神の狗は十字を背負う~ワケあり吸血鬼の災難な日々~

隆駆

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非凡なる彼の日常

4話

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「だからその誤解を受けるような物言いはやめてくださいっていつもいってるのにエーメさんはっ……!!」

もうっ!と頭を抱えるヴァーニスを眺め、「ふむ」と首をかしげるエメラルド。

「お前の言うことを私がまともに聞くと思うか?」

「そこはせめて嘘でも了承する所です……」

もはや何を言っても無駄とがっくりと肩を落とす。

「まったく、人がこれだけ情熱を持って掻き口説いているというのに、贅沢な男だな?」

「――――――本当に口説いてくれてるんなら、まだ救いがあるんですけどね……」

ははは、と力ない笑みを浮かべるヴァーニスに、「私はいつでも本気だぞ?」と真顔で答えるエメラルド。
だが、次に続いたセリフがすべてを台無しにする。

「次お前にあったら今度はどんな実験をしようかと考えるとな、この胸が早鐘を打つように高鳴るんだ」

「…!!やっぱ結局そこなんじゃないですか!」

ちょっと期待しただけ無駄だった。

「試しにな、ヴィー。ちょっとこれを飲んでみてくれないか?」

そう言って差し出されたのは、試験管に入った真っ赤な液体。

「……一応聞きますけど、なんですかこれ」

「採れたてホヤホヤの豚の血だ」

さぁぐいっとと口元にまで運ばれ、蓋を開けられそうになったところで危うくそれを阻止する。。

「ちょ……!!こんなところにそんなものっ!!それは持って帰ってくださいっ!!」

「今朝捌いてもらったものだから新鮮だぞ?ぐいっといったらどうだ?」

「飲みませんよ!豚の血なんてっ!」

「動物だろうが人間だろうが、血は血だろ?」

「エーメさんは私が家畜を襲って夜な夜なその血を飲んでいるように見えるんですか!?」

そうだとしたら過分にショックが大きいが、果たしてエメラルドの回答は。

「――――ふむ」

いつものように、顎に手を当てて一言。

「ぜひその姿を一度この目で見てみたい。今度生きた豚を連れてくるから、目の前でやってみてくれないか?」

「だからやりませんってばっ!!!何度言ったらわかるんですかっつ!!エーメさんのわからず屋っ!!」

早くそれを捨ててくださいと録に視線も向けずにエメラルドの胸元へ試験管を押し付ける。

「食わず嫌いは良くないんじゃないか?」

「そういう問題じゃありません」

だいぶ論点がずれていると思うのは自分だけだろうか。

「せっかく新鮮なものを手に入れたのに無駄になったな。まぁいい。豚の血は好まないと資料に載せておくか」

「豚だけじゃなくて牛も羊も鶏もですっ!!というか人間以外の血を好む吸血鬼なんているんですか!?」

「いるかもしれないから今調べてるんじゃないか」

なぁ、ヴァーニス?

そう言いながら手元に戻された豚の血入りの試験管をゆらゆらと揺らし――――。
その蓋を開けると、口元に運び、ぐいっと一気に飲み干した。

「あ、あぁぁぁぁぁ!!!!!!」

予想外の行動に、驚きの声を上げるヴァーニス。

「ちょ、エーメさんっ!!そんなもの飲むなんて正気ですかっ!?ぺっしてください、ぺって!!そもそも普通の人間は、血液を飲み込めるようにできてないんですよっ!!」

普通、これだけの量を飲めば嘔吐することになる。
だが、ケロリとした表情で空になった試験管を見せつけるエメラルドは、「冗談に決まってるだろ」と。

「これはただの新鮮なトマトジュースだ」

「!!」

騙されたなと笑うエメラルドに、ヴァーニスは本気で脱力する。

「本当にっ。いつもいつもいつもいつも人をからかってばかりで!!今日という今日はもう我慢できませんっ!!エーメさんっ!私を玩具にするのもいい加減にしてくださいっ!」

精一杯厳しい表情を作って怒りを表現するヴァーニスだが、如何せん元々が柔和な顔立ちだけにその効果は薄い。

特に、今回はその相手が悪かった。

「面白い事を言うな、ヴィー?」

「お、面白いことなんて一言もっ……!!」

言っていない、と言いかけたその口元にそっと添えられた指。

そして耳元で囁かれるのは、毒のような一言。

「お前のどこが『人』だって……?お前は『吸血鬼』だろ」
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