全種族の男の子、コンプリートを目指す魔女っ娘♂のお話

水無月

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最後のステラ

02 ザンレックス内部

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 活火山。溶岩の山『ザンレックス』入り口。
 暑さ耐性。毒ガスが発生するため、毒無効の恩恵やスキル、魔法、装備。どれか一つでも保有していないと立ち入りが制限され、一階層までしか入れない。山なのに下の層へ潜っていく形になっている。

 ギルドカードを見せると門番は「さあどうぞ」と、通してくれた。

 〈黄金〉がさっそく愚痴る。

「なあ。絶対ここを通らなきゃ駄目なの? めんどいんだけど」
「帰れば?」

 そっけないテレスのズボンを引っ張る。

「他に道無いの?」
「迂回ルートがあるけど、とある民族の領域だから、入るとめっちゃ攻撃されるぞー。大人しくここを通れって」
 
 火山のモンスターより面倒臭い民族って、何?

「ちえっ」

 一階層をさっさと通り、さらに下の二階層。ここからモンスターが出てくる。

 拗ねていると「テラノ」の群れに遭遇した。ティラノサウルスを一メートルサイズに凝縮した見た目だ。黄色と赤のまだら模様。分厚い皮膚で守られた肉食モンスター。……恐竜の見た目も、そろそろ判明したのかな?

『グアアアッ!』
『グアッアアアッ』

 涎を垂らし、大口開けて向かってくる。

 金ランク二名はもろに体当たりされて吹き飛んだ。









「いってぇ……」
「馬鹿じゃん。俺ら」

 俺はテレスが、テレスは俺が倒すと思ったらしく二人揃って棒立ちだった。いやあ、前回はアゲハが片っ端から蹴散らしてくれたから。甘えちゃってた。

 テラノの亡骸を通り過ぎ、溶岩の滝を眺め、溶岩の川を眺め、ぶくぶく毒ガスが吹き出す溶岩の池を眺めながら小休止する。

(平和だなぁ……)

 岩に腰掛け、保存食のケーキをもさもさと齧る。

 同行者が金だと気にする必要が無くてだらだら進んでしまう。

「溶岩好きなの?」

 いちいち溶岩を覗き込む主人に、呆れ気味にテレスが訊ねてくる。泥人形の癖にこっちも硬そうなパンを食べていた。食べたものどこ行ってるの?

 地球ではこんな溶岩を間近で見ること出来ないから、ついじっくり見ちゃうんだよ。

「溶岩って、見たくならない?」
「未成年以外に興味津々なお前が、逆にキモイ」
「マグマで水泳させてやろう」
「やめて?」

 ぐいぐいと押し合いしているとばたばたと喧しい足音が近づいてきた。

「モンスター……いや。人の足音だな」
「はぁー? まだ二階層だぞ? こんな場所で何やってんだ」

 「こんな場所」で軽食タイムの金ランク。

 ちょっと離れたところに俺だけ移動し、頬張りながら見ていると男女混合のパーティーだった。こんな場所に狩りに来られるだけあり、全体のレベルはトゥームより高い。

 のんきにジャムのフタを開けているテレスの元に、ハンターたちが駆け寄ってきた。通り過ぎると思っていただけにテレスも驚き顔だ。

「お、おい! あんたら助けてくれ!」
「う! おい。こいつっ、きっきき金ランクのじゃねぇか!」
「金⁉ 嘘っ。なんで? こんな場所に⁉」

 賑やかだな。

「いいな。俺にもジャムくれよ」

 ハンターたちだと判明したので、ハンターたちをがん無視してテレスが腰かけている岩によじ登る。

「オランジとザンザカ、どっちがいい?」

 二つの瓶を見せてくる。

「うーん。チカのジャム」
「耳壊れてんのか?」

 むいっと耳を引っ張られる。冗談よ、怒んなよ。

「おい。今はジャムどうでもいいだろ」
「モンスターの群れに追われてんだ。なんとかしてくれ」
「助けてよ!」

 なんだこの情けない奴らは。掃除機みたいなトゥームのリーダーを見習え。モンスター絶対殺すマンみたいな心意気でハンターしてんだぞあいつ、新人もいいとこなのに。

 こいつらが走ってきた通路から、夏の夜に聞きたくない羽音の大音量版が聞こえてくる。

「キンジチュウか」

 灰色の翅に、ホース状の口を持つでかでか蚊モンスターだ。毒、麻痺、混乱と状態異常になる毒液を吹きかけてくるハンター泣かせのモンスター。アゲハが飼ってたな。あいつのキンジチュウは羽が虹色だった。この差は何だろう。愛情パワーか?

 どうでもいいことを考えていたら、テレスがパンにジャムを塗る。

『ゴポォ!』
『……? ……⁉』

 突如、キンジチュウが目や口から泥を吐いて地面に落ちた。

「! 突然死んだぞ」
「どうなってんだ……」

 キンジチュウの体内を泥で埋め尽くしたか。流石だが……ここって泥が無いよな? どうなってんの?

 主人も驚くが、九死に一生を得たハンターたちは、これ幸いにと虫モンスターの死骸に群がる。

「剥ぎ取れ剥ぎ取れえぇ!」
「はっは! 俺たちの力を思い知ったか⁉」

 面白い奴らだ。不快なのでテレスの泥人形(二体目)に一階層まで摘まみ出されていた。今度はきちんと装備を整えてから来るんだぞ。

 泥人形(一体目)はがじっと、ジャムパンを齧る。

「人類の質が下がってるのかな? ここまだ二階層だってのに」
「魔族目線で語るんじゃねぇよ。ご、魔王の力を借りての強さだろうがよ。きみらは」
「手厳しいじゃん。なんで『ご』って言いかけたの?」
「忘れろ今すぐ」

 マグマの熱が容赦なく皮膚を焼く。泥人形の表面がパサついてきている。

「おい。途中で壊れたりしないだろうな?」
「大丈夫。『これ』はそこそこ丈夫に作ってきたから」

 自身の胸を叩くテレス。

「お前の本体は今どこで何してんの?」
「部屋で千体の人形操作してる」

 千のコントローラーを操ってる引きこもりを想像した。

「……なあ」
「やだ」
「お前の脳みそさあ」
「やだ」
「どうなってるのか一回、解剖してみていい?」
「それで『いいよ』って言う馬鹿がいると思ってんの? 馬鹿なの?」

 こいつの話し方からして、本体は女性なのでは? と思う時がたまにある。懐かしいな。ネットで知り合ったゴリマッチョアバターが、女性だったときは驚いたわ。

「アゲハなら良いって言ってくれるもん」
「育て方ミスってんじゃねーよ。〈優雅灯〉に慰謝料払ってこい。あいつもあいつでオーケー出すなよ。親の顔が見たいわ。どんな金髪野郎なんだか」

 言うねぇ。

 俺にまったく気を遣わないから、金ランクと話していると心が軽い。
 腹ごしらえを済ませると、下に下に降りていく。

「その身体って、飯食う必要あるの?」
「味覚もリンクしているから、泥人形が飯を食えば本体も美味しいって感じる。やる気が上がる」
「……」

 やる気の問題だったか。

「五感リンクさせる必要は?」
「俺は、ね。あるよ。でないと上手く動かせないんだ」

 五階層に来ると壁一面、落ちる溶岩のカーテン。

 気温が日本の夏場以上に上昇し、もはや呼吸も困難となる。肺が焼ける。

「「……」」

 何も問題ないので黙々と進む。

「〈黄金〉は? 火山地帯とか、よく来る?」
「いや。まったく来ない」

 テレスが目を細める。

「そ、の割には、暑さ耐性高そうだな」
「まーじで地獄だったからな~」

 日本の夏。

「? 暑さ耐性を高める装備品とか、身につけてる? このローブとか?」
「気合に決まってんだろ」
「……金ランクって変な奴多いよな。嫌になるぜ」

 安心しろ、お前もだ。

 マグマ溜まりからこちらを見つめる二つの目。黒岩石を背負ったバーナータートルが目だけ出している。

 この階層のボスのようなモンスターだが、襲ってくる気配はない。

 素通りできた。

(襲ってこないな。〈黄金〉がいるからだな)
(こいつのせいで襲ってこないな)


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