神の狗は十字を背負う~ワケあり吸血鬼の災難な日々~

隆駆

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帰還

42話

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「・・・・・・・・ぐぅ」
 
当然ながら、馬車のたびは決して快適なものではなかった。

 「・・・・・だから少し休んでいきましょうって言ったのに・・」

 口を抑えるエメラルドの背をさっきから叩いているヴァーニス。

 「馬車を止めます?なんか、そろそろやばいですよ」

車輪が石にぶつかるたびに起きる衝撃。
その衝撃と同時に起きる吐き気。
二日酔いにはなかなか辛いメニューとなっている。

 「・・・・・・・・・・・うるさい・・・・・・」

 「・・あぁもう。意地になっちゃって」

 声にはいつもの半分の張りしかない。
 大きくためいきをついたヴァーニスを、エメラルドが向かい合って三白眼に睨んだ。

 「・・・・・・・・・・・・脱げ」

 「・・・・・・・は?」

 固まるヴァーニス。

 「何かやってるほうがよほど気がまぎれる!だから脱げ!」

 「ちょ、ちょっとエーメさんッツ!!!なんですかその理屈はっつ!!!!どこに私が脱ぐ必要性があるんですか!?」

すでに前科もちのエメラルドの座った瞳に、ヴァーニスは新しい牧師服をしっかりと隠すように抱く。
まぁ・・・これもエメラルド出費なのだが。

 「怪我、お前あれから誰にも見せなかったろう?直ったかどうか見てやるからとっとと脱げ」

 「・・・・・・・・・・なんでそんなに脱がせたいんですか」

 「心配してるんだろ?」

 「・・・・・・・何も馬車の中じゃなくてもいいと思うんですけど」

 「善は急げ」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・単に、玩具にしてません?」

なんだか先ほどよりもずっと、エメラルドが元気になっている気がする。

 「とんでもない。・・・・・・・・・・・・・あぁもう、ぐだぐだいわずとっとと見せればいいんだ!
どうせ一度見てるんだ、減るもんじゃない!!」
 
「一度見せただけでもう十分ですよっつ!!!」

 「ケチ」

 「だからどうしてそうなるんですかぁああぁあっ!!!」

朝っぱらからハイテンションに絶叫するヴァーニス。
ちょうど大きな石にぶつかった車輪に、馬車が大きくはねとんだ。

 「う、うわぁっつ」

 「・・うえ・・・」

 忘れていた吐き気を思い出すエメラルドと、体制を崩しのけぞって倒れるヴァーニス。

 「・・・・・・・・・・・くそ」

やはりどうしてもおさまらないらしい吐き気に自業自得な暴言を吐く。

 「お、おとなしくしてましょうよ、ね、エーメさん?」

距離が開いたのをいいことに思い切り逃げに入るヴァーニス。

 「・・・・・・・ほら、エーメさん、町が見えてきましたよ・・・・!!!」

 「・・・・・・ちっ・・・・逃げられたか・・・」
 
馬車はエメラルドの舌打ちも何のその、町の入り口へと一直線に向う。
 
「・・・・・・・・・何も面倒なことが起っていないといいがな・・・」

窓から見える、昨日とは何一つ変わらない風景。
だが、その中で一体何が起きるのか。
そして、もうそれが起っているのか。
まだ、それは誰にもわからなかった。
・・・・・・・・誰にも。
 
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