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歴史は変わった
監修者のアレッサンドロ・ヴェッツォージ氏(レオナルド・ダ・ヴィンチ理想博物館館長)による説明
しおりを挟むこちらの画像提供者、
美術系ブログを書かれている方は、監修者のアレッサンドロ・ヴェッツォージ氏(レオナルド・ダ・ヴィンチ理想博物館館長)による説明文を引用されていた。
アレッサンドロ・ヴェッツォージ氏の解説を転載させて頂くことにする。
【美術展】「レオナルド・ダ・ヴィンチ 天才の挑戦」近年公開された『糸巻きの聖母』が初来日/江戸東京美術館: Old Fashioned Club -オールドファッションド・クラブ-
http://app.m-cocolog.jp/t/typecast/670505/562700/84645772
監修者のアレッサンドロ・ヴェッツォージ氏(レオナルド・ダ・ヴィンチ理想博物館館長)による説明を引用します。
☆☆☆
◆《糸巻きの聖母》の美術史的な価値
第一次ミラノ時代が終わり、第二次フィレンツェ時代に入ったレオナルド円熟期の作品です。《糸巻きの聖母》は、《岩窟の聖母》、《最後の晩餐》、《聖母子と聖アンナ》、《モナ・リザ》に並び、高く評価され模写されてきたレオナルド5大テーマの1つで、イタリアだけでなく、フランス、スペイン、ネーデルラントにも普及し、多くのバリエーションが現存しています。
◆作品の来歴
「糸巻きの聖母」という主題は、1501年に修道士ピエトロ・ダ・ノヴェッラーラがマントヴァ侯妃イザベッラ・デステに宛てた手紙の中で、レオナルドがフランス国王ルイ12世の外交官フロリモン・ロベルテのために取り組んでいた作品として言及されています。その手紙にある作品の描写と本作の構図が完全には一致しないため、研究者の中で議論が続いています。しかしながら、現在の研究では、背景は後世に加筆されたが、構図の中心である聖母子および前景の岩の描写は、レオナルド本人の手になるという意見が多数になっています。
今回、来日する《糸巻きの聖母》は、1752年にはフランスにあり、1756年に競売にかけられ、その後1771年にバクルー公爵家の所蔵になりました。その後は2009年にエディンバラのスコットランド・ナショナル・ギャラリーに寄託されるまで、ほとんど一般公開されていませんでした。
◆作品の意味
この作品の主役は、幼子イエスの持つ糸巻きです。幼子イエスは、ダイナミックな動きで糸巻きのほうに身体をひねり、糸巻きを手に取り、もう一方の手で上方を指しているので、糸巻きを十字架と解釈する考えもあります。しかし、私は、古代ローマの人間の運命を紡ぐ三女神(通称パルカ)に通じる「人間と世界の運命を織る」道具として描かれていると解釈しています。一方、聖母は、人類の救済だけでなく本人の犠牲を要求する過酷な運命に子どもが向かわないように、その身体を押さえています。そして右手は母なる大地のエネルギーを表しています。それらの手は、《岩窟の聖母》や《最後の晩餐》の登場人物の手の動き同様、目に見えない魂の動きを、絵画 の中のジェスチャーで表現しようとしたレオナルドの研究の成果と言えるでしょう。
◆作品の魅力
前景の岩は、レオナルドにしかなしえない高度な技術で描かれています。時間の経過とともに変化する地質学の研究成果が表現されており、科学者、自然の観察者としてのレオナルドを思い起こさせます。また、遠近法を応用した歪み像のような聖母の顔、幼子イエスの、斜めの軸を中心に回転しているかのような体の描写に卓越したものを感じます。
つまり画面前景の、作品にとって大切な要素である構図の中心部分はレオナルドの真筆です。ただし背景は、後世の加筆であることがわかっています。
★★★
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