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双子
21 お出かけしたい!
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※軽いショタ受け描写有。
「――ということで、俺はしばらく家を空けます」
洋館にとんぼ返りした主人は今回の会議の内容を話した。
「ごしゅじんさま。それより、お顔……どうしたんですか?」
顔に大きなバッテンの絆創膏を貼りつけた主人。
ソファーが置かれた玄関ロビー。主人の隣にエイオットが座り、斜め前のソファーにごっちんとアクアとファイア。キャットはその背後で立っていた。ソファーの数が足りていないし、こういう話し合いのために会議室でも作るべきなのだろうが、主人は興味あること以外にやる気は一切出ない性格だった。
主人はぺりぺりと絆創膏を剥がす。いてて。
「大丈夫だよ。ちょっと熱烈な愛の告白を受けただけだよ……。お土産買ってくるから、いい子で待っててね?」
「また、おれを置いてくの?」
真っすぐな黒い瞳に「どうすっかな……」と内心冷や汗を流す。
「今回は連れて行けない。聞き分けたまえ」
「愛の告白受けたって、何? 浮気?」
「……」
瞬きしない瞳がぐんぐん迫ってくる。助けを求めててごっちんにばっと目線をやるが……
「己の力で切り抜けろ」
冷めた顔ですげなく突き放される。少年漫画の師匠ポジの台詞吐くじゃん。
ファイアはごっちんの生足に頭を乗せうとうと舟をこいでいるし、ちょっと照れた表情だがアクアもごっちんにもたれかかっている。その真ん中でどーんと腕と足を組んでいる魔王様。俺よりハーレム慣れていますという風格出すの、やめて?
助けを得られなかったので主人はそっとエイオットの手を握る。
「大丈夫。相手の顔にレベル二十以上の虫をぶつけるという蛮族的な告白を受けただけだから。俺が愛しているのはエイオットだ。……以前、言っただろ?」
ピンと耳を立て、やがてもじもじと頬を染める狐っ子。はい。可愛い。世界一可愛い。あといい雰囲気だから「こいつキショイな」という殺気仕舞ってくれ執事。
「……まぞく、とか。よく分からないですけど。怪我しないで、帰ってきてくださいね……?」
腕と足しか隠さないアラージュの衣装でそんなこと言われたら、
「いじめちゃううぅ~」
エイオットにダイブしてソファーに押し倒す。
「こちょこちょ~」
「わひゃあああっ! 駄目っ、みんな、見て、あああ、ひゃめええぇははは」
ああ~。滑らかなお腹。でもまだ上を向いて寝るとへこんでいるんだよなぁ。脂肪が足りん! キャットがバランスのいい食事ばかり作るからだ。
ぷちゅうっとエイオットの唇を奪う。
「……んんっ。……ぁ……みんな、見てるのに、んっ……」
「ふはは。いい表情ができるようになったじゃないか」
「おい! そいつをいじめんなよ!」
おや。エイオットで遊んでいると大ジャンプでアクアが飛び掛かってきた。すっかり仲良くなったんだから。俺は嬉しいよ。……だが、
ぐるんと、首がアクアの方に向けられる。
「きみも俺の愛の対象だ。……じっくり骨身に刻んでやろう。俺の物になったということを」
悪魔のような笑みにアクアはギョッとする。Uターンしたかったが空中では進路変更できない。
両腕を広げた悪魔の胸に落ちることしかできなかった。
ぽすんとアクアを受け止める。
「はい。いらっしゃい……」
にちゃあ……と、悪魔も裸足で逃げ出しそうな笑みに、ぞぞっと鳥肌が立つ。
「うわあああ!」
アクアの悲鳴に、満腹になって眠りかけていたファイアがぱちんと目を覚ます。
「え……? あ、アクア!」
周りを見ると、エイオットの上に跨った魔女っ娘が、アクアを抱き上げて怖い笑顔で笑っている。アクアは逃げようと必死に短い手足をばたつかせた。人間と獣人。暴れた甲斐あり、ぴょんと逃れることはできたが、
「逃げちゃった……。仕方ない。ファイアをいじめるか……」
背後からの無視できない言葉に、アクアはぴたっと止まる。
「んなっ!」
振り返ると、首を不自然な角度に曲げた人間が、壊れたオモチャのようにカタカタ揺れていた。
足が震えそうだったが、アクアはファイアを庇うように両腕を広げる。
「てめえ! ファイアに何かしたらしょうちしないぞ!」
「ふーーーん? じゃあ、きみはどうすばいいか、わかるよね……?」
「な、な……」
たじろぐ狸っ子に、手招きする。
「おいで。きみが言うことを聞くのなら、ファイアには手を出さないさ。普通の子と変わらぬ生活を送らせてあげよう。……でも君が逃げるなら、ファイアを代わりにするしかないよな?」
「……」
口を開けたままわなわなと震える。こ、こんなの慣れっこだ。ファイアが無事なら、俺はどうなったって……
「だめ!」
主人の方に向かおうとした背中に、同じ顔の子どもが抱きついてくる。
「! ファイア。ばか! あっち行ってろ」
「アクアのばか」
ファイアがアクアを突き飛ばすと、俺に向かって走ってきた。
足元で跪く。
「おねがいします! ぼくはなんでもします。アクアにひどいことしないで……」
「へぇぇ。意外だね。きみは守られているだけかと思ったのに」
うずくまっている片割れをアクアが引っ張り、立たせようとする。
「ばか! やめろ。俺は平気だ」
「アクアの分からず屋! ぼくが平気じゃない!」
「……」
手を振り払われ呆然とする。
主人が腕を伸ばし、ファイアを抱き上げ膝に座らせた。
「立派だね。……じゃあ」
錆びたブリキ人形の如く首を動かし、エイオットに笑いかける。
「遊んであげようか。エイオット」
「え? な、なにするの……?」
エイオットの上から退き、クッションにもたれる。ファイアの膝裏を掴むと、おしっこをさせるようにぱかっと両足を開かせた。
「ふにゃあ!」
吊りスカート姿で下着も履いていないファイアのおちんちんは丸見えとなる。真っ赤になって暴れるが、この子はアクアより力が弱い。腕をぶんぶんと振るだけだ。
「ほら。舐めてあげて、エイオット。……気持ちいいことを教えてあげなきゃ」
「な、舐めるって……」
「やめろー」
アクアがソファーによじ登ってくる。
「ファイアをいじめんなよ」
「きみが舐めてあげるかい?」
「な、なんで……」
ファイアは涙を滲ませて震えている。
「うう……うぇえ……。アクア……」
「こ、こんなとこ!」
逃げて、どこに行けば……
エイオットが肩を揺すってくる。
「おれがやるよ……。無理しないで」
「うるせー! お前はしゅ(す)っこんでろ」
四つん這いになり、舌を出してファイアの大切なところに近づいていく。ニヤニヤと楽しげに眺める悪魔。
ぎゅっと閉じたアクアの目に涙が浮かぶ。
(く、くそう! なんでこんな……)
「まだやってんのか」
テーブルにカチャッとカップが置かれる。おや。エイオットを押し倒したと同時にクソ白けた顔で飲み物淹れに行ったキャット君じゃないか。
人数分のカップを置くとアクアとファイアをひょいと摘まみ上げ、長い足で主人を蹴っ飛ばした。
「ああん」
ごろごろとボウリング玉のように転がっていく魔女っ娘。
その空いた場所に双子を座らせる。
蹴飛ばされた際に宙に浮いた三角帽子がエイオットの頭にぱさっと落ちた。
「俺とあのボケ以外は露出の高い方が多いので、ホットをご用意いたしました。熱いのでお気を付けください」
「ありがとう。キャット」
ごっちんに丁寧に差し出し、アクアとファイアにも適当に渡す。
「おい。熱いからな」
「「……はい」」
「エイオット。ここに置いておくぞ」
「は、はい」
どこまでも転がって行った主人を回収しに行ったエイオットが、魔女っ娘を引きずって戻ってくる。
「拾ってくんなそんなもん」
「だ、だって」
どうして主人の味方をするのか心底分からない。
がばっと起き上がる。
「ええい! いいところで邪魔しおって、エイオットやってしまえ」
「ええ⁉」
ぷんすか怒りながらキャットを指差している主人。エイオットはおろおろした挙句、言うことを聞いた。
「え~い」
立ち姿の見本のように突っ立っている執事に向かってダッシュ。
「もぶっ」
体当たりするがキャットは微動だにしない。せっかくなのでぎゅっと抱きつく。尻尾がふりふり。
「……」
「むぐ~」
両手でぐいぐい引っ張ってみるが細い身体は樹齢千年の巨木のようで、どれだけ力を込めても引き倒せない。
「……はあはあ」
一ミリ横にずらすことさえ敵わなかった。疲れて床にべちゃっと倒れると素早く拾い上げられる。
「お兄ちゃん」
「何をやっとんだ。床で寝るな。冷えるぞ」
もふんと狸たちの隣に座らせる。
「んごおお! 戻ってくんのが早いよキャット。お茶ってもっとゆっくり蒸らす……とか、時間かかるんじゃないのかい?」
むきーっと地団太を踏んでいる主人の頭に、三角帽子を乗せる。
「ホットミルクだからな」
「……」
そうだった。子どもたちの成長にはお茶よりミルクの方が良いと思い、いっぱい買ったんだった。
ごっちんの隣が空いているが、主人は立ったままミルクを飲む。
「ところでキャット君。真面目な話なんだが」
主人はキリッと表情を引き締める。
「あん?」
「狸っ子たちにプレゼントするオモチャなんだが、お尻に入れるやつかおちんちんにセットするやつか、どっちの方が良いと思う?」
「二度と話しかけるな」
「真面目に聞いてるのに~」
燕尾を掴むがキャットはお菓子を取りにさっさと歩いてしまうのでずるーっと引きずられる。
「何がしたかったんだ?」
「……さあ?」
ミルクをちびちびと飲みながら、双子は首を傾げる。
ごっちんは仲の良い二人を見て、機嫌が良さそうだった。
厨房でやっと止まってくれたため、主人はようやく手を離せた。パンパンとローブをはたいて埃を払う。
「ところで魔族をやっつけに行くんだが、きみたちは何も言わないのかね?」
「はあ?」
半透明でぷるるんとゆれるわらび餅を、似合わない洋風の食器に人数分を乗せていく。和っぽいお皿もそろえるべきか。
厨房のテーブルにはノートが置いてあり、色々試行錯誤して生み出されたレシピが書き殴られていた。ほうほう。キャットも自分用のレシピを作り出したわけか。
「いや、だから魔族……。きみが助命を乞うなら、あのゴスロリ魔族は見逃しても」
肩越しに氷刃めいた瞳が睨んでくる。
「ごっちん様は特になにもおっしゃらなかった。好きにしろ。――というか、俺以外の魔族がいたらごっちん様を独り占めできなくなるだろうが。見つけ次第殺せ」
「……」
これが「魔王過激派」か。怖。近寄らんとこ……
置いていかれたエイオットがむすっとむくれている。ファイアがよしよしとなだめ、アクアは膝に乗せられ抱きしめられていた。
キャットはわらび餅を食べているごっちんの前で膝をつく。
「ごっちん様。買い出しに行って参ります」
「そのくらいでいちいち膝をつかんでもよい」
「え? ……この角度から見上げるごっちん様が至高なのに……?」
足を組んだ短パン男の子を少し低い位置から見上げる。最高すぎて言葉もない。
ごっちんはせり上がってきた千の言葉を呑み込む。
「……では私は留守番しておこう」
「御意」
「お兄ちゃん。どこかいくの?」
アクアを抱きしめたままのエイオットがくっついてくる。くっつかないと会話出来ないのかこいつは。
「街に行くだけだ。るすば――」
「おれも行く!」
耳元で叫ばれ片耳を押さえる。
「っせぇな……。なんでだよ」
「だってー……。たまにはお外行きたいもん」
アクアも「俺も俺も!」と手をあげているし、狐尻尾を抱きしめているファイアもひっそりと手をあげて主張してくる。
ちびっ子三人。大人一人。
となると、この子らの面倒を見るのは自分なわけで――
「考えただけで頭痛くなるわ。字の練習でもしてろ」
すくっと立ち上がると三人がくっついてきた。キャットは三人ぶら下げても平然としている。
「どけ。離れろ」
「「……」」
「つれてけー! ずっと家の中じゃたいくつなんだよー」
ここにきた当初。家という安住の地を見つけた双子は外に出たがらなかったが、やはり子ども。日が経つにつれ外で駆け回りたくなってきたようだ。
「どけ。離れろ」
「「「……」」」
一段低くなった声に子どもたちは青ざめる。ごっちんは書庫に移動しようと腰を上げた。
「キャット」
「はっ!」
即座に片膝をつくため、子どもたちは落ちそうになった。
「ここはずっと夜だ。たまには外に連れて行ってやれ」
それだけ言うと歩いて行ってしまう。
「ぎょ……御意」
三人はヤッターと手を叩き合った。
「――ということで、俺はしばらく家を空けます」
洋館にとんぼ返りした主人は今回の会議の内容を話した。
「ごしゅじんさま。それより、お顔……どうしたんですか?」
顔に大きなバッテンの絆創膏を貼りつけた主人。
ソファーが置かれた玄関ロビー。主人の隣にエイオットが座り、斜め前のソファーにごっちんとアクアとファイア。キャットはその背後で立っていた。ソファーの数が足りていないし、こういう話し合いのために会議室でも作るべきなのだろうが、主人は興味あること以外にやる気は一切出ない性格だった。
主人はぺりぺりと絆創膏を剥がす。いてて。
「大丈夫だよ。ちょっと熱烈な愛の告白を受けただけだよ……。お土産買ってくるから、いい子で待っててね?」
「また、おれを置いてくの?」
真っすぐな黒い瞳に「どうすっかな……」と内心冷や汗を流す。
「今回は連れて行けない。聞き分けたまえ」
「愛の告白受けたって、何? 浮気?」
「……」
瞬きしない瞳がぐんぐん迫ってくる。助けを求めててごっちんにばっと目線をやるが……
「己の力で切り抜けろ」
冷めた顔ですげなく突き放される。少年漫画の師匠ポジの台詞吐くじゃん。
ファイアはごっちんの生足に頭を乗せうとうと舟をこいでいるし、ちょっと照れた表情だがアクアもごっちんにもたれかかっている。その真ん中でどーんと腕と足を組んでいる魔王様。俺よりハーレム慣れていますという風格出すの、やめて?
助けを得られなかったので主人はそっとエイオットの手を握る。
「大丈夫。相手の顔にレベル二十以上の虫をぶつけるという蛮族的な告白を受けただけだから。俺が愛しているのはエイオットだ。……以前、言っただろ?」
ピンと耳を立て、やがてもじもじと頬を染める狐っ子。はい。可愛い。世界一可愛い。あといい雰囲気だから「こいつキショイな」という殺気仕舞ってくれ執事。
「……まぞく、とか。よく分からないですけど。怪我しないで、帰ってきてくださいね……?」
腕と足しか隠さないアラージュの衣装でそんなこと言われたら、
「いじめちゃううぅ~」
エイオットにダイブしてソファーに押し倒す。
「こちょこちょ~」
「わひゃあああっ! 駄目っ、みんな、見て、あああ、ひゃめええぇははは」
ああ~。滑らかなお腹。でもまだ上を向いて寝るとへこんでいるんだよなぁ。脂肪が足りん! キャットがバランスのいい食事ばかり作るからだ。
ぷちゅうっとエイオットの唇を奪う。
「……んんっ。……ぁ……みんな、見てるのに、んっ……」
「ふはは。いい表情ができるようになったじゃないか」
「おい! そいつをいじめんなよ!」
おや。エイオットで遊んでいると大ジャンプでアクアが飛び掛かってきた。すっかり仲良くなったんだから。俺は嬉しいよ。……だが、
ぐるんと、首がアクアの方に向けられる。
「きみも俺の愛の対象だ。……じっくり骨身に刻んでやろう。俺の物になったということを」
悪魔のような笑みにアクアはギョッとする。Uターンしたかったが空中では進路変更できない。
両腕を広げた悪魔の胸に落ちることしかできなかった。
ぽすんとアクアを受け止める。
「はい。いらっしゃい……」
にちゃあ……と、悪魔も裸足で逃げ出しそうな笑みに、ぞぞっと鳥肌が立つ。
「うわあああ!」
アクアの悲鳴に、満腹になって眠りかけていたファイアがぱちんと目を覚ます。
「え……? あ、アクア!」
周りを見ると、エイオットの上に跨った魔女っ娘が、アクアを抱き上げて怖い笑顔で笑っている。アクアは逃げようと必死に短い手足をばたつかせた。人間と獣人。暴れた甲斐あり、ぴょんと逃れることはできたが、
「逃げちゃった……。仕方ない。ファイアをいじめるか……」
背後からの無視できない言葉に、アクアはぴたっと止まる。
「んなっ!」
振り返ると、首を不自然な角度に曲げた人間が、壊れたオモチャのようにカタカタ揺れていた。
足が震えそうだったが、アクアはファイアを庇うように両腕を広げる。
「てめえ! ファイアに何かしたらしょうちしないぞ!」
「ふーーーん? じゃあ、きみはどうすばいいか、わかるよね……?」
「な、な……」
たじろぐ狸っ子に、手招きする。
「おいで。きみが言うことを聞くのなら、ファイアには手を出さないさ。普通の子と変わらぬ生活を送らせてあげよう。……でも君が逃げるなら、ファイアを代わりにするしかないよな?」
「……」
口を開けたままわなわなと震える。こ、こんなの慣れっこだ。ファイアが無事なら、俺はどうなったって……
「だめ!」
主人の方に向かおうとした背中に、同じ顔の子どもが抱きついてくる。
「! ファイア。ばか! あっち行ってろ」
「アクアのばか」
ファイアがアクアを突き飛ばすと、俺に向かって走ってきた。
足元で跪く。
「おねがいします! ぼくはなんでもします。アクアにひどいことしないで……」
「へぇぇ。意外だね。きみは守られているだけかと思ったのに」
うずくまっている片割れをアクアが引っ張り、立たせようとする。
「ばか! やめろ。俺は平気だ」
「アクアの分からず屋! ぼくが平気じゃない!」
「……」
手を振り払われ呆然とする。
主人が腕を伸ばし、ファイアを抱き上げ膝に座らせた。
「立派だね。……じゃあ」
錆びたブリキ人形の如く首を動かし、エイオットに笑いかける。
「遊んであげようか。エイオット」
「え? な、なにするの……?」
エイオットの上から退き、クッションにもたれる。ファイアの膝裏を掴むと、おしっこをさせるようにぱかっと両足を開かせた。
「ふにゃあ!」
吊りスカート姿で下着も履いていないファイアのおちんちんは丸見えとなる。真っ赤になって暴れるが、この子はアクアより力が弱い。腕をぶんぶんと振るだけだ。
「ほら。舐めてあげて、エイオット。……気持ちいいことを教えてあげなきゃ」
「な、舐めるって……」
「やめろー」
アクアがソファーによじ登ってくる。
「ファイアをいじめんなよ」
「きみが舐めてあげるかい?」
「な、なんで……」
ファイアは涙を滲ませて震えている。
「うう……うぇえ……。アクア……」
「こ、こんなとこ!」
逃げて、どこに行けば……
エイオットが肩を揺すってくる。
「おれがやるよ……。無理しないで」
「うるせー! お前はしゅ(す)っこんでろ」
四つん這いになり、舌を出してファイアの大切なところに近づいていく。ニヤニヤと楽しげに眺める悪魔。
ぎゅっと閉じたアクアの目に涙が浮かぶ。
(く、くそう! なんでこんな……)
「まだやってんのか」
テーブルにカチャッとカップが置かれる。おや。エイオットを押し倒したと同時にクソ白けた顔で飲み物淹れに行ったキャット君じゃないか。
人数分のカップを置くとアクアとファイアをひょいと摘まみ上げ、長い足で主人を蹴っ飛ばした。
「ああん」
ごろごろとボウリング玉のように転がっていく魔女っ娘。
その空いた場所に双子を座らせる。
蹴飛ばされた際に宙に浮いた三角帽子がエイオットの頭にぱさっと落ちた。
「俺とあのボケ以外は露出の高い方が多いので、ホットをご用意いたしました。熱いのでお気を付けください」
「ありがとう。キャット」
ごっちんに丁寧に差し出し、アクアとファイアにも適当に渡す。
「おい。熱いからな」
「「……はい」」
「エイオット。ここに置いておくぞ」
「は、はい」
どこまでも転がって行った主人を回収しに行ったエイオットが、魔女っ娘を引きずって戻ってくる。
「拾ってくんなそんなもん」
「だ、だって」
どうして主人の味方をするのか心底分からない。
がばっと起き上がる。
「ええい! いいところで邪魔しおって、エイオットやってしまえ」
「ええ⁉」
ぷんすか怒りながらキャットを指差している主人。エイオットはおろおろした挙句、言うことを聞いた。
「え~い」
立ち姿の見本のように突っ立っている執事に向かってダッシュ。
「もぶっ」
体当たりするがキャットは微動だにしない。せっかくなのでぎゅっと抱きつく。尻尾がふりふり。
「……」
「むぐ~」
両手でぐいぐい引っ張ってみるが細い身体は樹齢千年の巨木のようで、どれだけ力を込めても引き倒せない。
「……はあはあ」
一ミリ横にずらすことさえ敵わなかった。疲れて床にべちゃっと倒れると素早く拾い上げられる。
「お兄ちゃん」
「何をやっとんだ。床で寝るな。冷えるぞ」
もふんと狸たちの隣に座らせる。
「んごおお! 戻ってくんのが早いよキャット。お茶ってもっとゆっくり蒸らす……とか、時間かかるんじゃないのかい?」
むきーっと地団太を踏んでいる主人の頭に、三角帽子を乗せる。
「ホットミルクだからな」
「……」
そうだった。子どもたちの成長にはお茶よりミルクの方が良いと思い、いっぱい買ったんだった。
ごっちんの隣が空いているが、主人は立ったままミルクを飲む。
「ところでキャット君。真面目な話なんだが」
主人はキリッと表情を引き締める。
「あん?」
「狸っ子たちにプレゼントするオモチャなんだが、お尻に入れるやつかおちんちんにセットするやつか、どっちの方が良いと思う?」
「二度と話しかけるな」
「真面目に聞いてるのに~」
燕尾を掴むがキャットはお菓子を取りにさっさと歩いてしまうのでずるーっと引きずられる。
「何がしたかったんだ?」
「……さあ?」
ミルクをちびちびと飲みながら、双子は首を傾げる。
ごっちんは仲の良い二人を見て、機嫌が良さそうだった。
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「ところで魔族をやっつけに行くんだが、きみたちは何も言わないのかね?」
「はあ?」
半透明でぷるるんとゆれるわらび餅を、似合わない洋風の食器に人数分を乗せていく。和っぽいお皿もそろえるべきか。
厨房のテーブルにはノートが置いてあり、色々試行錯誤して生み出されたレシピが書き殴られていた。ほうほう。キャットも自分用のレシピを作り出したわけか。
「いや、だから魔族……。きみが助命を乞うなら、あのゴスロリ魔族は見逃しても」
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「ごっちん様は特になにもおっしゃらなかった。好きにしろ。――というか、俺以外の魔族がいたらごっちん様を独り占めできなくなるだろうが。見つけ次第殺せ」
「……」
これが「魔王過激派」か。怖。近寄らんとこ……
置いていかれたエイオットがむすっとむくれている。ファイアがよしよしとなだめ、アクアは膝に乗せられ抱きしめられていた。
キャットはわらび餅を食べているごっちんの前で膝をつく。
「ごっちん様。買い出しに行って参ります」
「そのくらいでいちいち膝をつかんでもよい」
「え? ……この角度から見上げるごっちん様が至高なのに……?」
足を組んだ短パン男の子を少し低い位置から見上げる。最高すぎて言葉もない。
ごっちんはせり上がってきた千の言葉を呑み込む。
「……では私は留守番しておこう」
「御意」
「お兄ちゃん。どこかいくの?」
アクアを抱きしめたままのエイオットがくっついてくる。くっつかないと会話出来ないのかこいつは。
「街に行くだけだ。るすば――」
「おれも行く!」
耳元で叫ばれ片耳を押さえる。
「っせぇな……。なんでだよ」
「だってー……。たまにはお外行きたいもん」
アクアも「俺も俺も!」と手をあげているし、狐尻尾を抱きしめているファイアもひっそりと手をあげて主張してくる。
ちびっ子三人。大人一人。
となると、この子らの面倒を見るのは自分なわけで――
「考えただけで頭痛くなるわ。字の練習でもしてろ」
すくっと立ち上がると三人がくっついてきた。キャットは三人ぶら下げても平然としている。
「どけ。離れろ」
「「……」」
「つれてけー! ずっと家の中じゃたいくつなんだよー」
ここにきた当初。家という安住の地を見つけた双子は外に出たがらなかったが、やはり子ども。日が経つにつれ外で駆け回りたくなってきたようだ。
「どけ。離れろ」
「「「……」」」
一段低くなった声に子どもたちは青ざめる。ごっちんは書庫に移動しようと腰を上げた。
「キャット」
「はっ!」
即座に片膝をつくため、子どもたちは落ちそうになった。
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それだけ言うと歩いて行ってしまう。
「ぎょ……御意」
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番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
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