夏の終わりにセミを憶う

結月 希

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夏の終わりにセミを憶う

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少し暑い日差しの中、外に出るとセミの死骸が落ちていた。

ひっくり返って、ピクリとも動かない。

よくある光景、なんの珍しくもないことなのに、ふと足を止めてしまった。

もうすぐ夏が終わる。セミの死骸はそれを私に教えてくる。

それがどうしても不思議で仕方なかった。夏を迎えた時の私はこのセミと変わらないはずだったのに。

このセミと同じように夏を越えれないと思っていたのに。

夏の異常な暑さは人の身体も心も狂わしてく。そんな夏を人より体力も気力も何もかもない私が、まともな状態で乗り切れるなんて、あまり考えられなかった。

身体が限界を迎えて、誰にも気づかれないまま1人寂しく部屋の布団で息絶えるか、心が壊れて自分が自分じゃなくなるか、もしくはその前に首を吊るか。
なんて思っていた。

そうだったのに、私は今ここにいる。
ちゃんと生きて、まともに頭が動いて、普通に呼吸が出来ている。

それが、不思議で、だけど、どこか安心した気もする。

涼しい風が優しく髪を引っ張った。
そろそろ行かなきゃ。やることが沢山あるんだ。いつまでも止まっていられない。

私はセミに別れを告げて、なんとなく空を見上げた。

「来年の夏は花火見たいなぁ。」

なんて、来年の夏に思いを馳せながら。
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