無効の契約は継続中

おはぎ

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不思議な能力




「リラ君がここを離れてから、クラウドの魔力はすぐにまた増えてね。最近は魔力放出しなくても不調が生じなかったにも関わらず、だ。つまり、リラ君が傍にいるだけでクラウドの魔力を抑えていた、というより溢れるであろう魔力を無効化していたと考えるのが妥当だ。」

ケール様が叩き合っている俺達を見てそう言った。

「クラウドと一緒にいるだけで?」

そんなこと、有り得るのか?と眉を顰めると、

「そうだよ。クラウド、お前が一番分かっているだろう。リラ君の傍は居心地が良いはずだ。毎日のように、いつリラ君を迎えにいけるんだと睨まれてね。」

ケール様がニヤニヤしながらクラウドを見た。

「何だよ、クラウドも俺に会いたかったんじゃねーか!俺だけが待ち遠しく思ってるみたいに揶揄ってきたくせに!」

俺は、そう言ってニヤニヤしながらクラウドの顔を覗き込んだ。すると、片手で両頬を潰すようにして掴まれる。

「うるせぇ。お前が俺に会いたくて仕方なかったんだろ。寂しいって泣いてたらしいじゃねーか。」

「ふぁー?!ほはへほほーはほ!」

勝ち誇ったようにそう言われて食って掛かると、何言ってんだと意地悪く笑って見降ろしてくる。くっそ、離せ!

クラウドの手を離そうと掴んで引っ張るが、力勝負では勝ち目がなく。んぎぎぎ、と睨み付けていると、

「……君たちねぇ、会えて嬉しいのは分かるが、私の話も聞いてくれないかい?」

呆れたようにケール様に言われてしまった。クラウドは舌打ちをして手を離し、俺はちょっと恥ずかしくなって視線を逸らした。

椅子に座るように促されて、それに応じる。前に座ったケール様は、続きを話した。

「リラ君が離れて、クラウドだけに影響があったのではないんだ。ダークレイクも、すぐに魔力が漏れ始めたんだよ。リラ君の素材で作った水晶で無効化は出来たが、以前と比較すると再び魔力を纏い出すまでの時間が早かった。そこで、仮説を立ててみた。恐らく、リラ君と関わりの深いものほど、傍にいることで無効化の働きが強くなるのではないかということだ。リラ君が来た当時は、クラウドの魔力量は変わりなかったと言っていたね。だが、リラ君が魔力放出に協力するようになってから、どんどんクラウドの魔力は抑えられていた。そして、放出せずとも不調を感じないようにまでなったと言っていたから、リラ君との関係性が深くなっていったからだという見方も出来る。それに……。」

「ちょ、ちょっと待って、どういうこと?」

まだまだ続きそうなケール様の話に、一旦ストップを掛ける。色々な話を一気に聞かされて、全然追い付けないし何が何だか分からないんですけど、と困惑の表情を向ける。

「だから、お前と関わりが深かったら、傍にいるだけで無効化の影響を受けるってことだ。」

クラウドが呆れたように俺を見下ろしてそう言ってきたが、何で俺の理解力が悪いみたいな顔で見てくるわけ?こちとら魔力なんて縁がなかった田舎もんだぞ?馬鹿でも分かる説明してくれと俺がお願いするべきだって言いたいのか?髪の毛むしるぞこの野郎!

シャーッと威嚇する俺を、クラウドは軽くあしらう。

「リラ君。クラウドはとても分かりやすい反応をしてくれたから、これは間違いないと思う。ダークレイクは君が2回、直接触れて纏っていた魔力を無効化している。繋がりが出来つつあったのだと思う。何とも不思議な力だ。まだまだ調べないといけないことはたくさんあるから、協力をお願いするよ。もちろん、無茶なことはさせないよ。」

綺麗な笑みを浮かべたケール様にそう言われ、俺がそれを拒否できる訳もなく。頷いた後、また俺の爪やら髪の毛やらを採取されるはめになったのだった。

そして、王宮を出た後、公爵家に戻ると使用人が頭を下げて待っていた。

「お帰りなさいませ。旦那様がお呼びです。こちらへ。」

そう言われ、自分の部屋に戻ろうとしたクラウドの腕を掴んでしがみ付くと、面倒臭そうに見下ろしてきたが意図は伝わったらしく。溜め息をつきながらも歩く俺に合わせて来てくれる。何を言われるか分からないし、公爵様と二人きりは怖い!一緒に来てくれ頼むから。

怠そうに歩くクラウドを引っ張りながら、使用人の後を付いて行く。そして、案内された部屋をノックし中から声が聞こえると、使用人は扉を開けて俺達を促した。

「し、失礼します……。」

そう言って、カチコチとぎこちなく入る俺に、

「さっさと入れ、遅い。」

クラウドが逆に俺の腕を掴んで部屋の中へと入った。そして、

「で、何だよ。」

一人用の肘掛椅子に座る公爵様にそう言い放った。

「お前は呼んでいないのだが、そんなに心配か?契約のことでリラ君に話があったのだよ。」

呆れたようにそう言った公爵様は、俺に視線を向けた。

「契約内容は変わらない。基本的なものは、クラウドの魔力暴走の回避のため、魔力放出に協力するというものだ。だが、君のその力が及ぼす可能性について色々と調べたいと魔術師団長から申し入れがあってね。それを受けるのは君の自由だ。だが、その窓口はクラウドに一任する。もし、君が不利益を被る形になったり、危険が伴う場合は私かクラウドに申し出なさい。それでいいね?」

そう言うと、最後にクラウドを見た公爵様。公爵様が俺のことを守ってくれるという認識でいいのだろうかと、聞き返せないため返答に困っていたのだが、

「あぁ。話はそれだけか?」

クラウドがそう返すと、掴んだままの俺の腕を引いた。そして、俺が何も公爵様に返すことが出来ないまま、引っ張られて退出させられる。俺は、その前に何とか頭を下げたのだった。

「なぁ、俺、公爵様に何も言わずに出て来ちゃったんだけど大丈夫なのか?ってか、公爵様が俺を守ってくれるってことで合ってる?」

退出した後、腕を離すと廊下を歩き出すクラウドの後を追ってそう聞く。

「合ってる。……お前、どこまでついて来るんだ。」

クラウドが自分の部屋に入ろうとしたため、俺も追って入ろうとすると怪訝な顔でそう言われた。

「え、だってさっき、使用人にお菓子用意してるって言われたし。まだ話すこともあるし。」

すれ違った使用人に、先程、お部屋にお菓子を置いてありますと言われたのだ。それは食べないと駄目だろ?と首を傾げて見上げると、ため息をつかれる。それ以上何も言われなかったため、そのまま追ってクラウドの部屋へ。

「あ、ケーキだ!」

テーブルに置かれた保冷皿の上に、美味しそうなフルーツが乗ったタルトが置かれていて、いそいそと前に座る。

「何でここに置いてんだよあいつらは……。」

呆れたように言ったクラウドだったが、食べ始めてにこにこする俺の頭に手を置き、クシャッと撫でられる。すると、そのタイミングで扉がノックされ、ワゴンを押して使用人が入って来る。

「お茶をお持ち致しました。」

すごく微笑ましく見られるのはどうしてだろうか。クラウドが舌打ちしてドカッと椅子に座った。態度悪すぎねぇ?これいいの?と使用人を見るも、それすらも微笑ましく見ており、強いなここの使用人、と感心する。お茶を入れて退室した後、

「おい、クラウド。何いきなり不機嫌になってんだよ。失礼だろ。」

「何が失礼だ。揶揄ってんだよあいつら。」

クラウドと言い合うも、良く分からないことを言い始めた。どこが揶揄われてるって言うんだ。お菓子もお茶もタイミング良く用意してくれてるじゃねーか。そう言うと、

「俺の部屋に用意してる時点で、そういうことだって思われてんだよ。」

と返される。さっきからちょっと誤魔化しながら話しているよな?詳しくしっかり説明してくれねぇかな。あ、詳しくと言えば。

「ケール様の話だけど。クラウド、俺が一緒にいるだけで楽なのか?」

気になったところを聞いてみる。

「あぁ、気付いたのはお前が故郷に戻る数日前だけどな。」

そう言って、茶を飲むクラウド。

「へぇ~。何なんだろうな、鬼族の力って。ダークレイクも、俺が何度も触れたりしたら魔力を纏わなくなるのかな。」

「可能性は高いだろうな。……お前、全部食うつもりか?」

手を止めず食べ続ける俺を見て、そんなに腹減ってたのか?と言われる。

「だって、お前食わねーじゃん。美味しいぞ?」

「いや、いらねぇ。」

そう言いながら、何か考え始めたクラウド。俺はどうしたんだろうと思いながらも、残ったケーキを全て平らげたのだった。



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