を失って魔力を失うだけで、生きながらまた魔石を生み出して、体外に放出していたのだとしたら。また、魔石を出しても魔力を失わない特質がある魔物だったら。まとまらないまま、クラウドにそう話すと、顎に指を当てて考える顔になった。
「俺達は、生まれた時から魔物もダークレイクもそういうもんだとして認識しちまってるからな。」
「でも、何の魔物かっていうのも分からねぇから、結局、それを探すってのも難しいよな。」
「まぁ、現状は魔力を外に放出してくれるおかげで魔力検知に引っかかって最小限の被害で対応できてるから、上も動かねぇんだろうよ。」
肘をついてため息を吐くクラウド。つまり、現状は魔物について分かっていることが少なく、そのためダークレイクの研究も進んでいないっていうこと。
「不思議だな。ケール様も優秀なんだろ?他にも偉い人だっていっぱいいるのに、研究が進んでないって。魔物って思ってたより謎に包まれてんだな。」
感心しながら、机に置いている菓子を摘まむ。もはや、お決まりになったクラウドの部屋で寛いでいると、使用人が持って来てくれたのだ。これ、リュグナー家お抱えのパティシエが作っているらしくてすごく美味しいんだよな。さっきから、クラウドと話しながらずっとモグモグ食べている。
「…お前、良く食うな。」
クラウドが俺をまじまじと見ながらそう言ってくる。
「美味しいじゃん。食わねぇの?」
「…俺はいい。」
「何でだよ。こんなに美味しいのに。ほら、あーん。」
ズイッとクラウドの口に菓子を近付けると、眉間に皺を寄せてフイっと顔を逸らされる。こんにゃろ、せっかく作ってくれてんだぞ!
逸らされた顔を追いかけて、再度、菓子を口に押し付けると、渋々ながらも口を開けたクラウド。俺はにんまりしてそこに菓子を放り込む。
「美味いだろ?」
「美味いのは知ってる。が、俺には甘すぎるんだよ。これ、お前のために作ったやつだぞ。」
…何だって?
「俺のためって何?」
「菓子は食わねぇんだよ、俺は。だから、これはお前にって作ったんだろうよ。」
なんと。俺のためだけに作ってくれてたのか、この菓子。それならばありがたく俺がいただくとしよう。
「…当たり前のように俺の部屋にお前がいることを知られてるってことだぞ、それ。」
クラウドが、菓子をもりもり食べる俺を見て呆れたように言っていたが、俺は美味しさを堪能することで頭がいっぱいで耳には入らないのだった。
―――
「どうしてこうなったんだ…。」
「ダークレイクの魔石が生きていることが分かったからな。魔物を探してこいってことだろ。」
あれから、再びダークレイクの魔石が魔力を纏い始めたため、魔石自体がまだ生きていることが分かった。もう一度俺の身体の一部を採取したいと言われて魔術師団本部に出向いていた時に、丁度それが起こり、またしても俺が触れて魔力を消失させたのだ。その時に、
「やはり、他に本体がいるとの考えが妥当ですかねぇ。」
ケール様に言われたのだ。ケール様たちも、魔石が生きているのであれば、その本体がまだ生きているとの考えはとっくにあったらしく。魔物は動物が魔力を持つことでそうなるものと、生まれた時から魔力を持ち魔物となるものがいるとの意見があるらしい。明らかに魔物であろうものが、動物に交わって集団行動をしている様子も目撃されているとのこと。つまり、ウサギの集団の中に角ウサギが混じっているような感じらしい。だから、動物から魔物になるという意見もあるのだとか。ただ、確実な判断材料がないため、公には言っていないとのこと。
「しかし、魔力が溜まり過ぎて放出したのがこのダークレイクと呼ばれるものであるなら、相当な魔力量の持ち主でしょうねぇ。」
ケール様はそう言いつつ、上層部に掛け合い捜査の必要性を示したのだった。
「いや、だからって何で俺も?関係ないじゃん。」
「お前を連れて行くように言ったのはケール魔術師団長だ。つまり、面白がってんだよあのじいさん。」
…俺マジで巻き込まれただけなのこれ!?
何なんだと憤慨している中で、
「…まぁ何か考えがあるんだろうがな。」
疲れたようにクラウドが呟いていた。
今、俺達がいるのは街の外で、森の中へと入っていた。ここの奥に大型の魔物がいるとの目撃情報があったのだ。戦えない俺を律儀に連れて行くことはねぇだろうとクラウドにグチグチ言っていると、どこからかそよそよと風が吹いていることに気付いて口を噤んだ。
「分かったのか?」
「何度も魔力を当てられてたら覚えるって。これ、どっかから魔力流れて来てるよな?」
そう言った俺に、
「あぁ、恐らくこの向こうに魔物がいるぜ。」
足音を立てずにそっと近付くと、全長20mはあるだろう、鱗を纏わせた巨大なトカゲのようなものが目を閉じていた。
「…巨大トカゲ?」
「チッ、ソールリザードじゃねぇか。」
クラウドは舌打ちをすると、興味を失ったように踵を返そうとする。
「ちょちょ、ちょっと待て。あれはいいのか?討伐しなくて。」
「あぁ?あれは草木しか食べねぇし、人も襲わねぇんだよ。あれの魔石は確認されているし、そもそも魔力も少ねぇ魔物だ。討伐する理由がねぇ。」
当てが外れたとばかりにそう言うクラウドに、へぇ~と俺は納得する。魔物だからって、何でも討伐している訳じゃねぇんだな。そう言うと、
「当たり前だろーが。そもそも、街の外はやつらの縄張りだ。王都に入ってきたり、あまりにも危険なやつらは討伐対象になるが、それ以外は基本的に討伐することは禁止されてんだよ。」
そう呆れたように返された。
「はぁ~、なるほどな~。ちゃんと考えてんだな。で、あれが目撃情報のやつなのか?」
「違うだろうな。目撃情報とは姿形が違う。」
それから、捜索を続けるも特に目ぼしい魔物は見つからず。各自散らばって探していた騎士たちも合流し、一度王都へと帰還したのだった。
「何でだよ!」
昨日も連れ出されたんだけど!?何で今日も!?起きてすぐに着替えさせられて連れ出された俺。
今日も今日とて捜索日和、なんて言う訳ねぇだろーが!と怒りながらクラウドに食って掛かっていると、
「言い忘れてけどな、これから1か月俺らと魔物捜索だお前は。」
あぁ、お前が働いている食堂にはもう伝えてあるぞ。と、言い切られ、俺の魔物捜索の日々が始まるのだった。
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