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第3話 また記憶がないっ!
また記憶がないっ!②
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キリオの家が見える場所まで来て、キリオが家から出てくるのをしばらく待つことにした。
こういう時間ができると色々考えてしまう。
― どうしてキリオの記憶は消えてしまったのだろう? ―
ずっと抱いていた疑問。それは昨日、本人に話を聞いて分かった。
キリオが何らかの《秘密》を知っていること。そして……その《秘密》を記憶ごと消し去った人物がいること。
橘からの報告で、その人物が誰かも判った。それがキリオの身近な人であることも……
緊急の要件なのに電話できない家の事情が煩わしい。だから直接キリオに伝えないと。
「いってきまーす」
家から出てきたのはキリオではなく女の子だった。妹さんかな?
そういえば、キリオって朝弱いんだった。よく遅刻してるみたいだし、待つなら学校の方が良かったかもしれない。
そんな心配を他所に、しばらくしてキリオは出てきた。なぜか妙にキョロキョロしている。
「ぷっ。なんかキリオってば挙動不審。意外な一面見ちゃった」
それはそうと、早くキリオに伝えないと。
「おはよー」
声をかけつつ駆け寄ると、キリオがこちらを振り向いた。
思わず口元が緩んでしまう。出来るなら、このまま一緒に登校しながら話したいと思ってしまう。
けれど、少し不自然な間が空いた。お互いの目が合った時、キリオはやっと呼ばれたのが自分だと気付いたようだった。
「……えっと、君は?」
何かキリオの様子が変だ。私のこと……判ってない?
「キリ……」
名前を呼び掛けて、口をつぐんだ。
「あっ、いえ、人違いでした。ゴメンなさい……」
何を謝ってるんだろう私。でも、この感じは……前にも一度経験したことがある。
なんで? どうして? やっとまた距離が縮まったと思ったのに。
キリオがゆっくり私から遠ざかってゆく。そして少し離れた場所から話し声が聞こえてきた。
「おっす! キリオ!」
キリオの親友の大和タケルだ。
「お、おう」
ワンテンポ遅れてキリオが反応した。
そしてもう一人……
「おっはよっ! 二人とも」
!! あの女!
「おっす!」
「お、おう」
「な~に、キリオ何か変だぞー?」
「だろー」
傍から見れば、きっと何気ないやり取りだろう。けれど、これほど歪なものはない。
女がこっちを見て笑っていた。
やられた!
さらに女はキリオに何か話し始めた。嫌な予感がする。いったい何て言ってるの?
少しして、キリオだけこちらに戻ってきた。
私と目が合うと、キリオは軽く会釈し、通り過ぎようとした。
「ちょっと、学校はそっちじゃないですよ」
「知ってます。友達の家に寄るんで」
!?
友達って、森戸ユウのこと? でも、あの子は朝練に行ってるはず。
訳の分からない状況に頭が混乱しそうだった。けれどすぐに、あの女が笑っていたことを思い出した。
はっとなる。森戸さんは今日はまだ家にいるんじゃ? それを、あの女はキリオに伝えたんだ。
私はただ、遠ざかるキリオを黙って見ているしかなかった。
今回も、その前も、付き合った次の日にキリオの記憶が消された。これが偶然ではなく、誰かの意図や目的があるのだとしたら……狙われてるのはキリオ? それとも私?
こういう時間ができると色々考えてしまう。
― どうしてキリオの記憶は消えてしまったのだろう? ―
ずっと抱いていた疑問。それは昨日、本人に話を聞いて分かった。
キリオが何らかの《秘密》を知っていること。そして……その《秘密》を記憶ごと消し去った人物がいること。
橘からの報告で、その人物が誰かも判った。それがキリオの身近な人であることも……
緊急の要件なのに電話できない家の事情が煩わしい。だから直接キリオに伝えないと。
「いってきまーす」
家から出てきたのはキリオではなく女の子だった。妹さんかな?
そういえば、キリオって朝弱いんだった。よく遅刻してるみたいだし、待つなら学校の方が良かったかもしれない。
そんな心配を他所に、しばらくしてキリオは出てきた。なぜか妙にキョロキョロしている。
「ぷっ。なんかキリオってば挙動不審。意外な一面見ちゃった」
それはそうと、早くキリオに伝えないと。
「おはよー」
声をかけつつ駆け寄ると、キリオがこちらを振り向いた。
思わず口元が緩んでしまう。出来るなら、このまま一緒に登校しながら話したいと思ってしまう。
けれど、少し不自然な間が空いた。お互いの目が合った時、キリオはやっと呼ばれたのが自分だと気付いたようだった。
「……えっと、君は?」
何かキリオの様子が変だ。私のこと……判ってない?
「キリ……」
名前を呼び掛けて、口をつぐんだ。
「あっ、いえ、人違いでした。ゴメンなさい……」
何を謝ってるんだろう私。でも、この感じは……前にも一度経験したことがある。
なんで? どうして? やっとまた距離が縮まったと思ったのに。
キリオがゆっくり私から遠ざかってゆく。そして少し離れた場所から話し声が聞こえてきた。
「おっす! キリオ!」
キリオの親友の大和タケルだ。
「お、おう」
ワンテンポ遅れてキリオが反応した。
そしてもう一人……
「おっはよっ! 二人とも」
!! あの女!
「おっす!」
「お、おう」
「な~に、キリオ何か変だぞー?」
「だろー」
傍から見れば、きっと何気ないやり取りだろう。けれど、これほど歪なものはない。
女がこっちを見て笑っていた。
やられた!
さらに女はキリオに何か話し始めた。嫌な予感がする。いったい何て言ってるの?
少しして、キリオだけこちらに戻ってきた。
私と目が合うと、キリオは軽く会釈し、通り過ぎようとした。
「ちょっと、学校はそっちじゃないですよ」
「知ってます。友達の家に寄るんで」
!?
友達って、森戸ユウのこと? でも、あの子は朝練に行ってるはず。
訳の分からない状況に頭が混乱しそうだった。けれどすぐに、あの女が笑っていたことを思い出した。
はっとなる。森戸さんは今日はまだ家にいるんじゃ? それを、あの女はキリオに伝えたんだ。
私はただ、遠ざかるキリオを黙って見ているしかなかった。
今回も、その前も、付き合った次の日にキリオの記憶が消された。これが偶然ではなく、誰かの意図や目的があるのだとしたら……狙われてるのはキリオ? それとも私?
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