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ヴィスティ
45話
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急いで大通りへと出た3人を迎えたのは、空虚な沈黙だった。
「・・・・誰も、いない・・・・?」
それどころか、風すらもない。
「・・・・・結界が、私達を完全に取り込んで閉じたらしいな」
そうなれば、恐らく全てが罠。
「気をつけてください、エーメさん。 闇は、どこからでも私達の姿を知ることができる」
その忠告に、エメラルドが重く頷いた。
「・・・・・私達を虚仮にするにも程がありますわ・・・!!こんな・・」
危機感よりもまず怒りに震え、フレイアがきっと空を見上げる。
だが、空は闇はおろか、一転の曇りすらない。
「・・・・・・・・・恐らく、ここでは仕掛けてきませんよ」
「・・・・・・?」
ヴァーニスの声に、エメラルド、そしてフレイアも首をかしげる。
「どこかに、舞台があるはずですよ。あの男が気に入る、舞台が」
とうとう語り始めたのか、とエメラルドがじっとヴァーニスを見つめる。
「・・・・・・ホーリー牧師。あなた・・・・・・何か知ってらっしゃるの?」
常にないヴァーニスの姿に、フレイアもその異常に気づく。
「・・・・・・・あなた、何者ですの」
その瞳に、敵意が宿る。
それを受け止めながら、ヴァーニスがエメラルドにだけ聞こえる、小さなささやきをもらす。
「・・・・・・・・正体なんて、私が知りたいくらいだ」
その囁きを拾い、フレイアが怪訝そうにつめよる。
「・・まさか、あなたも仲間なのではないでしょうね?」
「・・・・・仲間、ですか。それはありえませんね。できれば消し去ってしまいたいほど嫌いですから」
そこでなぜか、ヴァーニスは笑う。
フレイアにとっては、理解できない行動であっただろう。
「フレイアッ!こんなところで言い争っている場合か!?こいつが神に害を成すものではないことは、間違いない!信じられないのならお前お得意の聖水でもかけてみればいいことだろうが!?」
間違いなく、そんなものはヴァーニスに何の影響も与えたりはしない。
エメラルドは苦々しく叫んだ。
「甘いですわ!エメラルドさん!!血に酔う以前の”吸血鬼”には、聖水は通用しないことがある!もしかしたら、私たちの中にまぎれて、見張っていたのかも・・・・・!!!」
こういう時に、生来の思い込みの激しさは手におえない。
頭を抱えたエメラルドだが、次の瞬間、本気の怒声を上げる。
「・・・・・・・・やめろ!!何をする、フレイア!!!!!!」
「試させて、いただくだけ」
外套から取り出したのは、赤い刀身の小刀。
フレイアはそれをかまえ、本気でヴァーニスに向ける。
『皆殺しにすればいい。異端かどうか、判別するのは神がなさる』
そう言い放ち、罪なき人を皆殺しに来た歴史を、果たして彼らは覚えているのだろうか。
ヴァーニスは、その刀をよけようともせず、うっそりと笑っていた。
「・・・・・・!!!やはり、悪の手先でしたのね!!!」
その表情を勝手に勘違いし、フレイアが剣を振り下ろす。
「・・・・・やめろッ!!!!!!!!!」
制止の声は、間に合わない。
(・・・・・・・動かない・・・・!?)
ならば、と間に割って入ろうとしたエメラルドの足が、一歩として地を離れない。
「ヴィ―――!!」
微笑むヴァーニスに、刀身が振り下ろされた、その瞬間であった。
『・・・・・・・・やれやれ。 本当に人というのは、争うことがすきなのだねェ。
せっかく素敵な舞台を用意して待っていたのに、全て台無しだ』
あと、一センチ。
ほんの数ミリ、それだけで、ヴァーニスの胸をえぐるはずだった、刀。
その手は、縫いとめられたかのように動かない。
「・・・・・・・・・誰だ!!!!!!」
同じく動かない足のまま、エメラルドが誰何の声をあげる。
『・・・・・・・・・・分かったろう?いとし子よ。
人の本性というのは、いつの世も変わらぬものなのだよ』
「……ネイ、か?」
『愚かな猿の分際で、少々おイタが過ぎたようだね?愛し子よ。私はお前を殺させなどはしないよ』
エメラルドの声には答えず、声はどこか慈しみさえ感じるささやきを返す。
パリ――ンッツ・・・・・・・!!!
「きゃぁっつ!!!!!!」
フレアの赤い刀身が、砕け散る。
その破片は、容赦なくフレイアとエメラルドを襲った。
(・・・・・・避けられない・・・・・!!)
とっさに足の動かないエメラルドは、ただ目をそらすことすらなく赤い破片を見つめる。
フレイアはぎりぎりのところで外套で全身を覆う。
大怪我をおうのはエメラルド、そのはずだった。
「・・・・・・・あなたの支配する空間で死ねたら、さぞ気分がよかったでしょうにね」
「・・・・・・・!!きゃぁぁ!!!」
だが、目を見張り、悲鳴をあげたのはフレイア。
外套を突き破り、いくつかの刃が肌に突き刺さる。
『・・・・・・・・やれやれ、困った子だ・・・』
エメラルドには、一遍として降り注がなかった、その刃。
なぜならそれは、全てエメラルドに届く以前に、その前に立つヴァーニスを避けるように消えていたのだから。
「うっ・・・・・・・・」
腕に傷を追ったフレイアがうめく。
大量の血が、大地に流れ染み込んでいく。
異常があらわれたのは、その大地からだった。
「・・・・・!!!!」
フレイアの流す血が、少しずつ少しずつ闇に変化を遂げる。
それはフレイアを包み、覆い尽くそうとするように。
『・・・・・・・私の可愛い養い子がお前を待っているよ。この闇の中で、ね・・・・・・・』
「きゃぁあああ…!!エメラルド…さ…!!」
侵食する、闇。
誰も、その場を動けなかった。
動けるはずの、ヴァーニスも。
闇が、静かにその口を開けた――――。
「・・・・誰も、いない・・・・?」
それどころか、風すらもない。
「・・・・・結界が、私達を完全に取り込んで閉じたらしいな」
そうなれば、恐らく全てが罠。
「気をつけてください、エーメさん。 闇は、どこからでも私達の姿を知ることができる」
その忠告に、エメラルドが重く頷いた。
「・・・・・私達を虚仮にするにも程がありますわ・・・!!こんな・・」
危機感よりもまず怒りに震え、フレイアがきっと空を見上げる。
だが、空は闇はおろか、一転の曇りすらない。
「・・・・・・・・・恐らく、ここでは仕掛けてきませんよ」
「・・・・・・?」
ヴァーニスの声に、エメラルド、そしてフレイアも首をかしげる。
「どこかに、舞台があるはずですよ。あの男が気に入る、舞台が」
とうとう語り始めたのか、とエメラルドがじっとヴァーニスを見つめる。
「・・・・・・ホーリー牧師。あなた・・・・・・何か知ってらっしゃるの?」
常にないヴァーニスの姿に、フレイアもその異常に気づく。
「・・・・・・・あなた、何者ですの」
その瞳に、敵意が宿る。
それを受け止めながら、ヴァーニスがエメラルドにだけ聞こえる、小さなささやきをもらす。
「・・・・・・・・正体なんて、私が知りたいくらいだ」
その囁きを拾い、フレイアが怪訝そうにつめよる。
「・・まさか、あなたも仲間なのではないでしょうね?」
「・・・・・仲間、ですか。それはありえませんね。できれば消し去ってしまいたいほど嫌いですから」
そこでなぜか、ヴァーニスは笑う。
フレイアにとっては、理解できない行動であっただろう。
「フレイアッ!こんなところで言い争っている場合か!?こいつが神に害を成すものではないことは、間違いない!信じられないのならお前お得意の聖水でもかけてみればいいことだろうが!?」
間違いなく、そんなものはヴァーニスに何の影響も与えたりはしない。
エメラルドは苦々しく叫んだ。
「甘いですわ!エメラルドさん!!血に酔う以前の”吸血鬼”には、聖水は通用しないことがある!もしかしたら、私たちの中にまぎれて、見張っていたのかも・・・・・!!!」
こういう時に、生来の思い込みの激しさは手におえない。
頭を抱えたエメラルドだが、次の瞬間、本気の怒声を上げる。
「・・・・・・・・やめろ!!何をする、フレイア!!!!!!」
「試させて、いただくだけ」
外套から取り出したのは、赤い刀身の小刀。
フレイアはそれをかまえ、本気でヴァーニスに向ける。
『皆殺しにすればいい。異端かどうか、判別するのは神がなさる』
そう言い放ち、罪なき人を皆殺しに来た歴史を、果たして彼らは覚えているのだろうか。
ヴァーニスは、その刀をよけようともせず、うっそりと笑っていた。
「・・・・・・!!!やはり、悪の手先でしたのね!!!」
その表情を勝手に勘違いし、フレイアが剣を振り下ろす。
「・・・・・やめろッ!!!!!!!!!」
制止の声は、間に合わない。
(・・・・・・・動かない・・・・!?)
ならば、と間に割って入ろうとしたエメラルドの足が、一歩として地を離れない。
「ヴィ―――!!」
微笑むヴァーニスに、刀身が振り下ろされた、その瞬間であった。
『・・・・・・・・やれやれ。 本当に人というのは、争うことがすきなのだねェ。
せっかく素敵な舞台を用意して待っていたのに、全て台無しだ』
あと、一センチ。
ほんの数ミリ、それだけで、ヴァーニスの胸をえぐるはずだった、刀。
その手は、縫いとめられたかのように動かない。
「・・・・・・・・・誰だ!!!!!!」
同じく動かない足のまま、エメラルドが誰何の声をあげる。
『・・・・・・・・・・分かったろう?いとし子よ。
人の本性というのは、いつの世も変わらぬものなのだよ』
「……ネイ、か?」
『愚かな猿の分際で、少々おイタが過ぎたようだね?愛し子よ。私はお前を殺させなどはしないよ』
エメラルドの声には答えず、声はどこか慈しみさえ感じるささやきを返す。
パリ――ンッツ・・・・・・・!!!
「きゃぁっつ!!!!!!」
フレアの赤い刀身が、砕け散る。
その破片は、容赦なくフレイアとエメラルドを襲った。
(・・・・・・避けられない・・・・・!!)
とっさに足の動かないエメラルドは、ただ目をそらすことすらなく赤い破片を見つめる。
フレイアはぎりぎりのところで外套で全身を覆う。
大怪我をおうのはエメラルド、そのはずだった。
「・・・・・・・あなたの支配する空間で死ねたら、さぞ気分がよかったでしょうにね」
「・・・・・・・!!きゃぁぁ!!!」
だが、目を見張り、悲鳴をあげたのはフレイア。
外套を突き破り、いくつかの刃が肌に突き刺さる。
『・・・・・・・・やれやれ、困った子だ・・・』
エメラルドには、一遍として降り注がなかった、その刃。
なぜならそれは、全てエメラルドに届く以前に、その前に立つヴァーニスを避けるように消えていたのだから。
「うっ・・・・・・・・」
腕に傷を追ったフレイアがうめく。
大量の血が、大地に流れ染み込んでいく。
異常があらわれたのは、その大地からだった。
「・・・・・!!!!」
フレイアの流す血が、少しずつ少しずつ闇に変化を遂げる。
それはフレイアを包み、覆い尽くそうとするように。
『・・・・・・・私の可愛い養い子がお前を待っているよ。この闇の中で、ね・・・・・・・』
「きゃぁあああ…!!エメラルド…さ…!!」
侵食する、闇。
誰も、その場を動けなかった。
動けるはずの、ヴァーニスも。
闇が、静かにその口を開けた――――。
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