愛の集う場所 ~Magic to love~

慧野翔

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~ 真之介&清隆 ~

覚悟の帰省

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「……んっ…………んんぅ?」

 せっかくの土曜日、いつもよりものんびり出来るはずの朝を薫はアラーム設定した覚えのない電子音で起こされた。
 しばらく聞いていると、それはスマホの着信を知らせる音楽だった。

「あ~、もうなに?…………もしもし?」
『なんや、綾。寝起きか?』

 寝ぼけ眼のまま手を伸ばし、名前も何も確認せずに薫が着信に出ると、聞こえてきた声は真之介のものだった。

「はあ? その声は……真ちゃん? 寝起きか? やないよ、今、何時やと思て……は? まだ9時過ぎやんか」

 喋りながら隣の時計へと目をやると、まだ時刻は朝の九時半にもなっていなかった。普段ならともかく、休みの日は10時過ぎまで寝ている薫からしてみれば、これは予定外の起床だろう。

『社会人ならこんな時間やと遅刻やぞ。それより綾、今、家か?』

 平日ならそうだろうけど、今日は休みなんだから遅刻は関係ない。
 そう思った薫だったが、寝起きで面倒だったこともあり言い返すのはやめて、一言だけ答えた。

「そうやけど……」

 答えた瞬間、今度は玄関のチャイムがいきなり鳴った。
 しかも、何だか二重に聞こえた気がする。

「え?」
『開けろや』
「え、えっー?」

 まだ完全に状況は理解出来ていないが、まさかという思いのまま薫はのそのそと布団から出ると、玄関のドアを開けた。

「よっ、おはよ」

 すると、そこに立っていたのは予想通り、真之介だった。

「なんで真ちゃんがここにおんの? 帰るなんて一言も言うてなかったやん」
「まあ、色々と……な。ちゃんと説明するから入れてくれ」

 そう言うと真之介は薫の返事を待たずに部屋へとあがる。
 そんな真之介の態度には慣れているのか、薫は大きく溜め息を吐くと言った。

「目覚ますために僕はシャワー浴びてくるから話はその後。冷蔵庫の飲み物は勝手に飲んでてええから」
「はーい」

 まったく、これではどちらが年上だかわからない。
 薫は諦めにも似た気持ちを抱きながら、タオルと着替えを持って脱衣所へと消えて行った。



   ◆   ◆   ◆



「で、どういうこと? なんで真ちゃんが大阪におんの? このことキヨくんは知ってんの?」

 本当に目を覚ますためだけのシャワーだったのだろう。10分もせずに戻ってきた薫に、真之介は質問責めに合うはめになった。

「落ち着けや。そんないっぺんに聞かれても……」
「人の眠りを妨害しておきながらよお言うわ。ちゃんと答えへんと僕かて怒るからな」

 不機嫌そうに薫に睨まれ、真之介は大事なことを忘れていたと思い出す。
 薫は食欲に関しても貪欲だが、もう一つ『睡眠』に対しても思い入れが強い。
 眠いと思ったら、たとえそれが外でも、どんなにうるさい場所でもすぐに寝れるという特技持ちだ。
 そんな薫の睡眠を妨害したとあっては後々、面倒である。これは早いうちになんとかしなければいけない。

「あ、そうや! ひとまず、これ。綾への土産」

 このタイミングを逃してはいけない、と思い真之介は小さな箱を薫の目の前へと置く。

「なに?」

 不機嫌そうではあるが薫が反応を返したことに、心の中でガッツポーズをしながら真之介は言葉を続ける。

「ほら、いつも綾がお土産に欲しがるカフェあるやろ? あそこの秋の新作タルトらしくてな。まだ試作段階やから、お店にも出てへんのを特別に貰ってきてん」

 なるべく冷静を装って真之介がそう言うと、薫がいきなり立ち上がった。

「コーヒー入れてくる!」

 そして、いそいそと台所へと向かう薫の後ろ姿に、今度こそ真之介は静かにガッツポーズをしたのだった。


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