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ヴィスティ
52話
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――――――あれから、どれだけの時が流れただろう?
すでに成長を止めたこの体では、そんな簡単なことすらも分からない。
――――消えない、血の匂い。
初めに、むせ返るほどの血の匂いを嗅いだ時、その血は、父と母、二人のものだった。
それが、今では一体どれほどの匂いを嗅いだのか、どれほどの血を浴びたのか、それすらもわからない。
錆びた鉄の、据えた匂い。
その匂いを甘く感じるようになったのは、いつからだろう?
――――昔、父を悪魔と呼んだ男がいた。
昔、母を悪魔と呼んだ男がいた。
昔、私を悪魔と呼んだ男がいた。
――――――それは大概に間違っていて、皮肉なことに少しだけ、あっていたのかもしれない。
あの日私は、悪魔になったのだ。
「・・・・・・・・やっぱり、父さんと母さんは、悪魔じゃなかったよ」
この手で、多くの人を殺した。
血の匂いは、決して消えることがない。
多くの人が、悪魔とヴィスティを罵った。
そう、あの時のヴィスティのように――――――――。
かつて、あの頃確かにヴィスティは悪魔ではなかった。
だが、今は認めるしかないではないか。
あの時、必至で否定した、そのことを・・・・・。
「そう。悪魔は、私だけ」
静かな闇に、まるで泣き声のような呟きが落ちる。
飢えていた。
ひたすらに、飢えていたのだ。
だけど今、なぜだろう?
激しい苦しみと、死をもたらすかと思うほどの苦しみの先で――――”あの人”の血が、全ての飢えを消し去っていた。
浄化?いや、それは違うだろう。
だが。
彼が『特別な存在』と呼ばれた理由は十分に分かった。
彼が齎すのは終焉。
何者にも等しく与えられる、最後の安らぎだ。
激しい苦しみが去った後、最後に残ったのは強い願いだけだった。
遠い昔、神に拒絶されたただ一つの願い。
(・・・・・・・・・・もうすぐ、全てが終わる)
ヴィスティはただ静かに、その時をまった。
全てが、終わる、その時を――――――――――。
すでに成長を止めたこの体では、そんな簡単なことすらも分からない。
――――消えない、血の匂い。
初めに、むせ返るほどの血の匂いを嗅いだ時、その血は、父と母、二人のものだった。
それが、今では一体どれほどの匂いを嗅いだのか、どれほどの血を浴びたのか、それすらもわからない。
錆びた鉄の、据えた匂い。
その匂いを甘く感じるようになったのは、いつからだろう?
――――昔、父を悪魔と呼んだ男がいた。
昔、母を悪魔と呼んだ男がいた。
昔、私を悪魔と呼んだ男がいた。
――――――それは大概に間違っていて、皮肉なことに少しだけ、あっていたのかもしれない。
あの日私は、悪魔になったのだ。
「・・・・・・・・やっぱり、父さんと母さんは、悪魔じゃなかったよ」
この手で、多くの人を殺した。
血の匂いは、決して消えることがない。
多くの人が、悪魔とヴィスティを罵った。
そう、あの時のヴィスティのように――――――――。
かつて、あの頃確かにヴィスティは悪魔ではなかった。
だが、今は認めるしかないではないか。
あの時、必至で否定した、そのことを・・・・・。
「そう。悪魔は、私だけ」
静かな闇に、まるで泣き声のような呟きが落ちる。
飢えていた。
ひたすらに、飢えていたのだ。
だけど今、なぜだろう?
激しい苦しみと、死をもたらすかと思うほどの苦しみの先で――――”あの人”の血が、全ての飢えを消し去っていた。
浄化?いや、それは違うだろう。
だが。
彼が『特別な存在』と呼ばれた理由は十分に分かった。
彼が齎すのは終焉。
何者にも等しく与えられる、最後の安らぎだ。
激しい苦しみが去った後、最後に残ったのは強い願いだけだった。
遠い昔、神に拒絶されたただ一つの願い。
(・・・・・・・・・・もうすぐ、全てが終わる)
ヴィスティはただ静かに、その時をまった。
全てが、終わる、その時を――――――――――。
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