全種族の男の子、コンプリートを目指す魔女っ娘♂のお話

水無月

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双子

02 お出かけ服

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 結局エイオットの護衛を調達できなかった。今までの子たちは館で大人しくしててくれたからなー。ある程度自衛できるようになるまで外出禁止! をきっちり守ってくれたんだ。
 ……約一名。とんでもなく強くなっちゃった子がいるけど。あいつまでとは言わないから、せめて自衛を。
 でもここで無理に置いてったら、夜また突撃してくるだろうしな。
 仕方ねえか。

「エイオット君」
「はい」
「俺の側から離れないと約束するなら、連れてってあげよう」
「……」

 エイオットはぎゅっと前方から抱きついてくる。

「このくらい?」
「それだと俺が前見えないから、目が届く範囲に居てくれよ」
「うん!」

 いい返事だ。だがまだくっついている。いいけどね。良いにおいするし。

「過保護」
「うるさいよキャット君。こんなに可愛いんだぞ。過保護にもなるわ」
「おかわり」

 ごっちんが空になったグラスを差し出してくる。
 しばしの間。きな粉ミルクがブームとなった。ティータイムなのにお茶の出番が……



「キャットにアホほど言われたから、外出用の服をあげよう」
「……うぅ」

 エイオットがプレゼントに喜んでくれなくなった。むしろ怯えた表情だ。
 キャットの後ろに隠れてしまう。

「爆発したりしないよ? 早く受け取りたまえ」
「「……」」

 キャットとごっちんまで疑いの表情だ。

「なんだこの空気は!」
「自身の日頃の行いだろうが」
「主人殿。子どもに露出の激しい服を着せて、外を歩かせるのは良くないと思うぞ?」

 エイオットが全力で頷いている。

「見てから文句言え。どうだ!」

 広げて見せたのは前世の平安時代くらいの着物だ。狐っ子にはこういったズルズルした服を着せるものだと相場は決まっている。水干(すいかん)ってやつ。「千〇千尋〇神隠〇」でハクが着ていたあれ。
 白を基調とした着物だ。エイオットに良く似合うと思う。
 見知らぬ民族衣装が出てきたことに、三人は衝撃を受ける。

「露出がほとんどないだと⁉」

 ふふん。驚いたかね? 記憶だけを頼りに四週間かけて作ったのだ。

「具合悪いのか? 主人殿。ここで普通の服を出してくると逆に気分悪いな。人をここまで不快にできるのは才能、だな」

 おい。魔王。おい。

「どうやって着るんですか?」

 ぽかんとしているエイオットだけが癒し。

「よし。着せてあげよう。脱ぎたまえ」
「ここで⁉ やだーっ」
「部屋行け」

 エイオットごと部屋に引きずって行かれる。んあああああ人前で服を脱いでもじもじしている狐っ子を拝ませろおおお。
 暴れるが、この姿でキャットの腕力に勝てるはずもなく。






🌙






「どこに行くんですか?」

 三日月君にエイオットと二ケツ(二人乗り)している。
 着物がはためき、ばたばたと心地よい音が耳に届く。

「この国の首都だが。行ったことはあるかね?」
「ううん。村から出たことないよ」

 未帰還者以外の依頼も引き受けちゃったから、それも片付けたいのだ。首都で人攫いをしたことはまだなかったので、未成年を探すついでに依頼も片付けよう。

(あっ! エイオットの身分証が無い。俺のカードで検問突破できないかな?)

 あっちゃー。俺は検問パス出来るが、エイオットが出来なかったらどうしよう。検問くそ時間かかるってのに……。
 いやいい。ごり押ししよう。金ランクはめんどくさいが色々な特典もついている。それを使わせてもらう。
 それはそうと、後ろのエイオットが俺の帽子変形するくらいくっついてくる。

「もしかして、高いとこ苦手かね?」
「ううん? たのしーよ! ふふっ」
「じゃあ速いとか? 緩めようか?」
「もっと速くてもいいよ」

 案外平気だな。空を飛ぶのなんて初めてだろうに。流石はキャット(でか猫)の背中ではしゃいでいただけはある。

「でもこの三日月さん。ちょっとかたい……」

 ごめんね。あのカシミア猫みたいにふかふかじゃなくて。

「三日月乗るとき用のクッションを用意しておくよ」
「おれのために?」
「ん? ああ」
「嬉しい」

 くっそ! 後ろ見たい。可愛い顔してるんだろうなー。一人の時はいいがエイオットのを乗せているのに、後ろ向いて運転するとかありえないし。誰だサイドミラーつけなかった奴は。大人の俺だ。

 見えてきたのは歪な円形の首都・ブルーフェリシア。首都を囲う外壁をさらに、魔法壁が囲っている二重防御。魔法の国であることを主張したいのだろうが、魔力の無駄にしか思えない……。普段は石の壁で、緊急時や戦時中のみ魔法壁使用じゃ、駄目なのだろうか。この魔力をどこから引っ張ってきているのかと言えば……知らない方が良いことも世の中にはある。

 ゆっくり三日月が地面に近づいていく。

「えいっ」

 着くなりエイオットは身軽に飛び降りる。ズルズルした着物を着ているとは思えない身のこなし。俺が萌えるので天狗のような高下駄を履いてほしかったが、素足がいいと断られた。獣人は雨の日でも靴を履かないとはいえ、悲しい。
 帰っていく三日月に目もくれず、主人は帽子を押さえる。

「その着物、気に入ったのかい?」
「うん! 露出が無いところがねっ。見て見てー」

 くるんとその場で一回転してみせる。裾などがふわっと広がり、エイオットの可愛さと快活さを引き立てている。今すぐ抱きついてモフモフしたい。

「……ごしゅじんさまー?」
「はっ!」

 気がついたらエイオットに飛びついていた。身体が勝手に!
 エイオットもぎゅっと抱きしめ返してくれる。

「ふふっ。ごしゅじんさまったら、甘えん坊さん」
「はっはっはっ。バレてしまったか」

 流石獣人。俺を抱きしめたままその場でくるりくるり。人の多い検問の近くでやっているせいでほほ笑ましい視線があちこちから向けられる。

「あーゴホン。では、ついてきたまえ」

 咳払いしながら歩き出そうとする三角帽子をつっつく。

「ねー。ごしゅじんさまー」
「ん?」
「似合う? この服」

 顎の下に手を添え、にこっと狐スマイルを見せつけてくる。後ろに倒れかけたが根性で耐えた。


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