拾った子どもが翌朝、イケメンに変わっていた

水無月

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ロッドウルム編

18 ケンカになりそうだったけど

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 人数が増えたので畳の間に移動した。各自、座布団を敷いてその上に座す。

「ロッドウルム? 聞いたことがあるような……」

 気絶している間の話を聞き終えたミチが顎に指をかけた。

「ねえねえ! ロッドウルムの写真とか持ってない?」

 ウキウキした卿次さんに首を振っている。

「大昔の話だ。それに俺もうっすら聞いたことがある程度だしな」
「恐竜時代より前から生きてるミチの言う昔って?」

 出された栗羊羹を食べていた可愛斗が噴き出す。

「イケメン野郎! お前いくつだ⁉」
「数えていない。そうか。俺たちを嫌悪している人間がいるのか。どうしたものか」

 外に出て行こうとするルンバさんを小脇に抱えたミチが腕を組む。

「俺が持ってようか?」
「ん」

 パスされたルンバさんを抱き締めておく。ミチを傷つけられた仕返しをしたいのだろうけど。危険だよ、ルンバさん。

 撫でていると可愛斗が羊羹の切れ端をルンバさんに近づける。

「この羊羹めっちゃうめぇぞ。ほれ。お前は食べれるのか?」
『あら。ありがとうございます。いただきます』

 ゴミの吸い取り口っぽいところから、無人レジがお札を吸い込むように羊羹が吸い込まれていく。

「おおー。おもしろ」
「ルンバさん、食べれたんだ。俺のご飯とか、食べてくれてよかったのに」
『ありがとうございます。お二人とも。ですが、私もそれほど食事を必要とはしませんので』
「ルンバさんって、どういう宇宙生物なの⁉ 宇宙生物に詳しそうだし。俺にくれたりしない?」

 前のめりになる卿次さんに、ミチの目が据わる。


「そうだ。お前でサッカーをしようと思ってたんだ」
「ええっ⁉」


 俺はルンバさんごとミチに抱きつく。

「待って待って。助けてくれたから一応」
「感謝している。だがそれとこれとは話が別だ」

 腰を上げるミチと腰を抜かす卿次さん。


 だが彼を守るようにクラゲのエトナさんが舞い降りる。怒りに呼応するように、ふにゃんとしていた妖精の羽根が張り詰めた。


 睨み合う宇宙生物。


 一触即発の空気を感じたのか、可愛斗は羊羹を持ったまま部屋の隅っこまでさがる。


「ミチ。お願いだよ。まだ病み上がりでしょ? 無茶しないで。お願い!」
「……」

 ミチはしがみついている俺を見下ろすと眉を八の字にした。

 人間の目に戻ったミチが殺気を引っ込めてくれる。


「ほとりの気持ちは分かった」
「そう? よかった!」
「つまり万全になってから殴れという意味だな?」
「違いますが?」


 ひとまず蹴りかからないよう抱きついておく。卿次さんもエトナさんを下がらせていたが、彼(彼女?)は周囲から離れない。


 ミチに抱きついている俺の背中に可愛斗がひっついてくる。暑い。

「……あれ? 俺は二人に、ルンバさんが宇宙生物だと言ったか?」

 不思議そうなミチに、可愛斗が黒文字(和菓子用の爪楊枝)で卿次さんを指す。

「あいつの宇宙生物センサーが反応したらしい」


 赤い髪をさらっと払う。


「いやぁ。俺の前では無機物のフリをしても誤魔化せないよ」
「そうか。キショイな。ルンバさんに近寄らないでくれ」
「嘘だろ⁉」


 泣きついてきた男を、エトナさんが雑に慰めている。


「というかお前。宇宙生物たちと生きることを選んだんだな」


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