11 / 23
女王様、傷心・2 ※
しおりを挟む結局、相馬に肩を抱かれたまま、生徒会室まで着いてしまった。
「この資料、ここに置けばいい?」
「ああ……」
資料を持った相馬は先に入り、そう言って資料を机の上に置いた。
生徒会室のドアが閉まると放課後の雑音が閉ざされて、そこだけ違う空間になったかのような感覚になる。
「眼鏡、返せよ」
相馬との沈黙が気まずくて、優弥が口を開く。
「返してもいいけど、まさか仕事始めるなんて言わないよね?」
「言わない……」
優弥が答えると、相馬は胸ポケットから眼鏡を取り出した。
それを受け取り、優弥は眼鏡ケースへと眼鏡をしまう。
そのケースをカバンに入れようとしていると、いきなり後ろから相馬に抱き締められる。
「お、おい!」
カバンに入れ損ねたケースが机の上へと落ちた。
優弥が腕から逃れようとすると、相馬はさらに強く抱き締めてきた。
「何? これが目的でしょ。わかっていて、会長もここに俺を誘ったんだろ」
「あっ……!」
いきなり身体を反転させられたかと思うと、相馬と向き合う形で優弥は机の上に押し倒された。
その拍子に、椅子が倒れて大きな音をたてたが、相馬は気にせず優弥の上へと覆い被さってくる。
「やだっ!」
相馬の唇が重なってきそうになって、優弥は咄嗟に横を向いて避けてしまった。
「会長、キス嫌いなの? 他のやつにもあまりキスさせないタイプ?」
キスを拒まれて、ちょっと不満そうに相馬が聞いてくるのに対して、優弥は一言だけ答える。
「……そうだ」
「ふーん……なら、仕方ないか。じゃあ、唇以外にね」
そう言って、相馬は優弥の頬や首筋へと唇を寄せてきた。
(別にキスが嫌いなわけじゃないけど……)
千歳には数え切れないくらいキスさせていたし、自分から仕掛けていったことだってある。
でも、なんとなく相馬とはキスをしたくなかったのだ。
千歳のキスは、いつもそれだけで優弥の理性を壊していく。
一度、唇を重ねてしまうと、どうしてももっと欲しくなるし、それ以上のことを望んでしまう。
(本当に相手の身体を望んでいたのは俺の方だ)
普段は会話すらしない自分達だったが、抱かれている時だけは千歳を独占出来た。
低くて甘い声も、優しい瞳も、力強い腕も。
全てが自分一人へと向けられている、あの時間が優弥は大好きだった。
会えない時が不安で、少しでも長く千歳を繋ぎ止めておきたくて、最近では頻繁に呼び出すようになっていた。
「何考えてるの? 会長」
千歳のことを考えて、上の空になっていた優弥に気づいたのか、喉元に顔を埋めていた相馬が聞いてきた。
「別に……」
「じゃあ、今は俺のこと考えて」
そう言って相馬は優弥の首筋に強く吸いついてくる。
「っ! 痕、残すな」
「なんで? ここ……誰かの痕、付いてるよ」
第二ボタンまでを外されたシャツの胸元から見える鎖骨を、相馬に指さされる。
「え……?」
普段、千歳がキスマークを残すことなんてなかったのに、そこに痕があるということは、千歳以外には考えられない。
(なんで……?)
優弥が不思議に思っていると、その鎖骨の痕を相馬に舐められた。
「あっ……!」
その途端、身体の中を何かが走り抜け、優弥は小さく声を漏らした。
決して気持ちよかったわけじゃない。
身体を走り抜けたもの……それは明らかに嫌悪感だった。
千歳には一度だって、そんなものを感じたことはない。
「やめっ!」
一度感じてしまったその感覚は、とても我慢出来るものではなかった。
優弥は相馬の肩を押して、自分の上から引き離そうとした。
「何? 気持ちよくない?」
そう言って、相馬は鎖骨に舌を這わせたまま、ワイシャツの上から胸の突起に触れてくる。
「やだっ、気持ち悪い……!」
優弥の言葉に相馬の動きが止まる。
そして、鎖骨から顔を離して言う。
「何それ……俺の愛撫じゃ感じないってわけ?」
「……感じない。だから、止めろ」
表情の消えた相馬が怖かったけれど、優弥はそう告げた。
やっぱり千歳以外に抱かれるなんて、無理な話だったのだ。
「そんなこと言われて……止められると思う?」
「相馬……?」
急に今までのトーンと変わった相馬の声に、優弥の背筋に冷たいものが走り抜けた。
「俺がお前の相手してる他のヤツよりも下手だって言いたいわけ? 女王様だかなんだか知らねーけど、いい気になってんなよ」
「……女王様?」
そういえばさっきもそんなことを言っていたような気がする。
優弥が何のことだかわからずにいると、相馬は笑いながら言った。
「なんだお前、自分が学園内でなんて呼ばれてるのか知らないのか? 何人もの男を手玉にとる『学園の女王様』……有名だぜ。どうせ生徒会役員のやつらともヤッてんだろ?」
(何人もの男を手玉にとる……? 生徒会役員とやってる……? 高瀬が言っていたのはこのことだったんだ)
優弥がつい意識を他へと向けてしまった隙に、相馬は優弥から外したネクタイで優弥の両手首を頭の上で一つに結わってしまった。
「や、やだっ、離せ!」
ネクタイを解こうとするが、よほど強く結ばれているらしく解ける気配はまったくない。
「そんな口きけないくらい、気持ちよくさせてやるよ」
その途端、優弥のワイシャツの前が強引に開かれ、残されていたボタンが弾け飛んだ。
(いやだ……怖い……)
「やだ、高瀬っ!」
優弥は咄嗟に千歳の名前を呼んでいた。
それに対して相馬の態度が明らかに豹変する。
「高瀬って、高瀬千歳のこと? ふ~ん、あいつのお手つきか……だったら、なおさら許してやれないな」
逸らそうとしている顔を乱暴に掴まれ、相馬の方へと向かせられる。
「高瀬のやつ……一年のくせに生意気なんだよ」
そう言うと相馬は、嫌がる優弥の唇へとキスをしてきた。
(いやだ!)
「んっ!」
なんとか抵抗しても、すぐにまた相馬に捕まって、さらに深く重ね合わせてくる。
「ん、んんっ!」
(……いやだ、気持ち悪い。高瀬以外の男となんて考えられない)
お願い。
助けて……高瀬!
0
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
アプリで元カノを気にしなくなるくらい魅力的になろうとした結果、彼氏がフリーズしました
あと
BL
「目指せ!!魅力的な彼氏!!」
誰にでも優しいように見えて重い…?攻め×天然な受け
⚠️攻めの元カノが出て来ます。
⚠️強い執着・ストーカー的表現があります。
⚠️細かいことが気になる人には向いてません。
合わないと感じた方は自衛をお願いします。
受けは、恋人が元カノと同級生と過去の付き合いについて話している場面に出くわしてしまう。失意の中、人生相談アプリの存在を知る。実は、なぜか苗字呼び、家に入れてもらえない、手を出さないといった不思議がある。こうして、元カノなんか気にしなくなるほど魅力的になろうとするための受けの戦いが始まった…。
攻め:進藤郁也
受け:天野翔
※誤字脱字・表現の修正はサイレントで行う場合があります。
※タグは定期的に整理します。
※批判・中傷コメントはご遠慮ください。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ただの雑兵が、年上武士に溺愛された結果。
みどりのおおかみ
BL
「強情だな」
忠頼はぽつりと呟く。
「ならば、体に証を残す。どうしても嫌なら、自分の力で、逃げてみろ」
滅茶苦茶なことを言われているはずなのに、俺はぼんやりした頭で、全然別のことを思っていた。
――俺は、この声が、嫌いじゃねえ。
*******
雑兵の弥次郎は、なぜか急に、有力武士である、忠頼の寝所に呼ばれる。嫌々寝所に行く弥次郎だったが、なぜか忠頼は弥次郎を抱こうとはしなくて――。
やんちゃ系雑兵・弥次郎17歳と、不愛想&無口だがハイスぺ武士の忠頼28歳。
身分差を越えて、二人は惹かれ合う。
けれど二人は、どうしても避けられない、戦乱の濁流の中に、追い込まれていく。
※南北朝時代の話をベースにした、和風世界が舞台です。
※pixivに、作品のキャライラストを置いています。宜しければそちらもご覧ください。
https://www.pixiv.net/users/4499660
【キャラクター紹介】
●弥次郎
「戦場では武士も雑兵も、命の価値は皆平等なんじゃ、なかったのかよ? なんで命令一つで、寝所に連れてこられなきゃならねえんだ! 他人に思うようにされるくらいなら、死ぬほうがましだ!」
・十八歳。
・忠頼と共に、南波軍の雑兵として、既存権力に反旗を翻す。
・吊り目。髪も目も焦げ茶に近い。目鼻立ちははっきりしている。
・細身だが、すばしこい。槍を武器にしている。
・はねっかえりだが、本質は割と素直。
●忠頼
忠頼は、俺の耳元に、そっと唇を寄せる。
「お前がいなくなったら、どこまででも、捜しに行く」
地獄へでもな、と囁く声に、俺の全身が、ぞくりと震えた。
・二十八歳。
・父や祖父の代から、南波とは村ぐるみで深いかかわりがあったため、南波とともに戦うことを承諾。
・弓の名手。才能より、弛まぬ鍛錬によるところが大きい。
・感情の起伏が少なく、あまり笑わない。
・派手な顔立ちではないが、端正な配置の塩顔。
●南波
・弥次郎たちの頭。帝を戴き、帝を排除しようとする武士を退けさせ、帝の地位と安全を守ることを目指す。策士で、かつ人格者。
●源太
・医療兵として南波軍に従軍。弥次郎が、一番信頼する友。
●五郎兵衛
・雑兵。弥次郎の仲間。体が大きく、力も強い。
●孝太郎
・雑兵。弥次郎の仲間。頭がいい。
●庄吉
・雑兵。弥次郎の仲間。色白で、小さい。物腰が柔らかい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる