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第13話・ターゲットを尾行せよ!➁

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高間は校門から出た後は、どこかへ向かって寄り道をする事もなく一直線に向かっている。

「どこへ行くんだ、あいつ」
「何か目的があって向かってそうではあるな」
「さっきのLINEで誰かに呼び出された感じかもな」

そしてターゲットとは距離を保ち、電信柱の陰から頭だけを覗かせて声を潜め会話する俺達三人組。
少し離れた位置から。

「ママー。あのお兄ちゃん達、変なお面被って遊んでるよー?」
「しっ!みゆちゃん、あっちは見ちゃ駄目よ。この季節ああいう変な人達がよく現れるけど声を掛けられてもついて行っちゃ駄目だからね?」
「はぁい。ママ」

なんて会話が聞こえてきて、時雨が精神的ダメージを受けたような顔をしていたけれど、気のせいという事にしておく。
今は高間の様子を探るのが最優先だから。
俺達が様子を見守る中、高間は目的地らしき場所へと入っていくのを目にする。
そこはうちの学園からは少し離れた場所にある、自然公園だった。

「あ、自然公園に入って行ったぞ」
「あそこで誰かと待ち合わせしているのか?」
「まあ、とりあえず行ってみるか」

俺達は頷き合って、高間の後少ししてから自然公園へと入る。
流石に自然公園と言うだけあって茂みも多く、身を隠すにはもってこいの場所だった。
相変わらず一定の距離を取りつつ、高間の後を付けていると、高間は木々に囲まれた小さな広場のような場所で足を止めた。
そして、スマホを再び取り出し時間を確認している。
やはりここで誰かと待ち合わせしているのだろうと考えていれば、間もなくして白い学ラン姿の男達が十数人、ぞろぞろと高間の前に姿を現した。

「誰だ、あいつら?」
「白い学ラン…あ、もしかして、久我校の奴らじゃないか?」
「知っているのか、時雨」
「ああ、うちと同じ男子校なんだが、かなりの問題校でな。問題児ばかりが集まって学校で色々とやらかしてるみたいだぜ。教師陣も下手に注意すれば自分の身が危ないからって怖くて取り締まれないとか」
「なるほど、不良高校か」
「その中でも問題児を取り仕切っているトップの獅童ってやつが、かなりやばい奴らしくてやくざをバックに付けてて薬とか色々やってるとかなんとか」
「お前の話が本当ならあまり関わりたくはない連中だな。けど、どうして高間がそんな奴らと一緒にいるんだ」

まさか仲間なんだろうか、と一抹の不安を覚えつつ、俺達は見つからないようにより一層気配を殺して様子を見守る事にする。

「よー、高間ちゃん。逃げずによく来たなぁ」

そう言って、一歩前に踏み出したのは、金髪で軽くリーゼントにした髪型の男子学生だった。
雰囲気からして、この中ではリーダー格であろうと事は認識できる。
こいつが獅童というやつだろうかと確認していると、言葉からして、友好的な雰囲気ではないその男子生徒を高間は怯むことなく剣呑な表情で睨みつけていた。

「なんの用すか?杉原さん。俺はもう抜けた身ですけど」

杉原。それがあのリーダー格の生徒の名前らしく、指導ではないらしい。
というか、抜けた身と言う事は、高間の奴はこいつらはつるんでたって事なんだろうか。

「ああ、別にそのことについてごちゃごちゃいう気はねぇよ。俺達について来れねぇ腰抜け野郎はさっさといなくなってくれた方がいいしなぁ。戻ってこいともいう気もねぇよ。けどな、高間ちゃん。忘れたとは言わせねぇぜ?三日前に俺の可愛い子分達に随分と手荒い歓迎してくれたそうじゃねぇのよ?」

杉原と呼ばれた男の言葉に高間は少しだけ視線を逸らした後、すぐに睨み直して口を開く。

「ああ、あれっすか。あいつら、杉原さんの子分だったんっすね。歓迎っていうか、うちの生徒をカツアゲしてたところをたまたま通りかかったら、そっちからいちゃもんつけて来たんで振り払っただけっすけど。助けに入ったわけでもないし」
「振り払っただけねぇ。それで全員全治三週間の怪我負わされてちゃ、こっちも溜まったもんじゃないんだよねぇ。しかも逃げ出した負け犬の高間ちゃんにさぁ。俺の面子が丸つぶれなのよ。分かるっしょ?」

「全員全治三週間って…」
「ふむ。かなり喧嘩なれしているようだな。高間とやらは」
「まあ、あいつらとつるんでいたんなら、弱くはないだろうな」

二人の会話を聞きながら俺達は小声で話し合いつつ、高間と杉原達の様子をじっと見守る。
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