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砂城の愛
第五十話 ミリアの結婚式
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ミリアは朱色のドレスを着て花柄のベールをつけていた、そのとなりには、ロハ族衣装を飾ったメンフェスがいた。美男美女が美しく着飾ったその姿は絵に描いたような新郎新婦であり、幸せを映像にされたようだ。
合唱される歌と楽器の演奏の中、中央のウェディングロードを二人で歩く。鳴り響く古きパイプオルガンの音に合わせて一歩ずつ神父のもとへと歩いていく。
僕が知っている結婚式とは違う、でも幸せを祝う式だと十二分に感じた、神聖で荘厳な心地、心が透き通ってくる感じがする。
やがて、辺りは静かになり神父の前に立ち、おそらく聖書だろうを読み上げる。二人はそれをじっときいたあと横から修道女だろうかが、金で飾っており、美しい装飾した箱を持ってきた。
メンフェスはそれを開け、手にネックレスを持ちベールをかき上げ、ミリアの首にかけた。そして膝をつき手にキスをした後、ミリアがそれを抱きしめた。
そうして、メンフェスは立ち上がり、ミリアとキスをした。その時、楽器の音が鳴り響き、大歓声が聞こえる、これがこの世界の結婚の誓いの証だろう、神父がみんなに何か言ったあと僕たち観客は外に出た。
大歓声の祝いの空気、ミリアとメンフェスは恥ずかしそうにゆっくりと外に出ていった。みんな、何言っているか解らないが、声をかけているので僕は、
「ミリア! おめでとう! おめでとう!」
と、叫ぶ。修道女が何やら鳥かごを持ってきて、色鮮やかな鳥をミリアは手に取り、天高く飛ばす。地面がうなるような大歓声、その中ミリアとメンフェスは幸せそうに手を握っていた。
城に戻り大広間に僕たちは待たされた。長い時間僕はここで過ごさなければならなかったので、かなり退屈だった、僕は誰とも話が通じないからだ。部屋の周りの人間は会話をしていて楽しんでいたので、独りぼっちな僕はこの時間は苦痛だ、日は傾き夜になる。
そうしているうちに、奥の扉が開きメンフェスとミリアが白い服と白いドレスを着て現れた、和やかなムードで、メンフェスが他の貴族と話している間、僕のところにミリアが近寄ってくる。
「おめでとう、ミリア」
「ありがとう、ユヅ。こういう格式張ったのは、待つ方はつらいでしょう」
「まあね」
そう言って僕は苦笑すると、それにつられて彼女も笑う。彼女はとても幸せそうだ。
「このあとどうなるんだい、ミリア?」
すっと、ミリアの顔に暗い影が差し込む。
「二人が一つになるのよ、それを侍女が確認したあと、おめでとうと言って結婚式は終わり」
「そうか、女性には不安だよなあ、大丈夫だって相手はメンフェスだよ」
僕がそう言うと、ミリアはうち沈み、ふと呟く。
「――結婚なんてしなければよかった……」
えっ今なんて? 僕には聞き取れなかった。
「どうしたんだよミリア、幸せの瞬間じゃないか」
「うんそうね、ユヅ。でも私は……」
何かを言いかけたあと、侍女が呼んでいるのだろうか、やはりミリアは侍女とともにメンフェスといっしょに奥に引っ込んでいった。
愛する人と一つになる、どれだけ幸せを感じられるのだろう。
僕はメリッサのことを思い浮かべた。性的な感動ではなく、人と人との交わり、心と心が通じ合える瞬間、想像の範疇でしか僕はわからないけど、きっと素晴らしいものだろうと思う。僕とメリッサもこういう日が来るのだろうか。
僕は幸せの形を思い浮かべる、となりにいるのはメリッサ、その真ん中にいるのは僕たちの子ども。幸せそうに手をつなぎ、とりとめのない日常会話を楽しみ、笑い続ける僕たち。
僕は強い人間じゃない、でも手に入れた家族は絶対に幸せにする、──それが僕にとっての今の願い。僕は心に誓いを立てた。
そう言えば、メリッサはどうしているだろうか、彼女絶対怒っているだろうな。僕は日本式土下座を覚悟した。
──しばらくすると大きな足音が聞こえた、僕は瞬間顔が青ざめただろう、血の気が引く音がどこかで聴こえた。そこら辺走り回った軽い足音がした後、少女がこちらに向かってきた。
「佑月!」
──しまったメリッサだ、飛び出してきたように眼の前に現れ、辺りは騒然とする。すぐさま、彼女が何かを言う前に、素早くメリッサの小さな足に、頭を下げ、日本式土下座を確実にこなす。
「ごめん! 許してくれ! この通り!」
周りが何があったのかと、皆こちらを見つめている。それよりも彼女の怒りを鎮めないと、二、三回ぐらい殺される。
「何のつもりだ! 理由を、理由を説明しろ!」
もちろんメリッサはご立腹だ、僕は必死になだめながら理由を説明をしようと試みた。やっぱり五回ぐらい殺されるのだろうか……。
「――という訳なんだ」
それを聞くとメリッサはみるみる紅潮していき、さらに激怒する。
「バカを言うな! エインヘリャルとロハ民族とで、愛が生まれるわけないだろ!」
「それが生まれたみたいなんだ、珍しいと思うけど」
「いいか、エインヘリャルとロハ民族とじゃ言葉が通じないだけじゃない、価値観、日常、考え方、食事、作法、礼儀、娯楽そのすべてが違う、まったく交わらない平行線の世界をもっているんだ!」
「なんでそう言い切れるんだ?」
あまりにもまくし立てるので僕は少しカチンときた。
「前例がないからだ!」
「じゃあ、今回が初めての例なんだな」
「お前は何もわかっていない、おそらく……」
「キャアアアアア――――――――――――!!!」
あの声はミリアか? 貴族たちからどよめきが起こった、何が起きたのかさっぱり理解できない。
「くそっ! やはりか!」
メリッサは当然のように奥の扉に急ぐ。
「まて、メリッサ!」
僕はそれを追いかけた、声がする方向にメリッサは向かった、そして奥に進み 扉を開く。そこで想像だにしない光景が眼に飛び込んだ。──ベッドの上に裸のミリアがおり、その手前には地面から生えた大きな槍が深々と刺さったメンフェスの姿があった。
メンフェスの胸から血が流れておりおそらく即死だろう。その様子を見るやいなや、ミリアの元にメリッサは駆け寄る。この光景どこかで──そうか、ヴァルハラの死者の光景に似ている……!
「お前、何をやったのかわかっているのか!?」
「だってどうしても彼が一つになりたいって言うから! 愛してるって言うから!」
「――ヴァルキュリアは他人と交わることが許されない! それを知らないわけじゃないだろ、”ミリア・ヴァルキュリア”!」
――え、なんだって?――
突然の言葉と状況に僕は混乱するばかりだった。
合唱される歌と楽器の演奏の中、中央のウェディングロードを二人で歩く。鳴り響く古きパイプオルガンの音に合わせて一歩ずつ神父のもとへと歩いていく。
僕が知っている結婚式とは違う、でも幸せを祝う式だと十二分に感じた、神聖で荘厳な心地、心が透き通ってくる感じがする。
やがて、辺りは静かになり神父の前に立ち、おそらく聖書だろうを読み上げる。二人はそれをじっときいたあと横から修道女だろうかが、金で飾っており、美しい装飾した箱を持ってきた。
メンフェスはそれを開け、手にネックレスを持ちベールをかき上げ、ミリアの首にかけた。そして膝をつき手にキスをした後、ミリアがそれを抱きしめた。
そうして、メンフェスは立ち上がり、ミリアとキスをした。その時、楽器の音が鳴り響き、大歓声が聞こえる、これがこの世界の結婚の誓いの証だろう、神父がみんなに何か言ったあと僕たち観客は外に出た。
大歓声の祝いの空気、ミリアとメンフェスは恥ずかしそうにゆっくりと外に出ていった。みんな、何言っているか解らないが、声をかけているので僕は、
「ミリア! おめでとう! おめでとう!」
と、叫ぶ。修道女が何やら鳥かごを持ってきて、色鮮やかな鳥をミリアは手に取り、天高く飛ばす。地面がうなるような大歓声、その中ミリアとメンフェスは幸せそうに手を握っていた。
城に戻り大広間に僕たちは待たされた。長い時間僕はここで過ごさなければならなかったので、かなり退屈だった、僕は誰とも話が通じないからだ。部屋の周りの人間は会話をしていて楽しんでいたので、独りぼっちな僕はこの時間は苦痛だ、日は傾き夜になる。
そうしているうちに、奥の扉が開きメンフェスとミリアが白い服と白いドレスを着て現れた、和やかなムードで、メンフェスが他の貴族と話している間、僕のところにミリアが近寄ってくる。
「おめでとう、ミリア」
「ありがとう、ユヅ。こういう格式張ったのは、待つ方はつらいでしょう」
「まあね」
そう言って僕は苦笑すると、それにつられて彼女も笑う。彼女はとても幸せそうだ。
「このあとどうなるんだい、ミリア?」
すっと、ミリアの顔に暗い影が差し込む。
「二人が一つになるのよ、それを侍女が確認したあと、おめでとうと言って結婚式は終わり」
「そうか、女性には不安だよなあ、大丈夫だって相手はメンフェスだよ」
僕がそう言うと、ミリアはうち沈み、ふと呟く。
「――結婚なんてしなければよかった……」
えっ今なんて? 僕には聞き取れなかった。
「どうしたんだよミリア、幸せの瞬間じゃないか」
「うんそうね、ユヅ。でも私は……」
何かを言いかけたあと、侍女が呼んでいるのだろうか、やはりミリアは侍女とともにメンフェスといっしょに奥に引っ込んでいった。
愛する人と一つになる、どれだけ幸せを感じられるのだろう。
僕はメリッサのことを思い浮かべた。性的な感動ではなく、人と人との交わり、心と心が通じ合える瞬間、想像の範疇でしか僕はわからないけど、きっと素晴らしいものだろうと思う。僕とメリッサもこういう日が来るのだろうか。
僕は幸せの形を思い浮かべる、となりにいるのはメリッサ、その真ん中にいるのは僕たちの子ども。幸せそうに手をつなぎ、とりとめのない日常会話を楽しみ、笑い続ける僕たち。
僕は強い人間じゃない、でも手に入れた家族は絶対に幸せにする、──それが僕にとっての今の願い。僕は心に誓いを立てた。
そう言えば、メリッサはどうしているだろうか、彼女絶対怒っているだろうな。僕は日本式土下座を覚悟した。
──しばらくすると大きな足音が聞こえた、僕は瞬間顔が青ざめただろう、血の気が引く音がどこかで聴こえた。そこら辺走り回った軽い足音がした後、少女がこちらに向かってきた。
「佑月!」
──しまったメリッサだ、飛び出してきたように眼の前に現れ、辺りは騒然とする。すぐさま、彼女が何かを言う前に、素早くメリッサの小さな足に、頭を下げ、日本式土下座を確実にこなす。
「ごめん! 許してくれ! この通り!」
周りが何があったのかと、皆こちらを見つめている。それよりも彼女の怒りを鎮めないと、二、三回ぐらい殺される。
「何のつもりだ! 理由を、理由を説明しろ!」
もちろんメリッサはご立腹だ、僕は必死になだめながら理由を説明をしようと試みた。やっぱり五回ぐらい殺されるのだろうか……。
「――という訳なんだ」
それを聞くとメリッサはみるみる紅潮していき、さらに激怒する。
「バカを言うな! エインヘリャルとロハ民族とで、愛が生まれるわけないだろ!」
「それが生まれたみたいなんだ、珍しいと思うけど」
「いいか、エインヘリャルとロハ民族とじゃ言葉が通じないだけじゃない、価値観、日常、考え方、食事、作法、礼儀、娯楽そのすべてが違う、まったく交わらない平行線の世界をもっているんだ!」
「なんでそう言い切れるんだ?」
あまりにもまくし立てるので僕は少しカチンときた。
「前例がないからだ!」
「じゃあ、今回が初めての例なんだな」
「お前は何もわかっていない、おそらく……」
「キャアアアアア――――――――――――!!!」
あの声はミリアか? 貴族たちからどよめきが起こった、何が起きたのかさっぱり理解できない。
「くそっ! やはりか!」
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「まて、メリッサ!」
僕はそれを追いかけた、声がする方向にメリッサは向かった、そして奥に進み 扉を開く。そこで想像だにしない光景が眼に飛び込んだ。──ベッドの上に裸のミリアがおり、その手前には地面から生えた大きな槍が深々と刺さったメンフェスの姿があった。
メンフェスの胸から血が流れておりおそらく即死だろう。その様子を見るやいなや、ミリアの元にメリッサは駆け寄る。この光景どこかで──そうか、ヴァルハラの死者の光景に似ている……!
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――え、なんだって?――
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