無効の契約は継続中

おはぎ

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俺のことは最後まで見て下さい




それから、川辺りを捜索するが魔物自体もなかなか出ず。さっきのことはそれ以上クラウドは何も言わず、俺も訳が分からなかったため口にすることはなく。俺は躓いたり、茂みからいきなり出て来た小動物にビビっては転びそうになっていたため、クラウドの服を掴んで歩いている。不服だが、その度にクラウドに支えてもらっているため苦肉の策だ。

「…日が暮れるな。ここまでにするか。」

「帰るのか?…なぁ、全く魔物出てこねぇけどさ、もういなんじゃねぇの?」

さっきから、森の中を歩いているが出て来るのは小動物ばかりで、魔物はほとんど見掛けない。

「あぁ、多分さっきの水竜のせいだな。恐らく、あれにビビって他の魔物が出て来ねぇんだろう。今日はこれ以上探しても無駄だな。」

溜め息をついたクラウドは、何か言いたげに俺を見るが、俺はそっと視線を逸らす。何か言われても、納得させる返答を持ち合わせてないんだから俺も。そして、騎士たちと合流すると王都へと戻った俺達。

「じゃ、俺はこの辺で…。」

「お前は俺と来るんだよ。」

着いて早々、俺はもう用無しだよなとずらかろうとしたら、クラウドに首根っこ掴まれる。そして、何だ何だと不思議そうな顔をした騎士たちを置いて、強制的に王宮内へと連れて行かれるのだった。

「何だ、クラウド。戻って来て早々に。」

「団長、ご報告があります。ケール魔術師団長も一緒に聞いて頂きたい。」

騎士団の団長部屋へと足を進めていたらしいクラウドは、ノックして返事があるなりすぐに俺を伴って中に入りそう言った。

「…分かった、ちょっと待ってろ。」

クラウドの様子に片眉を上げた騎士団長その人は、俺をチラッと見るとすぐさま近くの騎士を呼んで言付けると、着いて来いと部屋を出て、別の部屋へと案内される。そこに座るよう促され、クラウドの横に俺も座ると、机を挟んで騎士団長も腰を下ろした。

…俺をじっと見てくるんだけど。すごく居たたまれないんだけど。

俺はクラウドにぴったり張り付いて下を向き、見えない位置でクラウドの服を掴んだ。その時、部屋にケール魔術師団長が入って来て、顔を上げた俺と目が合うとにこやかに笑ってくれた。関わったことのある人が登場したことで俺は少しホッとする。人払いされ、部屋には俺達4人のみとなった。

「で、どうしたのかな。私たちが呼ばれた理由を聞かせてもらってもいいかね。」

ケール魔術師団長は、一人掛けの椅子に腰を下ろしてそう聞いてきた。

「今日の捜索で水竜と遭遇した。」

クラウドがそう話し始め、その水竜が俺を見て鳴き声を上げたこと、それに対し俺が理解して返答したこと、説明していくと騎士団長は眉根を寄せ、ケール様は面白そうに口元を緩めた。

「不思議ですねぇ。魔力を持たないからなのか、鬼族の血が濃いからなのか…。鬼族についての資料があればいいんですがねぇ。」

「分からねぇなぁ。魔物と話せるなんざ聞いたことねぇぞ。…誰にも見られてねぇんだな?」

「あの場にいたのは俺らだけだ。」

「ならいい。それにしても、これはどうしたもんか…。俺らだけじゃ判断つかねぇぞ。今の時点でも箝口令が敷かれるだろうよ。リラ、お前もともと話せたのか?」

騎士団長にそう聞かれ、圧を感じて口を開けないでいると、

「今までほとんど魔物と遭遇したこともなかったんだぞ。そもそも、こいつは自分の特性のことですら良く分かってねぇ。」

クラウドが代わりに答えた。

「リラ君が生まれたのは田舎の方だと言っていましたね。人が少ない土地では魔物が出ることはあまりないことが分かっています。逆に、王都などの人が多い所の付近で魔物が出やすい。様々な仮説がありますがね。リラ君も恐らく、魔物と会う機会はほとんどなかったのでは?ましてや、水竜は土地に住み付きます。ここからリラ君の住んでいた所とは離れていますし、そもそも…。」

「待て待て、ちょっと落ち着け。あー、別に取って喰おうってんじゃねぇんだからよ、そんな警戒すんなよ。」

話が止まらないケール様にぽかんとしていると、それを呆れたように止めた騎士団長は、俺を見ると苦笑し言った。

「い、いえ、すみません…。」

そう言いながら俺は目を泳がせる。警戒はしていないが、様々な逸話を持つ騎士団長様であることは俺でも知っており、緊張するなという方が無理である。何より前に座っているからか、圧がすごいのだ。存在感?何て言ったらいいのか、やってもいない罪を白状しそうな…。でも味方だったら百人力だってほどの頼もしさ…。

「魔物と意思疎通できるやつは初めて見たし、そんなやつ聞いたことねぇ。でもダークレイク討伐の時に出て来た魔物には反応してなかったよな?」

クラウドに聞かれ、俺は頷いた。あの時も魔物と遭遇したが、鳴き声は聞こえても言葉は分からなかった。だから今回のことは正真正銘初めての出来事だ。俺の特性どうなってんの?鬼族の血が関係しているのか、魔力がないことが関係しているのか…。でも鬼族のことを聞かれたってことは、それなんだろうなぁ。でも正直、鬼族のことなんて分からないし、母に聞いたところでも同じような気がする。だって結局、家族の中で鬼族の血が強いのは俺だけだし…。

「水竜は、知能がある魔物だと言われているが、それが関係しているのか?でも会ったことはなかった…。鬼族そのものが、魔物と関わりがあったと考えるのが妥当だろうな。」

「えぇ、聞かれた内容からそれは間違いないでしょうね。魔力を持たず魔法が効かない鬼族と、魔力を持ち魔法を操る魔物。水竜のその反応からして、敵対関係にあったとは考えにくいですね。もしそうであればすぐに攻撃してきたでしょうし。あぁ、リラ君が鬼族だとすぐに分かったのであれば、水竜は魔力の流れが分かるのかもしれませんね。もしくは、リラ君に似ている鬼族と会ったことがあるのか。それにしても鬼族とは面白いですねぇ。」

ケール様の言葉が止まらず、仮定ながらも出て来る考察に俺も成程と勉強になる。やっぱり頭の良い人は違うな。こんな少しの情報だけでここまで考えを広げることができるのか…。俺いる意味ある?俺だけ帰してくれても良くなかったか?結果を俺に教えてくれたらよくないか?おい、クラウド、どこに行く。俺を置いて行くんじゃねぇ…!

何故か突然立ち上がろうとするクラウドの腕にしがみ付き、どこに行くんだと目で訴えると、

「…厠だよ。」

呆れたように言われるが、それでもこんなところに一人残るのは嫌だ!

「俺も行く!」

「すぐに戻って来るから待ってろ。」

「俺も行く!」

「…すぐ戻って来るっつってんだろ。」

「俺ももよおしたから行く!」

何が何でもついて行く所存です。お前は俺の責任者です。お分かり?帰宅まで俺の面倒見ろ!

「っく、連れて行ってやれよ、心細いんだろお前がいなかったら。」

騎士団長様に笑われるも、何も恥ずかしくない。ここで一人残されるぐらいなら恥など捨てるわ。

「リラ君、私がいても駄目なのかい?あれまぁ、困った子だねぇ。そんなにクラウドがいいの?まだまだ若造だよ?」

ケール様が揶揄うように言ってくるが、困った子上等です。俺はあなたもまだちょっと怖いです。優しいが得体の知れない感じが特に。

「…分かった、来い。」

腕を離さない俺に、諦めたように言ったクラウドは俺を引っ付けたまま扉を出た。王宮内ですら、俺には未知の世界だし、誰かにぶつかって不敬罪で牢屋に入れられたら嫌だし、庶民が何故ここにいるって通報されても嫌だし、俺はクラウドに引っ付いたまま移動し、再びあの部屋へと戻った。

「…いつまで笑ってんだよ。」

「っく、いや、ふっ、仲良いなぁと思ってな。」

騎士団長様は何かツボに入ってしまったらしく、俺らを見てずっと肩を震わせている。

「はぁ、とりあえず、そういうことだから。捜索にリラを連れて行くなら、これがバレる可能性がある。」

「そうですねぇ。どうしましょうか。リラ君。一度、故郷に戻りましょうか。」

にこやかに言われ、俺はきょとんとする。え、帰るの俺?いや、全然いいんだけど、俺がここにいるのは契約のためで、一応公爵様が主な訳で、勝手に決められねぇんだけど…。困惑してクラウドを見上げると、顔を顰めながらケール様を見ている。

「…俺も実験対象か?」

「よく分かっているじゃないか。褒めてあげよう。少し離れるぐらいでは効果がなさそうなんですよねぇ。リラ君ではなく、君が必要なんだろう?傍にいるのは居心地がいいはずだ、魔力も随分と落ち着いている。ダークレイクの魔石は様子見でいきましょう。魔力を纏うだけであれば、あのケース内でも対応できますしね。」

…何だかどんどんと話が進んで行くんだけど、俺どうしたらいいのこれ。

「あぁ、公爵には私から言っておきましょう。契約は継続のままで、また戻って来て貰わないといけません。リラ君、よろしくお願いしますね。あと、また君の身体の一部を採取させて下さい。」

「まぁこれに関してはそっちが専門だからな。任せる。クラウド、寂しいだろうが我慢しろよ?」

ニヤニヤしながら言う騎士団長様に、クラウドは舌打ちを返したが、それすらも可笑しいらしく笑っている。クラウドの失礼な態度は気にならないらしい。どういう関係なのあなたがたは。でも聞いてしまうと怖いため聞かない。まぁ、クラウド自身が公爵家の三男なわけだから…。うん、繋がり云々は聞かないでおこう。

「リラ、帰るぞ。」

そう言われて、話は終わったらしくクラウドに付いて部屋を出る。結局、俺は帰ることになったのか?食堂にはなんて言ったらいいだろう。一時的に戻るんだよな?戻って来た時もまた公爵様の家にお世話になる感じなのか?

「なぁ、クラウド。俺、どうしたらいいの?」

少し寂しい気もする。なんだかんだでここで過ごしてきたから、帰るってなったらやっぱりちょっとセンチメンタルになるよな。

「…親父には魔術師団長から話がいく。それからだな。」

じっと俺を見るクラウドに首を傾げるが、特に何も言われず。そして、そのまま公爵家へと戻ったのだった。



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