ケモノな彼氏

水無月

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「こちら」の世界の行事は

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「『こっち』ってクリスマスとかあるの?」

 こちらの世界に来て数ヶ月が経過していた。ようやく慣れてきたところである。
 ベッドの上。もっふもふタクト君の膝の上で読んでいた本を閉じた。
 あまり衣服を与えてくれないので、冬でも薄着。フードつきのケープに、風を通さないぴっちりしたレギンス。タクト君の家の中は暖かいけれど物足りないので、こうやって彼の毛皮によくお世話になっている。
 最近では、クッション感覚で彼を寝室に引っ張っていく。
 ひたすらひっついてスリスリしてきていたタクト君が顔を上げた。

「クリスマス? クリスマスはないけど、それっぽいのはあるよ。どれだけ遠距離だろうと、どれだけ仕事が山積みだろうと。大切な人と過ごす日っていうのが」
「へえ。じゃあ俺は、タクト君と過ごすってことだよね?」
「う、うん」

 狼の耳をピコピコッと動かし、爪先を擦り合わせる。
 何かに影響されたのか、だんだん衣服が洗練されてきたタクト君。狼男なんだし、上半身は裸でもいいと思うんだけど。はち切れそうな純白のシャツに、同じく筋肉で裂けそうな黒いズボン。あんまり、かっこよくなられると……その。
 そ、そんなことより! 彼の反応が気になった。

「なに? タクト君」
「う、と、当然のように俺を選んでくれたのが嬉しくって」

 てへへと頭部を掻き、尾を嬉しそうに揺らしている。
 こんなことで喜んでくれる彼に嬉しくなり、俺の頬も染まってしまう。

「駄目、だった……?」
「ううん。一人だったら飛び跳ねてる。それはそうと」

 こっちの世界の絵本を取り上げられるとベッドに押し付けられた。やさしめに。

「え、何っ⁉」
「照れてる? ベリちゃんの照れた顔見たいから。こっち向いて」

 仰向けにされ、そっと顎を掴まれる。
 見つめてくるグレーブルーの瞳が冬の月のよう。最近知ったのだが、タクト君は優しいのに狼男の眼が冷たく感じてしまうのは、それだけ美しいからだと。宝石を無機質に感じてしまうのと同じ心理だった。
 思わず凝視していると、タクト君の方が顔を背ける。

「そ……そんなに見つめられると」

 くぅんと、大きな身体を丸め、耳で目を隠して尻尾も丸めている。うーん。外見はどれだけかっこよくともタクト君だなぁ。
 あったかい毛皮に手を突っ込み、もさもさと撫でる。

「なんだ。キスしてくれるのかと思ったのに。してくれないの?」
「ぶあっ⁉ す、するよ! するからね⁉」

 ピンと耳が立ち、焦りと歓喜の色が混じる瞳が出てくる。
 自分なりに限界まで口を開けた。タクト君はキスで、舌を突っ込んでくるから。先に口を開けておかないと唇、べちゃべちゃに舐められちゃうから。それはそれで気持ちいいんだけどね。
 それをにっこにこで眺めるタクト君。

「わあ。ちっちゃいお口」

 俺はベッドの隅で膝を抱えた。

「ベリちゃん⁉ どうしたの? 戻っておいでよ!」
「どうせ口あんまり開かないよ。顎の外し方でも教えてくれればいいじゃん」
「ごめんごめん。気にしてたの? かわ……そんな無茶しなくていいって。おいで」

 ぬいぐるみのように抱っこされると、膝の上に置かれる。すっごく温かい。いつも思うんだけど、鋭い狼の爪が刺さりそうだな、と。でもこれで怪我をしたことは一度たりとも無い。
 彼に抱きつき、顔を埋める。筋肉が分厚過ぎて、腕が一周できない。背中まで届かないのだ。

「わぁぁ。かわンンンッ。近頃、よく、くっついてくれるから」

 しどろもどろになっている。
 そんなに俺のこと可愛いと言いたいのかこの子は。

「寒いんだもん」
「え……服没収したら、ベリちゃんずっとくっついてくれるの?」

 いい事を聞いた! と目が輝いている。ブォンブォンと尾があり得ない音を立てていた。
 彼と目を合わせ、笑みを消す。

「二度と口、利かないからな」
「ごめ、ごめんなしゃい……」

 耳が垂れ下がる。彼の方が強いのに、根っこの部分は変わらないな。
 肩を竦め、ちゅっ、と彼の鼻先にキスをする。

「ふわっ!」
「ふふっ。鼻先は冷たいよね」

 唇を舐めると、タクト君の毛皮が真っ赤になっていく。おかしいな。たしか彼は黒い狼だったはず。

「ベ、ベリちゃん。積極的になってきた……ね」
「そりゃあね。きっちり週四で抱かれていれば、抵抗とかも無くなってくるよ」

 快楽漬けの日々だ。爛れているとは思う。だがこれでもマシな方なのだ。毎日抱く! と意気込んでいた彼に「せめて週三日にして」と泣きついたのが懐かしい。週四で妥協してくれた。
 指を引っ掻け、首輪の位置を整す。

「俺をこんな風にした責任……取ってくれるよね?」
「もっもちろんだよ! じぇ、ぜっ絶対に手放さにゃ、ないから」
「噛みすぎ」

 小さく吹き出し、彼のテンションが上がるという狼耳付きのフードを被る。
 俺たちの「ヤる」ときの合図のようになってしまった。
 ケモノの眼になった彼は待ってましたと覆いかぶさってくる。
 頑丈なベッドが、ギシリと軋んだ。



「じゃ、抜くからね」
「ん、う」

 高く突き出したお尻に、タクト君の指が触れる。尻の穴を塞いでいる突起を摘むと、ずぶぶっと引き抜いていく。

「っか、あ」
「おもちゃ挿れておかないとすぐに締まっちゃうけど。もう一段、大きいものに変える? そろそろ」

 ぬぷっと杭が完全に出ると、ローションが穴からたらりと垂れた。

「こ、これ以上、大きいものを入れられたら、日常生活が困難になるって」
「身の回りのことはミキマキがするでしょ?」

 杭を放り捨てるタクト君。同じおもちゃを使い回さない彼は、使い捨てのものはさっさと壊してしまう。贅沢だが、実際タクト君は並みいる王候補をなぎ倒している、玉座にもっとも近い男。他のオスを平然と顎で使う彼は、王子や貴族のような振る舞いをする。
 それなのに、俺のことはガラス細工のように扱うから……胸がキュンとするんだよな。

「ミキ君たちはよく働いてくれてるけど……。俺の料理は? 食べたくないって言うの?」
「それを言われると弱いなぁ」

 ふわふわ巨躯が覆いかぶさってくる。俺に体重をかけないように。

「ベリちゃんの穴、ヒクヒクしてる。俺が欲しいのかな?」

 背後から回された指が、顎をくすぐってくる。

「んゃ……。ンッ、欲しい、よ」
「何が欲しいの?」

 彼が背後で、意地悪く笑っているのが容易に想像できてしまう。顎を撫でていた指が、「言え」と命じるように口内に入ってくる。

「あ、が……。んっ、タクト君の、お……おちんちんが、欲しい」
「はい。よく言えました」

 これを言わないとどんどん虐められるので、羞恥を押し潰すようにしている。というか、流石に慣れた……気がする。
 広げられ続けていた穴に、タクト君の先端が押し当てられた。

「うっ」

 穴を縦に裂くように、熱の塊が入ってくる。

「ん、ううう、う」

 シーツを握りしめた。また、タクト君と繋がる。この瞬間だけは背筋が震えてしまう。
 おもちゃとは段違いの苦しさに力が入ってしまい、彼を締め付けた。

「ぬるぬるで気持ちいい。ベリちゃんのナカ」
「ん、はぅ……。ま、だ。動かさな……」

 呼吸を整えようとしているのに、容赦なく彼は腰を動かした。メリメリと拡げられると同時に奥を突かれ、痛みを快感が押し流す。

「っ、うあ!」

 のけ反って悲鳴を上げるも背中に手を乗せられ、シーツに押さえつけられてしまう。

「んっ……」
「可愛いね。あ、ごめん。好きだよ。ベリちゃん。俺に組み敷かれている姿。エロくてそそられる」

 熱の棒でかき混ぜられ、ローションでふやけているんじゃないかと心配になる俺のナカは、徐々に――ではなく素早く快楽の波が広がった。タクト君の上向きの熱棒が、俺の内壁を擦りつけ、声が絞り出される。

「あ、あっん。ゾクゾクして……あ、あっ」

 動きに合わせて、ブツも大きくなっていく。

「ひゃあっ。そんな、大きくしちゃあ……っ」
「ごめんね大きくて。相手の負担を考えるなら小さい方が良いんだろうけど。なんかでかくなっちって」

 俺の口内をいじっていた指が出て行く。大きな手は俺の手に重ねられた。寝バックとでもいうのだろうか。
 こうなるともう逃げられなくなる。どんな体位でも逃げられたことはないが、快感に身を捩ることもできなくなるのだ。

「また、俺のでお腹いっぱいにしてあげるからね」
「あ、あんまり、注がない、で……」

 もふっもふっと腰を打ちつけられ、尻の穴からローションが押し出される。

「ああん! あ、ああん」

 気持ち良いところがバレてしまっている俺は、女性のように鳴かされる。
 前立腺を集中的に擦られ、あっという間に絶頂した。ぴぴゅっと吐き出された液が、シーツを汚す。

「アーーーッ! ま、待って。イった、かッ。動かすの、やめ、ああん、あっ、あ、ああっ!」
「そうそうこれこれ。イったあとはより強く、きゅうきゅうに締め付けてくるからたまんない。ほら。もう一回イってよ」
「ああっ、タクトく……。きゃあ、うああ、あん! だめぇ、だめぇえ」

 よだれを垂らして懇願するも、彼は一切攻め手を緩めない。大きく身体を使い、擦りつけてくる。
 視界に火花が散り、またもやイってしまう。

「あ、く……」
「休んでていいよ?」

 休めるわけがない。どくどくと耳にまで届く脈の音。力が入らなくなった身体は揺さぶられ続け、快楽だけを与えられ続ける。

「止めて、とめ……あっ」
「イく、ね。―――う、ぁあ」

 タクト君が俺のナカで精を放つ。量と勢いは尋常ではなく、お腹がぽこっと出てしまうほど精液で満たされる。

「あつ、あつ、いよ……」

 彼の大きなため息が聞こえた。

「すっきりした。じゃ、出してあげるから、もう一回しようね」

 余韻に浸る暇すらない。
 俺の腰を掴むと、用が済んだとばかりに熱の棒が出て行く。

「ん、ああああっ‼」
「いい声で鳴いてくれるからちっとも萎えないや。今日も五回戦コースかな」

 締まりきらない尻穴に、タクト君が指を突っ込んでくる。
 目を見開いた。

「ひゃああああ! あ、ああーーッ」
「お腹いっぱいは辛いって言ったのベリちゃんだよ? ちょっと待ってね」

 抜き指しされるたびにぐぽぐぽと空気が混じり、それが潰れる音が響く。

「はう、あう。タク、ト……ぐん」
「なぁに?」
「おねが……キス、して」

 潤んだ目で口を開け、舌を出す。
 タクト君は目まいでも覚えたように眉間を揉んだ。

「なんで理性を殴ってくるかな」

 抱き上げられると、彼の膝に座り、身体は腕で支えてもらう。お姫様抱きのように。
 タクト君はやさしく口づけしてくれる。厚くて熱い舌が、俺の舌を擦り、奥まで進んで行く。

「おっ、ん、う」

 投げ出された脚の間に手を差し込み、タクト君の指が再び入ってくる。ぐちゅぐちゅと、ナカに溜まった欲を掻き出すように動く。

「んんっ、んふぅ!」

 びくびくっと小さく跳ねる肩。

(余計酸欠で苦しくなると思うんだけど……。それだけ俺とのキスが好きって意味だよね)

 上と下を同時に擦られ、薄まった液を吐き出す。だいたいは、絞り尽くされて何も出なくなってからが本番である。
 気を失う前に、タクト君とキスをしておきたかった。
 お腹が膨れるほど出された精液が掻き出され、尻の穴からどろっと出て行く。



 目が覚めるといつもの天井だった。

「ん……」

 身を起こすと生まれたままの姿。それでも風邪を引かないのは、隣で生きた毛布が転がっているからだろう。

「起きた? ベリちゃん」
「うん……。気持ち、良かった。ありがと、ね?」
「ぐふっ」

 微笑みながら言うと、せっかく起き上がろうとしていたタクト君が倒れた。
 負けじと彼も起き上がると、ベッドの横に置かれているホットミルクに手を伸ばす。きっとミキ君かマキちゃんが用意してくれたもの。
 タクト君が口に含むと、俺を抱き寄せ口移ししてくる。

「んっんっ」

 少しずつ注がれるものを嚥下していく。ヤったあとは喉が渇くと愚痴って以来、お決まりの流れだ。はちみつが入っておりとても甘く、胃の辺りがあたたまって緊張がほぐれていく。

「あっ、ゴホッ」

 乾いて貼りついた喉ではうまく飲み干せず、少し吐き出してしまう。ミクルは俺の腹と太ももの間に飛び散る。

「おっと。熱かった? 火傷は?」
「けほっ、けほ」

 数回むせると、タオルを手に取ったタクト君の顔を両手で挟み込んだ。がしっと。

「むえ?」
「ごめんね。零しちゃって」
「しょんなの、気にしにゃくていいよ? それより早く拭かにゃいと」

 俺は少しだけ腹を突き出して、股を開く。

「零したミルク、舐めてきれいにしてよ。タオルなんかじゃ、やだ」

 目を点にしたタクト君の耳がピピンと揺れた。
 爪でこめかみ辺りをガシガシと掻く。

「たまに女王様になるんだから」
「……なんか、恥ずかしくなってきた。やっぱ、今の忘れて」

 火を噴きそうな顔を伏せると、手首を掴まれる。

「いやいやいや。煽っといてそれはないでしょ。ベリちゃんの仰せのままにしてあげるよ。俺の、いや。我がクイーンよ」
「や、あっ」

 腰に手を添えられ寝転べないようにされると、足の間に巨体が割り込んでくる。大きな口から伸びる舌が、おへそを舐め始めた。

「あっ、ん。あっ、はぁ」
「わかめ酒とかやってみたかったから、乗り気なのは嬉しいよ」
「ひゃ、あっあっ」

 彼の吐息が濡れた腹にかかり、ぶるるっと震えてしまう。

「わかめ酒とか、良く知ってるね」

 ペニスの先端を指の腹でトントンと叩かれる。

「はうっ」
「ここにお酒注いでやろうと思ったんだけど、調べたら危険って書いてあったよ。ま、仕方ないね。ベリちゃんに注ぐのは俺の精液と淫液だけにしておくよ」

 つーっと太ももを舐め上げられ、ビクンと背筋が跳ねる。

「あ、ふぁ。あ、いん、えきって、何……?」
「ん? ああ、えっちになる薬のこと。ほっそい管を尿道に差し込んで、そこから流し込むの。とろけるよ、きっと」

 想像しただけで震えてきた。きゅっと尻穴が締まってしまう。

「あ、想像しちゃった? もしかして楽しみなの?」
「違……ん、あ」

 立った乳首に吸いつかれる。

「ああん! そこ、かかって、な、ンンッ」
「かかっていたら駄目だからね。しっかり舐め取ってあげる」

 出ないのに。まるでお乳を吸い出すようにきつく吸われる。
 ぴりりと痺れる乳首。

「だ、だめ。はうっ」

 あれだけヤったのに、下半身に熱が溜まるように渦巻いてくる。

「どうして? またヤりたくなっちゃうから?」

 図星を指され、カァっと頬が染まってしまう。
 しかし素直に頷いた。

「う、ん」
「わーお。そりゃ嬉しい。ベリちゃんが気絶しないなら、一日中ヤっていたいからね。ふふっ。もちろん。今はそんな無理はさせないさ」

 今はって何?

「絶倫、過ぎ、だって」
「そう? 俺の性欲は中くらいじゃない?」

 嘘でしょ。いや嘘だよ。たまにミキ君が「長かったですね」とか「もうちょっとお身体を労わってあげないと」とか言ってるもん!

「あの、もう、放して。舐めなくていいから」
「どうだろ? まだミルクがついてるんじゃないかな? しっかり調べてあげる」

 ヤったあとはタクト君が全身舐めてきれいにしてくれている(初めはタオルで拭いてくれているものだと思っていた)んだけど。唾液でべたつくはずなのに、皮膚はいつもさらさら。どうやら狼たちの唾液はべたつかないようだ。なのだけれど、人間の嗅覚でも分かるくらい、舐められた後は彼のにおいで包まれる。
 それなのにまだ舐められると、

「んっ、も、だめぇ……。タクト君のことしか、あっ、考えられなくなる」
「……」

 タクト君がハッとした。

「あ、ごめん。嬉しいこと言われたせいで記憶が飛んでた。いいじゃん。俺のことしか考えられないベリちゃんとか。俺は文句ないよ?」
「へ、変になっちゃうよ。タクト君から、離れられなくなったら、どうするの?」
「なんの問題もなくない? 受け止めてあげるって。見くびらないでちょうだい」

 反対側の乳首も吸われてしまう。
 油断していた俺はビクリとのけ反った。

「ぁああ!」
「んう。小粒で美味しい。はちみつを塗ってみるのもいいかも」

 木製のサイドテーブルに置いてあるはちみつを手繰り寄せる。

「はい。動かないでね」
「ぁ、あ、ど、どこにつけるの……?」
「すぐ分かるよ」

 琥珀色の蜜を尖った乳首に垂らされ、ぴくっと小さく揺れる。

「うんっ」
「あはっ。いただきまーす」

 乳首が上を向くほど下から舐め上げられ、ゾクゾクと上半身が痺れていく。

「ああぁ……ふあ」
「おお。これいいかも。次から俺のおやつはこれにしようかな」

 乳首、鎖骨とはちみつを垂らされ、味わうように舌が這っていく。

「くすぐった、ああ。も、はう」
「ん? ベリちゃんの可愛いおちんちんが、立ってきてるね」

 指で根元をするっと撫でられた。

「ひゃんっ」
「蜂蜜みたいな汁を零して……。ここも舐めてほしいってことかなー?」

 にやつく彼に首を左右に振るが、相手にされなかった。
 足をM字に開かされると、タクト君が股に頭を突っ込む。ぺろぺろと舐められ、腰が跳ねてしまう。

「ああん! だめぇ。今日は、も、お終い!」

 次から次に垂れてくる汁を、一滴も零すまいと舐め取られる。舌が皮膚を撫でるたびに嬌声が飛び出す。

「あふっ、ああ。ふああ、あっあ」

 長い舌が触手のように巻き付いてくる。その状態で扱かれ、軽イきした。もう何も出ない。
 ぐったりと脱力した俺は口で呼吸する。

「お終いって。ベリちゃんが誘ってくるくせに」

 口に入りそうな髪を、狼の爪が払ってくれた。

「クリスマス……一緒に、過ごしたい、の」
「過ごしてると思うけど?」

 いや、あの、ほら、もっとこう、あるじゃん?
 パーティーしたり、ゲームしたり。また湖で星を眺めるのだっていい。もっとロマンチックに過ごせるはずなんだ。
 ピンとこないのか、タクト君は首を傾げる。背後でふわんと尾が揺れたのが見えた。

「タクト君……。こっちの、クリスマスって。どういう風に過ごすの?」
「お菓子や食べ物を持ち寄って、おしゃべりしながら過ごすよ」

 俺たちもそうしようよ。

「お菓子か。簡単なものなら作れるよ? 何か作ろうか?」
「へ? この場合のお菓子ってベリちゃんのことでしょ?」

 ちょっと性欲と食欲を切り離してくれないかな。お菓子より俺が良いって言ってくれるのは、くすぐったいんだけどね。

「お菓子(ベリちゃん)を食べて一緒に過ごす。こういう日だよ」
「でも俺、お腹空いてきた……」

 くぅぅっと腹の虫が鳴いている。
 虫を宥めるように腹に手を置くと、タクト君が俺の服を手渡してきた。

「さ、服着て。ご飯にしようか。時間的にミキマキが作り始めているはず!」
「う、うん」

 タクト君は妙に、俺に飯をいっぱい食べさせようとする。
 服に袖を通し、乱れた髪を一纏めにした。この、色が薄くなるほど栄養が足りなかった俺を、気遣ってくれているのだろうか。

「タクト君。疲れた。立てない。運んで」

 両腕を伸ばすと、出て行きかけた彼がくるんと戻ってくる。
 軽々持ち上げ、片腕に座らせるように抱いてくれた。

「俺のクイーンは我が儘だね」
「じゃあもっと手加減してよ」

 ぷくっと頬を膨らませると、タクト君が頬を擦り付けてくる。ふわふわでやわらかい。

「これでも手加減してるよ」
「ふーんだ」

 苦笑して肩を竦めると、いい香りのするキッチンへ運ばれる。
 丸太テーブルには、ろうそくとたくさんの花が飾られていた。その分、調理場は戦場のようで、ドタンバタンと物音がすごい。

「て、手伝ってこようか?」
「大丈夫だって。もう出来るから多分。座ってていいよ。本当は俺の妻に、雑務とかさせたくないんだからさ。もっと踏ん反り返っておいてくれない?」

 つ、つっつ、つ、妻……。

「男なんだから、妻じゃないでしょ」
「え? ああごめんね? ベリちゃん穏やかだから、たまに性別忘れちゃうんだよね」

 そんなことある?
 疲れ切った身体。背もたれがない丸太椅子を見下ろす。

「うーん」
「俺の膝の上で食べる? あーんしてあげるよ? 転げ落ちないように支えててあげるし」

 まるで心を読んだかのような提案をしてくれる。 

「いいの? 今日ずっと膝に座ってるのに」
「もちろん」

 にっこり笑って頷く彼の膝に座り、走り回っている和服のもふもふたちを眺める。

 心地好い疲労から少し眠っていたようで、目を覚ますとテーブルには料理が並んでいた。

「わぁ……」
「いいタイミングで起きたね。さ、食べようか」

 七面鳥を切るのも、口へ運ぶのも、ドリンクを注ぐのも、ふーふーと冷ますのも。すべて彼がやってくれる。
 俺は口を開けて咀嚼しているだけ。うっわ、美味。チキンに詰められた野菜の甘みがあっさりした鶏肉にマッチする。
 クリームスープもあつあつでまろやか。アサリが美味しい。

「なんか俺、ヒナみたいだな」

 ちょ、ちょっと恥ずかしいかも。

「俺としては、もっとベリちゃんを甘やかしたいんだけどね。次はどれ食べたい?」

 食べたいものを指差すだけで口に運ばれてくる。

「やばい。病みつきになりそう……これ。楽だね。もぐもぐ」
「よっし!」

 ぐっと手を握り込むタクト君が可愛い。
 絶対に俺を傷つけない。それどころか小鳥のように甘やかしてくる彼に、俺は安心してふかふかの胸板にもたれるのだった。



【おしまい】


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