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ザメハの笑み
第三十七話 ザメハの笑み
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暗い闇。闇が僕を覆う
体が黒い海に沈んでゆく
体が動かそうとしても動けない
落ちていく、落ちていく
無数の顔が僕をあざ笑っている
あの顔は絶叫している
真っ暗な電柱から伸びる電線
ごみ袋に群がった鴉
黄色く薄暗い雲
叫び声が聞こえる
僕を呼ぶのは誰だ
教えてくれ
僕は何なのか、僕の存在意義は何だ
何のために産まれて、何のために死んで
──ああ、そうかこれが地獄か……。
僕は死んだんだ
そうか死んだのか
何故? わからない
誰か助けてくれ
……メリッサ……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
静かにまぶたを開けるとここは裏路地のようだった。僕は生きているのか……? 僕から見えたのは赤毛の男が僕をあざけ笑っている顔だった。
「おはよう、おっさん。エインなんとかが死なないのは本当なんだな。俺アンタを殺したの。意味わかる?」
なんだこの男は、エインなんとかというのは、エインヘリャルのことか、すると殺されたのはヴァルキュリアの武器ではなかったのか、何が何だかわからない。とりあえず完全に死んだ……というわけではなかったんだな。
喉元を触ってみる、触った右の手のひらを眺めると、血でべっとりぬれていた。頸動脈を切られたのか、いきなりのことでわからなかったが、こいつヴァルキュリアをつれてきてないのに何故僕がエインヘリャルだとわかったんだ。
クソ……! 情報が足りない、状況を早く把握せねば。
「おっさんがムキムキのおっさん倒してくれたのはありがたかった。俺が動くのに邪魔だったから。これから隠れて殺さずにすむ、サンクスおっさん」
「お前は誰だエインヘリャルじゃないのか? 何故ヴァルキュリアをつれてきていない」
僕は少しでも相手から何か情報を探るため、率直に尋ねた。
「俺はザメハ、趣味は殺人。人殺しして捕まって殺されたら、ヴァルキュリアの姉ちゃんに生き返らせてもらったわけ、ただそれだけ。
能力くれると言ったから、なにくれるかとおもったら、ヴァルキュリアに感知されないという能力をもらっただけ。ひでー話だろ。
それじゃあエインなんとかと戦えないじゃないか。むかついたからヴァルキュリアの姉ちゃん殺したわけ。そしたらそいつ生き返りやがって気味悪いのなんの、バラバラにしてコンクリートに漬けて土に埋めた。そしたらつきまとわれなくて、俺安心」
……何だと? ヴァルキュリアを殺してバラバラにして埋めた? ……コイツ狂ってやがる。
「なあおっさん。俺と遊ぼうや。俺いじめっ子。おっさんいじめられっこ、オーケイ?」
そのと言葉が終わるとほぼ同時に、僕は右手に握っていたMP7A1の引き金を引きバースト射撃をおこなう! 放たれる弾丸、しかし銃弾は肉体をとらえることはなかった。ザメハは素早く動き、的を絞らせない。そして、優れた身体能力で距離を取り建物の影に隠れた。
辺りはすっかり夜だった。真っ暗闇で影に入られるとどこにいるのかわからない。──っつ、コイツヴァルキュリアの武器がなくても厄介じゃないか、素のフィジカルレベルが高すぎる、銃で撃つ僕にとって、近接では危険な敵だ。
しかし、スコープも作れない僕では遠距離で当てるには工夫が必要だし、ヴァルキュリアで察知できない以上、メリッサを頼れない。
──なら、相手の動向を探らなければ。
「ちなみに僕はいじめられたことはないぞ、なぜならずる休みの天才だったからだ。いじめのターゲットにされそうになったとき僕はずる休みをした。
そしてその夜、学校に忍び込んでいじめっ子は置き勉していたので、教科書ノート全部に死ねと落書きしておいた、一週間後、ずる休みを終えて学校に行ったらそいつは転校していたよ、複雑な気分だったが、子どもの僕にとって安全が一番だからな」
僕がそう言うと暗闇のどこかで拍手が聞こえてくる。
「学校という意味がわからないけどおっさん面白い。もっと聞かせて。ここ言葉通じないから、会話久しぶり。もっと面白い話聞かせて」
「ああ、いっぱい聞かせてやるさ……!」
僕は音がした闇の方向へセミオートで射撃をおこなう、が、少し動く影が見えた瞬間、その影が近くの木箱の裏に隠れた、後36発しか残弾がない、その間に仕留めなければ……。
「中学生の頃、部活動に入らないかと無理矢理柔道部に入れられた。そしたら上級生たちに初心者いじめでひたすら投げられたよ。僕は腹が立ったから、柔道部の部室の中にあったエロ本を道場の隅に置いた。
そしたらそいつら、翌日顧問の教師に見つかって上級生はこっぴどくおこられたよ。ちなみに僕はそれを見届けたら部活をすぐにやめた」
拍手の音がする。奴はその間にも移動していた。クソ……早い! 弾痕だけが壁に続いていき、虚しく銃声が響くのみ。
僕はセミオートで撃っていた、的が絞れない以上弾を無駄にせず、戦略的に相手と戦うためだ。相手がこっちに近づいたとき、弾幕を張る、流れ出る弾と、小気味よくなる銃声。しかし音が響くだけ。弾倉が少しずつ軽くなっていく。
後29発、そのとき、ザメハはものすごいスピードで僕の懐に入る。襲いかかる瞬時の斬撃!
ヒュンと音が鳴るが僕には早すぎて軌道が見えない! あまりにも早いため条件反射で顔そむけるが、首もとを深く切られてしまった。飛び散る血しぶき、僕の呼吸が荒くなる、奴を見ようとするとそこにはいない。
……クソどこだどこに行った……! ……いない? ──まさか⁉
後ろを振り向こうとした刹那だった──。
「ここだよ、おっさん」
気がつくと後ろに回り込まれ首元にショートソードを当てられていた。しまった、コイツすでにもう、後ろに回り込んで……!
「はい終了、おっさんの負け」
首もとをかっきられ血が飛び散る、鮮血の赤、視界が血に染まった、僕の力は全身から抜け落ちてしまい、そのまま倒れたところで意識がもうろうとしてしまう。
「佑月……佑月――」
……なんだ、メリッサの声が聞こえる。助けに来てくれたのか? いや、ただの幻聴か、これは……?
「佑月――佑月――」
言葉が遠くなっていくメリッサ僕はここだぞ! メリッサ! ――いや違う、やはり、これは現実じゃない、ああ、僕はまた殺されてしまったんだ。
襲うのは漆黒の闇、その中でメリッサの姿を思い浮かべながら、長い長い静寂に包まれて、気を失ってしまった。クソ……どうすればいい……? どうすればいいんだ……⁉
体が黒い海に沈んでゆく
体が動かそうとしても動けない
落ちていく、落ちていく
無数の顔が僕をあざ笑っている
あの顔は絶叫している
真っ暗な電柱から伸びる電線
ごみ袋に群がった鴉
黄色く薄暗い雲
叫び声が聞こえる
僕を呼ぶのは誰だ
教えてくれ
僕は何なのか、僕の存在意義は何だ
何のために産まれて、何のために死んで
──ああ、そうかこれが地獄か……。
僕は死んだんだ
そうか死んだのか
何故? わからない
誰か助けてくれ
……メリッサ……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
静かにまぶたを開けるとここは裏路地のようだった。僕は生きているのか……? 僕から見えたのは赤毛の男が僕をあざけ笑っている顔だった。
「おはよう、おっさん。エインなんとかが死なないのは本当なんだな。俺アンタを殺したの。意味わかる?」
なんだこの男は、エインなんとかというのは、エインヘリャルのことか、すると殺されたのはヴァルキュリアの武器ではなかったのか、何が何だかわからない。とりあえず完全に死んだ……というわけではなかったんだな。
喉元を触ってみる、触った右の手のひらを眺めると、血でべっとりぬれていた。頸動脈を切られたのか、いきなりのことでわからなかったが、こいつヴァルキュリアをつれてきてないのに何故僕がエインヘリャルだとわかったんだ。
クソ……! 情報が足りない、状況を早く把握せねば。
「おっさんがムキムキのおっさん倒してくれたのはありがたかった。俺が動くのに邪魔だったから。これから隠れて殺さずにすむ、サンクスおっさん」
「お前は誰だエインヘリャルじゃないのか? 何故ヴァルキュリアをつれてきていない」
僕は少しでも相手から何か情報を探るため、率直に尋ねた。
「俺はザメハ、趣味は殺人。人殺しして捕まって殺されたら、ヴァルキュリアの姉ちゃんに生き返らせてもらったわけ、ただそれだけ。
能力くれると言ったから、なにくれるかとおもったら、ヴァルキュリアに感知されないという能力をもらっただけ。ひでー話だろ。
それじゃあエインなんとかと戦えないじゃないか。むかついたからヴァルキュリアの姉ちゃん殺したわけ。そしたらそいつ生き返りやがって気味悪いのなんの、バラバラにしてコンクリートに漬けて土に埋めた。そしたらつきまとわれなくて、俺安心」
……何だと? ヴァルキュリアを殺してバラバラにして埋めた? ……コイツ狂ってやがる。
「なあおっさん。俺と遊ぼうや。俺いじめっ子。おっさんいじめられっこ、オーケイ?」
そのと言葉が終わるとほぼ同時に、僕は右手に握っていたMP7A1の引き金を引きバースト射撃をおこなう! 放たれる弾丸、しかし銃弾は肉体をとらえることはなかった。ザメハは素早く動き、的を絞らせない。そして、優れた身体能力で距離を取り建物の影に隠れた。
辺りはすっかり夜だった。真っ暗闇で影に入られるとどこにいるのかわからない。──っつ、コイツヴァルキュリアの武器がなくても厄介じゃないか、素のフィジカルレベルが高すぎる、銃で撃つ僕にとって、近接では危険な敵だ。
しかし、スコープも作れない僕では遠距離で当てるには工夫が必要だし、ヴァルキュリアで察知できない以上、メリッサを頼れない。
──なら、相手の動向を探らなければ。
「ちなみに僕はいじめられたことはないぞ、なぜならずる休みの天才だったからだ。いじめのターゲットにされそうになったとき僕はずる休みをした。
そしてその夜、学校に忍び込んでいじめっ子は置き勉していたので、教科書ノート全部に死ねと落書きしておいた、一週間後、ずる休みを終えて学校に行ったらそいつは転校していたよ、複雑な気分だったが、子どもの僕にとって安全が一番だからな」
僕がそう言うと暗闇のどこかで拍手が聞こえてくる。
「学校という意味がわからないけどおっさん面白い。もっと聞かせて。ここ言葉通じないから、会話久しぶり。もっと面白い話聞かせて」
「ああ、いっぱい聞かせてやるさ……!」
僕は音がした闇の方向へセミオートで射撃をおこなう、が、少し動く影が見えた瞬間、その影が近くの木箱の裏に隠れた、後36発しか残弾がない、その間に仕留めなければ……。
「中学生の頃、部活動に入らないかと無理矢理柔道部に入れられた。そしたら上級生たちに初心者いじめでひたすら投げられたよ。僕は腹が立ったから、柔道部の部室の中にあったエロ本を道場の隅に置いた。
そしたらそいつら、翌日顧問の教師に見つかって上級生はこっぴどくおこられたよ。ちなみに僕はそれを見届けたら部活をすぐにやめた」
拍手の音がする。奴はその間にも移動していた。クソ……早い! 弾痕だけが壁に続いていき、虚しく銃声が響くのみ。
僕はセミオートで撃っていた、的が絞れない以上弾を無駄にせず、戦略的に相手と戦うためだ。相手がこっちに近づいたとき、弾幕を張る、流れ出る弾と、小気味よくなる銃声。しかし音が響くだけ。弾倉が少しずつ軽くなっていく。
後29発、そのとき、ザメハはものすごいスピードで僕の懐に入る。襲いかかる瞬時の斬撃!
ヒュンと音が鳴るが僕には早すぎて軌道が見えない! あまりにも早いため条件反射で顔そむけるが、首もとを深く切られてしまった。飛び散る血しぶき、僕の呼吸が荒くなる、奴を見ようとするとそこにはいない。
……クソどこだどこに行った……! ……いない? ──まさか⁉
後ろを振り向こうとした刹那だった──。
「ここだよ、おっさん」
気がつくと後ろに回り込まれ首元にショートソードを当てられていた。しまった、コイツすでにもう、後ろに回り込んで……!
「はい終了、おっさんの負け」
首もとをかっきられ血が飛び散る、鮮血の赤、視界が血に染まった、僕の力は全身から抜け落ちてしまい、そのまま倒れたところで意識がもうろうとしてしまう。
「佑月……佑月――」
……なんだ、メリッサの声が聞こえる。助けに来てくれたのか? いや、ただの幻聴か、これは……?
「佑月――佑月――」
言葉が遠くなっていくメリッサ僕はここだぞ! メリッサ! ――いや違う、やはり、これは現実じゃない、ああ、僕はまた殺されてしまったんだ。
襲うのは漆黒の闇、その中でメリッサの姿を思い浮かべながら、長い長い静寂に包まれて、気を失ってしまった。クソ……どうすればいい……? どうすればいいんだ……⁉
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※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
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