アイドルはMonster

慧野翔

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アイドルはMonster

好きだからこそ・4 ※

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「まあ……俺の吸血行為の副作用でもあるわけだし」
  
 それだけ言うと、雅弥が何かを言い出す前に素早くフロント部分を寛げ、下着からも雅弥自身を出してしまった。

(こんなことするの……初めてだけど)
  
 少し緊張してしまうのを深い深呼吸で落ち着かせ、葵は覚悟を決めてから雅弥自身を口へと含んだ。
 さすがに、いきなり全部は無理なので、先端は舌で、含めない部分は手で愛撫していく。

「葵くん……無理しなくていいからね」
  
 そう言いながら、雅弥が優しく頭を撫でてくれるのが嬉しくて、葵はさらに大胆に雅弥を刺激していく。
 しばらく一生懸命に奉仕していると、さっきまで優しく撫でていた雅弥の指先に力が入り、零れる吐息も熱くなっていた。

「んっ……葵、くん」

 艶っぽい声で名前を呼ばれ、自分の愛撫で雅弥が感じてくれているのが嬉しい。
 雅弥から与えられるだけじゃなく、葵も雅弥に与えることが出来る。
 雅弥の呼吸が荒くなってきているのを感じながらさらに積極的に愛撫すると、いきなり雅弥の両手が葵の頭を掴んだ。

「ごめん、葵くん……目、閉じて」
  
 いきなりの雅弥からの指示に、よくわからないまま葵が素直に従うと、雅弥が葵の頭を引いて自身をその口から引き抜いた。

「……っ……」
  
 次の瞬間、生暖かい何かが葵の顔へとかけられた。
 それが、雅弥の出した白濁とした欲望だと理解するまでにたいして時間はかからなかった。

「……んぅっ」
 
 どうしていいかわからず、とりあえず口の中へと入ったものを葵が飲み干してしまうと、すぐに雅弥がティッシュで葵の顔を拭いてくれた。

「葵くん、ありがと……すっごく気持ちよかった」
「あ……うん」
 
 改めて礼を言われると急に恥ずかしくなってきて、葵はそれだけ答えると俯いてしまう。
 すると、そんな葵を労わるかのように雅弥が優しく唇にキスをしてくれる。

「じゃあ、今度は葵くんの番」
 
 そう言うと、雅弥は葵の手を引いてベッドへと移動していき葵が抵抗する間もなく服を全て剥ぎ取ってしまった。
 いきなり全裸にされて文句を言おうと思ったのに、目の前で雅弥も自分の服を全部脱ぎ去ったのを見て葵は何も言えなくなってしまった。
 いつもは葵ばかり脱がせて、雅弥が最初から全部脱ぐなんてなかった。
 割と理性の残っているうちに見せられた雅弥の裸体にどうしていいかわからなくなる。

「俺の舐めて興奮した? 葵くんのも……もう反応してる」
 
 そう言って、雅弥はいきなり葵自身を口へと含み舌を絡めてきた。

「あっ、んあ!」
「こっちも……触ってないのに勃ってるよ」
「ああっ、あっ」
 
 葵自身を弄りながら、胸の突起を少し尖った雅弥の爪で引っ掻かれると声が止まらなくなる。
 ただでさえ久しぶりだというのに、今日は雅弥に愛されていると自覚があるせいで、葵はいつも以上に感じてしまう。

「後ろも触って欲しそうなんだけど……この指で入れたら、爪で葵くんの中を傷つけちゃうかな」
 
 その言葉にさっき見た雅弥の獣のような爪を思い出し、葵は怖くなる。

「や……いやだぁ……」
 
 あんなのを入れられたら当然、切れるに決まっている。
 すると、いきなり雅弥が葵の身体をうつ伏せにひっくり返し膝を立たせる体勢にさせた。

「えっ、ちょっと……なに?」

 後ろが全て見えてしまう体勢が心細くて文句を言おうと雅弥を振り返ると、雅弥は満面の笑顔で言った。

「痛いのが嫌なら、こうするしかないよね」
 
 そして、そのまま葵の後ろへと顔を埋めて舌を中へとねじ込んできた。

「んあっ、あっ……やぁ!」
 
 柔らかい舌に後ろを舐められ、恥ずかしさのため、葵はだんだんと気持ちいいのか気持ち悪いのかもわからなくなってくる。

「やっ、雅弥! 恥ずかし……んぅ」
「やっぱり舌だけじゃ中までは無理か……あれ?」
 
 そんな言葉が聞こえたかと思うと、今度は硬くて細い物が葵の中へと入ってきた。
 この感覚はいつも解すために入れられている雅弥の指のような気がする。

「大丈夫。爪はしまったから、いつもの俺の指でしょ」
「ば、ばか! しまえるなら、最初……んあっ!」
 
 爪を自分の意志でしまえるなら、葵が後ろを舐められた意味がない。

「素直に舐められてる葵くん、可愛かったよ」
「うるさい!」
(他人事だと思って……こっちは本当に恥ずかしいんだからな!)
 
 そう思っているのに、雅弥の指に中をかき回されると気持ちがよすぎて、葵はシーツに顔を埋めて喘いでしまう。

「んっ、やだ……雅弥、イきたい……」
「本当に……可愛過ぎる、葵くん」
「えっ、あ……後ろからすんの?」

 恥を忍んで強請ったのに、いきなり雅弥に後ろから腰を掴まれ、葵は初めての体位に不安げに雅弥を振り返った。
 それなのに、雅弥は憎らしいほどにエロい顔で笑って言った。

「だって、今の俺……獣だもん」
「あっ、ああっ!」

 言うなり、雅弥は葵の上半身をベッドへと押さえ思いっきり腰を使ってきた。

「あ、んぅっ、ああ!」
「葵くん……葵……」
「んあっ、雅……あ、雅弥っ!」

 顔が見えない不安からか、葵が何度も雅弥の名前を呼んでいると葵の背中に雅弥が覆い被さるようにして葵の耳に噛み付いてきた。
 そうなると、さらに身体が密着してより深く雅弥自身が入ってくる。

「んっ、も、もう……無理、ああっ!」
「イきたいの?」
「あっ、ん、んんっ!」

 耳を甘噛みされたうえに色っぽい声で囁かれ、さらには自身を刺激されながら中を突かれて、葵はもう雅弥からの問いに答えることも出来ずにシーツに顔を埋めて自身を解放してしまった。

「葵くん……イッちゃった?」

 葵の中から自身を抜いた雅弥が葵の身体を仰向けへと転がすと、顔を覗き込みながら聞いてきた。
 あまりの解放感に、葵はだるい身体を動かせず、荒い呼吸を繰り返しながら小さく頷く。
 それなのに……。

「あ、あぁっ……!」

 いきなり、今度は向かい合った状態で、また雅弥自身が一気に奥まで入ってきて葵の身体が大きく跳ねた。

「俺、まだイッてないからね。続行しまーす」

 年下の顔で可愛らしくそんなことを言ってくる雅弥を心の中でずるいと思いながらも、葵の口からは甘い声だけが零れてくる。

「んっ、ちょっと……いつもより……」
(激しすぎないか?)

 そう、質問しようとした葵の口は雅弥のキスで塞がれてしまった。

(もう、頭の中がぼーっとしてくる……)
「この姿になると……欲望が、我慢出来なくなるんだ」

 唇を離して呼吸を乱しながら、そう説明してくる雅弥の言葉をぼんやりと葵が聞いていると身体を強く抱き締められた。

「葵が可愛いから……抑えられない!」
「んあっ、ああぁっ!」

 言った途端に中の雅弥自身の質量が増え、そのまま激しく腰を使われて葵は散々、喘がされて意識を手放してしまった。


   ◆   ◆   ◆


 次に葵が目を覚ますと、目の前では雅弥が不安そうな表情で葵を見つめていた。

「ん……雅弥?」
「葵くん! 大丈夫?」

 こっちが驚くほどの勢いでそう聞かれ、葵は鈍い意識の中、自分の状況を理解しようとする。

(あ……そっか、雅弥が激しすぎて、俺……)

 あまりに恥ずかし過ぎる失態に葵が動揺していると、ふと雅弥の様子がおかしいことに気づいた。

「どうした?」
「ごめんね、葵くん。病み上がりだってわかってたのに、俺、自分のことばっかり考えて無茶なことして……」

 そう言って涙目で謝る雅弥の耳と尻尾はペタッと下がり、狼というよりも飼い主に叱られた犬のようだ。

「せっかく素直になれたんだし、今日だけは特別な。毎回はさすがに勘弁だけど……」

 それに、こんなに子供っぽくて可愛らしい雅弥の姿は何年ぶりだろう。雅弥が自分を慕ってなついていた頃を思い出す。
 懐かしさを感じながら雅弥の耳を撫でると、嬉しそうに尻尾を振り雅弥が抱きついてきた。

「んぅっ!」

 そのままベッドに押し付けられ、ちょっと苦しいが葵は少し雅弥の好きにさせてやることにした。
 そして、しばらくベッドの上で二人のんびりとしていると、葵は急に思い出したことがあった。

「なあ、ずっと気になってたんだけど……」
「ん~、なに?」

 雅弥の尻尾がパタパタと揺れるのをくすぐったく感じながら葵が声をかけると、葵に耳を撫でられるのが嬉しいのか、雅弥が気持ち良さそうな声で返事をした。

「結局、お前は俺のことをずっと好きだったんだよな?」
「もちろん! 人間界でテレビに映った葵くんを見て、俺も芸能界を目指したんだから!」

 確かに人間界に身を隠していた雅弥がわざわざ人目につくような芸能界に入るなんておかしな話だ。
 でも、それだと……。

「じゃあ、先月、撮影スタジオ近くで一緒にいた女の子は何だよ? あれ、やっぱりお前だろ」

 聞くタイミングを逃していたのと事実を知る怖さから逃げていたために、そのことがずっとうやむやになっていた。
 でも、正式に恋人同士になったからには、そこははっきりさせておかなきゃいけない。

「あ~……それは……」
「正直に話さないと、このまま帰るぞ」

 言いたくなさそうな雅弥に葵が強気な態度でベッドから抜け出そうとすると、雅弥は慌てて葵を抱き締め引き留める。

「待って! ちゃんと説明するから、行かないで!」

 その態度に葵がひとまず大人しくベッドに戻ると、雅弥が心配そうに顔を覗き込んできた。

「……話すから怒らないでね」
「内容による」

 葵の素っ気ない一言に雅弥は覚悟を決めたのか、渋々、口を開く。

「……さっきも言ったけど、この姿になると欲望が強くなって抑えられなくなるんだ。それで、俺達狼男は満月の夜が一番のピークで……この力が暴走して他の人を襲わないように発散しないといけなくて。そのために毎月、魔界から……」

 そう説明しながら、だんだんと雅弥の耳がまたもや垂れてくる。

「要は人間界でいう風俗か」
「俺が頼んだわけじゃないよ! 一族の奴らが勝手に……」

 葵のことが好きだと言いながら、性欲は他で発散していたわけだから、確かにあまり褒められた行為ではない。
 そんな自覚が雅弥にもあるのか、申し訳なさそうに小さな声で言い訳をする。

「だって、そうでもしないと俺、葵くんのこと襲っちゃいそうで。いきなり、そんなことしたら、葵くん絶対俺のこと嫌いになるだろうし……葵くんのそばにいるために仕方なく」

 全てを知られて葵に嫌われるかもしれないと不安そうにそう話す雅弥の姿に、葵は怒りよりも愛しさを感じてしまった。
 雅弥の頭をくしゃっと撫で付けると、葵は大きく溜め息を吐いた。

「……来月からは、そんな女寄こすなって強く一族の奴らに言っておけよ。仕事以外でお前を他の奴に触らせてたまるか」

 突然の束縛宣言に驚いて雅弥が葵を見つめると、葵は照れくさいのか恥ずかしそうに雅弥から顔を反らした。

「……葵くん!」
「うわっ!」

 苦しいくらいに雅弥に抱きつかれて葵が驚いた声をあげたが、それすら長年の片想いが実った雅弥には聞こえていないようだ。

「好きだよ、葵くん! 愛してる」

 ものすごい勢いで尻尾をパタパタとさせて濃厚なキスをしてくる雅弥に、葵は『発情しやすい淫魔が恋人なのと、性欲が強い狼男が恋人なのとでは……どっちの方が大変なんだろう』なんて馬鹿なことを考えながら、抵抗する力を抜いたのだった。




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