49 / 68
ロッドウルム編
6 駅弁タイム
しおりを挟むハガキに書かれていた住所に向かう。
可愛斗がミチに帽子とサングラス、マスクを付けていたが「お忍び中の芸能人」感が凄まじく。逆に人目を惹き付けてしまうとのことで帽子だけとなった。
ジャージにキャスケット帽。三つ編みヘアーに裸足。
色々と壊滅してそうだがイケメンパワーでなんとか形になっている。
「イケメンってずるいな」
「体格も良いし……。掘りも深いもんね」
可愛斗とイケメンへの恨みを吐きながら駅弁を楽しむ。せっかく都会に出てきたのだ。ご当地キャラのアルカナイクマとコラボした駅弁を食べてみたかった。
向かい合う形の席。窓際に俺。俺の横に可愛斗。正面に腕と足を組んでいる宇宙生物。
すれ違う人が絶対に、驚いた顔でミチを見ていく。
「なんで裸足なんだよお前」
「靴は苦手でな」
「弁当にゼリーついてたけど。ミチ、食べる?」
「ゼリー? 液体か?」
「液体じゃないよ。でもやわらかい」
液体じゃないと聞くと窓の外に目を向けた。横で可愛斗が欲しそうに眺めてくる。
「いる?」
「やりぃ!」
同じのが弁当に入っているはずなのに、拳を掲げて喜んでいる。
「羨ましいだろー。イケメン野郎。いいだろ。ほとりのゼリー」
クソガキ感満載に自慢し出す。
「……確かに羨ましい。悔しいな」
「へっへーん」
ミチが大人の対応をしている。ミチは水筒の中身をがぶ飲みしていた。俺の作ったお茶を水筒に詰めているのを見て、嬉しくなる。たったそれだけのことで。
駅で停まっていた電車がゆるやかに発進し出す。
「ふぉふぉふぉふぇっふぇふぇふぉおおんおうう?(どこの駅で降りるんだっけ?)」
駅弁を口いっぱいに頬張っている可愛斗が肘でつついてくる。
「如月(きさらぎ)駅。まだまだ先だよ。まだあと一時間くらい」
「もぐもぐモグモグ」
「うん。お弁当食べたら寝てていいよ。ついたら起こすし」
「もぐもぐもごもご」
「おう。ありがとね」
ミチは難解な問題を前にしたような顔つきになった。
「可愛斗はなんて言っているんだ? 翻訳機でも分からん」
「俺も分かんない。適当に返事してるだけ」
そう言うと可愛斗は「あがっ⁉」とした顔を向けてきたので、たまたま会話になっていたようだ。
「んだよそれー! 愛の力で通じてると思ってたのに! 俺の純情返せよ」
「ブロッコリー、食べてあげようか?」
「くぅんくぅん」
大型犬の頭を撫でつつ、ブロッコリーを口に運ぶ。塩味で美味しい。
俺の肩に甘えるようにもたれる可愛斗。ミチが拗ねたように唇を尖らせた。
「俺もほとりの隣が良かったな」
「え?」
「駄目だぞ! ここは俺の場所だ!」
がるるるっと大型犬が俺を抱き締める。お弁当と箸を持ったまま。器用な奴。
「可愛斗。次の駅で場所交換しないか?」
「しないっ! ほとりの横は俺なんだ!」
電車で騒ぐな。俺が良い案を出そう。
「じゃあ、可愛斗がミチの横に座ればいいんじゃないか?」
「「……」」
仲良く二人座っているのを想像したのか、銀髪と茶金髪はずぅんと項垂れた。
くわっと詰め寄ってくる。
「何が『じゃあ』なんだよほとりぃ!」
「お前らを仲良くさせようと思って……。良くないか?」
「良くねーよ! こんなイケてるフェイスと親しくする気はないっての!」
んべーっと、ミチに向かって舌を突き出している。こいつは本当に二十歳なのだろうか。ミチもほほ笑ましい顔をして見ている。
「では。俺はここで構わない」
「いいの?」
「ほとりの顔がよく見える」
にこっと微笑むミチ。
イケメンが迂闊に甘いセリフを吐くな。イケメンビームで可愛斗と共に灰になるところだっただろ!
「目がああああああぁ」
ほらもう! 可愛斗がバ〇スを喰らっている。
10
あなたにおすすめの小説
アイドルですがピュアな恋をしています。~お付き合い始めました~
雪 いつき
BL
人気アイドルユニットに所属する見た目はクールな隼音は、たまたま入った店のパティシエ、花楓に恋をしてしまった。
見た目はクール、中身はフレンドリーな隼音は、持ち前の緩さで距離を縮めていく。
毎週ケーキを買うだけで、話をするだけで、幸せだから……な筈が、紆余曲折あり晴れて恋人同士に!
周りを巻き込みがちな、初恋同士のふたりのピュアでゆるゆるな恋のお話。
―二十歳イケメンアイドル×年上パティシエの、恋人編!―
※こちらからでも読めるかと思いますが、前作は下↓のフリースペースからリンクを繋いでおります。
【完結】アイドルは親友への片思いを卒業し、イケメン俳優に溺愛され本当の笑顔になる <TOMARIGIシリーズ>
はなたろう
BL
TOMARIGIシリーズ②
人気アイドル、片倉理久は、同じグループの伊勢に片思いしている。高校生の頃に事務所に入所してからずっと、2人で切磋琢磨し念願のデビュー。苦楽を共にしたが、いつしか友情以上になっていった。
そんな伊勢は、マネージャーの湊とラブラブで、幸せを喜んであげたいが複雑で苦しい毎日。
そんなとき、俳優の桐生が現れる。飄々とした桐生の存在に戸惑いながらも、片倉は次第に彼の魅力に引き寄せられていく。
友情と恋心の狭間で揺れる心――片倉は新しい関係に踏み出せるのか。
人気アイドル<TOMARIGI>シリーズ新章、開幕!
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
僕を守るのは、イケメン先輩!?
刃
BL
僕は、なぜか男からモテる。僕は嫌なのに、しつこい男たちから、守ってくれるのは一つ上の先輩。最初怖いと思っていたが、守られているうち先輩に、惹かれていってしまう。僕は、いったいどうしちゃったんだろう?
聖獣は黒髪の青年に愛を誓う
午後野つばな
BL
稀覯本店で働くセスは、孤独な日々を送っていた。
ある日、鳥に襲われていた仔犬を助け、アシュリーと名づける。
だが、アシュリーただの犬ではなく、稀少とされる獣人の子どもだった。
全身で自分への愛情を表現するアシュリーとの日々は、灰色だったセスの日々を変える。
やがてトーマスと名乗る旅人の出現をきっかけに、アシュリーは美しい青年の姿へと変化するが……。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる