ニケの宿

水無月

文字の大きさ
262 / 262

冬の日の過ごし方

 常冬の山。だが一部だけ気温は平地の初夏と同じ。夜には虫の音に耳を任せ、眠ることが出来る。
 コタツに足を突っ込み、フリーは窓の外に目を遣った。ニケの宿の周囲に、雪がちらついている。
 ここは火竜が卵を産んだ地。母竜の加護でこの一帯は魔獣と冷気を寄せ付けない。はずなのだ。
 ニケの話では、風向きの関係でたまーに冷気と雪が入ってくるらしい。前回は、ニケのおじいさんが健在の時だったようなので、本当にたまにある現象のようだ。
 今日は常夏のニケの宿が、冬になる日。
 寒さに震える白い同居人のために、ニケがコタツを出してくれた。相当出番がなかったのか、コタツは埃で白くなっていた。
 畳を外すと炉が出てきたことに驚く。その上にやぐらを乗せ、コタツ布団なるものを被せる。ニケが全部やってくれて感動した。小さい身体でテキパキ動くさまは可愛くて一生見てられる。いや見る。
 中に小型の火鉢が押し込んであるので、コタツなるものの中は温かいのだ。これ考えたヒト、天才じゃないかな?
 後に、コタツを生み出したのが人族だと聞いて複雑な気持ちになった。
 そんなことを思い出しながら丸窓の外をぼーっと見てると、腹の上の湯たんぽが身じろぎした。

「フリー? どうした?」

 目線をやるとニケが見上げていた。
 ぱっちりした赤い瞳に、赤く染まったりんごほっぺ。艶のある黒い髪からは、黒犬の耳がぴょこんと伸びている。黒い生地に赤い花が咲いた着物を着こなし、黒い尻尾を左右にふわんと振っていた。
 とろけるおもちほっぺを持つ生きた国宝・ニケである。

「カッッッハ!」

 不意打ちに、フリーは胸を押さえて血を吐いた。
 降り注ぐ赤い雨に、顔をしかめたニケは尻尾を苛立ったように大きく一度振る。

「はあ。僕が可愛いばっかりに」

 額を押さえてやれやれと首を振った。周囲の大人から可愛いと言いまくられ、ニケの自己肯定感という土台はコンクリートの如く。将来ナルシストになりそうでちょい不安だが、ニケの周囲にそれを心配する大人はいなかった。幸か不幸か。
 死んでいたフリーが身を起こす。

「ごめんごめん。ここから見える雪が珍しくって」

 白い髪を耳にかける青年はフリー。本名は別にあるが、ニケが付けてくれたあだ名の方を気に入ってしまい、稀に本名を忘れかける。新雪を思わせる髪と肌。金緑石の瞳は間近で覗くと金と黄緑の二色のグラデーションが美しい。神に祝福された白髪と能力を持つが、それ以外はてんで駄目な青年であった。
 彼の膝の上で丸くなっていたニケは「ああ」と納得したような声を漏らす。

「僕もじいちゃ……祖父から聞いただけだからな。すっかり忘れていた。朝、雪がちらついていたときはこの世の終わりかと思った」

 ニケが朝っぱらからすっ飛んできたわけだ。
 フリーは編み物を再開させる。

「明日には戻ってるかな?」
「どうだろう。何日続いたとかは、聞いてないしな。スミさんなら知ってるんじゃないか?」

 ニケの宿で同じく働くお兄さんの名前。ニケとフリーとスミ。同じ山で生まれ落ちた者同士が営む店は、今日はお休み。
 火竜の加護が弱まっている間は、猟師でもこの山には近寄らない。ニケも山菜採りには行かず、大人しくフリーの部屋で暖まっていた。ま、僕がいないとフリーは寒がるしな! 仕方ないな。

「そっか」

 返事をしながらフリーはコタツの上で開かれた本に目を向ける。編み物などできないので、ニケの姉が作った「編み物講座~初心者編~」なる本のお世話になっている。

「……」

 軽く目を通しただけでスイスイ編み物をやり出した人族にニケは、初めは開いた口が塞がらなかった。こやつにも出来ることがあったのか、と。
 今は毛糸玉に抱きつき、噛みついたりたしたしと叩いたりして遊んでいる。
 ニケが膝の上でずっと可愛いことをしているので、フリーは手の震えが止められない。
 横にニケ用のクッションがあるのにそちらに移らず、膝上に居てくれる。クッションより自分を選んでくれたのだ。フリーは編み棒を持ったまま「勝った!」と天を仰いでいた。従業員の奇行に慣れ切ったニケは見ないふりをする。

「でも、そこまで寒くないのが幸いだね」

 雪が降っている時点でそこそこ冷えるのだが、凍光山の吹雪を見慣れたフリーの感覚はバグっていた。

「そうだな。でもお前さん用に冬装備をもっと充実させておくべきか」

 ニケは腕を組む。
 しかし出稼ぎに行こうものならこの白いものもついてきてしまう。こやつはあまり役に立たんし(辛辣)、商人に目を付けられればまた欲しい欲しいと言われてしまう。面倒だ。
 頭に毛糸玉を乗せたまま考え込む姿に、フリーは必死で血を吐くのを堪えた。

「大丈ブッ‼ ……大丈夫だよ。今、腹巻作ってるし」
「お前さん。いい加減にしないと貧血で倒れるぞ。腹巻作ってたのか」

 一切「何作ってるんだ」と聞いてこないニケに涙が出そうだった。もうちょっと俺に興味を持ってほしいと思うフリーだ。

「ニケとスミさんの分も作る予定なんだ~」

 本当は人数分の帽子を作りたかったのだ。毛糸の帽子を被ったニケとか、可愛いに決まっている。是非拝みたい。しかしケモ耳ズに断られた。
 彼ら曰く、毛皮のコートの上から毛皮のコートを羽織るようなものだから気持ち悪い、だとか。
 ケモ耳のないフリーには良く分からん感覚だが、彼らが嫌がる物を作っても意味がないのでやめた。

「ふーん。腹巻か。どんな柄にするんだ?」
「柄を作れる技術はないです」
「熟練みたいな指捌きしとるから忘れとった。そうだな。僕の分は黄緑色で作ってくれていいぞ?」
「え、それって俺の目の」

 毛糸玉が鼻先にもふっとヒットした。



 座りっぱなしでいると鈴蘭の妖精みたいなおじいちゃんに叱られるので、二人でラジオ体操をする。
 雪が降っているので縁側でしていると、うさ耳の青年が歩いてきた。

「おー。フリー君。雪だな。風邪引いてないか? 喉は? 頭痛くない?」

 顔を見るなり心配してくるのは衣兎族のスミ。
 掃除でもしていたのか、前掛けを付けた動きやすい制服姿だった。休みの日なのに制服に身を包んでいる彼を見て、コタツで編み物していたのが申し訳なくなる。
 背伸びしていた腕を、のろのろと下げた。

「あ、はい。どこも痛くないです」

 彼らはこの程度の雪なら裸足で薄着だ。冷たい廊下を踏むスミの素足を見て身が震える。

「スミさん。休みの日は休んで下さらないと困りますよ」

 雇い主が腕を組んでスミを見上げると、うさ耳のお兄さんはぐんと目線を下げた。

「ああ、ごめんな。でもこの前魔獣出たじゃん? その時はフリー君が駆除してくれたけど、自分は何もできなかったし。このくらいは……って思って」

 魔獣魔物退治用に飼われていただけあり、フリーは魔獣が出ると淡々と処理しに行く。直前まで纏っていたほんわかした雰囲気が嘘のように掻き消え、手に雷の刀を召喚する。その後ろ姿が頼もしくもあり、虚しくもある。ニケは目を伏せた。
 スミも気まずそうに目線を逸らし、頬を掻いている。いつもはピンと立っている耳も若干下がっていた。すんごい触りたい。
 何かを感じ取ったのか、スミはフリーが手を伸ばしても届かない距離で足を止める。

「それを言うなら。僕も何もしてませんよ」
「「ニケ(君)は何もしなくて良いって!」」

 白いのとうさ耳の声が重なった。思わず顔を見合わせる青年たち。フリーはにっこり笑い、スミは舌打ちした。フリーは泣いた。

「はい。そういうことなので、スミさんも気にしなくていいです」
「……そう、だな。ありがとう、ニケ。でも寒いから身体動かしたかったんだ」
「そうですか」

 ニケとスミの会話に元気になった白いのが割り込んでくる。元気いっぱいに手を上げて。

「寒いんですか? スミさんも一緒にコタツ入りましょうよ! 寒いんでしょ? 俺にくっついててもいいですよ⁉ 寒いって言いましたよね⁉」

 目を輝かせてスミに詰め寄ろうとするも、うさ耳お兄さんは華麗に背を向けた。

「じゃ、まだ掃除したいところ残ってるから」

 手だけ振ってすたすたと行ってしまう。
 フリーはがっくり肩を落とす。

「真っすぐに無視された」
「お前さん。袖にされてもめげないな……」


 
 雪は止んだ夜中。
 畑の近くにて。

「――百涙(ひゃくるい)」

 ニケの育てた作物を漁ろうとした魔獣の群れ。加護が弱まるとここはこんなにも恐ろしい場所になるのか。スミはニケを抱き締め、物置に隠れる。呼吸するのも躊躇うほどの恐怖のなか、平然と飛び出して行った彼が信じられなかった。……いつものことながら。
 フリーの魔九来来・第三形態『百雷涙雨』。
 多対一を想定した、その名の通り少しだけ降る雷の雨。
 一発でもやかましい雷の音が、同時に数十と大地を叩く。
 詠唱を略したせいか威力は低めだったが、直撃した魔獣を炭化させた。これでいつもより威力がないなど誰が思うのか。直撃を逃れた魔獣も、雷を雨と降らせた白い生物に怯え、山奥に逃げ帰っていく。
 魔獣を前にしたフリーの瞳は凍てついた夜空の星のよう。恐怖を与える側の魔獣の戦意を剥ぎ取るのに十分だった。
 風が白い着物をはためかせ、役目を終えた黒刀は消え――る前に引っ掴んだ。まだ用がある。
 刀をひっさげ、軽く畑を見て回った。これだけの攻撃をしておきながら、作物の葉にはかすりもさせていない。のだが、フリーの目では暗くてろくに何も見えない。

「ニケ。スミさん。確認してくれませんか?」

 索敵能力は彼らの方が優れている。
 ニケたちに、魔獣がもういないか探ってもらおうと、物置の戸を開けた。
 一瞬、ビクッと肩を揺らしたスミだったが、浮かび上がる白い影にホッとしたようだった。むっぎゅうと潰れるほど抱きしめていたニケを手放す。

「フリー! 怪我はないか?」

 ぴょんと胸に飛び込んでくる。フリーは超邪魔くさそうに黒刀を後ろにぶん投げた。

 ――こんなもの握っていたら、ニケを抱っこ出来ないではないか!

 両腕でしっかりとニケを抱き締める。顎下を、ニケの夏毛耳がくすぐる。ふふっと笑ってしまい、ずっとスミに包まれていた幼子はほのかにあたたかく、頬ずりまでしてしまった。うーん。もっちもち。百点!
 背後で、地面に深々突き刺さった呼雷針が何か言いたそうに、でも消えずに残ってくれていた。
 怯え固まっていたが、フリーの様子を見て肩の力を抜いたスミも物置から出る。
 空気を読んでくれている刀をスミが拾い上げようとしたが……
 根っこでも生えたかのように動かない。

(はっ? おっも……! は? 嘘だろ?)

 刀なのである程度の重みは理解できる。だがこれは先ほどまでモヤシ代表が片手で持っていたものなのだ。自分が持ち上げられないのはおかしい。
 のんきにもちもちすりすりしている白い背中をはたく。

「フリー君! なにこれ重い!」
「はい?」

 フリーは耳を疑うように振り返る。
 背後では、スミがおおきなかぶでも引っこ抜こうとするように、両手で柄を握っていた。

「呼雷針はかっるいですよ? 軽すぎて強度が不安になるときありますし」
「はあぁ? 持ち上がらないけど?」

 もしかして投げた際、変な刺さり方をしたのだろうか。
 不安になりながらもニケを抱っこしたまま片手で掴む。刀はスコッと抜けて持ち上がった。

「……」
「……」

 ハテナを浮かべる青年たち。
 葉巻でも吸うように、ニケは白い骨を齧る。

「魔九来来で召喚したものは、所有者にしか扱えないとかなんとか。聞いたことがあるな」
「なぁんだ! よかったー」

 スミは安堵したようにデカい息を吐いた。フリーより弱くなったのかと焦ったのだろう。複雑な心境のフリーである。

「さて、やるか」
「魔獣が残ってたらいやですからね」

 耳をピクピクと動かし、フリーを盾にしてケモ耳たちは宿内や周囲を見て回った。
 暗闇に潜んでいるかと思うと生きた心地がしない。それでもここまで動き回れるのは、凍光山生まれの彼らだからだろう。魔獣慣れしていない他の者ならとっくに逃げ去っている。

「いない、な」
「そー……うですね」

 頷き合うスミとニケ。彼らの言葉を待ってから、フリーは刀を消す。
 この夜ばかりは、三人身を寄せ合って眠りについた。いつもは一緒に寝てくれないスミがいるので、フリーはほっくほく笑顔のいい気分。寝ずの番をしようかと提案したが、二人に引きずり込まれた。
 雷音が響いたっきり、凍光山は静かだ。



 初夏の空気が戻る。
 朝日に目を細めつつ、ニケは畑の見回りをしていた。雪が降ったため、水やりをしなくていいのは楽だ。スミは壊れた一部の柵の修理をしてくれている。
 カーンカーンと、槌の音が心地好く鳴っていた。

「スミさん。そっちはどうですか?」

 とことこと様子を見に行く。
 手先が器用なスミは、柵に空いた穴をほぼ塞いでくれていた。ダメージを受けないように、耳を折り畳んだ状態で。

「おお、ニケ。適当に塞いでおいたけど。プロに任せた方がいいかもな」
「仕事が早いですね」

 フンスフンスと鼻息荒く、何故かニケの方が得意げな顔をする。スミは少しだけくすぐったかった。肩にかけたタオルで汗を拭う。

「今日は暑くなりそうだな」
「加護が戻って何よりです」

 本当は加護などではないのだが、その恩恵に与っているためこの言い方が相応しいだろう。
 ニケの宿の周囲を、季節外れの空気が包んでいる。ちょうど今、太陽は雪雲で隠れてしまったが昨日とは違い気温は高い。

「スミさん。スミさんの集落の様子を見てきてもいいんですよ? 気になるでしょう?」

 気を遣ったが、うさ耳の青年は苦笑気味に手を振る。

「いいって。あそこは避難所みたいなものがあるんだし。何かあれば避難しているだろ。そこに」

 妹さんもいるのにスミの態度は軽かった。まともそうに見えても、歪な集落の出だ。たまにスミのことが分からなくなるニケである。

「……朝食にしましょうか」
「そうだな」

 宿に戻り、一応フリーの部屋へ。
 足音と気配を消し、ちらっと隙間から室内を覗く二人。
 編み物をしていたはずの彼の目は、神速でニケに向けられた。

「ニケ~」

 だらしない顔で手を振ってくる。力を使った後、ドジっ子力が跳ね上がるフリーは戦力にならない。編み物でもしていろと命じておいたのだ。

「スミさんもどうしたんですか? 入ってきていいですよ? こっちきてくださいよぉぉぉ」

 スミは無言で戸を閉めた。

「いつも怖いなフリー君は」
「怪談話より怖いですからね」

 見なかったことにして厨房へ足を運ぶ。
 おむすびをこさえていると、えぐえぐ泣いているフリーが顔を出すのだった。



【おしまい】











 凍光山の描写をするとき、初見の方は意味不明だろうなと笑ってしまいます(*^^)v なんだよ常冬の初夏って。
 せっかくBLなので、ご都合魔九来来(不思議パワー)で大人になったデカニケとフリーの恋模様でも書いてみたいなと思うのですが、そういうのは望まれてないか? と引き出しにしまいしまい。
 リーンの光輪の話は短編に纏めて投稿しようかなと考えております。

 また、読みに来てくださったそこのあなた。ありがとうございました!




感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

あお
2024.05.15 あお
ネタバレ含む
2024.05.16 水無月

うえええええ‼ あおさん、ありがとうございます。「ニケの宿」は長編なので感想はこないと諦めてました……うびゃあああ嬉しいです!ぎゃおおおおっ。感想が嬉しすぎる額に入れて飾っとくぅ!

ありがとうございます。無事に完結まで持って行くことが出来ました。ダブル主人公を可愛いと言ってもらえて感無量です。思い残すことは無いです。スミには悪いことをしました( ;∀;)
少し迷っていて、リーンの話は続編にしようか番外編にしようかそれともリーンを主役にして書こうか、など。

続編まで望んでくださって、嬉しい言葉がぎゅっと詰まった感想ありがとうございます。ニケの宿の続きを書く日があれば、その時はまた気楽に読んでってください。

解除

あなたにおすすめの小説

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

忠犬男子が懐きすぎて異世界までついてきた「件」

竜弥
ファンタジー
異世界に転生する直前、天貴(てんき)が選べた“持ち物”は三つ── だが、彼はひとつしか持たなかった。 残されたのは部屋と、布団と、そして──忠犬。 「クータンを頼む」。それが、最後の言葉だった。 ぽつんと現代に残された玄太は、天貴の部屋で布団にくるまりながら泣いていた。 でも、捨てられたわけじゃなかった。 天貴が“本当に”持っていきたかったのは、玄太だったのだ。 その事実を知った瞬間、忠犬は立ち上がる。 天貴の武器を手に、異世界転送の手はずを整え、 天貴が今どんな敵と向き合い、何に苦しんでいるのかを知った玄太は、叫ぶ。 ──忘れ物はおれ!…届けに行くっすから! これは、異世界に送られた大好きな先輩を追って、 “忠犬男子”が次元を越えて追いかける、少しおかしくてちょっと泣ける物語。

バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる

衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。 男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。 すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。 選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。 二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。 元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。

異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。 休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。 転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。 そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・ 知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。