189 / 211
二つの死闘
第百八十九話 迫る試合
しおりを挟む
話はソフィアにひととき変わる。彼女は佑月たちとはぐれた後、速やかに彼女のパートナーであるクラリーナの元に急いだ。彼女が心配だったのもあるが、エイミアが佑月につぶやいた言葉、「佑月、あなた、気づかないの……?」という文言がどうしても気になった。
あの黒騎士には何かある。実はクラリーナも不思議がっていた。”あれほどの実力ならそれこそ名が売れたエインヘリャルだろうに”。何故誰も“彼“の能力がつかめないのか。きっと彼は私をも超える力の持ち主であると。
アウティスや審問官の推薦によって、彼はやってきた、と。いったいどこの誰なのか。おそらくアウティスやエイミアなどごく一部しか知られていないだろう。きっとこれには何かある。
考えながらアメリーのこもった家にたどり着く。無論周りは騎士でいっぱいで、ほかのエインヘリャルを寄せ付けないよう、騎士団のエインヘリャルまで動員されていた。彼らは命令があるまで、内部に侵入してはならないとクラリーナは厳命した。
オーチカ共同組の者も近づいた形跡がない。奴らにとって予定通りなのだろう。それよりも、周りの騎士たちに、現状を報告させた。
「ねえ、貴方たち、クラリーナの様子、どう? 何か異変あった?」
「いえ、特に何も。隊長は単独救出にこだわっているようで、連絡をよこしても、ただ待機を命じるだけでした」
傍にいた若い騎士がため息をつきながら嘆いた。彼らも待つだけの仕事に飽きてきたのだろう。
「そう……、あの娘はまだ、相手の実力を測っているの。ということは一向に相手の動きはなさそうね。ところで審問官たちに要請した援護や、上層部にオーチカ共同組のルール違反で失格にするよう求めたのは、どうなったの?」
「それについては私が説明します」
ソフィアが後ろを見ると参謀長のリチャードが深刻そうな顔で彼女の問いに答えた。
「まず、審問官の動向です、彼らは比較的協力的でありました。クラリーナ殿下が差配した、ララァ様の説得がきいたのでしょう、珍しく騎士団と対立する様子はありませんでした。ただ……」
「ただ?」
「審問官からの援軍は却下されました、あくまで聖騎士たちで事を処理せよと。それどころか、証拠をつかむために、アメリー一味を逮捕せよと逆に要請されました」
「ちょっとまって、大司教の汚職の証拠の書類をあっちに送ったはずよね?」
「はい、ですが、むしろ、大司教の異端裁判に必要な証拠を欲しがっているようです、困ったものです」
「そんな場合じゃないでしょう、現に幼い女の子が人質に取られて、一刻も早く救出できるようするのが教会団の務めでしょ。まったく政治家にでもなった気かしら。で、上層部はどういってるの?」
「残念ですが、オーチカ共同組の失格は認められませんでした。彼らの言い分ではアメリーが勝手にやったことで自分たちは関係ないと、上層部はそれを認めました。大会を開いた以上なるべく公平に扱うべきだとのことです」
「無茶苦茶だわ、これじゃあ、ルールを守るのが馬鹿らしいじゃないの、後々に響くでしょうね」
「困ったものです、我々としては立つ瀬がありません」
「大体はつかめた、じゃあ、クラリーナに会っていい?」
「もちろん貴女のご自由に、ソフィア様」
そう言って軽くリチャードはウインクをした。まったく、とつぶやきながら引きつった顔で空き家へと入るソフィアだった。
彼女はクラリーナとアメリーがいる部屋に向かうと、クラリーナは目をつぶり、足を組んで椅子に座っていた。対して、アメリーは威風堂々と深々と椅子に座り、鞘のついた剣を立てていた。
どうやら我慢比べが繰り広げられていたらしい。お互いに、隙を見せるわけにはいかなかったのだろう。それを察したソフィアはアメリーに気づかれないよう虚波を送った。
『クラリーナ応答して、隣に今いるのわかる?』
『ええ、貴女の気配は独特ですから、どうしました?』
『あなたに報告することがたくさんあるわ、まず、私たちの試合は完勝だったわ、エインヘリャル2人でも十分だったわね、黒騎士がいれば』
『そうですか、彼の実力はわかりましたか?』
『全然よ、つかみどころが全くなし、あそこまで行くと達人の域に達しているわね。本当に恐ろしい者は殺気すら出さず、相手が死んだことすら悟らせずに、殺すから』
『貴女から見てもそう見えましたか。いったい彼は誰なんでしょう?』
『わからないけど、そこにいたエイミアが気になることを言ってたわ』
『なんです?』
『佑月にむかって、何故正体がわからないのかとむしろ尋ねていたのよ、貴女、どう思う?』
『意図はわかりませんが、エイミアは何か彼の正体を知っていたようでした、その上で敵視していたようです。しかし佑月さんとの関係はわかりませんね、アウティスはいったい何を考えているのでしょうか』
『それに加えてさっき聞いた情報だけど、審問官の奴ら本気で協力する気はないらしいわね』
『ララァはしくじったのです?』
『いいえ、好感触だったけど、むしろ大司教の失態について興味があるそうよ』
『それは……、おそらく審問官たちは粛清を求めているのでしょう。彼らにとって身分の高い欲深な神職者は汚物だと考えているんでしょうね。もう、終末が近いというのに、身内同士で、まったく』
『もしかして、貴女の騎士団長の件、審問官たちにはめられたんじゃ。貴女不思議がっていたでしょう、あまりにも証拠がそろいすぎて、逆に怪しいと』
『団長は、常に神に忠実で教会団にも篤く忠誠を誓う誠の騎士でした。反乱なんて起こすはずがありません、しかも闘技大会が差し迫る中、あの方が神に背く真似などするでしょうか。ましてや、もともと彼が選手として戦うはずだったのです、あの方はとても楽しみにしていました。
自分が引退する前に騎士としてこれ以上はない誉を預かったと。そもそも上層部が彼を反逆者と認めること自体がおかしいのです。教会団結成から聖帝猊下のお傍に仕えていた、あの方を討つなど、到底考えられません、やはり……』
『クラリーナ、その上層部だけど、オーチカ共同組の失格を認めなかったわ』
『何ですって! マレサ様はご存じなのですか⁉ あの方自ら今回のルール変更を求めたと聞きます、それがなぜ……』
『不自然よね、あの頑固なマレサ様が和を乱す奴を放っておくなんて。むしろ、過激な処置を求めるような人なのに』
『キーはアウティスですね、彼は最近不自然な行動ばかりしています。日向直子が死んでから、特に』
『……いつか戦う必要がありそうね』
『まずは証拠をつかまなければ。ところで、佑月さんは元気でしたか? 娘さんがこのような状況になって、メリッサさんも気が気でないでしょう』
『メリッサちゃんはともかく佑月は冷静そのものだったわ、流石、日向直子を倒した男ね、肝がすわっているわ』
『惚れましたか? ソフィア』
『貴女が彼を略奪したら、私も分け前をもらうわ』
『失礼な、私は純粋に彼のことを想って……』
『あーはいはい、そういうのいいから、いいから。あ、そうそうちゃんと食事食べてる? 女の子は健康に気をつけないと、一気に老けるわよ』
『食べますよ、今から、とりあえず甘いシチューを──』
クラリーナとソフィアは、目をつぶりながらコミュニケーションをとり続けた。しかし、アメリーの方は気が気でないのか、目の前に危険人物がいたまま一歩も動けずに待つしかなかった。そうやってクラリーナはナオコの安全を守っていたのだった。
────────────────────────────
────
─
「へくしっ!」
僕は教会団の試合が終わって館に帰り、そのまま寝てしまっていた。その時メリッサは作戦を練りこんでいたのだろう、かなり夜遅くまで起きていたみたいだ。黒騎士の件を相談したかったが今彼女に負担になることはしたくない。
ただでさえ急に試合の指揮を任せて、大変なんだ。だから僕はそっとしておいた。
その次の日、僕はメリッサの訓練指導を見つめていた。彼女たちは意気盛んに訓練に励んでいた。しかしなんだ、今の寒気は、思わずくしゃみをしてしまったが、まさかよからぬ予兆か?
いや考えても仕方あるまい。僕はメリッサからチーム全体への叱咤に聞き耳を立てていた。
「佑月とエイミアがいない分、陣形をコンパクトにしろ! スペースを敵に与えるな!」
どうやら陣形を組みなおしているらしい、当然だろう、そのままでは連携に支障が出る、しかも主戦力が抜けてしまうんだ、戦力がガタ落ちしたままで戦わなければならない。どういう手段をとるか僕はメリッサから聞いていない。
彼女は必要以外のことはわざわざ僕に告げないのが日常だ。おそらく、試合はあっちが面倒みるから、僕はナオコの救出に集中しろということだろう。
「ブライアン! 何をしている、お前が動いて皆をガードしなくて、どうする! それで勝つつもりか!」
「レイラ! お前がエインヘリャルのストライカーだ! 戦わず逃げてどうする! 銃を構えろ!」
どうやら、ブライアンとレイラが期待通りの動きをしないらしい。ブライアンは一回戦で見せたように、試合になれば戦う姿勢をとってくれたから、メリッサの指揮次第で力を発揮するだろうが、レイラは別だ。なら、あとでフォローが必要だな。
しかしメリッサの策とはなんだ、相手の能力がつかめないままでどうやって勝つつもりだろうか、自分がこの状況を選んでおきながら、今更ながら、彼女に重責を負わせていることを後悔していた。
メリッサに何かあったら……、いや、今はナオコを救うために、考えを巡らせることに集中しないと、エイミアをバディーに選んだものの、彼女は何をするかわからない。頼れるのは自分だ。エイミアを選んだのは、彼女ならアメリーと渡り合えることと、メリッサが心配だったからだ。
何せ相手はメリッサの師だ。クラリーナの件で計算違いが生まれたが、本来なら、もっと優れた手段を打ってくるはずだ。また、メリッサの手の内を読まれる可能性がある。アンタッチャブルなエイミアを選んだのはそのためだ。
良い意味でも悪い意味でも予想を上回る彼女なら策を弄するアメリーにうってつけだ。少なくともアメリーを封じてくれることを期待できる。戦術家のメリッサにはアメリーは危険すぎるんだ。策を逆手に取られる可能性がある。
口にはしなかったが、メリッサを選ばなかったのはそのためだ。とりあえずリーダーの責任としてレイラの様子を見てみるか。
訓練が終わった後、レイラは廊下でヤカバのルミコを抱いて、夕焼けを見つめていた。僕はそっと彼女に近づく。
「ルミコちゃん、どうしよう、私……。本当に戦わなきゃいけないのかしら……。嫌だなあ……」
「いやでも戦わなきゃいけない時があるさ」
「誰⁉ あっ、佑月さん……」
そう言って彼女はうつむいて、僕と視線を合わせづらくしている。僕はそっと彼女の肩を抱く。
「人間いつかは戦わなきゃいけない。もちろん、逃げたっていい。でもね、生きる上で、負けてはならない戦いがあるんだ。君の人生はどうだったかはすべて知っているつもりはない。
だけどね、誰かに頼ってばかりじゃあ、自分の運命を変えられない、ずっと誰かの奴隷さ」
「奴隷……」
彼女は生前、性奴隷だったのを踏まえてあえてその言葉を選んだ。彼女の心を引き裂くセリフだろう、だが彼女のことを考えて乗り越えなければいけないことがある。
「君は教師になりたかったのだろう、それなのに子どもたちに自分の背中を見せられないって、それって本当の先生になれるのかい?」
「本当の……ですか、よくわからないです、私、馬鹿ですから」
「いや、君は知っているはずだ、子どもたちには見本となる大人が必要なんだ。その人たちが支えてくれて、立派な人間になることができる。君が今逃げたら、その子どもたちにも逃げることを教えるのかい。
自分の運命は自分で変えなければならない、誰かの言いなりで解決できることなんて何一つない。そうじゃないかい?」
「そんなのわかってますよ! でも……、いざ戦うとなると足が震えて、手が動かなくなって、頭がぐしゃぐしゃになってしまって、もう、どうしたらいいか……」
「わかった、なら、魔法の呪文を君に教えるよ」
「え、どういう……あっ⁉」
僕はそっと彼女を抱きしめた。彼女が小刻みに震えていたのがよく分かった。だから僕はそっと優しくつぶやいた。
「僕だって本当は強くはない、でも、誰かと絆があったから、ここまで戦ってこられた。君も信じてくれないか。僕を、自分を……」
「わ、私……」
そう言って彼女は僕の胸の中に納まった、野に置き去りにされた子ウサギ、それを寂しくないよう、強く抱きしめた。
「えっ……!」
彼女はそっと声を上げた、僕の力と心臓の鼓動が伝わったからだ。僕だって強くない、この動かないはずの心臓だって、ナオコのこと、メリッサのことで不安がいっぱいだった。それをレイラも悟ったのだ。今度は彼女は力強く「佑月さん……!」と答える。
その声の力強さを確認したあと、静かに肩に手を当てなおし、わずかな距離をとって、まっすぐレイラのうるんだ瞳を見つめ、一言だけ彼女に伝えた。
「メリッサを頼む。強がってはいるが、あいつも僕と同じで不安なんだ。君の助けが必要だ」
「私の助けが……必要……?」
「そうだ、君しか頼めないんだ、お願いだ、頼む」
「……わ、わかりました、私なんかが何ができるのかわかりませんが、やってみます。佑月さんもナオコちゃんのことをお願いします。あの娘は私にとっても、可愛い娘さんみたいなものです。どうか、頼みます」
「ああ、もちろんだ」
そして僕たちはわずかに笑って見つめあっていた。その時だ……! 僕はいきなり顔を片手で絞め上げられて体が宙に浮いた。何が起こったのか確認するため手の先を見てみると、銀色の悪魔様が降臨していて、彼女に無言かつ無音で僕たちの部屋に連れ去られた。
まずい! 現場を押さえられてしまった、108回ぐらい殺される! 彼女は無表情で僕を壁にたたきつけて低い声でこう言った。
「ナオコの前でやったら、お前の減らず口を縫い合わせて、手癖の悪い腕をたたき折ってやる……!」
目がマジだ! この女ならマジでやる! そのうえで、コンクリ詰めにして、海に流す! こいつならやり遂げる! そう恐怖を感じていた瞬間、手を離し、僕の唇にメリッサはそっと口づけをして、ただ一言こういった。
「ナオコのこと、頼むぞ……」
その瞬間、僕も彼女の決意を知ったので、「みんなのことを頼む」と答えた。そのあとプロレス技をかけられて、僕の全身がボロボロになったのは言うまでもないだろう。
──こうして試合当日になったのであった。
あの黒騎士には何かある。実はクラリーナも不思議がっていた。”あれほどの実力ならそれこそ名が売れたエインヘリャルだろうに”。何故誰も“彼“の能力がつかめないのか。きっと彼は私をも超える力の持ち主であると。
アウティスや審問官の推薦によって、彼はやってきた、と。いったいどこの誰なのか。おそらくアウティスやエイミアなどごく一部しか知られていないだろう。きっとこれには何かある。
考えながらアメリーのこもった家にたどり着く。無論周りは騎士でいっぱいで、ほかのエインヘリャルを寄せ付けないよう、騎士団のエインヘリャルまで動員されていた。彼らは命令があるまで、内部に侵入してはならないとクラリーナは厳命した。
オーチカ共同組の者も近づいた形跡がない。奴らにとって予定通りなのだろう。それよりも、周りの騎士たちに、現状を報告させた。
「ねえ、貴方たち、クラリーナの様子、どう? 何か異変あった?」
「いえ、特に何も。隊長は単独救出にこだわっているようで、連絡をよこしても、ただ待機を命じるだけでした」
傍にいた若い騎士がため息をつきながら嘆いた。彼らも待つだけの仕事に飽きてきたのだろう。
「そう……、あの娘はまだ、相手の実力を測っているの。ということは一向に相手の動きはなさそうね。ところで審問官たちに要請した援護や、上層部にオーチカ共同組のルール違反で失格にするよう求めたのは、どうなったの?」
「それについては私が説明します」
ソフィアが後ろを見ると参謀長のリチャードが深刻そうな顔で彼女の問いに答えた。
「まず、審問官の動向です、彼らは比較的協力的でありました。クラリーナ殿下が差配した、ララァ様の説得がきいたのでしょう、珍しく騎士団と対立する様子はありませんでした。ただ……」
「ただ?」
「審問官からの援軍は却下されました、あくまで聖騎士たちで事を処理せよと。それどころか、証拠をつかむために、アメリー一味を逮捕せよと逆に要請されました」
「ちょっとまって、大司教の汚職の証拠の書類をあっちに送ったはずよね?」
「はい、ですが、むしろ、大司教の異端裁判に必要な証拠を欲しがっているようです、困ったものです」
「そんな場合じゃないでしょう、現に幼い女の子が人質に取られて、一刻も早く救出できるようするのが教会団の務めでしょ。まったく政治家にでもなった気かしら。で、上層部はどういってるの?」
「残念ですが、オーチカ共同組の失格は認められませんでした。彼らの言い分ではアメリーが勝手にやったことで自分たちは関係ないと、上層部はそれを認めました。大会を開いた以上なるべく公平に扱うべきだとのことです」
「無茶苦茶だわ、これじゃあ、ルールを守るのが馬鹿らしいじゃないの、後々に響くでしょうね」
「困ったものです、我々としては立つ瀬がありません」
「大体はつかめた、じゃあ、クラリーナに会っていい?」
「もちろん貴女のご自由に、ソフィア様」
そう言って軽くリチャードはウインクをした。まったく、とつぶやきながら引きつった顔で空き家へと入るソフィアだった。
彼女はクラリーナとアメリーがいる部屋に向かうと、クラリーナは目をつぶり、足を組んで椅子に座っていた。対して、アメリーは威風堂々と深々と椅子に座り、鞘のついた剣を立てていた。
どうやら我慢比べが繰り広げられていたらしい。お互いに、隙を見せるわけにはいかなかったのだろう。それを察したソフィアはアメリーに気づかれないよう虚波を送った。
『クラリーナ応答して、隣に今いるのわかる?』
『ええ、貴女の気配は独特ですから、どうしました?』
『あなたに報告することがたくさんあるわ、まず、私たちの試合は完勝だったわ、エインヘリャル2人でも十分だったわね、黒騎士がいれば』
『そうですか、彼の実力はわかりましたか?』
『全然よ、つかみどころが全くなし、あそこまで行くと達人の域に達しているわね。本当に恐ろしい者は殺気すら出さず、相手が死んだことすら悟らせずに、殺すから』
『貴女から見てもそう見えましたか。いったい彼は誰なんでしょう?』
『わからないけど、そこにいたエイミアが気になることを言ってたわ』
『なんです?』
『佑月にむかって、何故正体がわからないのかとむしろ尋ねていたのよ、貴女、どう思う?』
『意図はわかりませんが、エイミアは何か彼の正体を知っていたようでした、その上で敵視していたようです。しかし佑月さんとの関係はわかりませんね、アウティスはいったい何を考えているのでしょうか』
『それに加えてさっき聞いた情報だけど、審問官の奴ら本気で協力する気はないらしいわね』
『ララァはしくじったのです?』
『いいえ、好感触だったけど、むしろ大司教の失態について興味があるそうよ』
『それは……、おそらく審問官たちは粛清を求めているのでしょう。彼らにとって身分の高い欲深な神職者は汚物だと考えているんでしょうね。もう、終末が近いというのに、身内同士で、まったく』
『もしかして、貴女の騎士団長の件、審問官たちにはめられたんじゃ。貴女不思議がっていたでしょう、あまりにも証拠がそろいすぎて、逆に怪しいと』
『団長は、常に神に忠実で教会団にも篤く忠誠を誓う誠の騎士でした。反乱なんて起こすはずがありません、しかも闘技大会が差し迫る中、あの方が神に背く真似などするでしょうか。ましてや、もともと彼が選手として戦うはずだったのです、あの方はとても楽しみにしていました。
自分が引退する前に騎士としてこれ以上はない誉を預かったと。そもそも上層部が彼を反逆者と認めること自体がおかしいのです。教会団結成から聖帝猊下のお傍に仕えていた、あの方を討つなど、到底考えられません、やはり……』
『クラリーナ、その上層部だけど、オーチカ共同組の失格を認めなかったわ』
『何ですって! マレサ様はご存じなのですか⁉ あの方自ら今回のルール変更を求めたと聞きます、それがなぜ……』
『不自然よね、あの頑固なマレサ様が和を乱す奴を放っておくなんて。むしろ、過激な処置を求めるような人なのに』
『キーはアウティスですね、彼は最近不自然な行動ばかりしています。日向直子が死んでから、特に』
『……いつか戦う必要がありそうね』
『まずは証拠をつかまなければ。ところで、佑月さんは元気でしたか? 娘さんがこのような状況になって、メリッサさんも気が気でないでしょう』
『メリッサちゃんはともかく佑月は冷静そのものだったわ、流石、日向直子を倒した男ね、肝がすわっているわ』
『惚れましたか? ソフィア』
『貴女が彼を略奪したら、私も分け前をもらうわ』
『失礼な、私は純粋に彼のことを想って……』
『あーはいはい、そういうのいいから、いいから。あ、そうそうちゃんと食事食べてる? 女の子は健康に気をつけないと、一気に老けるわよ』
『食べますよ、今から、とりあえず甘いシチューを──』
クラリーナとソフィアは、目をつぶりながらコミュニケーションをとり続けた。しかし、アメリーの方は気が気でないのか、目の前に危険人物がいたまま一歩も動けずに待つしかなかった。そうやってクラリーナはナオコの安全を守っていたのだった。
────────────────────────────
────
─
「へくしっ!」
僕は教会団の試合が終わって館に帰り、そのまま寝てしまっていた。その時メリッサは作戦を練りこんでいたのだろう、かなり夜遅くまで起きていたみたいだ。黒騎士の件を相談したかったが今彼女に負担になることはしたくない。
ただでさえ急に試合の指揮を任せて、大変なんだ。だから僕はそっとしておいた。
その次の日、僕はメリッサの訓練指導を見つめていた。彼女たちは意気盛んに訓練に励んでいた。しかしなんだ、今の寒気は、思わずくしゃみをしてしまったが、まさかよからぬ予兆か?
いや考えても仕方あるまい。僕はメリッサからチーム全体への叱咤に聞き耳を立てていた。
「佑月とエイミアがいない分、陣形をコンパクトにしろ! スペースを敵に与えるな!」
どうやら陣形を組みなおしているらしい、当然だろう、そのままでは連携に支障が出る、しかも主戦力が抜けてしまうんだ、戦力がガタ落ちしたままで戦わなければならない。どういう手段をとるか僕はメリッサから聞いていない。
彼女は必要以外のことはわざわざ僕に告げないのが日常だ。おそらく、試合はあっちが面倒みるから、僕はナオコの救出に集中しろということだろう。
「ブライアン! 何をしている、お前が動いて皆をガードしなくて、どうする! それで勝つつもりか!」
「レイラ! お前がエインヘリャルのストライカーだ! 戦わず逃げてどうする! 銃を構えろ!」
どうやら、ブライアンとレイラが期待通りの動きをしないらしい。ブライアンは一回戦で見せたように、試合になれば戦う姿勢をとってくれたから、メリッサの指揮次第で力を発揮するだろうが、レイラは別だ。なら、あとでフォローが必要だな。
しかしメリッサの策とはなんだ、相手の能力がつかめないままでどうやって勝つつもりだろうか、自分がこの状況を選んでおきながら、今更ながら、彼女に重責を負わせていることを後悔していた。
メリッサに何かあったら……、いや、今はナオコを救うために、考えを巡らせることに集中しないと、エイミアをバディーに選んだものの、彼女は何をするかわからない。頼れるのは自分だ。エイミアを選んだのは、彼女ならアメリーと渡り合えることと、メリッサが心配だったからだ。
何せ相手はメリッサの師だ。クラリーナの件で計算違いが生まれたが、本来なら、もっと優れた手段を打ってくるはずだ。また、メリッサの手の内を読まれる可能性がある。アンタッチャブルなエイミアを選んだのはそのためだ。
良い意味でも悪い意味でも予想を上回る彼女なら策を弄するアメリーにうってつけだ。少なくともアメリーを封じてくれることを期待できる。戦術家のメリッサにはアメリーは危険すぎるんだ。策を逆手に取られる可能性がある。
口にはしなかったが、メリッサを選ばなかったのはそのためだ。とりあえずリーダーの責任としてレイラの様子を見てみるか。
訓練が終わった後、レイラは廊下でヤカバのルミコを抱いて、夕焼けを見つめていた。僕はそっと彼女に近づく。
「ルミコちゃん、どうしよう、私……。本当に戦わなきゃいけないのかしら……。嫌だなあ……」
「いやでも戦わなきゃいけない時があるさ」
「誰⁉ あっ、佑月さん……」
そう言って彼女はうつむいて、僕と視線を合わせづらくしている。僕はそっと彼女の肩を抱く。
「人間いつかは戦わなきゃいけない。もちろん、逃げたっていい。でもね、生きる上で、負けてはならない戦いがあるんだ。君の人生はどうだったかはすべて知っているつもりはない。
だけどね、誰かに頼ってばかりじゃあ、自分の運命を変えられない、ずっと誰かの奴隷さ」
「奴隷……」
彼女は生前、性奴隷だったのを踏まえてあえてその言葉を選んだ。彼女の心を引き裂くセリフだろう、だが彼女のことを考えて乗り越えなければいけないことがある。
「君は教師になりたかったのだろう、それなのに子どもたちに自分の背中を見せられないって、それって本当の先生になれるのかい?」
「本当の……ですか、よくわからないです、私、馬鹿ですから」
「いや、君は知っているはずだ、子どもたちには見本となる大人が必要なんだ。その人たちが支えてくれて、立派な人間になることができる。君が今逃げたら、その子どもたちにも逃げることを教えるのかい。
自分の運命は自分で変えなければならない、誰かの言いなりで解決できることなんて何一つない。そうじゃないかい?」
「そんなのわかってますよ! でも……、いざ戦うとなると足が震えて、手が動かなくなって、頭がぐしゃぐしゃになってしまって、もう、どうしたらいいか……」
「わかった、なら、魔法の呪文を君に教えるよ」
「え、どういう……あっ⁉」
僕はそっと彼女を抱きしめた。彼女が小刻みに震えていたのがよく分かった。だから僕はそっと優しくつぶやいた。
「僕だって本当は強くはない、でも、誰かと絆があったから、ここまで戦ってこられた。君も信じてくれないか。僕を、自分を……」
「わ、私……」
そう言って彼女は僕の胸の中に納まった、野に置き去りにされた子ウサギ、それを寂しくないよう、強く抱きしめた。
「えっ……!」
彼女はそっと声を上げた、僕の力と心臓の鼓動が伝わったからだ。僕だって強くない、この動かないはずの心臓だって、ナオコのこと、メリッサのことで不安がいっぱいだった。それをレイラも悟ったのだ。今度は彼女は力強く「佑月さん……!」と答える。
その声の力強さを確認したあと、静かに肩に手を当てなおし、わずかな距離をとって、まっすぐレイラのうるんだ瞳を見つめ、一言だけ彼女に伝えた。
「メリッサを頼む。強がってはいるが、あいつも僕と同じで不安なんだ。君の助けが必要だ」
「私の助けが……必要……?」
「そうだ、君しか頼めないんだ、お願いだ、頼む」
「……わ、わかりました、私なんかが何ができるのかわかりませんが、やってみます。佑月さんもナオコちゃんのことをお願いします。あの娘は私にとっても、可愛い娘さんみたいなものです。どうか、頼みます」
「ああ、もちろんだ」
そして僕たちはわずかに笑って見つめあっていた。その時だ……! 僕はいきなり顔を片手で絞め上げられて体が宙に浮いた。何が起こったのか確認するため手の先を見てみると、銀色の悪魔様が降臨していて、彼女に無言かつ無音で僕たちの部屋に連れ去られた。
まずい! 現場を押さえられてしまった、108回ぐらい殺される! 彼女は無表情で僕を壁にたたきつけて低い声でこう言った。
「ナオコの前でやったら、お前の減らず口を縫い合わせて、手癖の悪い腕をたたき折ってやる……!」
目がマジだ! この女ならマジでやる! そのうえで、コンクリ詰めにして、海に流す! こいつならやり遂げる! そう恐怖を感じていた瞬間、手を離し、僕の唇にメリッサはそっと口づけをして、ただ一言こういった。
「ナオコのこと、頼むぞ……」
その瞬間、僕も彼女の決意を知ったので、「みんなのことを頼む」と答えた。そのあとプロレス技をかけられて、僕の全身がボロボロになったのは言うまでもないだろう。
──こうして試合当日になったのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる