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衝撃の真実

緊迫。

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キン……!!!

白刃が、目の前を鋭く行き交った。
「え…」
「逃げろ、嬢ちゃん!!!」
ドン、っと押されて、こちらに駆けつけるリュートのもとへ託される身体。
目の前で対峙するのは、先程まで自分のすぐ横にたっていたはずの――――若い娘?
「なぜお前が邪魔をする!!」
「可愛い親友の忘れ形見を、不幸にするわけにゃあいかねぇんだよ…!!!」
「ミハル!」
リュートがミハルを抱きしめると、くるりとその向きを変えた。
ぼやけていた意識が、再びはっきりと色を取り戻す。
そうだ、ぼんやりしている場合ではない!
「セイン殿!」
「よぉリュート!邪魔してるぜ!」
真剣な表情とは裏腹に、陽気に声を上げたセインは、状況を見ればやや優勢。
しかし、細い腕ながら、娘も相当の実力を隠していたようで、緊迫の瞬間が続く。
「ミハル、アイリーン殿のもとへ」
「リュート様は…!?」
「加勢に出る。これは…俺が蒔いた種だ」
そう言い放つと、裾までやってきていたアイリーンにミハルを託し、セインのもとへ駆けつける。
「知ってたのね…この事…」
ぐっと唇を噛み締めるのはアイリーン。
「こんな、この子を囮にするなんて…」
憤りのまま、ぎゅっと抱きしめられ、一瞬視界を失った。
だが、そんなことを気にしている場合ではない。
「離してくださいアイリーンさん!リュート様が…!」
振り返ったその場所に、既にリュートの姿はない。
見れば、先程までリュートのそばにいたはずの若い男が腰を抜かして壇上にへたりこんでいる。
どうやら彼もまた、騙されていたようだ。
無効では2対1となった勝負に、早くも決着がつく。
女の首元に当てられたリュートの剣。
傍らではセインが女の動きを牽制するように囲み込んでいる。
もしかすると、応援を警戒しているのかもしれない。
「腕はなまってねぇな、リュート」
「セイン殿こそ」
「……よかった……」
二人共大きな怪我もなく、どうやら騒ぎはここで終わるかと、そう思われた。
その一瞬の隙を着くように、一本の矢が会場を飛ぶ。
セインとリュート、その刺客を付くような矢に、どちらもまだ気づいていない。
声を発するよりも先に、体が反応した。
――――――抜き出したのは、忍ばせておいた懐剣

カ―――ン……!!!

リュートの背後に立ったみはるの懐剣が、凄まじい反応で矢を叩き落とす。
そして即座に矢の放たれた方向へと向かい、鋭く一直線にその懐剣を投げつけた。
「ぐあっ!!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
懐剣を突き刺され、前のめりに倒れ込む中年の男。
舞台を見入っていた誰もが、彼の手に弓が握られていることに気づかなかった。
人ごみに紛れて矢を放つための特殊な弓だ。
主に要人暗殺のために用いられるそれを見たのは、これで2度目。
「ミハル…?」
「おい、嬢ちゃん、あんた…」
二人が、信じられないものをみたかのような目でミハルを見つめている。
その視線を向け、うっすらと微笑んだみはるの体が、ぐらりと揺れる。
「ミハル…!!」
前のめりに倒れるミハルを両手で抱えたリュート。
「刺客は一人じゃなかったってことか…。リュート、さっさとこの場から離れるぞ。まだ安心できる状態じゃない」
「ええ…」
うなづいたリュートが、完全に意識を失ったミハルを両腕に抱え、舞台の下に視線を投げる。
弓を放った男は、どうやらその場で自害をしたようだ。
会場がさらに騒がしさを増す。
「……嬢ちゃんにも、話を聞かなきゃならねぇな。あの動き……あれは……」


そうだ。
あれとよく似た動きをする男を、彼らはよく知っている。

「アディ……?」
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