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~ 真之介&清隆 ~
プロローグ
しおりを挟む「圭くん、おはようさん」
「あ、おはよう。金城」
金城真之介は会社の入り口で見かけた同い年の同僚・春原圭へと声をかけた。
「あれ、いつもより来るの早いな?」
小さく欠伸を漏らした真之介に圭が聞いてくる。
少し眠そうな真之介に比べると、圭は朝から爽やかで対照的だ。
確かに、普段から余裕を持って出社している圭に比べて、真之介はいつもはもう少し遅い電車で来ているので、二人がここで会うのは珍しい。
「昨日の契約の報告書、部長に渡し忘れててん」
真之介はそのことに昨日の夜に気づき、今日はいつもよりも少し早めの出社というわけだ。
「あの人、少しでも早く渡さないとうるさいからなぁ」
同情してくれる圭の言葉に頷きながら、真之介はそのまま一緒にエレベーターへと乗り込み自分達の職場へと向かう。
ここは真っ白な白鳥がイメージキャラクターを務める大手保険会社「ブルースワン生命」の本社で、真之介と圭は去年入社したここの営業部の社員である。
真之介は大阪で高校卒業後すぐに就職し、四年半の社会人経験を引っさげ東京へと来た。
約半年遅れで途中入社した真之介よりも圭の方がこの部署では先輩だが、席が隣で誕生日が数日違いの同じ早生まれということもあり、二人は最初から話す機会が一番多かった。
そんな中、なんで会社の名前がブルーなのに白鳥がイメージキャラなのかと冗談半分で真之介が圭に聞いたことがあり、律儀に自社のパンフレットの表紙を見せ『白鳥が青いスカーフをしてるだろ』と圭が真顔で説明し、真之介が大笑いをしてから一気に打ち解けたのだった。
しかも、それが圭の本気の答えだったと後から聞いて、さらに真之介が爆笑した時はさすがに拗ねた圭に数日間、口を聞いてもらわれなかったりもした。
「圭くんは真面目やからな~」
「え……何?」
エレベーターの扉が開く音で真之介の呟きが聞こえなかった圭が聞き返してきたが、真之介は笑って誤魔化す。
「いや~、営業トップのエリートさんはすごいなぁって」
実際に圭は小学校から私立有名学校をエスカレーター式に大学まで卒業していて、この大手会社でも同期ではダントツのトップ成績を誇っている。
真面目で頭も良くて、仕事も優秀……さらには男にしては少し可愛らしい童顔の甘いマスクはお客さんには安心感を与え、それでいてちゃんと鍛えられている身体つきが男らしさも備えているが、少しなで肩なためか決して男臭く感じさせない圭は、女子社員にも大人気だ。
「顔も頭も良くて……圭くん、お客にも女子社員にもモテモテやん」
真之介の言葉に圭は恥ずかしそうに、少し困ったように言った。
「何言ってんだよ。お前だって、すごい勢いで契約伸ばしてるだろ。話しやすいってお客様の間でも噂になってるぞ。それに、女性社員からだって、飲みに誘われてるじゃないか」
確かに、話が盛り上がってそのまま契約をしてくれるノリのいいお客もいるけれど、女の子の飲みのお誘いは……。
「そんなん圭くんを誘う口実やて。まっ、盛り上げるのは苦手やないけどな」
真之介はみんなでワイワイ騒ぐのは嫌いではない。そのため、会社のみんなとも飲みには行くが、自分と圭では全然周りからの対応が違うと思っている。
決して誰もが見惚れるような美形というわけではないが、昔からサッカーやスキューバダイビングなどのアウトドアを好んでいた真之介の適度な日焼けと筋肉はとても健康的で、性格も明るく親しみやすい。
そのため、学生時代から真之介の周りにはたくさんの人がいて割と賑やかだった。
過去に何回かは後輩の女子などから告白されてはいるが、友達の延長のような感じで、そこまで色気のある雰囲気ではなかった気がする。
「俺はどっちかっちゅうと『話しやすくていい人』で終わるタイプやから。恋愛対象圏外なんやろ」
「え~、俺だったら絶対に金城みたいな話しやすいタイプがいいけどなぁ」
廊下を歩きながら本気で自分を賞賛してくれる圭に、もちろん大阪への地元愛はあるけれど、真之介は本当に東京にきて良かったと思った。
無事に就職も出来て、同僚にも恵まれた。ここで自分がしっかりと土台を作ってやらないと。
(いつ『あいつ』が来てもいいように、俺が一足先に東京で踏ん張らんとな)
そう気合を入れながら、真之介は圭へと声をかける。
「じゃあ、本日も頑張ってお仕事しますかね」
「おう!」
それに対して圭も返事をし、二人は元気に挨拶をして自分達の職場へと入っていった。
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