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第1話 記憶がないっ!
記憶がないっ!⑤
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学校の正門を抜けると、カオルが突然グラウンドの端に向かって叫んだ。
「ユウー! おっはよー!」
なっ! ユウ!?
反射的に目がグラウンドの端を追いかけていた。ちょうど砂場に向かって走っている女子がいる。じゃあ、あの走り幅飛びしてる子がユウ?
彼女は着地と同時に手を振り返してきた。間違いない、あの子が《ユウ》だ。しかも、何かに気付いたのか、すぐに手が止まった。タケルもカオルも俺を見て笑っている。ああ、何かってのは俺のことか。
ユウがこっちに向かって走ってくる。それにしても……顔ちっせ! いや陸上部だけあって、体が細くて手足が長く見えるせいか。茶髪のショートカットを左右に揺らし、徐々に近付いてくると顔がよく見えて……って、おいおい、すげー可愛いじゃないか! この子が俺と恋人未満!?
ユウがグラウンドのネットを隔てた俺の目の前までやって来た。おわ、目ェでっか。
「キリオ!? おはよ、どうしちゃったの?」
「お、おう。ちょっとな」
どうしたもこうしたも記憶もない。
ユウはタオルでさっと汗をぬぐうと、少し呼吸を整えているようだった。ちょっとした仕草に目を奪われる。とにかくやばいくらいに可愛い。つーか意識し過ぎだろ俺!
「ふうん……ねえ、昨日って何の用だったの?」
「え、昨日? ああ、ちょっとな」
「……」
あれ、何かあからさまに機嫌が悪くなったな。めっちゃ顔に出てる。そういやタケルが「ユウって素直だから感情とか隠しきれない」とか言ってたっけ。はは、本当だ、ユウまんまじゃん。
「そうね、どーせ私には関係ないもんね!」
怒った顔も可愛いな、とか思ってる場合じゃない。ユウは走って向こうへ行ってしまった。
やっちまった。。。
「バーカ」
タケルから軽く一喝。
「キリオ! アンタ、ユウに何かしたんじゃないでしょうね!?」
カオルも俺を責め立てる。
「何もしてねぇよ。たぶん……」
「たぶんって何よっ!」
「だからキリオ、昨日は何してたんだよ?」
よくしゃべるこの二人から一斉に追及されるとたまらない。
「うっせー、知るか!」
こっちは記憶喪失だっての! ここまで上手く会話してたのが奇跡みたいなもんなのに、昨日のことなんて知るかよ!
昨日!?
記憶が消えた日だ。俺は何をしてた? 誰かと秘密を交わしてた。待てよ……タケルもユウもカオルも、昨日俺が何をしてたか知らないんだよな。ってことは、秘密を交わしたその誰かは今日俺が話した三人以外ってことになる。
だとすると、《ヒロ》か《シン》、もしくは《非通知の奴》に絞られるんじゃないか?
あながち失敗ばかりじゃない、これは大きな気付きだ。
ヒロは昼にならないと学校に来ないって話だったよな、となると今はシンを探すべきか。
「なあ、シンってもう学校に来てるかな?」
タケルはカオルと顔を見合わせ、「さあな」といった表情を返した。カオルの方は素っ気なく「知らない」と突っぱねてきた。
「な、何か怒ってないか?」
「……」
うっ、どうにもさっきのユウのことが尾を引いてるみたいだな。
「まあまあ、俺達二人ともシンって奴は知らないぜ。誰だそいつ?」
タケルが気まずくなりかけた雰囲気を和らげてくれた。ちょっと助かる。
「そ、そっか、サンキュ。知らなきゃ別にいいんだ。大した話じゃねーし」
せっかく糸口を見つけたと思ったのに、まさかの《シン》を知ってる奴がいない。ということは、シンとは俺だけが知り合いって可能性がある。それって探すの難易度高くないか?
いや、でも電話はそこそこあるし、また向こうから掛かってくるかもしれない。それに、校内のどこかで出くわすってこともあるだろう。
「ユウー! おっはよー!」
なっ! ユウ!?
反射的に目がグラウンドの端を追いかけていた。ちょうど砂場に向かって走っている女子がいる。じゃあ、あの走り幅飛びしてる子がユウ?
彼女は着地と同時に手を振り返してきた。間違いない、あの子が《ユウ》だ。しかも、何かに気付いたのか、すぐに手が止まった。タケルもカオルも俺を見て笑っている。ああ、何かってのは俺のことか。
ユウがこっちに向かって走ってくる。それにしても……顔ちっせ! いや陸上部だけあって、体が細くて手足が長く見えるせいか。茶髪のショートカットを左右に揺らし、徐々に近付いてくると顔がよく見えて……って、おいおい、すげー可愛いじゃないか! この子が俺と恋人未満!?
ユウがグラウンドのネットを隔てた俺の目の前までやって来た。おわ、目ェでっか。
「キリオ!? おはよ、どうしちゃったの?」
「お、おう。ちょっとな」
どうしたもこうしたも記憶もない。
ユウはタオルでさっと汗をぬぐうと、少し呼吸を整えているようだった。ちょっとした仕草に目を奪われる。とにかくやばいくらいに可愛い。つーか意識し過ぎだろ俺!
「ふうん……ねえ、昨日って何の用だったの?」
「え、昨日? ああ、ちょっとな」
「……」
あれ、何かあからさまに機嫌が悪くなったな。めっちゃ顔に出てる。そういやタケルが「ユウって素直だから感情とか隠しきれない」とか言ってたっけ。はは、本当だ、ユウまんまじゃん。
「そうね、どーせ私には関係ないもんね!」
怒った顔も可愛いな、とか思ってる場合じゃない。ユウは走って向こうへ行ってしまった。
やっちまった。。。
「バーカ」
タケルから軽く一喝。
「キリオ! アンタ、ユウに何かしたんじゃないでしょうね!?」
カオルも俺を責め立てる。
「何もしてねぇよ。たぶん……」
「たぶんって何よっ!」
「だからキリオ、昨日は何してたんだよ?」
よくしゃべるこの二人から一斉に追及されるとたまらない。
「うっせー、知るか!」
こっちは記憶喪失だっての! ここまで上手く会話してたのが奇跡みたいなもんなのに、昨日のことなんて知るかよ!
昨日!?
記憶が消えた日だ。俺は何をしてた? 誰かと秘密を交わしてた。待てよ……タケルもユウもカオルも、昨日俺が何をしてたか知らないんだよな。ってことは、秘密を交わしたその誰かは今日俺が話した三人以外ってことになる。
だとすると、《ヒロ》か《シン》、もしくは《非通知の奴》に絞られるんじゃないか?
あながち失敗ばかりじゃない、これは大きな気付きだ。
ヒロは昼にならないと学校に来ないって話だったよな、となると今はシンを探すべきか。
「なあ、シンってもう学校に来てるかな?」
タケルはカオルと顔を見合わせ、「さあな」といった表情を返した。カオルの方は素っ気なく「知らない」と突っぱねてきた。
「な、何か怒ってないか?」
「……」
うっ、どうにもさっきのユウのことが尾を引いてるみたいだな。
「まあまあ、俺達二人ともシンって奴は知らないぜ。誰だそいつ?」
タケルが気まずくなりかけた雰囲気を和らげてくれた。ちょっと助かる。
「そ、そっか、サンキュ。知らなきゃ別にいいんだ。大した話じゃねーし」
せっかく糸口を見つけたと思ったのに、まさかの《シン》を知ってる奴がいない。ということは、シンとは俺だけが知り合いって可能性がある。それって探すの難易度高くないか?
いや、でも電話はそこそこあるし、また向こうから掛かってくるかもしれない。それに、校内のどこかで出くわすってこともあるだろう。
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