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ウェディングロード
第百三十八話 断崖絶壁
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夜の時間が訪れる。僕たちは火を囲み夕食を楽しんでいた。食事準備の際、日が傾いていたため、大型な動物を狩ってさばくのは時間がかかるので、小動物の鳥やウサギを僕は狩っておいた。栄養摂取が困難なこの時代、タンパク質は重要だ。
それにしてもアデルやブライアンは狩りがヘタだ。これは指導が必要かな、まあ、僕も最初は一匹も狩れなかったから、そんなもんだろう。少しずつ鍛えていくことにするか。
メリッサとレイラがせっせと料理をして、できあがったメニューを見て、今日も頑張ってよかったと、感慨に浸る。今日はウサギ肉の煮込み料理と鶏肉のチーズ焼きとパンだ。
まずはウサギ肉の煮込みを食べてみる。山菜や人参がじっくりと煮込まれていて、野菜の苦みと甘みが口に広がり食をどんどん進んでいく。
ウサギ肉をかじると、最初は固いかなと思ったけど噛めばさっぱりとした肉の旨みがしみこんできて、牛や豚や鳥と違う独特な食感と味のおいしさに、日本では味わえない異国の旅をしてきたのだと実感がした。
鶏肉のチーズ焼きを食べようと見る。鶏肉とチーズの香りがまず嗅覚を楽しませてくれる。う~ん甘い匂い、よだれが出てきた。
フォークで鶏肉を刺すとじわっと肉汁があふれてきて、それが何やらもったいない気分になって、早く早くと、口に運ぶ。
うまいなあ~、鶏肉の旨みとチーズの甘さと苦さが交わり、舌で転がしながら噛みしめた。噛むとどんどん味が交わり合って、相乗効果でぎっしりと濃い肉本来の旨味が際立ってくる。余りの美味にほんのり幸せ気分になってきた。
妻が料理上手いと人生楽しいなあ。こんな困難な山登りしながらもレジャー気分でうきうきしてくた、ひっそりとメリッサが僕の表情を見て目で料理の出来を尋ねているようだ。
「今日の料理の出来はどうだ」
「君の料理に美味い以外の言葉を付け加えるとしたら、愛情と幸せのスパイスかな」
「なんだその、変な感想、ふふ……」
笑みがこぼれていく、幸せだなあ。ブライアンはメリッサの料理を初めて食べるので、すごく驚いた様子で「うまい! うまいですよ!」と興奮している。ミーナも「おいしー」と言って、ニコニコしながら食べている。レイラも嬉しそうに、
「ほんとメリッサさんの料理さばきは勉強になります。私も頑張らなきゃ」
と声を上げると、
「おお頑張れ」
と、そうやってアデルがはっぱをかける。お前は狩りを頑張れ。ナオコはというと急いで食べるくせがあるため、一番早く食べてしまう。
「おいしかった! ママ、ありがとう!」
その言葉に嬉しそうなメリッサは「おそまつさま」とそつなく返す。できた妻だ。自慢することもなく、誇り高い。僕の鼻が高くなる嫁だ。ああでも、僕は鼻ぺちゃだよ、悪かったね。
ユリアが食べ終わると歌いながら踊り始めた。喜びの表現なんだろうけど、僕が食べ終わるのを待ってくれ、踊りを見るのは好きだからじっくり見たい。
サラは何故か泣いている、つぶやいている声に耳を澄ますと「美味しい……」と言っている。なんだ、うれし泣きか。エイミアは珍しく食事の後片付けを率先してやっている。
「メリッサちゃんに、おいしいもの作ってもらっているから、こんなことでもしないとねー」
そりゃ、貴女遊んでばかりだからね、まあ、ナオコの面倒を見てもらっているから別にいいか。皆とともに味わう食べるという幸福のひととき、僕は今日、生まれて来たことを感謝しながら食事を終える。そう言えばブライアンは先に山を登った経験があると言っていた。そして行く先の状態が僕は気になった。
「ブライアン、どこまで山を登っていたんだ」
僕がそう尋ねるとブライアンは何か考えをめぐらせながら、あごに手を当てる。
「もう一日ぐらい歩いたところですね。そこで敵と出会い引き返しました。そのまえに気をつけないといけないことがあります」
「なんだ?」
「途中、道が途切れて断崖絶壁を登らないといけないことです。ちょっと子ども連れだとキツイかもしれませんね」
「なるほど、そうか、そこら辺は何とかしよう」
僕たちは大体の明日の方針が決まると雑談をした後、眠りについた。僕はもちろん、ナオコとメリッサを抱きしめながら眠る。柔らかいんだな、これが。
朝みんなが目を覚ますと山を登り始めた。ナオコに合わせてゆっくりと歩く、しばらくすると、ブライアンが言っていた断崖絶壁に出会う。エイミアが僕のほうを見て「どうする?」と尋ねてきた。そんなの決まっているさ。
「とりあえず、僕はナオコを背負って登る」
本気? と言った表情でこちらを見るエイミアだったが、僕の決心が固いのを感じ取ると自身の金髪の髪を触った。
「いいわ、私が貴方の分の荷物を頂上まで持っていってあげる」
と自信たっぷりに言って、僕から荷物をひったくると悠々と片手で持ち、エイミアは崖を登り始める。それに続いて、いつも寝ながら歩いていたユリアが急に目を覚まして崖を登り始めた。
「どうせ、私が一番初めに上に着きます、ロッククライミングは得意ですから」
自信たっぷりの発言にエイミアはそれに苦笑しながら言う。
「あらら、私と競争する気? いいわ、勝負よ」
ブライアンはというと一回登っているので余裕があるのか、
「僕はミーナを支えながら登ります」
と自信を示しながら言って二人して登り始める。
「しゃあねえ、登るか」
アデルはというとそう言っていやそうに崖を登る。僕が「ちょっと待て」と言葉を投げたのだが、かまわず登り始めた。それに続いてサラは決心した様子で登っていく。小さいとはいえヴァルキュリアだな。
僕は気持ちを引き締めてナオコを背負い、ロープで自分たちを縛った。メリッサはどうやら心配そうだ。
「私のほうが力あるし、ナオコは私が背負おうか?」
「いや、これは僕たちの試練だ。僕とメリッサとナオコが本当の家族になるための。だからやらせてくれ」
「そうか、佑月……わかった。いざという時は私がお前を引っ張る、一緒に行こう」
僕とメリッサは顔を見合わせ頷く。少しのあいだ手をつなぎ、手が温まると僕が登り始める。下を見下ろすとレイラがおびえた様子で立ちすくんでいた。
「レイラ、僕たちについてこい! そばにいれば、いざという時どうにかなるから」
地表にいる彼女に向けて叫ぶ僕。レイラは決心したようで崖を登り始めた。
風が吹いてくる。寒い。僕はナオコを背負い、少しずつ崖を上へと目指して登っていく。これはなかなか度し難い。
「ナオコ! 下を見るな僕にしがみつくんだ」
「うん! わかったパパ!」
僕が下を見ると恐怖でレイラが途中で固まっている。強気なメリッサはそれを見ると、
「私の背中を見ろ! 下を見るな! 自分はできるんだとつぶやきながら付いてこい!」
「は、はい!」
レイラは震える手で崖を少しずつ手をのばして登っていく。そう、それでいいんだ。
一時間ぐらい登っただろうか、腕はガタガタで足が震えてくる。メリッサが「大丈夫か佑月」と声をかける。僕は「このくらいなんともないさ!」と大声を上げた。その時だった──突風が僕たちを襲う。
「きゃああぁぁぁ」
上の方で悲鳴が聞こえる。僕は必死に崖にしがみつき、二人分の命を支える。
「メリッサ! 大丈夫か!」
「もちろんだ! レイラ大丈夫か!」
「は、はい……!? いやあぁぁぁぁ──!」
こらえきれずに崖から足を滑らせるレイラ! このままだと落ちる!!
それにしてもアデルやブライアンは狩りがヘタだ。これは指導が必要かな、まあ、僕も最初は一匹も狩れなかったから、そんなもんだろう。少しずつ鍛えていくことにするか。
メリッサとレイラがせっせと料理をして、できあがったメニューを見て、今日も頑張ってよかったと、感慨に浸る。今日はウサギ肉の煮込み料理と鶏肉のチーズ焼きとパンだ。
まずはウサギ肉の煮込みを食べてみる。山菜や人参がじっくりと煮込まれていて、野菜の苦みと甘みが口に広がり食をどんどん進んでいく。
ウサギ肉をかじると、最初は固いかなと思ったけど噛めばさっぱりとした肉の旨みがしみこんできて、牛や豚や鳥と違う独特な食感と味のおいしさに、日本では味わえない異国の旅をしてきたのだと実感がした。
鶏肉のチーズ焼きを食べようと見る。鶏肉とチーズの香りがまず嗅覚を楽しませてくれる。う~ん甘い匂い、よだれが出てきた。
フォークで鶏肉を刺すとじわっと肉汁があふれてきて、それが何やらもったいない気分になって、早く早くと、口に運ぶ。
うまいなあ~、鶏肉の旨みとチーズの甘さと苦さが交わり、舌で転がしながら噛みしめた。噛むとどんどん味が交わり合って、相乗効果でぎっしりと濃い肉本来の旨味が際立ってくる。余りの美味にほんのり幸せ気分になってきた。
妻が料理上手いと人生楽しいなあ。こんな困難な山登りしながらもレジャー気分でうきうきしてくた、ひっそりとメリッサが僕の表情を見て目で料理の出来を尋ねているようだ。
「今日の料理の出来はどうだ」
「君の料理に美味い以外の言葉を付け加えるとしたら、愛情と幸せのスパイスかな」
「なんだその、変な感想、ふふ……」
笑みがこぼれていく、幸せだなあ。ブライアンはメリッサの料理を初めて食べるので、すごく驚いた様子で「うまい! うまいですよ!」と興奮している。ミーナも「おいしー」と言って、ニコニコしながら食べている。レイラも嬉しそうに、
「ほんとメリッサさんの料理さばきは勉強になります。私も頑張らなきゃ」
と声を上げると、
「おお頑張れ」
と、そうやってアデルがはっぱをかける。お前は狩りを頑張れ。ナオコはというと急いで食べるくせがあるため、一番早く食べてしまう。
「おいしかった! ママ、ありがとう!」
その言葉に嬉しそうなメリッサは「おそまつさま」とそつなく返す。できた妻だ。自慢することもなく、誇り高い。僕の鼻が高くなる嫁だ。ああでも、僕は鼻ぺちゃだよ、悪かったね。
ユリアが食べ終わると歌いながら踊り始めた。喜びの表現なんだろうけど、僕が食べ終わるのを待ってくれ、踊りを見るのは好きだからじっくり見たい。
サラは何故か泣いている、つぶやいている声に耳を澄ますと「美味しい……」と言っている。なんだ、うれし泣きか。エイミアは珍しく食事の後片付けを率先してやっている。
「メリッサちゃんに、おいしいもの作ってもらっているから、こんなことでもしないとねー」
そりゃ、貴女遊んでばかりだからね、まあ、ナオコの面倒を見てもらっているから別にいいか。皆とともに味わう食べるという幸福のひととき、僕は今日、生まれて来たことを感謝しながら食事を終える。そう言えばブライアンは先に山を登った経験があると言っていた。そして行く先の状態が僕は気になった。
「ブライアン、どこまで山を登っていたんだ」
僕がそう尋ねるとブライアンは何か考えをめぐらせながら、あごに手を当てる。
「もう一日ぐらい歩いたところですね。そこで敵と出会い引き返しました。そのまえに気をつけないといけないことがあります」
「なんだ?」
「途中、道が途切れて断崖絶壁を登らないといけないことです。ちょっと子ども連れだとキツイかもしれませんね」
「なるほど、そうか、そこら辺は何とかしよう」
僕たちは大体の明日の方針が決まると雑談をした後、眠りについた。僕はもちろん、ナオコとメリッサを抱きしめながら眠る。柔らかいんだな、これが。
朝みんなが目を覚ますと山を登り始めた。ナオコに合わせてゆっくりと歩く、しばらくすると、ブライアンが言っていた断崖絶壁に出会う。エイミアが僕のほうを見て「どうする?」と尋ねてきた。そんなの決まっているさ。
「とりあえず、僕はナオコを背負って登る」
本気? と言った表情でこちらを見るエイミアだったが、僕の決心が固いのを感じ取ると自身の金髪の髪を触った。
「いいわ、私が貴方の分の荷物を頂上まで持っていってあげる」
と自信たっぷりに言って、僕から荷物をひったくると悠々と片手で持ち、エイミアは崖を登り始める。それに続いて、いつも寝ながら歩いていたユリアが急に目を覚まして崖を登り始めた。
「どうせ、私が一番初めに上に着きます、ロッククライミングは得意ですから」
自信たっぷりの発言にエイミアはそれに苦笑しながら言う。
「あらら、私と競争する気? いいわ、勝負よ」
ブライアンはというと一回登っているので余裕があるのか、
「僕はミーナを支えながら登ります」
と自信を示しながら言って二人して登り始める。
「しゃあねえ、登るか」
アデルはというとそう言っていやそうに崖を登る。僕が「ちょっと待て」と言葉を投げたのだが、かまわず登り始めた。それに続いてサラは決心した様子で登っていく。小さいとはいえヴァルキュリアだな。
僕は気持ちを引き締めてナオコを背負い、ロープで自分たちを縛った。メリッサはどうやら心配そうだ。
「私のほうが力あるし、ナオコは私が背負おうか?」
「いや、これは僕たちの試練だ。僕とメリッサとナオコが本当の家族になるための。だからやらせてくれ」
「そうか、佑月……わかった。いざという時は私がお前を引っ張る、一緒に行こう」
僕とメリッサは顔を見合わせ頷く。少しのあいだ手をつなぎ、手が温まると僕が登り始める。下を見下ろすとレイラがおびえた様子で立ちすくんでいた。
「レイラ、僕たちについてこい! そばにいれば、いざという時どうにかなるから」
地表にいる彼女に向けて叫ぶ僕。レイラは決心したようで崖を登り始めた。
風が吹いてくる。寒い。僕はナオコを背負い、少しずつ崖を上へと目指して登っていく。これはなかなか度し難い。
「ナオコ! 下を見るな僕にしがみつくんだ」
「うん! わかったパパ!」
僕が下を見ると恐怖でレイラが途中で固まっている。強気なメリッサはそれを見ると、
「私の背中を見ろ! 下を見るな! 自分はできるんだとつぶやきながら付いてこい!」
「は、はい!」
レイラは震える手で崖を少しずつ手をのばして登っていく。そう、それでいいんだ。
一時間ぐらい登っただろうか、腕はガタガタで足が震えてくる。メリッサが「大丈夫か佑月」と声をかける。僕は「このくらいなんともないさ!」と大声を上げた。その時だった──突風が僕たちを襲う。
「きゃああぁぁぁ」
上の方で悲鳴が聞こえる。僕は必死に崖にしがみつき、二人分の命を支える。
「メリッサ! 大丈夫か!」
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