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組織(ハウス)見習い編
ー 23 ー ファースト・ミッション②
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白い部屋ーーー
モーリーが椅子から立ち上がり、壁に映し出された映像に近づいていく。
「さてと…では、ミッション遂行のために、具体的なターゲットのご説明をしましょう!」
モーリーがにやりと微笑む。
「うほほっ!ターゲットだってよ、なんだか映画みてえだな、コン太っ!」
クロロがバシン!とコン太の背中を叩く!
「こ、このどポジめっ!」
コン太が、ゴホゴホと咳き込む。
モーリーが壁に手をかざすと、映像が2人の男の写真に切り替わった。
「会議には、100人を超える幹部が出席していますが、気にするのはこの2人だけで結構です」
画面左側には、バストアップの写真でも分かるくらいに、巨漢の男が映っている。
脂肪が膨らみブルドッグのように垂れ下がった頬。不健康な隈を宿した垂れ目に、ギラついたオールバックの金髪。大きな団子鼻の下には、分厚い唇が不機嫌にひん曲がった形で貼り付いている。
「これが、レビオラのボス、アーク・ロイヤルです」
「こ、これが、この巨大組織の大ボス…!」
コン太の頬を冷や汗が伝う。ワールドクラスの超大物だ。
そして、画面右側に映っているのは、痩せこけた老齢の男だ。
左右の側頭部を残して頭が禿げ上がっており、丸メガネの下には、ギロリと睨みつけるような鋭い瞳が覗いている。
白髪の口髭と白衣…いかにも博士然とした風貌だ。
「この人物が、ドクター・チャップマン。元組織員です」
モーリーが目を細めて言う。
「どんな研究をしているのかは、君たちのレポートによって明らかになるでしょうが…、世界最大のマフィア、膨大な研究資金、レビオラが抱くハウスへの敵対心…。そうとなると、これはキナ臭いですよね」
「…」ごくり。コン太がつばを飲み込む。
数時間後には、報道やルポでしか目にしたことのない、世界規模の裏組織と対峙することになる…。フィクションのような展開であるが、クロロとコン太は、現実として、そして当事者として向き合うのだ…!
「臭い?そうか?なんも臭わねえけどな」
クロロが鼻をひくつかせる。
モーリーとコン太が思わずずっこける。
「て、てめえは…どんだけ語彙力がないんだよ!」
コン太がクロロの頭を小突いた。
モーリー「ほほほ、クロロさんらしい…まあ、いい感じに力みも取れたところで、明日に備えて今日は寝ましょう」
「ほーい!」
「ぐぬぬ…」
…
……
………
そして…!
一夜明け、いよいよミッション当日の朝!
モーリーがクラシカルな音楽プレーヤーと、小石を取り出した。
「ん?なんだ?その石…」
クロロが丸い小石を指差す。
「これは何の変哲も無い石ですが、イーマ国立公園で採取されたものです」
モーリーがひょいっと石を投げて掌で受け止める。
「い、イーマ国立公園で…?なぜそれが…?」
コン太が目を凝らす。
「君たちが試験をクリアした後でしたか、私の能力、『イエローサブマリン』について話をしましたね。その時は、”一度足を運んだ場所であれば、空間を繋げられる”とお話したと思います…。
あれから私も鍛錬を重ね、まだ発展途上ではありますが、現地原産のものがあれば、未踏の地でもドアの開設ができるようになりました!」
モーリーが音楽プレーヤーを顔の横に持ち上げ、メガネをキラリと光らせる。
「おおっ!す、すっげえな!」
「具体的には、原産物の採取箇所付近に、ドアを設置できます。ただし、現在地から離れるほど、ドアの設置場所の精度が甘くなる。イーマ国立公園であれば、3000キロ程度なので、誤差はほとんどないでしょう」
「さ、3000キロ?国境の2つ3つは超える距離ですね…!それでも誤差がないとは…!」
「ほえー、モーリーも頑張ってたんだな」
「最終的には、物理的なモノを介さずに、どこへでも行けるようになるのが目標ですが…やはりまだまだ、それは簡単ではないですね。
心は、ちょっとの雑念にほだされて、弱音の音を鳴らしてしまう風鈴です。
どんな突風にも抗える風鈴を仕立てるのは至難の業。日々勉強ということの理由ですよ。一歩ずつ、成功体験を積み重ねて、そして素直な心で自分を信じて、己を縛り付ける制限を外していくのです」
モーリーが拳を握りしめる。
「ふーん、昔レノンが言ってた、素直な心がオーラ・ドライブには大事ってのは、そういうことかぁ」
「お前、そんなのを幹部から聞けるってズルいな…」
クロロが椅子からぴょんと飛び降りる。
「ようし!まあとにかく、自分を信じろ、ってことだな!それならオレの得意分野だ!オレも早くイマ…ジネット・オーラだっけ?身につけてえな!」
(でた!どポジティブ!うーむ、確かに、こいつはオーラの成長と相性がいいのかもな…)
オーラを伸ばすには自分自身への手放しの信頼が最も肝要だ。向き合うのは己のみ。自分以外の人間や環境に左右されるものではないが、ともすれば、他人を信じるよりも難しい…。
「ふふふ。君たちなら、きっと、近い将来にでもイマジネット・オーラが発現するでしょう」
ーーーカチャリ。
白い部屋のドアが、小気味良い音を立てる。
「さあ、ドアの先がレビオラの本部です」
ー突撃!ー
ドアの先は一面の森だった。瑞々しい土と葉の匂いが鼻をくすぐる。
クロロがすぅっと深呼吸する。
「はああー!なんだか、最初の試験で来たところみてえだな」
「アルマジロウスの鎧を手に入れた、トウニ地方ですね。しかし、ここは森のように見えますが、この数メートル先に光学迷彩の境界があります。その先は、レビオラ本部の分厚い壁が広がっているでしょう」
昨日の映像で見た、城郭のように拠点を囲う壁だ。
「ま、全くそんな風には見えないですね…。この先にある木の葉も自然な感じで風に揺れてる…」
コン太の言う通り、見た目では光学迷彩の境が判別できない。
「…境界の一歩先に踏み込んだら、相手のテリトリーです。充分、注意してくださいね。可哀想に、うっかり迷い込んだ鳥などは容赦なく撃ち落とされるようです。ここからは、オーラ・ドライブの発動はマストですね」
ごくり。危機感など微塵も感じさせないほど、穏やかな森だが、すぐにミッションが始まる!
クロロがぶんぶんと腕を回す。
「へへ。面倒くさくなくていいや!コン太っ!乗り込むぞ!」
「よ、よし!」
モーリーがドアの中に下がる。
「あと…オーラ・ドライブが使えない人にやりすぎちゃうと、相手が死んじゃいますから。手加減してくださいね。今回のミッションに、必要な死はありません」
「おうっ!わかってる!」
クロロがぐっと右手の親指を立ててみせる。
(て、手加減って…ボクらが手加減される側じゃないの?)
コン太が戸惑った表情で、顔を引きつらせる。
「では。頑張ってくださいね」
モーリーが手を振った直後、ドアの形をした長方形の空間がひゅんと、消えた!
「よしっ!コン太っ!いくぞっ!」
「くっ!ええいっ!」
クロロとコン太は、目の前に広がる樹々の中へと駆け出した!
ブォン…
「!!!」
微かに肌をくすぐる感触…
「おおっ…!」
森が一瞬にして消え、視界には見上げるような鼠色の巨大な壁が現れた!
光学迷彩を潜ったのだ!
モーリーに見せてもらった航空映像では、上部は覆われてないようだったが、地上から見上げると、壁の先端が霞むほどの高さだ。壁の中は把握できない。
「ほほーっ!すげえな!」
「…こ、これは圧巻だな…。しかし…」
壁には等間隔で赤い光が点滅しており、周囲にはドローンのような遠隔操作型の小型マシンが何台も飛び回っている。壁の赤い光は、おそらくカメラやセンサーの類だろう。
コン太(…こ、これは迂闊に近づくと危険だな…!どうにかして監視の目を掻い潜って壁に近づく必要があるぞ…。
だが、壁に至ったところで、入り口も何もない!端から端まで、平たい面が続いているだけだっ!
はっ、そうか!おそらくは生体認証なんかで壁の一部が開閉する仕組みだな!?
こ、これは正面突破は困難だな…。となると、上空から侵入するか?だが、モーリーさんは、迷い込んだ鳥が撃ち落とさられると言っていたな…間違いなく壁の上も強固な警備が展開されてるだろう…むしろ閉ざされていない分、地上よりも厳しいかもしれない…。
むむ…やはり何とかして壁を開ける必要があるか?どんな認証システムを使っている?そして、それが分かったところで、どうオープンする?誰かが来るまで待つとか?世界中の幹部が集まる会議ってことなら、人の出入りはあるだろう…。
ん?ちょっと待てよ。その前に、ここから壁までの道のりも一面がまっさらな砂に覆われているぞ…。検知器か地雷のようなトラップか、何かしらが仕掛けられていると見ていいだろう…。
うう…超えるべきハードルが多すぎるな…。この限られた条件の中でどう対処するか…。どうする?どうするか…?うーむ…あれ?そういえばクロロは?)
顔を上げると、クロロがすたすたと壁に向かって歩いていくのが見えた。
コン太が派手にずっこける。
「おーい!コン太!何してんだ!さっさと行くぞ!」
クロロが腕を大きく振りながら声を張り上げる。
「ば、ばかやろう!お、おまえ、無謀すぎだ!レビオラに見つかるぞ!」
「何言ってんだ!どうせ見つかるんだからよ、早いとこ中に入ろうぜ!」
まるで、その辺の店に入るくらいの軽いノリだ。
その時、壁から低い機械音が響いた。
「!!!」
壁の一部が、正方形にくり抜かれたように内部に引っ込み、代わりに黒塗りの機関銃が現れた!
「ん?なんだこりゃ?」
クロロがきょとんと銃口を見上げる。
「く、クロロー!逃げろー!」
コン太の叫びと同時に、機関銃が火花を放つ!!!
ドルルルルルルル!!!
大量の薬莢が飛び散り、クロロの体が跳ね上がるように激しく揺れ動く!
「そ、そんな!!!」
ルルル…
音が鳴り止み、機関銃が元あったように壁の内部に引っ込んだ。
「…くっ、クロロ!」
コン太が駆け出し、地面に横たわるクロロの元へ向かう!
(く、くそっ!そんなことが!い、いきなりマシンガンだなんて!)
「クロロー!」
コン太がクロロの肩を掴み叫び声を上げる。
「う、うっせえな~!い、いてて!なんだったんだ、ありゃ」
クロロが体をさすりながら起き上がる。
「な、何いーーー!!!???」
クロロを見ると、着ていた服は穴ボコだらけになっていたが、出血している様子はない。
まさか…!
「ふう、オーラ・ドライブのおかげだぜっ!」
クロロが服の埃をパンパンと払う。
「お、オーラ・ドライブ…!マシンガンの弾まで防ぐとは…!」
(そ、想像以上だ!ぼ、ボクだって大丈夫なんだろうか…いや、同じ特訓をしてるんだ!…信じるぞ、ボク自身をっ!)
コン太がぐぐっと拳を握りしめる!
「へへへ!ちょっと痛えが、何てことはないさっ!行くぞっ!」
クロロが聳える壁をキッと睨みつける。
「だが、この壁はどうする?飛んでいくか?」
「…いや、正面突破だっ!」
クロロが拳を握りしめる!
ゴゴゴ…!!!
クロロの右腕が光を帯び、熱を発しながら輝きを増していく…!
「お、おまっ!まさかっ!」
「だあっ!!!」
光の拳を壁に叩きつけた!!!
ドガン!!!
轟音と共に、壁の一部が吹き飛び、通り抜けられる程の穴が空いた!
厚さが3メートルはある鋼の壁だが、まるで大砲で撃ち抜かれたようだ!
「ようし!!!乗り込むぞっ!」
クロロがぴょんっと穴の向こうへ飛び込んだ!
「む、無茶苦茶だな、まったく…!」
コン太も慌てて駆け込む!
ー壁の内部へ!ー
壁を潜ると、だだっ広いコンクリート敷の平地が広がり、数百メール程先に、ダムのような威圧感たっぷりの本部ビルが鎮座している。
本部の左右には、管制塔や格納庫のような建物が、クロロたちのいる壁の間際まで連なっている。
「お、思ったりもずっと広いぞ…!」
コン太が呟くと同時に、けたたましい警報音が鳴り響く!!!
「ぐゎっ!う、うっせえな!」
クロロが顔を顰めて、辺りを見回す。
「し、侵入がばれたんだ…!壁にこんな大穴を空けたんだから、当然だろうが…」
左右の建物群から、ミリタリー・ユニフォームに身を包んだ構成員が飛び出してくる!
拳銃に刃物、マシンガンに薙刀…バラエティ豊かな獲物を手にしている。
少し間を置いて、格納庫と見られる建物から大ぶりのSUVがウィリーをするように勢いよく飛び出す!
開け放されたサンルーフやドア・ウィンドウから、バズーカ砲やライフルなど、とびきり物騒な武器が覗いている。
建物の屋上部分からは、小型のドローン兵器が、まるで蜂の巣を突いたように縦横無尽に飛び上がりながら、空一面を埋め尽くしていく…!
ゴゴゴゴゴ…!!!
それぞれが明確な殺意を剥き出しにし、巨大な塊と成して、クロロたちに向かって大波のように押し寄せる!!!
「が、ガキ!?」
「こ、こいつらは一体…!」
「なんかしらんが、油断はするな」
「ああ、オーバーキルってくらい、徹底的にやってやれ!」
「う、うぐっ!」
思わず怯むコン太の背を、クロロがばしんと叩く!
「よしっ、オレらもいくぞっ!!!」
はあっ!と気合いを込めて、バーナーのようにオーラを解放する!
ドォン!!!
「くっ、くそっ!」
コン太も慌てて後に続く!!!
ドドォン!!!
ブオオオ!!!
2人のオーラが、竜巻のように連なり、炸裂するオーラの圧力が突風を巻き起こして敷地内に吹き荒れる!
「なな、なんだ!?」
オーラに押され、構成員たちが後退りをする…!
「だぁっ!」
クロロが砂煙を上げ、地面を滑るように飛び出した!
高速の飛行により、構成員軍団との距離がみるみるうちに縮まる!
「!!!撃てえ!撃ち殺しちまえ!」
おおおっ!っとドスの効いた咆哮と共に、ハンドガンやマシンガンから火花が弾ける!!!
クロロがオーラを増大させた片腕を体の前に差し出し、弾丸を跳ね飛ばした!
「へへっ!そんなんきかねえぞ!」
高速飛行の勢いのまま、体を捻り、脚を鞭のようにしならせた!
ブオオっ!!!
「う!うわあああ!」
蹴りによる烈風が構成員を落ち葉のように吹き飛ばす!!!
「へへ!!!…ん?」
上を見上げると、飛び交う無数のドローンの下部から、煙が弾けた!
小型ミサイルだ!
「やべっ!」
クロロが咄嗟に腕を交差させ防御の姿勢を取る!
その瞬間!
ボボボン!!!
放たれたミサイルが空中で爆発した!
「!!!」
「ふふん!」
後ろを見ると、コン太がオーラ弾を散弾のように撃ち出したところだった!
「サンキュー!コン太!」
「モーリーさんも実戦がとにかく大事っていってたけど…。確かに実戦で使うことで
オーラを使いこなせている気がする!」
コン太がオーラを宿した拳に力を入れる。
「くくっ!怯むな!火力を上げろ!」
リーダー格の構成員が声を荒げると、黒塗りのSUVからRPGを抱えた構成員が飛び出す!
「あっ!あれはやばいぞっ!」
コン太が叫ぶ!
「撃てえ!!!!!」
ドカン!
SUVを包み込むような爆炎と共に、鈍い音が敷地内に反響する!
「クロロっ!飛べっ!」
「よしきたっ!」
クロロとコン太が飛び上がったすぐ真下を、高速のロケット弾が煙の尾を引きながら過ぎ去る!
ドドーン!!!
衝撃波と共に、鼠色の壁に巨大な炎が噴き上がった!!!
「よ、避けた…だと!?」
「ふいーっ、あぶねえっ!」
クロロが空中に留まりながら冷や汗を拭う。
「う、浮いてやがる…!ど、どうなってんだ?」
「ええい!格好の的だ!攻撃を止めるな!」
小型の戦車が砲台をぐぐっと動かし、クロロにピタリと狙いを定めた!
「行くぞー!3、2、1…」
「く、クロロ!狙われてるぞ!さっきよりもずっとヤバいやつだ!」
「え?」
「ファイヤー!!!!!」
戦車が大きく振動し、砲台が火を噴く!!!
超音速の砲弾がクロロに向かって突き抜ける!!!
「速っ!!!避けられねえっ!!!」
咄嗟に腕を十字に組んで、体を丸める!
ズドン!!!!!
光が炸裂し、一瞬後に猛烈な衝撃波と熱風が周囲の瓦礫を吹き飛ばす!!!
ゴゴゴゴゴ…
「や、やったぞ!直撃だ!!!」
「く、クロロ…!」
コン太が、顔にかざした腕を下ろし、薄目を開ける。
「へ、へへ…やりやがったな…!」
!!!
バシュッ!
クロロが体を覆った分厚いオーラの壁を解く!
「く、クロロ!無事なのか!?」
「ああ…思いっきり増大を使ったら何とかな…!」
クロロが空中でぴょこぴょこと手足を動かす!
「なな…!なんだとっ!せ、戦車の砲弾が命中したんだぞ…!!!」
構成員が目を剥く!
クロロが戦車に向かってキッと鋭い視線を送る!
「へへん!こうだったな…!3…、2…!」
!!!
クロロが右手を後ろに引く…!
「さっさと逃げちまったほうがいいぜっ!」
ブーン…!
溜め込んだオーラの光が膨らんでいく…!!!
「…1っ!!!」
ゴゴゴゴゴ!!!!!
オーラの光が巨大な塊となり、もう一つの太陽のように周囲を照らし出す!!!
「たっ、退避!退避しろー!!!」
小型戦車に乗っていた構成員が一斉に外に飛び出す!!!
「ファイアー!!!」
引いた右手を一気に突き出す!!!
ボンっ!!!
クロロの手のひらから爆炎が吹き出し、オーラの巨大な火の玉が飛び出した!!!!!
超スピードの光が一瞬で小型戦車に着弾する!!!
ズドーーーーーン!!!
「!!!」
爆発に乗り、まるで玩具みたいに戦車が上空に放り出された!!!
シュウウ…
特大のオーラ弾が爆発した周囲から真っ黒い煙が火山のように噴き出ている…
「ほほー!すっげえ威力だな!」
「た、ただのオーラ弾なのに…!?はっ!る、ルーティンか!掛け声は潜在しているオーラを引き出す…!」
ジュディの話を思い出す…
…
……
………
ジュディ「必殺技と言えるような決め技なんかにも、名前や掛け声、モーションなんかを組み合わせると威力や効果が増すよ。ルーティーンになるからね」
クロロ「る、るーてぃーん?」
ジュディ「そっ。決まった動作を取り入れること。ルーティーンは、気持ちを高め、集中力を上げ、自分の潜在オーラを引き出すことができるの」
クロロ「ほえ~、だからアニメや漫画なんかでもみんな必殺技の名前を叫ぶのか!!!」
コン太「…そ、それは場面を盛り上げるためだろ。…ま、でも結果的には必殺技にルーティーンを取り入れてるって意味だと同じか…」
………
……
…
「そういや、そんなこと言ってたな…!ってことはよ…」
クロロがニッと笑う!
「321ファイア!これがオレの必殺技だっ!」
「ば、化け物だ!有人の応戦は避けろ!無人兵器で制圧するんだ!」
「!」
引き上げる構成員の間を縫って、二足歩行式の、まるでダチョウのような形の無人兵器がクロロたちの前に立ちはだかった!
クチバシに当たる部分に、砲撃と銃撃を兼ね備えた複合型の火器が備わっている。
上空には、ドローン兵器が空を染めるような勢いで広がっている。
「す、すごい量だ!だが…」
コン太が無人兵器群の先にある本部ビルに目をやる。
「うかうかしていると、ボスとチャップマンに逃げられるかもしれない…!クロロっ!」
「ああっ!一気に吹き飛ばしていくぞっ!」
はあっ!!!クロロとコン太が気を入れ、体の芯から更なるオーラを炸裂させた!!!
ー本部ビル 会議室ー
ホールのような広い空間は、白を基調としており、壁には中世西欧様式の瀟洒な装飾が施されている。
彫刻で彩られた見上げるような高い天井からは、宝石が散りばめられたシャンデリアがぶら下がっている。
床には吸い付くような深い毛足のカーペットが敷かれ、部屋の中心には楕円形のテーブルがあった。
その円卓を20人ほどの男たちが囲っている。
壁際にはずらりと椅子が並べられており、円卓と合わせて合計100人程度が一堂に会していた。
室内だけを見ると、一国首脳の官邸や、歴史ある大銀行の会議室と見紛うほどだ。
だが、参加している全員が、1人の例外もなく物々しく、恐ろしく人相が悪いため、体を刺すような威圧感がホール中を満たしている。
バタン!
重厚な空気を割くように、木製の大きなドアが開く!
「ぼ、ボスっ!」
真っ青な顔をした迷彩服の構成員が、バタバタを音を立てながら会議室に入り込む!
「なんじゃ!ワレ!」
「合議中だぞ、こら!」
ドスの聞いた声が飛び交う!
「あ、あの!先ほどの侵入者ですが!」
「あん?まだ生かしとんのか」
頬の肉をたぷんと垂らした大柄な男が、ぎろりと迷彩服を睨む。
レビオラの大ボス、アーク・ロイヤルだ!
「そ、それが!銃も、ほ、砲弾でさえも効かなくて…」
「…何?オーラ・ドライブか?」
アークの横に座る、老齢の男が反応する。
チャップマンだ。
だが、その姿は異様で、顔の半分が人工物で覆われている。
フランケンシュタインか、半人半機械のサイボーグのようだ。
「オーラ・ドライブ…。ハウスか!」
アークが顔を顰めて立ち上がり、体重の乗った拳を円卓にドカンと叩きつける。
「は、ハウス?しかし、相手は子供のようでして…」
「ガキだぁ?ハウスとはいえ、ガキ相手にこの体たらくかぁ!」
アークが怒号を放つ!
「まあ、落ち着きなされ。ガキだろうと、ハウスの組織員であれば、オーラ・ドライブが使える。そうすると、ちょっとやそっとの銃火器ごときじゃびくともせん」
チャップマンが顎髭を撫でながら言う。
「ふざけるな!会議を中断して、大至急、有効な対策を出せっ!」
どん!っと、再びアークが拳を叩きつける音が室内に響く。
「…オーラ・ドライブに有効なのは、オーラ・ドライブによる攻撃…。アレを試す絶好の機会ですぞ、アーク」
チャップマンが静かに口を開く。
「アレか…!?だが未完成じゃなかったのか?」
「未完成でも、ハウスの組織員2人、それもガキなら問題ない。ガキどもは殺さずに研究資源にすれば、アレも一気に完成するじゃろう…。一石二鳥じゃわい!」
チャップマンが立ち上がった。
「ふん…なるほどな…。いいだろう、至急、アレをハウスどもに放て!」
アークが唾を飛ばしながら怒鳴り、どかんと巨体を椅子に預けた。
(火の鳥の情報を持ってるかもしれんぞ、ククク…)
チャップマンが口元を歪に歪ませて笑った。
モーリーが椅子から立ち上がり、壁に映し出された映像に近づいていく。
「さてと…では、ミッション遂行のために、具体的なターゲットのご説明をしましょう!」
モーリーがにやりと微笑む。
「うほほっ!ターゲットだってよ、なんだか映画みてえだな、コン太っ!」
クロロがバシン!とコン太の背中を叩く!
「こ、このどポジめっ!」
コン太が、ゴホゴホと咳き込む。
モーリーが壁に手をかざすと、映像が2人の男の写真に切り替わった。
「会議には、100人を超える幹部が出席していますが、気にするのはこの2人だけで結構です」
画面左側には、バストアップの写真でも分かるくらいに、巨漢の男が映っている。
脂肪が膨らみブルドッグのように垂れ下がった頬。不健康な隈を宿した垂れ目に、ギラついたオールバックの金髪。大きな団子鼻の下には、分厚い唇が不機嫌にひん曲がった形で貼り付いている。
「これが、レビオラのボス、アーク・ロイヤルです」
「こ、これが、この巨大組織の大ボス…!」
コン太の頬を冷や汗が伝う。ワールドクラスの超大物だ。
そして、画面右側に映っているのは、痩せこけた老齢の男だ。
左右の側頭部を残して頭が禿げ上がっており、丸メガネの下には、ギロリと睨みつけるような鋭い瞳が覗いている。
白髪の口髭と白衣…いかにも博士然とした風貌だ。
「この人物が、ドクター・チャップマン。元組織員です」
モーリーが目を細めて言う。
「どんな研究をしているのかは、君たちのレポートによって明らかになるでしょうが…、世界最大のマフィア、膨大な研究資金、レビオラが抱くハウスへの敵対心…。そうとなると、これはキナ臭いですよね」
「…」ごくり。コン太がつばを飲み込む。
数時間後には、報道やルポでしか目にしたことのない、世界規模の裏組織と対峙することになる…。フィクションのような展開であるが、クロロとコン太は、現実として、そして当事者として向き合うのだ…!
「臭い?そうか?なんも臭わねえけどな」
クロロが鼻をひくつかせる。
モーリーとコン太が思わずずっこける。
「て、てめえは…どんだけ語彙力がないんだよ!」
コン太がクロロの頭を小突いた。
モーリー「ほほほ、クロロさんらしい…まあ、いい感じに力みも取れたところで、明日に備えて今日は寝ましょう」
「ほーい!」
「ぐぬぬ…」
…
……
………
そして…!
一夜明け、いよいよミッション当日の朝!
モーリーがクラシカルな音楽プレーヤーと、小石を取り出した。
「ん?なんだ?その石…」
クロロが丸い小石を指差す。
「これは何の変哲も無い石ですが、イーマ国立公園で採取されたものです」
モーリーがひょいっと石を投げて掌で受け止める。
「い、イーマ国立公園で…?なぜそれが…?」
コン太が目を凝らす。
「君たちが試験をクリアした後でしたか、私の能力、『イエローサブマリン』について話をしましたね。その時は、”一度足を運んだ場所であれば、空間を繋げられる”とお話したと思います…。
あれから私も鍛錬を重ね、まだ発展途上ではありますが、現地原産のものがあれば、未踏の地でもドアの開設ができるようになりました!」
モーリーが音楽プレーヤーを顔の横に持ち上げ、メガネをキラリと光らせる。
「おおっ!す、すっげえな!」
「具体的には、原産物の採取箇所付近に、ドアを設置できます。ただし、現在地から離れるほど、ドアの設置場所の精度が甘くなる。イーマ国立公園であれば、3000キロ程度なので、誤差はほとんどないでしょう」
「さ、3000キロ?国境の2つ3つは超える距離ですね…!それでも誤差がないとは…!」
「ほえー、モーリーも頑張ってたんだな」
「最終的には、物理的なモノを介さずに、どこへでも行けるようになるのが目標ですが…やはりまだまだ、それは簡単ではないですね。
心は、ちょっとの雑念にほだされて、弱音の音を鳴らしてしまう風鈴です。
どんな突風にも抗える風鈴を仕立てるのは至難の業。日々勉強ということの理由ですよ。一歩ずつ、成功体験を積み重ねて、そして素直な心で自分を信じて、己を縛り付ける制限を外していくのです」
モーリーが拳を握りしめる。
「ふーん、昔レノンが言ってた、素直な心がオーラ・ドライブには大事ってのは、そういうことかぁ」
「お前、そんなのを幹部から聞けるってズルいな…」
クロロが椅子からぴょんと飛び降りる。
「ようし!まあとにかく、自分を信じろ、ってことだな!それならオレの得意分野だ!オレも早くイマ…ジネット・オーラだっけ?身につけてえな!」
(でた!どポジティブ!うーむ、確かに、こいつはオーラの成長と相性がいいのかもな…)
オーラを伸ばすには自分自身への手放しの信頼が最も肝要だ。向き合うのは己のみ。自分以外の人間や環境に左右されるものではないが、ともすれば、他人を信じるよりも難しい…。
「ふふふ。君たちなら、きっと、近い将来にでもイマジネット・オーラが発現するでしょう」
ーーーカチャリ。
白い部屋のドアが、小気味良い音を立てる。
「さあ、ドアの先がレビオラの本部です」
ー突撃!ー
ドアの先は一面の森だった。瑞々しい土と葉の匂いが鼻をくすぐる。
クロロがすぅっと深呼吸する。
「はああー!なんだか、最初の試験で来たところみてえだな」
「アルマジロウスの鎧を手に入れた、トウニ地方ですね。しかし、ここは森のように見えますが、この数メートル先に光学迷彩の境界があります。その先は、レビオラ本部の分厚い壁が広がっているでしょう」
昨日の映像で見た、城郭のように拠点を囲う壁だ。
「ま、全くそんな風には見えないですね…。この先にある木の葉も自然な感じで風に揺れてる…」
コン太の言う通り、見た目では光学迷彩の境が判別できない。
「…境界の一歩先に踏み込んだら、相手のテリトリーです。充分、注意してくださいね。可哀想に、うっかり迷い込んだ鳥などは容赦なく撃ち落とされるようです。ここからは、オーラ・ドライブの発動はマストですね」
ごくり。危機感など微塵も感じさせないほど、穏やかな森だが、すぐにミッションが始まる!
クロロがぶんぶんと腕を回す。
「へへ。面倒くさくなくていいや!コン太っ!乗り込むぞ!」
「よ、よし!」
モーリーがドアの中に下がる。
「あと…オーラ・ドライブが使えない人にやりすぎちゃうと、相手が死んじゃいますから。手加減してくださいね。今回のミッションに、必要な死はありません」
「おうっ!わかってる!」
クロロがぐっと右手の親指を立ててみせる。
(て、手加減って…ボクらが手加減される側じゃないの?)
コン太が戸惑った表情で、顔を引きつらせる。
「では。頑張ってくださいね」
モーリーが手を振った直後、ドアの形をした長方形の空間がひゅんと、消えた!
「よしっ!コン太っ!いくぞっ!」
「くっ!ええいっ!」
クロロとコン太は、目の前に広がる樹々の中へと駆け出した!
ブォン…
「!!!」
微かに肌をくすぐる感触…
「おおっ…!」
森が一瞬にして消え、視界には見上げるような鼠色の巨大な壁が現れた!
光学迷彩を潜ったのだ!
モーリーに見せてもらった航空映像では、上部は覆われてないようだったが、地上から見上げると、壁の先端が霞むほどの高さだ。壁の中は把握できない。
「ほほーっ!すげえな!」
「…こ、これは圧巻だな…。しかし…」
壁には等間隔で赤い光が点滅しており、周囲にはドローンのような遠隔操作型の小型マシンが何台も飛び回っている。壁の赤い光は、おそらくカメラやセンサーの類だろう。
コン太(…こ、これは迂闊に近づくと危険だな…!どうにかして監視の目を掻い潜って壁に近づく必要があるぞ…。
だが、壁に至ったところで、入り口も何もない!端から端まで、平たい面が続いているだけだっ!
はっ、そうか!おそらくは生体認証なんかで壁の一部が開閉する仕組みだな!?
こ、これは正面突破は困難だな…。となると、上空から侵入するか?だが、モーリーさんは、迷い込んだ鳥が撃ち落とさられると言っていたな…間違いなく壁の上も強固な警備が展開されてるだろう…むしろ閉ざされていない分、地上よりも厳しいかもしれない…。
むむ…やはり何とかして壁を開ける必要があるか?どんな認証システムを使っている?そして、それが分かったところで、どうオープンする?誰かが来るまで待つとか?世界中の幹部が集まる会議ってことなら、人の出入りはあるだろう…。
ん?ちょっと待てよ。その前に、ここから壁までの道のりも一面がまっさらな砂に覆われているぞ…。検知器か地雷のようなトラップか、何かしらが仕掛けられていると見ていいだろう…。
うう…超えるべきハードルが多すぎるな…。この限られた条件の中でどう対処するか…。どうする?どうするか…?うーむ…あれ?そういえばクロロは?)
顔を上げると、クロロがすたすたと壁に向かって歩いていくのが見えた。
コン太が派手にずっこける。
「おーい!コン太!何してんだ!さっさと行くぞ!」
クロロが腕を大きく振りながら声を張り上げる。
「ば、ばかやろう!お、おまえ、無謀すぎだ!レビオラに見つかるぞ!」
「何言ってんだ!どうせ見つかるんだからよ、早いとこ中に入ろうぜ!」
まるで、その辺の店に入るくらいの軽いノリだ。
その時、壁から低い機械音が響いた。
「!!!」
壁の一部が、正方形にくり抜かれたように内部に引っ込み、代わりに黒塗りの機関銃が現れた!
「ん?なんだこりゃ?」
クロロがきょとんと銃口を見上げる。
「く、クロロー!逃げろー!」
コン太の叫びと同時に、機関銃が火花を放つ!!!
ドルルルルルルル!!!
大量の薬莢が飛び散り、クロロの体が跳ね上がるように激しく揺れ動く!
「そ、そんな!!!」
ルルル…
音が鳴り止み、機関銃が元あったように壁の内部に引っ込んだ。
「…くっ、クロロ!」
コン太が駆け出し、地面に横たわるクロロの元へ向かう!
(く、くそっ!そんなことが!い、いきなりマシンガンだなんて!)
「クロロー!」
コン太がクロロの肩を掴み叫び声を上げる。
「う、うっせえな~!い、いてて!なんだったんだ、ありゃ」
クロロが体をさすりながら起き上がる。
「な、何いーーー!!!???」
クロロを見ると、着ていた服は穴ボコだらけになっていたが、出血している様子はない。
まさか…!
「ふう、オーラ・ドライブのおかげだぜっ!」
クロロが服の埃をパンパンと払う。
「お、オーラ・ドライブ…!マシンガンの弾まで防ぐとは…!」
(そ、想像以上だ!ぼ、ボクだって大丈夫なんだろうか…いや、同じ特訓をしてるんだ!…信じるぞ、ボク自身をっ!)
コン太がぐぐっと拳を握りしめる!
「へへへ!ちょっと痛えが、何てことはないさっ!行くぞっ!」
クロロが聳える壁をキッと睨みつける。
「だが、この壁はどうする?飛んでいくか?」
「…いや、正面突破だっ!」
クロロが拳を握りしめる!
ゴゴゴ…!!!
クロロの右腕が光を帯び、熱を発しながら輝きを増していく…!
「お、おまっ!まさかっ!」
「だあっ!!!」
光の拳を壁に叩きつけた!!!
ドガン!!!
轟音と共に、壁の一部が吹き飛び、通り抜けられる程の穴が空いた!
厚さが3メートルはある鋼の壁だが、まるで大砲で撃ち抜かれたようだ!
「ようし!!!乗り込むぞっ!」
クロロがぴょんっと穴の向こうへ飛び込んだ!
「む、無茶苦茶だな、まったく…!」
コン太も慌てて駆け込む!
ー壁の内部へ!ー
壁を潜ると、だだっ広いコンクリート敷の平地が広がり、数百メール程先に、ダムのような威圧感たっぷりの本部ビルが鎮座している。
本部の左右には、管制塔や格納庫のような建物が、クロロたちのいる壁の間際まで連なっている。
「お、思ったりもずっと広いぞ…!」
コン太が呟くと同時に、けたたましい警報音が鳴り響く!!!
「ぐゎっ!う、うっせえな!」
クロロが顔を顰めて、辺りを見回す。
「し、侵入がばれたんだ…!壁にこんな大穴を空けたんだから、当然だろうが…」
左右の建物群から、ミリタリー・ユニフォームに身を包んだ構成員が飛び出してくる!
拳銃に刃物、マシンガンに薙刀…バラエティ豊かな獲物を手にしている。
少し間を置いて、格納庫と見られる建物から大ぶりのSUVがウィリーをするように勢いよく飛び出す!
開け放されたサンルーフやドア・ウィンドウから、バズーカ砲やライフルなど、とびきり物騒な武器が覗いている。
建物の屋上部分からは、小型のドローン兵器が、まるで蜂の巣を突いたように縦横無尽に飛び上がりながら、空一面を埋め尽くしていく…!
ゴゴゴゴゴ…!!!
それぞれが明確な殺意を剥き出しにし、巨大な塊と成して、クロロたちに向かって大波のように押し寄せる!!!
「が、ガキ!?」
「こ、こいつらは一体…!」
「なんかしらんが、油断はするな」
「ああ、オーバーキルってくらい、徹底的にやってやれ!」
「う、うぐっ!」
思わず怯むコン太の背を、クロロがばしんと叩く!
「よしっ、オレらもいくぞっ!!!」
はあっ!と気合いを込めて、バーナーのようにオーラを解放する!
ドォン!!!
「くっ、くそっ!」
コン太も慌てて後に続く!!!
ドドォン!!!
ブオオオ!!!
2人のオーラが、竜巻のように連なり、炸裂するオーラの圧力が突風を巻き起こして敷地内に吹き荒れる!
「なな、なんだ!?」
オーラに押され、構成員たちが後退りをする…!
「だぁっ!」
クロロが砂煙を上げ、地面を滑るように飛び出した!
高速の飛行により、構成員軍団との距離がみるみるうちに縮まる!
「!!!撃てえ!撃ち殺しちまえ!」
おおおっ!っとドスの効いた咆哮と共に、ハンドガンやマシンガンから火花が弾ける!!!
クロロがオーラを増大させた片腕を体の前に差し出し、弾丸を跳ね飛ばした!
「へへっ!そんなんきかねえぞ!」
高速飛行の勢いのまま、体を捻り、脚を鞭のようにしならせた!
ブオオっ!!!
「う!うわあああ!」
蹴りによる烈風が構成員を落ち葉のように吹き飛ばす!!!
「へへ!!!…ん?」
上を見上げると、飛び交う無数のドローンの下部から、煙が弾けた!
小型ミサイルだ!
「やべっ!」
クロロが咄嗟に腕を交差させ防御の姿勢を取る!
その瞬間!
ボボボン!!!
放たれたミサイルが空中で爆発した!
「!!!」
「ふふん!」
後ろを見ると、コン太がオーラ弾を散弾のように撃ち出したところだった!
「サンキュー!コン太!」
「モーリーさんも実戦がとにかく大事っていってたけど…。確かに実戦で使うことで
オーラを使いこなせている気がする!」
コン太がオーラを宿した拳に力を入れる。
「くくっ!怯むな!火力を上げろ!」
リーダー格の構成員が声を荒げると、黒塗りのSUVからRPGを抱えた構成員が飛び出す!
「あっ!あれはやばいぞっ!」
コン太が叫ぶ!
「撃てえ!!!!!」
ドカン!
SUVを包み込むような爆炎と共に、鈍い音が敷地内に反響する!
「クロロっ!飛べっ!」
「よしきたっ!」
クロロとコン太が飛び上がったすぐ真下を、高速のロケット弾が煙の尾を引きながら過ぎ去る!
ドドーン!!!
衝撃波と共に、鼠色の壁に巨大な炎が噴き上がった!!!
「よ、避けた…だと!?」
「ふいーっ、あぶねえっ!」
クロロが空中に留まりながら冷や汗を拭う。
「う、浮いてやがる…!ど、どうなってんだ?」
「ええい!格好の的だ!攻撃を止めるな!」
小型の戦車が砲台をぐぐっと動かし、クロロにピタリと狙いを定めた!
「行くぞー!3、2、1…」
「く、クロロ!狙われてるぞ!さっきよりもずっとヤバいやつだ!」
「え?」
「ファイヤー!!!!!」
戦車が大きく振動し、砲台が火を噴く!!!
超音速の砲弾がクロロに向かって突き抜ける!!!
「速っ!!!避けられねえっ!!!」
咄嗟に腕を十字に組んで、体を丸める!
ズドン!!!!!
光が炸裂し、一瞬後に猛烈な衝撃波と熱風が周囲の瓦礫を吹き飛ばす!!!
ゴゴゴゴゴ…
「や、やったぞ!直撃だ!!!」
「く、クロロ…!」
コン太が、顔にかざした腕を下ろし、薄目を開ける。
「へ、へへ…やりやがったな…!」
!!!
バシュッ!
クロロが体を覆った分厚いオーラの壁を解く!
「く、クロロ!無事なのか!?」
「ああ…思いっきり増大を使ったら何とかな…!」
クロロが空中でぴょこぴょこと手足を動かす!
「なな…!なんだとっ!せ、戦車の砲弾が命中したんだぞ…!!!」
構成員が目を剥く!
クロロが戦車に向かってキッと鋭い視線を送る!
「へへん!こうだったな…!3…、2…!」
!!!
クロロが右手を後ろに引く…!
「さっさと逃げちまったほうがいいぜっ!」
ブーン…!
溜め込んだオーラの光が膨らんでいく…!!!
「…1っ!!!」
ゴゴゴゴゴ!!!!!
オーラの光が巨大な塊となり、もう一つの太陽のように周囲を照らし出す!!!
「たっ、退避!退避しろー!!!」
小型戦車に乗っていた構成員が一斉に外に飛び出す!!!
「ファイアー!!!」
引いた右手を一気に突き出す!!!
ボンっ!!!
クロロの手のひらから爆炎が吹き出し、オーラの巨大な火の玉が飛び出した!!!!!
超スピードの光が一瞬で小型戦車に着弾する!!!
ズドーーーーーン!!!
「!!!」
爆発に乗り、まるで玩具みたいに戦車が上空に放り出された!!!
シュウウ…
特大のオーラ弾が爆発した周囲から真っ黒い煙が火山のように噴き出ている…
「ほほー!すっげえ威力だな!」
「た、ただのオーラ弾なのに…!?はっ!る、ルーティンか!掛け声は潜在しているオーラを引き出す…!」
ジュディの話を思い出す…
…
……
………
ジュディ「必殺技と言えるような決め技なんかにも、名前や掛け声、モーションなんかを組み合わせると威力や効果が増すよ。ルーティーンになるからね」
クロロ「る、るーてぃーん?」
ジュディ「そっ。決まった動作を取り入れること。ルーティーンは、気持ちを高め、集中力を上げ、自分の潜在オーラを引き出すことができるの」
クロロ「ほえ~、だからアニメや漫画なんかでもみんな必殺技の名前を叫ぶのか!!!」
コン太「…そ、それは場面を盛り上げるためだろ。…ま、でも結果的には必殺技にルーティーンを取り入れてるって意味だと同じか…」
………
……
…
「そういや、そんなこと言ってたな…!ってことはよ…」
クロロがニッと笑う!
「321ファイア!これがオレの必殺技だっ!」
「ば、化け物だ!有人の応戦は避けろ!無人兵器で制圧するんだ!」
「!」
引き上げる構成員の間を縫って、二足歩行式の、まるでダチョウのような形の無人兵器がクロロたちの前に立ちはだかった!
クチバシに当たる部分に、砲撃と銃撃を兼ね備えた複合型の火器が備わっている。
上空には、ドローン兵器が空を染めるような勢いで広がっている。
「す、すごい量だ!だが…」
コン太が無人兵器群の先にある本部ビルに目をやる。
「うかうかしていると、ボスとチャップマンに逃げられるかもしれない…!クロロっ!」
「ああっ!一気に吹き飛ばしていくぞっ!」
はあっ!!!クロロとコン太が気を入れ、体の芯から更なるオーラを炸裂させた!!!
ー本部ビル 会議室ー
ホールのような広い空間は、白を基調としており、壁には中世西欧様式の瀟洒な装飾が施されている。
彫刻で彩られた見上げるような高い天井からは、宝石が散りばめられたシャンデリアがぶら下がっている。
床には吸い付くような深い毛足のカーペットが敷かれ、部屋の中心には楕円形のテーブルがあった。
その円卓を20人ほどの男たちが囲っている。
壁際にはずらりと椅子が並べられており、円卓と合わせて合計100人程度が一堂に会していた。
室内だけを見ると、一国首脳の官邸や、歴史ある大銀行の会議室と見紛うほどだ。
だが、参加している全員が、1人の例外もなく物々しく、恐ろしく人相が悪いため、体を刺すような威圧感がホール中を満たしている。
バタン!
重厚な空気を割くように、木製の大きなドアが開く!
「ぼ、ボスっ!」
真っ青な顔をした迷彩服の構成員が、バタバタを音を立てながら会議室に入り込む!
「なんじゃ!ワレ!」
「合議中だぞ、こら!」
ドスの聞いた声が飛び交う!
「あ、あの!先ほどの侵入者ですが!」
「あん?まだ生かしとんのか」
頬の肉をたぷんと垂らした大柄な男が、ぎろりと迷彩服を睨む。
レビオラの大ボス、アーク・ロイヤルだ!
「そ、それが!銃も、ほ、砲弾でさえも効かなくて…」
「…何?オーラ・ドライブか?」
アークの横に座る、老齢の男が反応する。
チャップマンだ。
だが、その姿は異様で、顔の半分が人工物で覆われている。
フランケンシュタインか、半人半機械のサイボーグのようだ。
「オーラ・ドライブ…。ハウスか!」
アークが顔を顰めて立ち上がり、体重の乗った拳を円卓にドカンと叩きつける。
「は、ハウス?しかし、相手は子供のようでして…」
「ガキだぁ?ハウスとはいえ、ガキ相手にこの体たらくかぁ!」
アークが怒号を放つ!
「まあ、落ち着きなされ。ガキだろうと、ハウスの組織員であれば、オーラ・ドライブが使える。そうすると、ちょっとやそっとの銃火器ごときじゃびくともせん」
チャップマンが顎髭を撫でながら言う。
「ふざけるな!会議を中断して、大至急、有効な対策を出せっ!」
どん!っと、再びアークが拳を叩きつける音が室内に響く。
「…オーラ・ドライブに有効なのは、オーラ・ドライブによる攻撃…。アレを試す絶好の機会ですぞ、アーク」
チャップマンが静かに口を開く。
「アレか…!?だが未完成じゃなかったのか?」
「未完成でも、ハウスの組織員2人、それもガキなら問題ない。ガキどもは殺さずに研究資源にすれば、アレも一気に完成するじゃろう…。一石二鳥じゃわい!」
チャップマンが立ち上がった。
「ふん…なるほどな…。いいだろう、至急、アレをハウスどもに放て!」
アークが唾を飛ばしながら怒鳴り、どかんと巨体を椅子に預けた。
(火の鳥の情報を持ってるかもしれんぞ、ククク…)
チャップマンが口元を歪に歪ませて笑った。
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