騎士隊長が結婚間近だと聞いてしまいました【完】

おはぎ

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中編

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――次の日、僕は昼を過ぎた時間に目を覚ました。

 悲しくて泣いていたせいで、目が腫れてしまい、赤くなっていた。そんな顔を鏡で見て、また思い出して泣いてしまう。ラインバルト隊長に寄り添う綺麗な女の人を想像してしまい、あまりにもお似合いで余計に悲しくなった。

……うぅ。

 僕は顔を洗い、明日はフィアと遊びに行くんだと、気持ちを頑張って切り替える。あまり余裕がないというのもあり、街に遊びに行ったことがない僕は、少し楽しみだった。

 悲しんだり、明日を楽しみにしたりと、だらだらと起きた時のままの格好で過ごしていると、夜が更けていく。もう暗くなったな、と窓の外をぼーっと見ていた時、ふいに玄関のドアの呼び鈴が鳴った。僕は、ぼーっとしたまま玄関へと歩いていく。すると、ドンッ!と大きな音が響いて、びくっと肩を震わせた。

……ドンッ!ドンッ!

 またしても響く大きな音に、僕は青褪めてその場で動けなくなる。すると、

「……ナイル!いないのか!」

 聞き覚えのある声がして、思わずドアに飛びついた。ガチャっと鍵を開けると、僕が手を掛けるよりも早く、ドアノブが回されドアが開け放たれた。

 僕が驚いているところで、中に押し入るように入ってきたその人は、後ろ手でドアを閉めて鍵を掛けた音を響かせた。

「え、え、何……。」

 そう呆然と言った僕を担ぎ上げると、ボスンとだらだらと今日一日過ごしていたベッドに下ろされ、顔の両側に腕を置かれて囲われる。

 どこか怒ったような顔をしたその人は。

「ら、ライン、バルト隊長……。あの、これは……。」

 突然の想い人の来訪、それに加えての今の状態に混乱が隠し切れない僕は戸惑ったまま、その人を見上げ呆然と問い掛ける。

「明日、フィアとデートするそうだな?…今日、練習場で話していたのが聞こえてな。ここまで迎えに来て、一緒に街に遊びに行くとも言っていた。」

そう聞かれ、

「は、はい。フィアが、遊びに行こうって誘ってくれて…。」

「……チッ。人がいない時にふざけた真似を。俺がどれだけ手を出すのを我慢してたと思ってる。今更、他のやつに渡すわけねぇだろ。」

 口調が荒い話し方が格好良くて、今の現状も忘れてときめいてしまう馬鹿な僕です。

「フィアには、ナイルは明日急用が入ったと伝えておいた。」

……え、何て?

「え、あの、僕、明日は特に用事なくて……。」

 もしかして、僕が断れなくて明日遊びに行くことを了承したと思われている?

「俺が、出掛けて欲しくないんだよ。フィアとデートするって聞かされた時の俺の気持ちが分かるか?さんざん、他の奴ら牽制して機会を待ってたってのに。…掻っ攫われてたまるかよ。」

 睨むように僕を見ながらそう言う隊長さんの言葉が頭に入ってこない。好きな人の顔が近くて、顔が熱くなってきてしまう素直な僕です。

「ナイル、そんな顔してたら期待するぞ。」

 そう言いながら、顔が近付いてきた時、僕ははっとして咄嗟に口を手で覆った。

「……おい、何だこの手は。」

 忌々しそうに言われ、僕はびくっと身を強張らせた。

「だ、駄目です……!」

「……何で。」

 不機嫌そうに言われ、僕は涙目になる。

「だって、だって、隊長さん、プロポーズが……。」

 恋人がいるのに、こんなこと…。僕も、遊び相手にされる……?でも、指輪買ってたって。え、結婚するんなら、不倫……?いや、男なら不倫にもならないのかもしれない……。

 しくしくと悲しくなってきた僕を見て、がしがしと頭をかいた隊長さんは、

「……さすがに指輪は持って来てねぇぞ。既成事実ぐらい作ってやろうとは思ったけど、結婚の申し込みはさすがに場所選んだ方がいいだろ?」

 少し困ったようにそう言った。

「うぅ……。そんなこと言われても、知りませんよぉ。お嬢様の好きな場所なんて……。」

 僕は余計に悲しくなって、そんなこと聞いてこないで下さいと、ついに涙が流れた。

「あぁ?お嬢様?何の話をしてんだ。」

 怪訝な顔で聞き返され、僕は指輪を買っていたこと、恋人がいてプロポーズ間際だと聞いたことを話した。

「僕、不倫はしません……っ!」

うぅ~。でも結婚前の遊びなら、一度だけでも思い出が欲しいと思ってしまう意思の弱い僕がいます。

「……どんな勘違いだよ。いや、待て。まさかそれ言ってたの、フィアか?」

 そう聞かれ、僕は泣きながら頷いた。

「あの野郎……。あのな、リユール様のことは仕事で護衛してただけだ。それに、あの人婚約者いるぞ。指輪は…あ~もう、マジか、格好つかねぇな…。」



 隊長さんは、そう言いながら、脱力したように僕に覆い被さってきた。密着する身体と、耳に感じる隊長さんの吐息……!

あわわわわわ……!

 僕はパニックになりながらも、こんな機会、もうないかもしれないと、どさくさに紛れて隊長さんの背中に腕を回し、服をきゅっと控えめに握った。その瞬間、がばっと起き上がった隊長さんに、はっとして咄嗟に手を離し、触ってませんのアピールで手を上げた。

「おっ前なぁ……!もう本当、どうなっても知らねぇぞ!」

 ぎらついた目で僕を見下ろした後、噛み付くようなキスを贈られた。

「んっ……あ……はっ……ぁ……!」

 初めての感覚に、息を止めてしまった僕は、苦しくなって口を開けた瞬間、熱い隊長さんの舌が割り込んできて、すぐに僕のそれと絡められた。

 歯列をなぞり、舌を吸われ、敏感なところを舌で押され舐め上げられ、鼻にかかった声が漏れて恥ずかしくなり隊長さんに必死にしがみつく。

「はっ、はっ、たい、ちょうさん……。」

 唇が離れた時、お互いから銀色の糸が引いたのを見て全身が熱くなる。必死に息を整えて、隊長さんを見上げると、

「ぁっ……!え、あぁ……っ!」

 服を脱がされ、ピンと立ち上がっていた小さい突起を舐められて、足の間ですでに立ち上がってしまっていたそこを掌で包み、上下に擦られる。

「あっ、あっ、やぁぁ……!待って、待って……あぁっ……!」

 容赦なく攻められ、呆気なく達してしまった僕に、隊長さんは自分も服を脱ぐと、再度、僕の身体に刺激を与え始める。そして、後孔へと指を這わされて、そのまま触られたことのないところに差し込まれた。

「え、何、何……っ!……ぅあ……あっ……!」

 与えられる快感に喘ぎながら、事をどんどん進める隊長さんに怖くなり、

「こ、怖い、怖い、隊長さん、優しく、して、ほし……。」

 懇願するようにしがみ付くと、後孔に熱く硬いものが当てられ、ずんっと内臓を押し上げられる感覚に頭が一瞬真っ白になる。


「くっそ、お前、それは煽ってるっつーんだよ!」

 そのまま、敏感なところを擦られ、突かれて、与えられる快感に僕は感じたまま声を上げた。

「やだっ、そこ、やめて、おかしくなるからぁ……っ!」

 快感ばかりを与えられて、僕は頭がおかしくなりそうでそう言ったのに、

「えっ、あっ、おっきくしないでぇ……!」

 中で、隊長さんのものが大きくなり圧迫される感覚に、泣きながら縋りつく。

「こっちは優しくしてやろうと思ってんのに、煽ってくるんじゃねぇ……!」


 僕は、そのまま何度も揺さぶられ、指を絡めてシーツに縫い付けられながら、唇を合わせられた辺りで、意識をなくしてしまったのだった。





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