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最後のステラ
18 ねむいエイオット
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🌙
ごっちん様とアホ兄貴には玄関ロビーで待っていてもらい、部屋に戻り、子どもたちが心配するので血まみれの燕尾服を脱ぎ捨てる。
魔族を集めた際、城から持ってきた衣服に袖を通す。戦争中、指揮を執っていた頃の軍服だ。黒地に装飾が全てカチ薔薇という縁起の良い赤い鉱石なので、燕尾服よりは身に馴染む。
「執事から軍人になったな」
「着替えるから待機と言ったはずですが?」
振り向くと当然の顔で兄が着替えを除いていた。心から殴りたい。
殴ろうと思ったがごっちん様までいたのでもういいや。
ぺこりと頭を下げる。
「お待たせいたしました」
「懐かしいな、その服」
嬉しそうにごっちんが見つめてくる。それだけでキャットは落ち着きがなくなった。
腰と太ももに鞘を固定するベルトが巻かれ、マントもセットでついているのだが邪魔なので鞘とマントは取っ払っている。身軽な姿。
「可愛いな」
「次はその姿のままで抱いてみてもよいか?」
不快なので銀髪だけ締め出した。
扉の向こうから「おーい」という声とノック音が聞こえる。
「ごっちん様の方が愛らしいです」
「そうか。私も服を持ってきておいて助かった。まさかカリスに破られるとはな」
神速でキャットが土下座した。
「父が申し訳ありませぬ! あの阿呆の首を刈り取ったのち、腹を切ります!」
「よい。怒っていない」
「怒ってくださいよ。流石に……」
ごっちんは愛が重い手作りセーターに、黒い短パン。ソックスではなく白いニーハイソックスで素足を覆っている。外に出る際はもこもこブーツを履くので、これで寒くない。
「そうだな……」
何を思ったのかニーハイを脱ぐと、足を組んで爪先をキャットの鼻先へ突きつける。
「悪いと思うなら、父の代わりに償ってもらおうか。――舐めろ」
「……ッ!」
ぼわわっと正座しているキャットの顔が赤くなる。
足を組み、女王のように座している最愛の御方。
「……」
ごっちんはいそいそとニーハイを履き直した。
「な、なぜ⁉ なぜ履いてしまうのです⁉」
「いやお前、なんか嬉しそうだから。罰にならないなと思ってな」
「えっ? 罰、だったのですか? 誰がどう見ても褒美では?」
キャットはいい子だが、たまに変なことを言う。これが褒美なら反乱が起こると思う……起こるよな?
忠誠心が微動だにしないこの子たちを見ているとそこだけ不安になってくる。あとでカリスに聞いてみるか。
残念そうに足を見てくるキャットの頭を撫でていると、コンコンッと小さなノック音がした。子どもたちの誰かだな。
「入れ」
「ごっちんくーん」
エイオットだった。
ふかふか枕を抱えて、寝間着姿で入ってくる。その後ろからシャドーも入ろうとしたがキャットに扉を閉められた。
「なんだ。まだ起きていたのか。しっかり寝ないと明日、祭りで眠くなるぞ?」
冬なので透けてないもこもこ寝間着。しかし尻尾穴がないためお尻が丸見えだ。
エイオットが抱きついてきたので存分にもこもことふわふわを堪能する。
(あったかい)
「ごっちん君。今日は一緒に寝ようね?」
「へ?」
「最近一緒に寝てないでしょ? 一緒に寝ないと、駄目なんだよ?」
そんな決まりは無いがむすっと頬を膨らましているので寂しいだけなのだろう。梳くように髪を撫でてやる。
「おれたちと寝るの、嫌なの?」
「違う。ベッドが狭くなると思ってな。遠慮してしまった」
「はやく寝に行こうよ」
眠いのかあまり話を聞いていない。ホカホカの手がごっちんの手を取ると、そのまま部屋に引っ張って行こうとする。
「エイオット。待て。私はまだ寝間着に着替えてなくて」
「腹巻食べてなくて? おなかこわすよ? ごっちんくぅん……」
半分閉じた瞳を擦っている。
「キャット。着替えさせてくれ」
手を繋いだまま近寄るが、キャットは何とか倒れずに堪えてくれた。ぱぱっと着替えさせる。
「ぐふっ。き、着替え終わりました」
「うむ。礼を言う」
最後にナイトキャップを被ると、エイオットと並んで歩いて行く。
シャドーが一礼する。
「ごっちん様。エイオット。お休みなさいませ」
「ああ。お休み。シャドーもな」
「はい!」
「うるさい」
「シャドーちゃん……おやふみ~」
気の抜けた声でエイオットが手を振っていた。シャドーも振り返す。
ニヤケ顔でキャットが寄ってくる。
「シャドーちゃん、ですって」
「ははっ! 可愛いじゃないか」
「あの……。それより明日マジで行くんですか? 魔女の祭りなど。違う意味で呪われそうなんですが」
弟の顔に「行きたくない」と書いてある。
「何! 仮装して食べ歩きして、最終日のなんか……劇? を見に行くだけだ。お前も気軽に楽しむと良い!」
「……はあぁ」
兄貴に背中をバシバシ叩かれ、キャットは肩を落とした。
ごっちん様とアホ兄貴には玄関ロビーで待っていてもらい、部屋に戻り、子どもたちが心配するので血まみれの燕尾服を脱ぎ捨てる。
魔族を集めた際、城から持ってきた衣服に袖を通す。戦争中、指揮を執っていた頃の軍服だ。黒地に装飾が全てカチ薔薇という縁起の良い赤い鉱石なので、燕尾服よりは身に馴染む。
「執事から軍人になったな」
「着替えるから待機と言ったはずですが?」
振り向くと当然の顔で兄が着替えを除いていた。心から殴りたい。
殴ろうと思ったがごっちん様までいたのでもういいや。
ぺこりと頭を下げる。
「お待たせいたしました」
「懐かしいな、その服」
嬉しそうにごっちんが見つめてくる。それだけでキャットは落ち着きがなくなった。
腰と太ももに鞘を固定するベルトが巻かれ、マントもセットでついているのだが邪魔なので鞘とマントは取っ払っている。身軽な姿。
「可愛いな」
「次はその姿のままで抱いてみてもよいか?」
不快なので銀髪だけ締め出した。
扉の向こうから「おーい」という声とノック音が聞こえる。
「ごっちん様の方が愛らしいです」
「そうか。私も服を持ってきておいて助かった。まさかカリスに破られるとはな」
神速でキャットが土下座した。
「父が申し訳ありませぬ! あの阿呆の首を刈り取ったのち、腹を切ります!」
「よい。怒っていない」
「怒ってくださいよ。流石に……」
ごっちんは愛が重い手作りセーターに、黒い短パン。ソックスではなく白いニーハイソックスで素足を覆っている。外に出る際はもこもこブーツを履くので、これで寒くない。
「そうだな……」
何を思ったのかニーハイを脱ぐと、足を組んで爪先をキャットの鼻先へ突きつける。
「悪いと思うなら、父の代わりに償ってもらおうか。――舐めろ」
「……ッ!」
ぼわわっと正座しているキャットの顔が赤くなる。
足を組み、女王のように座している最愛の御方。
「……」
ごっちんはいそいそとニーハイを履き直した。
「な、なぜ⁉ なぜ履いてしまうのです⁉」
「いやお前、なんか嬉しそうだから。罰にならないなと思ってな」
「えっ? 罰、だったのですか? 誰がどう見ても褒美では?」
キャットはいい子だが、たまに変なことを言う。これが褒美なら反乱が起こると思う……起こるよな?
忠誠心が微動だにしないこの子たちを見ているとそこだけ不安になってくる。あとでカリスに聞いてみるか。
残念そうに足を見てくるキャットの頭を撫でていると、コンコンッと小さなノック音がした。子どもたちの誰かだな。
「入れ」
「ごっちんくーん」
エイオットだった。
ふかふか枕を抱えて、寝間着姿で入ってくる。その後ろからシャドーも入ろうとしたがキャットに扉を閉められた。
「なんだ。まだ起きていたのか。しっかり寝ないと明日、祭りで眠くなるぞ?」
冬なので透けてないもこもこ寝間着。しかし尻尾穴がないためお尻が丸見えだ。
エイオットが抱きついてきたので存分にもこもことふわふわを堪能する。
(あったかい)
「ごっちん君。今日は一緒に寝ようね?」
「へ?」
「最近一緒に寝てないでしょ? 一緒に寝ないと、駄目なんだよ?」
そんな決まりは無いがむすっと頬を膨らましているので寂しいだけなのだろう。梳くように髪を撫でてやる。
「おれたちと寝るの、嫌なの?」
「違う。ベッドが狭くなると思ってな。遠慮してしまった」
「はやく寝に行こうよ」
眠いのかあまり話を聞いていない。ホカホカの手がごっちんの手を取ると、そのまま部屋に引っ張って行こうとする。
「エイオット。待て。私はまだ寝間着に着替えてなくて」
「腹巻食べてなくて? おなかこわすよ? ごっちんくぅん……」
半分閉じた瞳を擦っている。
「キャット。着替えさせてくれ」
手を繋いだまま近寄るが、キャットは何とか倒れずに堪えてくれた。ぱぱっと着替えさせる。
「ぐふっ。き、着替え終わりました」
「うむ。礼を言う」
最後にナイトキャップを被ると、エイオットと並んで歩いて行く。
シャドーが一礼する。
「ごっちん様。エイオット。お休みなさいませ」
「ああ。お休み。シャドーもな」
「はい!」
「うるさい」
「シャドーちゃん……おやふみ~」
気の抜けた声でエイオットが手を振っていた。シャドーも振り返す。
ニヤケ顔でキャットが寄ってくる。
「シャドーちゃん、ですって」
「ははっ! 可愛いじゃないか」
「あの……。それより明日マジで行くんですか? 魔女の祭りなど。違う意味で呪われそうなんですが」
弟の顔に「行きたくない」と書いてある。
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