無効の契約は継続中

おはぎ

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捜索開始と俺の謎




「何がそんなに気に入らねぇんだお前は。」

「俺の意思全無視してるとこですけど!?まず、連絡、相談、了承を得るのが当たり前だろーが!」

俺、絶対間違ってないと思うんだけど!そもそも、前もって言っておいてくれたら、俺だってちゃんと準備して、快く付いて行ったってもんだ。それなのに、後々からこうでしたと聞かされて強制的にさせられるこの感じ。腹が立つ!

「あー、それは悪かった。王命でもあったし、俺もいるからいいかと思った。」

…何だって!?じゃあ尚更説明しとけよ!

それからも、ガミガミとクラウドに物申していると、他の騎士たちに止められる。

「リラ殿、どうかそれぐらいで…。」

「そうです、隊長も悪気があった訳じゃ…。」

「どんな反応すんのか楽しみにしてたが、うるせぇだけだな。」

…おい!絶対悪気あっただろこいつ!

他の騎士たちが庇ってくれているのに、それを台無しにするクラウド。俺はそんな騎士の言葉も虚しくクラウドに食ってかかる。

「…隊長、あれ面白がってるよなぁ。」

「リラもよく隊長に向かってあんな態度取れるよな、俺は怖くて無理。」

「何を見せられてんだ俺ら…。」

苦笑して俺らを見る騎士たち。しばらくクラウドに攻撃して満足した俺は、大人として、仕方がないから許してやった。俺の寛大な心に感謝して欲しいもんだ。

「あ、そういやリラ、昼飯持って来たか?」

騎士にそう聞かれ、持って来てるわけないだろと答える。起こされて強制的に連れて来られたんだぞ俺は。ムスッとしながら言うと、

「あ~そうだよな。捜索ってなったら、基本的に各自用意された昼食を持参してくんだよ。」

「あぁ、俺の昼飯がないってことか?いいよ、そんなの。クラウドの貰うし。」

クラウドが悪いんだから、クラウドが俺に施すべきだろそこは。俺だって言っといてくれてたら自分の昼食ぐらい用意してたっつーの。

「お、おぉ…。いや、俺らの中で余分に持って来てるやつもいるから、集めるけど…。」

「駄目だろそれは。クラウドが俺の責任者なんだから、クラウドが責任取るべきだ!」

「おい、リラ。そこ巣穴あるぞ。」

「ばぉっ!危ねぇ!早く言ってくれよ!」

穴に足を取られそうになって、慌てて飛び越える。そして、クラウドの傍に行くと、

「ばぉって…。お前…っ。」

笑いを嚙み殺している様子に、笑いすぎだろとドスッと横腹を殴る。

そうこうしている中でも、魔物を探しに奥の方へと向かって、川の方へと進んで行く。進んで行く中で、他の騎士たちとは分かれて捜索するらしく、またしてもクラウドと二人になった。

「あ、川だ。あれ、何か動かなかったか?なぁ、クラウド。」

「うるせぇ、分かってる。…何かいるな。」

大きな岩のあたりで、何かが動いている様子があり、警戒する。クラウドは俺の腕を引っ張って自分の後ろへと下がらせた。

「…水竜か。」

クラウドがそう言った途端に、ドンッと地響きがして身体が揺れ、クラウドの背中にしがみ付いた。揺れが収まり、クラウドの服を掴んだまま、隠れながらそろっと見てみると、長い胴体に白い体躯。巨大な蛇を思わせるようだが、鬣と足、顔付でどこか神聖なものを思わせる雰囲気がある魔物が、こちらを見据えていた。クラウドは、剣を抜くことなく水竜を見据える。

「…大丈夫なのか?」

小声で聞くと、

「あれはここの主で、足を踏み入れたのは俺ら。向かってくるなら仕方ねえが、争いたくはねぇな。」

警戒は解かないままだが、クラウドは一歩も動かず。それをじっと見ていた水竜は、ふわっと身体を浮かせると、傍までスーッと音もなく近付いてきた。

…目が、合ってる?

俺は、近付いてくる水竜と目が合っている気がして、ドキッとする。クラウドが、視線だけで俺を見下ろしたのが分かる。そして、クラウドの前で止まった水竜。

…いや、明らかに目が合ってんだけど!?

クラウドにしがみ付いたまま、逸らせない目にビビる俺。すると、その水竜は少し首を傾げるような仕草をして、

――キュルル

と声を掛けるように鳴いた。

「えっ。いや、知らねぇけど…。」

俺が返答すると、その水竜は興味をなくしたのか振り向くと他のことには目もくれず、川の上流へと昇って行ってしまった。

「…はーっ、何だったんだよ、びっくりした~。」

俺はホッとしてクラウドから手を離すと、ガシッと腕を掴まれる。

「何だよ、びっくりする…。」

「お前、さっき返事してたよな?」

クラウドが怖い顔をして聞いてくる。俺はそんなクラウドに、

「え、聞いてただろ?」

何を言っているんだと驚いて聞き返した。

「…俺が聞こえたのは、水竜の鳴き声だけだ。」

…何だって?

「いやいや、何言ってるんだよ。あんなにはっきり…。」

冗談だよな?と聞き返すも真剣な顔を崩さないクラウドに、息を飲む。

…本当に、俺にしか聞こえなかったのか?

俺はその事実に呆然とする。

「…何て言ってたんだ。」

静かに聞かれ、

「えっと、鬼族は俺だけかって…。」

聞かれたことを答えると考えるような顔をした後、

「お前は本当に…。」

呆れたように額で手を覆いながら言われ、これは俺が悪いのか?と疑問を持つが、そんなこと言い出せる雰囲気ではなく。我慢する俺。

「俺だってびっくりしたんだからな。」

「あれは長く生きる土地に住まう竜だ。魔物でもあるが、知能があると言われている。会ったのは初めてか?」

そう聞かれて頷く。

「あんな綺麗な魔物会ったことねぇよ。そもそも魔物自体、俺にとっては珍しいんだから。」

思い返してみても、あんな竜に会ったことなんてない。そもそも、魔物ともほとんど遭遇したことがないのだ。よく見かける動物とはちょっと違うなぁって感じでしか魔物なんて認識していなかったし、それも片手で数える程度だ。それにしても、どうして鬼族のこと知っていたんだろう。

「…魔力の流れが分かるのかもな、あの水竜。」

クラウドが呟いた言葉に、

「あぁ、俺に魔力がないから鬼族だって分かったってこと?でも、だから何なんだ?鬼族って魔物と何か関係あるのか…?」

考えれば考えるほど、よく分からなくなっていく。うーんと考え込む俺に、

「今考えても仕方ねぇな。昼にするか。」

丁度川があるしな、といって、傍にある大きい岩に腰を下ろし、水筒を放り投げてきた。それを飲んで、クラウドの昼食を貰う。というか、俺の分もちゃんと持って来てくれていたらしい。何だよ、早く言えよ。パンに焼いた肉が挟まったサンドイッチだ。美味くて笑顔になる俺。この美味さで全てを許してやろう、感謝したまえ。


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