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24 願いを口にする
しおりを挟む円盤を取り扱うニュースはすぐに終わり、熱中症やクーラーの適切な使用方法へと変わる。
「円盤の入り口が開けられずに、調査の人たちは内部に入れないみたいだね」
「散らかしているから入られたくないな。不時着の衝撃でさらにひっくり返っているだろうし」
円盤が手元に無いのに、ミチの態度は変わらない。それよりも海のお土産に買ったラムネ瓶に夢中だ。
マラカスのように振ったりしている。
「ビー玉が取れない」
悲しそうだが、ビー玉を取ろうと四苦八苦している姿が可愛く思えてしまう。
「ああそれ、青い飲み口のところ。時計回りか反時計回りに回すと開くよ」
メキッ
「おお! 開いたぞ。ありがとう、ほとり」
無邪気に喜んでいるが、笑えない音が鳴ったな。
ビー玉は青色だった。
ちゃぶ台の上で転がして遊び始める。
「見ろ。ほとり。俺の瞳の色だぞ」
「そうだねー」
子どもを見守る保育士の先生の気分だ。目じりが下がりっぱなしである。
「ほとりに、やろうか?」
「もういらなくなったの?」
「俺が帰っても、俺のこと忘れないようにって」
ずぐっと、胸に鉛が落ちる。
そう、だよね。帰っちゃうんだよな。
はぐれたくなかった時と同じように、ミチのジャージの背面を握る。
帰らないでほしい。俺と一緒に生きてほしい。観光地で暮らすのも悪くないよ、と言いたい。
「ミチ……さ。ずっとここにいなよ」
断られると分かっているのに、俺は自分の願いを口にした。
ミチが固まっている。困らせたいわけじゃ、ないのに。
うつむいていると、ミチが覗き込んでくる。
「おわ、びっくりした」
「泣いてるのか?」
「泣っ! ……いてませんー」
ジャージから離した手を、ミチが握ってきた。
どきっと肩が跳ねてしまう。
「ここに居ていいのか? 無一文で戸籍も何も無いのに? 事件とかで警察がきたら、俺のことどう説明するんだ?」
「……ミチ?」
俺の返事を待っている。この微妙に目を合わせてこないところが、なんだか面白くて。
「その時は池に飛び込んで、オタマジャクシと遊んでいればいいよ」
「家賃とかも払えないぞ?」
「家賃とかいらないし。……ミチが、ミチさえ居てくれたら」
ミチに感じているのは間違いなく友情だ。それ以上でもそれ以下でもない。そのはず、なのに。俺の胸には、それだけではない何かも、ビー玉のように転がっている気がしてならなかった。
みーんみんみんみん……
セミが鳴き始める。
風通しのいい部屋なのに、俺には汗ばむほどだった。
そうか‼ じゃあよろしくな! と元気いっぱいの返事が返ってくるとは、思ってませんでしたけど。
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