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宿命と対決
第百二十三話 鋼鉄の心
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人は安らぎを求める。誰もが孤独を望みながら、寂しさから何かに救いを求める。人間の性だ。アウティスは神による安らぎを願った。僕とメリッサは互いの祝福、家族という安らぎを願った。
救われるのはアウティスか、僕か、人間は生まれた時から罪を背負い続けているのなら、──それなら、少しぐらい救われたってバチが当たらないだろう?
僕はアウティスから距離をとり、急いでクロスボウの弦を巻き取った。矢をセットして、走って追いかけてくるアウティスに狙いを定める。
──アウティスの身体能力から、行動パターンを分析。肉体の運動を認識。イメージの構築。シミュレート開始──
簡単に言えば未来が見えるといった方がいいだろう、僕にはアウティスの動きの先がなんとなく理解出来る。僕が引き金を引いた時、走るアウティスの足に矢が刺さった。
「何だと……!」
ぶっすりと刺さり血が流れていく、アウティスは面食らっている。貴族だったなら狩りの難しさは知っているはずだ。
何度か述べたように動く部分を狙うのは難しい。ボールなど慣性が働いて、回転がかかりながらも、規則的に動くものは慣れれば達人なら当てられる。だが、動物は違う、対象がどこに動くか予想出来ない、特に早く動く部分は。
不規則に動くものを狙い定めて当たるものではない。そう、僕には未来が見えたんだ。
アウティスは治癒のため、屈み、肉体の傷を回復させてメリメリと音を立てて矢が外に押し出てくる。その間僕は距離をとり身を道の角に隠し、クロスボウをセットする。
──急にアウティスは大声を上げながら笑い出した、何だ狂ったのか、元からだと思うが。
「ははは! 見事だ佑月。私もお前を調査した甲斐があったよ」
こっちはお前など知りたくもない、早く消えてもらいたいよ。だが僕の心情はそっちのけで弁をアウティスは続ける。
「これほどの腕、戦いのセンスなら、日向直子を超えたのも納得が出来る。どうだ私の話を聞いてみないか!」
「断る」
「この生存戦争の果てにお前は何を望むか想像は出来る。あの女と一緒になるのだろう? わかった、別に問題ない好きにすればいい。だが私の同士になれ! 神の上の統治を認めるのだ。
そうすれば、教会団はお前を狙うなどしない、それでいいだろう──佑月?」
僕はため息をついた、わかってないな。
「……僕たちはね、結婚するんだ」
「教会団が支援しよう。歴史にまたとない式になるだろう」
「違うね」
「何……!?」
「お前たちがいるような教会で式を挙げたくないね。歪んだ狂信者たちの前で神への誓いの言葉なんて言えないよ」
アウティスはその答えひどく満足したらしく大笑いをし始めた。
「くくく……ははは……! 素晴らしい! それでこそ私の宿命の敵だ! ふふふ、ははは──!」
「……それもお断りする」
準備が整ったので、言葉より戦いで意思を示す、クロスボウの矢がアウティスの胸を貫いた! 深々と刺さり臓器が損傷したのだろう。やつは血を吐き、上半身が倒れ込む。
「そうだ! いいぞ! もっと私を楽しませるのだ! 試練こそが私を神の御許へと近づかせる! いいぞ!」
アウティスの叫びに対して僕は冷めた様子で、「……マゾかよ」とつぶやき、走り去っていく。距離があるから銃を撃っても無駄だ、時間変革能力で無効化される。メリッサと合流が難しい以上できるだけ無駄弾の消費は避けたい。だからサブウェポンとしてクロスボウを扱っている。
僕は、小部屋に入り扉の閂を閉める。クロスボウの弦を巻き取って置き、扉に向かってMP7A1を構えてアウティスを待つ。コツコツと静かに足音が近づいてくる。僕は息を整えていく。アウティスが扉を開けようとドアのノッカーを鳴らす!
どっどっどと乱暴な音が鳴り響く、扉を開く様子がないとわかると今度はドアを叩いていく、ドンドンと野蛮な音とドアの軋む音が響き渡る、まさに扉の叫び。
その瞬間僕はバースト射撃でドアごと弾丸によってあいつの体を貫く! ドドッドっとリズミカルな音と共に鳴り響く銃声、しかし、アウティスの笑い声が聞こえる。その刹那奴はドアを蹴破ってきた! ズンと音をたてて壊れ落ちる扉。
──アウティスは無傷だった。銃で撃たれることを察していたのか、それとも一度撃たれた後、時間変革能力で銃弾を避けておいてドアを蹴破ったのか、判別がつかないが、そうそう奇襲で狙っても通じる相手でもないか。
こちらを見てにやつきながらアウティスが近づいてくる! するとアウティスは少しつまずく。……僕はあらかじめ入り口にロープを仕掛けておいた。
アウティスの体勢が崩れたときを狙ってクロスボウに矢をセットし放つ! ザシュりと空気を切り裂き肉を喰い破り首から肩にかけて深々と刺さる!
「貴様……!」
うずくまるアウティス、奴に対し銃を放った! ドォンと部屋の中で反響した音とともに頭がふっとぶ瞬間が見えた……が、アウティスは無傷でドアの前に立っている。時間変革能力か……。
なるほどするとさっきのドアごと銃で撃った時、こうなることをあいつは読んでいたので、時間変革能力を使わずに、避けていたのか。連続することによるタイムトラブルを考えていたんだな。あらためて強敵ぶりを見せつけられる。
中腰体勢の僕にアウティスは蹴りを入れてきた、僕はそれを紙一重でかわす。だが、アウティスは距離を狭めこちらの膝を右手で突いてくる! 僕は足を蹴りながら距離をとってかわし、立ち上がる。
平然とほくそ笑むアウティス、部屋は狭い、壁際に追い込まれる僕だった。左手で僕の頭を貫こうとしたので、それを寸前でかわしアウティスの指先は壁を貫き、コンクリートを砕く鈍い音を立てて、その破片がボロボロと落ちてくる。
すかさず右手で僕の腹部を狙ってくる! 僕は距離を詰め、アウティスのあごに銃を当てそのまま引き金を引いた。
銃声ととともに頭の一部がふっとぶ、しかし、直前まで時間を飛んで、なかったことにしたのだろう、無傷でアウティスはこちらへと身構えている。僕は奴の側面へと回り込もうとしたため右手で払ってくるが僕は寸前でかわす。
ベッドの上にのる僕。アウティスが僕に向かって突きを放とうとしたその時――!
……かかった!――
奴の足にトラバサミが食い込みアウティスは倒れ込んだ。
「なっ!? しまった!」
ろくに身動きできず痛みとともに動揺するコイツに銃を構える僕、直前に時間変革能力を使ったからもう使えまい。これで終わりだよ、アウティス……!
救われるのはアウティスか、僕か、人間は生まれた時から罪を背負い続けているのなら、──それなら、少しぐらい救われたってバチが当たらないだろう?
僕はアウティスから距離をとり、急いでクロスボウの弦を巻き取った。矢をセットして、走って追いかけてくるアウティスに狙いを定める。
──アウティスの身体能力から、行動パターンを分析。肉体の運動を認識。イメージの構築。シミュレート開始──
簡単に言えば未来が見えるといった方がいいだろう、僕にはアウティスの動きの先がなんとなく理解出来る。僕が引き金を引いた時、走るアウティスの足に矢が刺さった。
「何だと……!」
ぶっすりと刺さり血が流れていく、アウティスは面食らっている。貴族だったなら狩りの難しさは知っているはずだ。
何度か述べたように動く部分を狙うのは難しい。ボールなど慣性が働いて、回転がかかりながらも、規則的に動くものは慣れれば達人なら当てられる。だが、動物は違う、対象がどこに動くか予想出来ない、特に早く動く部分は。
不規則に動くものを狙い定めて当たるものではない。そう、僕には未来が見えたんだ。
アウティスは治癒のため、屈み、肉体の傷を回復させてメリメリと音を立てて矢が外に押し出てくる。その間僕は距離をとり身を道の角に隠し、クロスボウをセットする。
──急にアウティスは大声を上げながら笑い出した、何だ狂ったのか、元からだと思うが。
「ははは! 見事だ佑月。私もお前を調査した甲斐があったよ」
こっちはお前など知りたくもない、早く消えてもらいたいよ。だが僕の心情はそっちのけで弁をアウティスは続ける。
「これほどの腕、戦いのセンスなら、日向直子を超えたのも納得が出来る。どうだ私の話を聞いてみないか!」
「断る」
「この生存戦争の果てにお前は何を望むか想像は出来る。あの女と一緒になるのだろう? わかった、別に問題ない好きにすればいい。だが私の同士になれ! 神の上の統治を認めるのだ。
そうすれば、教会団はお前を狙うなどしない、それでいいだろう──佑月?」
僕はため息をついた、わかってないな。
「……僕たちはね、結婚するんだ」
「教会団が支援しよう。歴史にまたとない式になるだろう」
「違うね」
「何……!?」
「お前たちがいるような教会で式を挙げたくないね。歪んだ狂信者たちの前で神への誓いの言葉なんて言えないよ」
アウティスはその答えひどく満足したらしく大笑いをし始めた。
「くくく……ははは……! 素晴らしい! それでこそ私の宿命の敵だ! ふふふ、ははは──!」
「……それもお断りする」
準備が整ったので、言葉より戦いで意思を示す、クロスボウの矢がアウティスの胸を貫いた! 深々と刺さり臓器が損傷したのだろう。やつは血を吐き、上半身が倒れ込む。
「そうだ! いいぞ! もっと私を楽しませるのだ! 試練こそが私を神の御許へと近づかせる! いいぞ!」
アウティスの叫びに対して僕は冷めた様子で、「……マゾかよ」とつぶやき、走り去っていく。距離があるから銃を撃っても無駄だ、時間変革能力で無効化される。メリッサと合流が難しい以上できるだけ無駄弾の消費は避けたい。だからサブウェポンとしてクロスボウを扱っている。
僕は、小部屋に入り扉の閂を閉める。クロスボウの弦を巻き取って置き、扉に向かってMP7A1を構えてアウティスを待つ。コツコツと静かに足音が近づいてくる。僕は息を整えていく。アウティスが扉を開けようとドアのノッカーを鳴らす!
どっどっどと乱暴な音が鳴り響く、扉を開く様子がないとわかると今度はドアを叩いていく、ドンドンと野蛮な音とドアの軋む音が響き渡る、まさに扉の叫び。
その瞬間僕はバースト射撃でドアごと弾丸によってあいつの体を貫く! ドドッドっとリズミカルな音と共に鳴り響く銃声、しかし、アウティスの笑い声が聞こえる。その刹那奴はドアを蹴破ってきた! ズンと音をたてて壊れ落ちる扉。
──アウティスは無傷だった。銃で撃たれることを察していたのか、それとも一度撃たれた後、時間変革能力で銃弾を避けておいてドアを蹴破ったのか、判別がつかないが、そうそう奇襲で狙っても通じる相手でもないか。
こちらを見てにやつきながらアウティスが近づいてくる! するとアウティスは少しつまずく。……僕はあらかじめ入り口にロープを仕掛けておいた。
アウティスの体勢が崩れたときを狙ってクロスボウに矢をセットし放つ! ザシュりと空気を切り裂き肉を喰い破り首から肩にかけて深々と刺さる!
「貴様……!」
うずくまるアウティス、奴に対し銃を放った! ドォンと部屋の中で反響した音とともに頭がふっとぶ瞬間が見えた……が、アウティスは無傷でドアの前に立っている。時間変革能力か……。
なるほどするとさっきのドアごと銃で撃った時、こうなることをあいつは読んでいたので、時間変革能力を使わずに、避けていたのか。連続することによるタイムトラブルを考えていたんだな。あらためて強敵ぶりを見せつけられる。
中腰体勢の僕にアウティスは蹴りを入れてきた、僕はそれを紙一重でかわす。だが、アウティスは距離を狭めこちらの膝を右手で突いてくる! 僕は足を蹴りながら距離をとってかわし、立ち上がる。
平然とほくそ笑むアウティス、部屋は狭い、壁際に追い込まれる僕だった。左手で僕の頭を貫こうとしたので、それを寸前でかわしアウティスの指先は壁を貫き、コンクリートを砕く鈍い音を立てて、その破片がボロボロと落ちてくる。
すかさず右手で僕の腹部を狙ってくる! 僕は距離を詰め、アウティスのあごに銃を当てそのまま引き金を引いた。
銃声ととともに頭の一部がふっとぶ、しかし、直前まで時間を飛んで、なかったことにしたのだろう、無傷でアウティスはこちらへと身構えている。僕は奴の側面へと回り込もうとしたため右手で払ってくるが僕は寸前でかわす。
ベッドの上にのる僕。アウティスが僕に向かって突きを放とうとしたその時――!
……かかった!――
奴の足にトラバサミが食い込みアウティスは倒れ込んだ。
「なっ!? しまった!」
ろくに身動きできず痛みとともに動揺するコイツに銃を構える僕、直前に時間変革能力を使ったからもう使えまい。これで終わりだよ、アウティス……!
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※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
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