拾った子どもが翌朝、イケメンに変わっていた

水無月

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ロッドウルム編

21 さっそく実行

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〈ミチ視点〉


 夕食、入浴、睡眠。

 広いベッドで寝息を立てるほとりと可愛斗。クーラーで冷えないようにバスタオルを腹にかけ、部屋の電気を消した。


 卿次と縁側で月見酒。なんでこいつと……


 冷蔵庫にたくさん酒が並んでいた。

 好きなの選んでいいよと言われたので、俺は缶チューハイマンゴー味を手に取った。卿次は氷を入れたウイスキーを月にかざしている。

 周囲に民家がないせいか月明りの届かない場所は恐ろしく暗く、風が吹くたびに闇が手招きしているようだ。


「ミチくんたち、このまま俺の家で暮らさなーい?」


 風呂上がりのガウン姿の卿次。ハーフアップにしていた髪を解いているので少しだけ印象が違う。


「ルンバさん。こっち来てくれ。この家の座標にレーザーを撃ってくれんか」
「すみません冗談です」

 ほとりたちの見張りとしてベッドの下に置いてきたルンバさんがちらっと顔を出し、引っ込んでいく。

「手出しできない宇宙空間から狙撃してくるのズルいよぉ」
「狙撃し返せばいいだろう」

 マンゴーの風味は楽しめるが、やはり海で食べたかき氷の方が甘いな。一緒に食べた相手が、可愛いの化身だったことも大きい。

「届くわけないよね?」
「届く兵器が一つも無いのか?」
「あったとしても。そんなもの、一個人が保有できないよ」
「……そういうものか」

 ツマミはサバ味噌煮。夕飯にほとりが用意してくれたものだ。少し余ったものを酒と一緒に持ってきた。卿次はそれを当てに酒をガンガン飲んでいく。

「疲れちゃったみたいだね。あの二人。すぐ寝ちゃったじゃん?」
「暑いというだけで疲れるのに、変な奴らに襲われればな……。まあ、早めに寝てくれたのは好都合だ」
「もしかして、今からカチコミかける気?」


 空を見るが、月は薄雲の向こうに隠れていってしまう。


「かちこみ? カチカチ山みたいな話か?」
「あーっと。簡単に言うと、相手の拠点に押しかけることかな」
「そうだな。これ以上、ほとりの心の傷を増やすのも深くするのも嫌だ。朝起きたらすべてが終わっていた……。これは最高じゃないか?」


 いい考えだと思ったのだが、


「勝手に行ったって聞いたら、ほとりくん、怒るかもよ? 無茶したーって」

 缶チューハイが波打った。他人の痛みで辛そうにするほとりのことだ。自惚れているわけではないが、俺になにかあると一番嫌がるからな。一番。

「それと、相手が外道だとしても、殺すのは良くないね。俺が言えたことじゃないけど」
「……では、どうすればいいのだ。小型ドローンで、殺さない程度に痛めつければいいのか。あとは警察に、纏めて放り込んでおけば。それなら俺は、危険な場所に出向かなくて済む」


 海で荷物を見守る際に提案したが、ほとりに却下されたドローンだ。念のため、母船から呼んでおいた。呼べば十秒でくる。


「小型ドローン? 一体だけ?」
「俺の手持ちは五百体。どんなレーダーにも映らないから、奇襲をかけるのに最適だ。一応、相手を殺さず無力化する武器も積んである」
「うんあの。多分それを使った方がいいかもね。一夜で壊滅させれば、他の組織。もしそんな組織が他にあればね? 見せしめにもなるだろうし」


 やれやれとため息を吐く。


「見せしめか。目立つのは避けているが、今回は仕方ないか」
「その髪と顔面でいる限りどうやっても目立つよ?」

 なにやら卿次が早口で喚いていたが耳に入らなかった。










 小型とはいえ五百の宇宙兵器に襲撃され、ロッドウルムのアジトは蜂の巣を突いたような騒ぎとなる。


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